乙女ゲー世界で人類として生きる   作:兵庫人

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第3話

 クロトはメイに手を引かれて彼女の部下であるバイオロイドの機動部隊ドゥームブリンガーの隊員達が待つ広間へ案内された。広間には数十人のドゥームブリンガーの隊員達が整列しており、クロトがメイと共に姿を現すと一斉に敬礼をする。

 

『『お帰りなさいませ! 司令官様!』』

 

 ドゥームブリンガーの隊員達が一斉にクロトに敬礼をして迎え入れる光景は、知らない人からすればこれ以上なく奇妙に見えるだろう。

 

 奇妙に見える一つ目の点は、バイオロイドは女性しかいない為に、この広場にいるのはクロトを除いて全て女性であること。二つ目は整列しているドゥームブリンガーの隊員達の顔や服装が「四種類に大別できる」ということだ。

 

 黒い軍服を着て背中に機械の翼を取り付けている、腰まで届く赤い髪をしたスレンダーなモデルのような体型の女性。

 

 手に鉄でできた傘のようなものを持ち腰の辺りで機械の翼を接続している、艶やかな黒髪の和服姿の女性。

 

 牛柄の水着を着て後ろにはミサイルを搭載した機械の翼が見える、青紫色の髪でどこか幼さが残っている顔立ちの女性。

 

 軍服の胸元を大きく開けて腰から機械の翼をまるで衣服の一部のように生やしている、紫色の髪で自信に満ちた表情を浮かべている女性。

 

 クロトは彼女達のことをよく知っていた。彼女達もメイと同じラストオリジンに登場するキャラクターで「B-11 ナイトエンジェル」、「37式ダイカ」、「P-2000 ジニヤー」、「P-18 シルフィード」という名のドゥームブリンガーの隊員達だった。

 

 そんな彼女達がそれぞれ十人以上いる光景は、前世に知識でバイオロイドについて知っているクロトでも驚きを禁じ得なかった。

 

「こ、これは凄いな……」

 

「ふふっ。これくらいで驚いてもらったら困るわ、司令官。今も新しいドゥームブリンガーの姉妹が製造されていて、これからもっと数は増えていくわよ」

 

 クロトの呟きを聞いたメイが自慢げにそう言うと、彼は大空を無数の同じを顔をしたドゥームブリンガーの隊員達が飛ぶ光景を想像してしまうのだった。

 

「もっとも、今の新人類の戦力だったらこの数でも充分滅亡させることもできるけど……そうだ。ねぇ、司令官? あの乙女ゲームに出てくるファンオース公国って国、そこだけでも滅亡させるのはどうかしら? そうすれば戦争だってそもそも起こらないし、マスターの世界に必要な新人類も減らないし、いい考えだと思うのだけど?」

 

「なっ……!?」

 

『『…………』』

 

 言葉の途中で急に名案が浮かんだという表情を浮かべたメイの提案にクロトは絶句する。

 

 まさかここでいきなりファンオース公国を滅ぼす考えが出てくるとは思わなかったクロトは、とっさに助けを求めて周囲を見回すのだが、この場にいるドゥームブリンガーの隊員達はメイの意見に戸惑うどころか彼の許可を求めるような目をしていた。ここでもし彼が首を縦に振れば、メイ達この場にいるバイオロイド達は躊躇うことなくファンオース公国を滅ぼしにいくだろう。その事実を無言の視線の集中砲火を受けて強制的に理解させられたクロトの額に一筋の冷や汗が流れる。

 

 恐らくここにいるドゥームブリンガーの戦力ならばメイの言った通り、ファンオース公国を滅ぼすことは可能だろう。

 

 しかしその結果、彼女達が傷付いて最悪何人か死んでしまう可能性だってあるし、ファンオース公国が滅んだ後は他の国々に目をつけられるのは間違いない。他の国々はドゥームブリンガーを自分達のものにするか、あるいは滅ぼそうしてこの要塞に押しかけ、ドゥームブリンガーはそれを阻止するために押しかけてくる国々に攻撃を仕掛けるのは明白だ。

 

 そこから先に待っているのは地獄のような戦いで、それを想像したクロトは思わず大声を上げる。

 

「だ、駄目だ! それは許可できない!」

 

「……そう。それじゃあ仕方ないわね」

 

「え?」

 

 自分の提案をろくに話を聞きもせずに却下されたのにメイは怒りもせずに引き下がり、他のドゥームブリンガーの隊員達からもざわめきが起こる気配がなかった。その様子を見てクロトが戸惑った表情となると、メイが口元に笑みを浮かべながら話しかける。

 

「どうしたの、司令官? そんな面白い表情を浮かべて?」

 

「いや、だって……随分とあっさり引き下がったから……」

 

「冗談に決まっているでしょう? この短期間で司令官が慎重だってことは充分理解できたからね。それより……」

 

 メイはクロトの言葉に答えると急に指を鳴らしてみてた。すると……。

 

『『~~~~!』』

 

 それまで無言で整列してクロトとメイの会話を聞いていたドゥームブリンガーの隊員達が一斉に歓声を上げてクロトへ迫ってきた。

 

「えっ!? ええっ!?」

 

 突然迫ってくる美女の大群の前にクロトが驚いていると、メイが楽しそうな笑みに僅かばかりの嫉妬を混ぜて言う。

 

「隊員達と親交を深めるのは司令官の大切な仕事よ。……精々頑張りなさい」

 

 

 

 それから一ヶ月後。クロトは「ロストアイテム」と呼ばれる古代文明の産物の戦艦に乗って、コーラサワー家の領地に帰ってきた。

 

 だがロストアイテムの戦艦に乗っていたのはクロトだけでなく、彼の側には古代文明によって作られたとされる「人間の女性そっくりの使い魔五人」の姿もあった。

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