「あー、どうすっかな…こっから」
衛宮邸の居間、座卓に肘をつきながら一人ぼやくバーサーカー。
「どうする、とは?お昼ご飯の相談なら乗りますよ…あ、ロンです」
「なぁー!?貴様…片手間に儂の親を蹴りよって!」
バーサーカーの視線の先にはテレビに向かって座るセイバーとアーチャーが居る。藤村大河が与えてくれたゲーム機に夢中な姿をぼーっと眺めていた。
「昼飯の話じゃねぇよ、勝手に食ってろ腹ぺこアホ毛。今後の戦略の話だよ、セイバーしか今の所俺ちゃんの知る情報と合致しねぇ以上情報収集しなきゃマズイだろ?」
「確かに、貴様の知る聖杯戦争と此度の聖杯戦争が違うのならば情報収集は是非も無し…カン!」
「残念、ロンです。槍槓…剣を扱う身なれど、槍も捨てがたいですね」
「だーッ、貴様!儂に恨みでもあるのか!?さっきから儂ばっかり痛い目見とるんじゃが!?」
「はて、私は別に何も…あぁ日頃の行いでしょうか?」
「キーサーマー!」
「…ダメだわ、どこぞの坊さんみたいに聞く耳ねぇな」
ぎゃいぎゃいと騒ぎ散らかす二人を尻目に立ち上がれば、そそくさと衛宮邸を抜け出すバーサーカーであった。
◇◇◇◇◇
「
バーサーカーは独り言を漏らしながら冬木市の商店街を歩いている。
紫色の髪、側頭部には大きなリボン、穂群原学園の制服…デッドプールの知る間桐桜の姿に変装していた。
時間はまだ昼間、学園の生徒が制服で出歩く時間では無い…それを逆手に取っての偵察。バーサーカーの調べた情報によれば桜は品行方正、文武両道の優等生。
少なからず関係者は釣れるだろうと踏んでの行動だった。
「おい…何をしている?」
不意に後ろから掛けられた声、一先ず釣れたかと振り返ればそこには間桐慎二が居た。
バーサーカーの有する知識では間桐桜に対するコンプレックスから、罵詈雑言を始め人前では言えない事をしてきた人物だ。
「あ、あの…体調が悪くて」
「…お前、桜じゃないな?誰だ」
瞬間、バーサーカーは思考が固まる。
様々な可能性が頭を巡る、宇宙猫みたいに。
数秒後、絞り出した言葉は
「やだなぁ、お兄様。私は桜ですよ」
「あぁ、そうか。でもな、桜はボクの前ではまだ笑わないんだ…だから誰なんだ?」
直後、バーサーカーの背後に現れた気配。慎二とは明らかに違う重圧、気配は明らかにサーヴァント特有の物…姿が見えない誰かはバーサーカーへと声を掛ける。
「ウチのマスターに何の用だい?事と次第によっちゃ容赦しないよ?」
「おい、ライダー!迂闊に喋るな!相手の正体が知れてないのに…!」
「ハッハッハ!構わないさ、海に乗り出したアタシが言うんだ。未知を知りたいてのがの船乗り、恐れを知らないから海賊って言うんだよ。マスターも少しは肝を据えたらどうなんだい?」
「…ッ、まだじいさんが死んで日が浅いんだ、桜に劣っているのも認めるさ。けどな…当主として恥を晒す訳にはいかない、からだな…!」
背後の気配は魔力的にライダーで間違いない、だが目の前の慎二の反応は自身の知る慎二らしからぬ反応だ。
他者を見下し他者を悪意無く利用するのが慎二、その認識で居たはずなのに目の前の慎二は明らかに違う。
加えて───
「間桐臓硯が…死んだ?」
思わず口から声が漏れ出た。
調べた情報ではほぼ不死身、あの
それが呆気なく死んだ?バーサーカーは耳を疑った。
「なんで?」
「知らないよ、ある日突然死んでたんだ。自然死では無いのは確かだけどな…胸に小さな穴が空いていたから殺されたんだろう」
「間桐臓硯が……死んだ?」
バーサーカーは数秒黙り込んだ後に口を開く。
「待て待て待て……あのバケモノジジイが?つか、小さな穴って銃弾みたいな跡か?」
「いや、恐らく棒状の物だろう。というか、桜の顔でそんな風に喋るな!気味が悪い…!」
「棒状の穴…マジかよ。あのおっぱいヤベェな、敵に回したら面倒臭そうだ」
「何一人でぶつくさ言ってんだい?アタシの見立てじゃ十中八九ランサーだと思ってるよ」
不意にライダーが横から入ってくる、その言葉に嘘は無さそうだ。
「ランサー、間違いないんだな?」
「あぁ、上手く隠しちゃいたが所々に痕跡があったからね。ウチの地下が穴まみれになってたから間違いないよ」
真剣な眼差しのライダーを見つめながらふむ、と顎に手を添える。
なぜランサーは間桐臓硯を殺しに来たのか、他陣営への攻撃ならば桜や慎二にも危害が及ぶ筈だ。だがそれらしい事は無かったのだろう。
「他所のマスターに目ぇつけたり、ラスボス候補殺したり…何考えてんだ?おっぱいタイツ」
「?」
バーサーカーの独り言に首を傾げるライダー、思惑の掴めないランサーに対して首を捻るバーサーカーだった。