乙女ゲー世界で人類として生きる   作:兵庫人

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第5話

「空賊ねぇ……」

 

「はい〜。どうしましょう?」

 

 空賊が別の飛行船を襲っているという報告を聞いてもメイはどうでも良さげな表情で短く呟くだけで、報告をしたダイカも特に気にしている様子ではなかった。彼女達バイオロイドにとって気にするのは人類の生き残りであるクロトのことだけで、新人類同士の戦い等はどうでもいいのだろう。

 

 つまり空賊をどうするのかはメイ達ドゥームブリンガーの司令官となったクロトの意思一つで決まり、それを理解した彼はメイとダイカに視線を向けられると自分の意思を口にした。

 

「助けよう。すまないけど力を貸してくれ」」

 

 クロトの言葉を聞いたメイは、彼がそう言うと予想していたらしく一つ頷いてから口を開いた。

 

「やっぱりそう言うと思っていたわ。……とりあえず一小隊を向かわせるわ」

 

 メイはそう言うと無線でアーロダインの艦内にいるドゥームブリンガーの隊員達に呼びかけ、それから数分もしないうちにナイトエンジェルとジニヤーにシルフィードが一人ずつ、クロト達がいる甲板上にやって来た。

 

「貴女達。すでに報せたと思うけど、今からここにいる四人で新人類の空賊達を襲撃してもらうわ」

 

 無線で呼びかけた時に大体の状況を知らされていたようで、メイの言葉にダイカとナイトエンジェル、ジニヤーとシルフィードは揃って頷く。どうやらメイはここにいるダイカ達四人だけで空賊と戦わせるようで、普通に考えれば無謀に見えるのだがダイカ達四人は余裕の表情を浮かべており、それぞれの機械の翼を起動させて発信の準備に移る。

 

「それではナイトエンジェル、発進します」

 

「ダイカ、行ってまいります〜」

 

「ジニヤー、行ってきまーす」

 

「シルフィード、発進するわよ」

 

 ナイトエンジェルとダイカ、ジニヤーにシルフィードは、アーロダインの甲板上を滑るように高速で移動すると空に飛び立ち、空賊達がいる空域へと向かって行った。メイはそれを見届けると、いつの間にか現れた六角形の宙に浮かぶ座席に座り、飛び立っていったドゥームブリンガーの四人に支持を出す準備をする。

 

「さて、と……。ここからは浄火の時間よ」

 

「……」

 

 座席に座りゲームと同じ台詞を獰猛な笑みを浮かべながら言うメイを見て、クロトは頼もしく感じると同時に恐ろしく思うのだった。

 

 

 

 アーロダインから離れた空域では六隻の海賊船が、自分達のより大型の飛行船一隻を取り囲み攻撃を加えていた。

 

 この海賊団は規模こそは小規模だが、それなりに名前が知られている海賊団だった。中型だが足が速く強力な大砲を積んだ海賊船を揃え、定期的に縄張りを変える事で、これまで何度も大きな掠奪をしても王国の追跡から逃れてきたのだ。

 

 海賊団がこの空域にやって来たのはつい最近だったのだが、そこで運良く王国でも有名な貴族の船が護衛もつけずに一隻でいるのを見つけ、海賊団は喜び勇んで貴族の飛行船を襲うことにした。すでに貴族の船は半壊状態で反撃をする力も残っておらず、その様子を見た海賊団の船長が笑みを浮かべる。

 

「勝ったな。おい、そろそろ……」

 

 海賊団の船長が部下達を貴族の船に送り込ませようと指示を出そうとしたその時、周囲を警戒していた部下が声を報告してきた。

 

「船長。後方から高速で接近してくる反応があります」

 

「何だと? 大陸からの救援か? それともモンスターか?」

 

「いえ、それにしては反応が小さすぎ……って、アレは人? それも女?」

 

 船長に聞かれた部下は、こちらに近づいてくる反応が何か確認すると戸惑った声を出した。

 

 

 

「あれが目標ですか」

 

 空賊の飛行船が一隻の飛行船を集中砲火しているのを更に上空から見下ろしてナイトエンジェルは呟く。すると彼女と、一緒にやって来たダイカとジニヤーとシルフィードの頭の中からメイの声が聞こえてきた。

 

『そうよ。攻撃をされている船は司令官と同じ国の貴族のらしいから、それ以外を沈めなさい。……それじゃあ、攻撃開始よ』

 

「了解! それじゃあ煙幕、いっくよー」

 

 メイの攻撃命令を聞いて最初に行動したのはジニヤーで、彼女が背中の翼に装備されているミサイルを発射すると、ミサイルは海賊船の上空で爆発して光を反射する金属片を含んだ煙が生じた。その煙をゆっくりと六隻の海賊船を飲み込んでいき、視界を封じられた海賊船は取り囲んでいた船への攻撃を中止する。

 

 そして海賊船が攻撃を一時中断するのを確認すると、今度はダイカとナイトエンジェルが行動を開始した。

 

「ジニヤーさん、お疲れさま。……ナイトエンジェルさん、観測の結果です〜」

 

「ええ、受け取ったわ」

 

 ジニヤーに労いの言葉を言いながら観測をしていたダイカは、観測で得たデータをナイトエンジェルに内線で送り、データを受け取ったナイトエンジェルが海賊船に向かって飛んでいく。

 

「爆弾をお届けに参りました」

 

 ナイトエンジェルは小さく呟くと背中の翼に格納されていた爆弾を次々と発射して、先程ダイカから受け取ったデータを頼りに煙の中にいる海賊船の上に正確に落としていく。その直後、煙の中から何度も爆発が起こり、残骸と化した海賊船が次々と現れてきた。

 

 しかしナイトエンジェルは墜落していく海賊船を見て喜ぶのではなく、忌々しそうに舌打ちをする。

 

「チッ! 運が良い。……いいえ、この場合は勘が良いのでしょうか?」

 

 一人呟くナイトエンジェルが見下ろす先では、一隻の海賊船、海賊団の船長が乗っている船が船体を燃やしながら煙から抜け出ようとしていた。どうやらナイトエンジェルの爆撃を受けたものの、間一髪で直撃を避けたようでこのまま逃げ出そうとしているようだ。

 

 しかし海賊船がこれ以上逃げることは無理だろう。何故なら海賊船の前方を見れば、すでにシルフィードが待機していて今まさに攻撃を仕掛けようとしていたからである。

 

「はああっ!」

 

 気合いの声と共にシルフィードの翼から数発のミサイルが放たれて、数発のミサイルは全て海賊船に命中すると海賊船を跡形もなく吹き飛ばした。

 

 ナイトエンジェル達がこの空域に現れてから二分か三分程。たったそれだけの時間で六隻の海賊船は全て沈められ、この戦いの様子はすぐさま王都とそこにある学園に知れ渡ることになるのだった。

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