学園の入学式まであと数日という日の夜。王都にある酒場では学園の生徒、その中でも浮島や王都から離れた土地を領地とする男爵家の跡取り達が集まり、親睦を深めるパーティーを開いていた。
そのパーティーで今年学園に入学する新入生の一人、リオンはこのパーティーで知り合った自分と同じ新入生のダニエルとレイモンドから気になる話を聞かされた。
「え? 俺と同じ男爵家で、ロストアイテムを発見した新入生?」
リオンはダニエルとレイモンドの話に驚いた表情となる。
リオンは学園に入学する前に、とある事情から冒険者となって小さな飛行船に乗って一人空へと旅立ち、その結果未知の遺跡からロストアイテムの飛行船と未発見の浮島を発見していた。そしてその功績を王家に認められて、男爵家の三男から独立した男爵家の当主となる事を認められたのだ。
「そうだよ。冒険者として成功した生徒が二人も同時に入学するって、結構噂になっていたんだぞ」
「というか、何で当事者の一人であるリオンがそれを知らないんだ?」
リオンの言葉に体格が良くて浅黒い肌をしたダニエルが頷き、やや小柄で眼鏡をかけたレイモンドが呆れたように言う。
「いや、ほら……。俺、そういう噂には疎いからさ……。それよりその新入生って何を見つけたんだ?」
「リオンと同じロストアイテムの戦艦らしいぞ。それとその戦艦には、古代文明の技術で作られた人間の女性そっくりの使い魔が何体も乗っているって噂だ」
頭をかきながら聞くリオンにダニエルが自分の知っている噂を教えると、「人間の女性そっくりの使い魔」という単語にリオンが目を輝かせる。
「へぇ! 人間の女性そっくりの使い魔か。美人なのかな? それだったら羨ましいな」
「そんな良いものか分からないけどね」
若干興奮したように言うリオンにレイモンドが冷静な声をかける。
「これは聞いた話なんだけどね。今から数日前に大陸の近くである大貴族の船が五隻か六隻の空賊船に襲われたらしいんだ。その空賊船を全て、数人の使い魔があっという間に倒したそうだよ。……もし使い魔達が美人だとしても、そんなに恐ろしいのは僕はいいかな」
「……………マジで?」
レイモンドの話に出てきた空賊達はそれなりに名前の知られていた海賊だったらしい。そんな空賊達を全滅させる力を使い魔達が持っていると聞いてリオンは表情を強張らせ、それにダニエルが頷いてみせた。
「その話、俺も聞いたからマジだと思うぜ。それでその新入生は空賊を倒した報酬の受け取りとかで、ここに来るのが遅れているらしい。新入生も男爵家なのにここにいないのはそれが理由だ」
「へぇ……。そういえばその新入生って、なんて名前なんだ?」
リオンが噂の新入生の名前をまだ聞いていなかったことに気づいてダニエルに聞くと、ダニエルは首を傾げながら答える。
「名前は覚えていないけど家名は確か……」
パーティーが終った後、酒場から学生寮へ続く帰り道をリオンは一人歩いていた。
「なぁ? パーティーで聞いた新入生の話をどう思う? 俺と同じロストアイテムを見つけたっていう新入生の話」
リオンが夜道を歩きながら呟くと、彼の肩の上に金属製の小さな球体が光学迷彩を解いて姿を現し、合成音声でリオンの言葉に返事をする。
「中々興味深い話でしたね。そのロストアイテムがどの時代の産物かは分かりませんが、私と同じ時代の文明に作られたものなら、この時代の海賊ごとき余裕でしょう」
合成音声で話す金属製の球体の名前は「ルクシオン」。
リオンが発見したロストアイテムの飛行船ルクシオンに搭載された人工知能が操作する子機であり、常に自分の主人であるリオンの側にいて彼の行動をサポートしていた。
ちなみにルクシオンは自分の性能と、自分を建造した古代文明の技術力に絶対な自信を持っており、リオンはルクシオンの発言に内心で苦笑する。
「そうだな、俺も興味を持ったよ。……ダニエル達の話だとその新入生って、今日か明日くらいにここに来るらしいんだけど、ちょっと調べてくれないか?」
「……分かりました。少々お待ちください」
いつもであれば命令を実行する前に何かしらの憎まれ口を言うルクシオンだが、今回はお互い興味を持っていることから、ルクシオンは即座に自分の本体である飛行船の機能を使い大陸中を調査した。そして調査はほんの数秒で終わり、ルクシオンはリオンに調査の結果を報告する。
「……いました。王都の港に明らかにこの時代とは違う文明の技術を使った飛行船が停泊しており、更には人間に似て非なる生命反応を持つ存在が一体、一人の人間と共にマスターと同じ学生寮の一室にいます。恐らくこの人間が噂の新入生………っ!?」
そこまで言ったところでルクシオンは僅かに球体の身体を震わせたかと思うと、空中でまるで凍り付いたかのように硬直する。
「お、おい? ルクシオン……?」
突然の出来事にリオンがルクシオンに話しかけるが、ルクシオンは彼の言葉を聞いておらず、信じられないといった声音で一人呟く。
「こ、この生命反応に脳波……!? まさか旧人類? しかし旧人類は滅んだはずでは……? た、確かめなければ……もし本当に旧人類が生き残っていたのなら私は、私は……■※=&℃◆∀◇ーーーーー!!」
「おわっ!? る、ルクシオンが壊れた!?」
一人呟いているうちに思考が加速していきやがて限界を迎えたルクシオンは奇妙な叫び声を上げ、それを聞いたリオンは腰を抜かさんばかりに驚くのだった。