メジロマックイーン式【少年H計画】   作:Ash one

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以外にも多くの人達に読んでもらえて嬉しいです。
更新は遅いですが、お付き合いして頂けると助かります。


美人薄命

 

北山を訪れた光源氏は、偶通りかかった宿で初恋の女性に鏡合わせの女性と出逢う。

 

幼子であるにも関わらず余りの美貌故に源氏の心を射止め、後見として申し出た。

 

彼女の育て親である祖母はこの申し出を断固拒否し、まだ十歳を越したばかりの得体の知れない若者に子を預けることを拒んだ。

 

が、彼女の祖母が亡くなるや否や源氏は彼女を引き取ってしまう。そして生涯忘れられない愛した女性の影を移すように幼子を自身が求める理想の女性へと育てあげた。

 

その後、成長した少女は容姿才覚共に理想的な女性光源氏の最愛の妻として添い遂げることになる。

 

──紫の上

 

恋多き光源氏が愛した女性の名である。

 

 

 

 

 

 

私のトレーナーさんはとても優秀なお方……

 

それは彼から習うトレーニングで骨身に染みていた。

 

しかし入学してから選抜レースに夢中だった私は当時トレーナーさんがどのような人物か全く知りませんでした。

 

しかし、トレーナーさんと契約を結んでから顔も知らない学園所属のトレーナーや生徒達も更には業務員やら様々な人達に、どうやって彼と専属契約まで漕ぎ着けたか等の質問が毎日の執拗に聴かれました。

 

一目惚れして、此方からお願いしたら了承を得たと言えるはずもなく、絶え間なく聴かれる質問に答え続けた。

 

当時は耳にタコが出来ると言わんばかりにとても、とても大変でした。

 

 

その中でトレーナーさんについて根も葉もない飛躍した噂やそれらを見てきた人達の言葉を多く知りました。

 

 

 

『曰く、トレーナー養成学校ではさも当然のように首席で卒業した』

 

『曰く、新人サブトレーナーでありながらも無敗三冠ウマ娘シンボリルドルフの七冠に貢献した』

 

『曰く、誰よりも学園の業務を率先して行い誰に対しても救いの手を伸ばす素晴らしい人物』

 

『曰く、彼の歩く道には華が咲き誇る』

 

 

 

成績優秀、文武両道去もさることなく人を惹きつける美貌の容姿。栄光なる道を進むことを是とし、成功こそ彼の在り方である。

 

それらも相まってトレセン学園では知らぬ者も居ないと言ってもいいでしょう。

 

多くの人達が『彼が選ぶウマ娘は必ず大成を成す』とまで噂も囁かれておりました。

 

しかし、ここまで噂が流れていたにも関わらずトレーナーさんは決して専属契約を口に出さなかったそうです。

 

「担当を決める契約に関しては慎重に決めたい」

 

トレーナーさんはこのように言っており、トレセン学園の理事長も彼の意見に尊重し承諾っ!していたが、学園の取締をする多くの重役の方々に催促という名の圧力を掛けられ止むおえず理事長も出来うる限り早く彼に専属契約を結ぶようにと指示したそうです。

 

 

 

 

 

 

 

『早く彼が担当するウマ娘を見たい』

 

彼の容姿は異性に人気が高く、記者団も時折隙を見ては期待の新人トレーナーである彼に取材を行っていた。

 

彼をより多くの観衆に広めレースを盛り上げたいと考えるURAを初めとする運営、トレセン学園に通うウマ娘達、そして輝かしい記録を残す彼女達の走りをみたい多く観衆は彼に重積とも言える期待の重りをかけていた。

 

 

そしね満を持して彼が契約したウマ娘はメジロ家の御令嬢『メジロマックイーン』である。

 

長距離走者として彼女は大いに期待されていたにも関わらず選抜レースでは良い成績を出せなかった。

 

「メジロマックイーンは噂ほど期待出来るウマ娘ではない」

 

「メジロ家の秘蔵っ子と期待してみればこの程度か」

 

「彼女……きっと才能はあるんだろうけど、イマイチパッとしないレースでしたね」

 

「メジロマックイーン?あまり力強いレースをさるウマ娘には見えなかったかな。それよりも他のウマ娘達がすごくてさ!」

 

 

なんとも言えない結果を残したメジロのウマ娘、それが学園のトレーナー達が下した彼女の評価である。

 

そんな彼女をスカウトしたのがまさかのサブトレーナであった。

 

 

当時、あらゆる面で波紋を呼んだが二度目の選抜レースで余裕もって一着を勝ち取ったマックイーンの姿を見て人々は意見を変えた。

 

───可憐で悠美で完璧な走り

 

余りの素晴らしい走りを見せつけたトレーナーとメジロマックイーンはその日に正式契約を行い『天皇賞を勝ち取る』と高らかに宣言した。

 

「メジロマックイーンは素晴らしいウマ娘です。彼女の走りをより良くするためにトレーナーとして精進させていただきます」

 

そこから彼女達の快進撃が始まった。

 

遅れたデビュー戦を勝ち取ると、様々なレースに出場し好成績を残しファンの多くを獲得。

 

そして栄冠あるクラッシクレースG1『菊花賞』に出場出来る権利を勝ち取り、そこで一位を獲得し多くの観衆を驚かせた。

 

続くG2レース『阪神大賞典』では圧巻の走りをみせ、メジロマックイーンは強いウマ娘であることをより多くの人々に証明してみせた。

 

そして、G1レース『天皇賞・春』に出場。

同じメジロ家のメジロライアンを初めとする並み居る強敵を倒し、遂にメジロマックイーンは盾の栄誉を手に入れた。

 

人々は歓喜した。

 

そしてその道に至るまで共に汗と血を流し続けた二人の英雄は喜びに涙を流した。

 

名優、と呼ぶに相応しいウマ娘を見出しそして輝かしい結果を残した彼女を支えたトレーナー。

 

全てが順調に進んでいたかにみえた。

 

 

 

 

『名優の杖──事故で急死』

 

 

 

悲劇はなんの前触れもなく訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どんよりとした空に雨が降っている。

あの日と同じ、私から最愛の人を奪った大っ嫌いな雨が外を降っている。

 

「────お嬢様、トレーニングルームの予約を完了致しました。お時間になりましたら此方からご連絡しますのでお部屋でお待ち下さい」

 

「……はい、分かりました」

 

目の前に居るスーツ姿の中年の男性、メジロ家が雇ったトレーナーは頭を下げ部屋から静かに退出していく。

 

トレーナーさんが亡くなってから一ヶ月余りが過ぎ去り、時間だけが彼の死を伝えた。

 

学園の秘書である駿川たづなさんから連絡を頂いた直後行ってもたっても居られず病院に向かったが、私の前でトレーナーさんは息を既に引き取っていた。

 

彼に見舞われた不慮の事故は雨天時とはいえ見通しの良い大きな道路だった。右折する大型トラックに引かれしまったそうです。

 

事故にあったと思えない位にトレーナーさんの遺体は綺麗だった。生きているとおもった、震える足でゆっくりと彼の手に触れる。けれど彼の手は氷のように冷えきり『死』という現実を否が応でも突きつけられた。

 

足元が崩れ落ちるような錯覚に陥る。

 

 

 

──いや!いや!どうして!!

 

──私を置いていかないで!!

 

──トレーナーさん……私を独りにしないで……

 

 

 

私はトレーナーさんの前で押し殺した声で崩れ落ち涙を流し続けた。

 

 

もう、頭を撫でて貰えない

 

もう、共に勝利の余韻を味わえない

 

もう、二度と彼と話せない

 

その日、私は心が壊れてしまいそうだった。

 

胸の内に癒えることのない深い傷を残して。

 

 

彼は間もなくこの世から去った。

 

メジロ家が主体で行なった葬儀には多くの人達が集まった。彼がどれだけ慕われ尊敬されていのかよく分かった。そして彼に血を分けた家族が居ないことも。

 

特に生徒会長『シンボリルドルフ』はメジロ家が行う葬儀に大変協力的でした。

 

「彼は私の恩人だ──協力は惜しまない」

 

意を決したような顔をしたルドルフ会長は、彼の葬儀を最初から最後まで手伝って頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーさんをトラックで引いた方は今まで交通事故はおろか前科はなし。警察に一度もお世話になることのない模範的なドライバーであった。

 

しかし、そんな人が私の愛する人を奪った。

 

感じたことのない負の感情に心が染まる。

 

──この人間をどうしてやろうかと

 

どんな罪を償わせてやろうかと。ただ地獄に落とすだけじゃ生易しい、彼を喪った煮えたぎった私の怒りを存分に髪の先から骨の髄まで味あわせてやろうとも考えていた。

 

『名優』と呼ばれていたにも関わらず私は五臓六腑に拡がる激しい怒りの波に呑まれてしまっていた。

 

しかし、メジロ家の執事、爺やからトレーナーさんの遺言を聴いた。病院に緊急搬送され集中治療室に入る間際彼は『運転手さんを控訴しません』といい残したそうだった。

 

───なんて優し過ぎる人なんだろうか

 

怒りに身を任せ、トレーナーさんを言い訳に外道に堕ちようとしていた自身を責めた。

 

いまの私に出来ることはただ一つ。

 

トレーナーさんと共に約束した『天皇賞で勝利する』それを叶え達成することが目的になった。

 

 

 

 

 

 

『お嬢様、お時間になりました』

 

 

トレーナーから連絡が入る。

来月に行われるG1レース宝塚記念……

天皇賞・秋を制覇する為にも必ず勝たなくてはならない。どんな敵が来ようが必ず勝つのは私だと、決意を固めトレーニングルームに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「めじょまっきーん?にとうていていおー?」

 

「違うよ!トウカイテイオーさん!!」

 

「違います!メジロマックイーンさんです!」

 

雨の降る河川敷を歩く雨具を着込んだ二人のウマ娘と傘をさした一人の男の子は仲良さげに会話をしている。

 

変な名前だなーっと男の子はケラケラと笑うが、対照的に二人のウマ娘は大変怒っている。

 

「もぅ!いい加減覚えてよー!また一緒にレース見に行くんだからさ」

 

「そうです!またマックイーンさんが勝つ所を見に行くんですから!」

 

「む!ダイヤちゃん!今度はテイオーさんの方がカッコよく勝つもん」

 

「いいえ!キタちゃん!マックイーンさんの方が綺麗に勝利します!」

 

「テイオーさん!」

 

「マックイーンさん!」

 

 

男の子そっち向けで可愛らしく睨み合いと口論を続けるウマ娘達を他所に男の子は何も考えずにのんびりと河を眺めていた。

 

「またレース見に行きたいな」

 

男の子は雨空の下、小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

投稿遅くても許してくれますか?

  • 私は一向に構わんッ!!
  • ゆ゛る゛さ゛ん゛!!
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