「ようやく着いたな」
「全くよ。あの新人類達、あんな下らないことで私達を足止めして」
学生寮の自室に入ってクロトが呟くと、一緒に部屋に入ってきたメイが若干不機嫌そうに答えた。
クロト達はこの学園に来る途中、空賊に襲われている貴族の船を見つけ、それをメイが指揮するドゥームブリンガーの力で撃退した。そしてその空賊がかなり有名な賞金首だったらしく、クロト達は事情聴取と報償金の受け取りについての話し合いで今日まで王城にいたのだった。
「やっぱり新人類なんてさっさと滅ぼした方がいいわね。司令官もそう思うでしょ?」
「何でそうなるんだ。それより他の皆はどうしたんだ?」
隙あらばクロト以外の人類、新人類を滅亡させる許可を求めようとするメイに呆れながらクロトは、ここにはいないナイトエンジェル達について彼女に質問する。するとこのやり取りはいつもの事なのでメイは特に機嫌を損ねることなく質問に答える。
「彼女達だったら今晩は私達の船にいるわ。新しいドゥームブリンガーの姉妹のこととか『本島』と色々報告があるのよ」
メイが言った本島とは赤ん坊だったクロトがコールドスリープをしていたドゥームブリンガーの本拠地のことで、彼女の口ぶりだと新しいバイオロイドの量産……つまり新人類を滅ぼす戦力の増強は順調のようであった。その事に彼が思わず背筋を寒くしていると、突然メイが頬を赤くして話しかけてきた。
「そ、それよりも司令官?」
「ん? どうした?」
「どうした? じゃないわよ! 分かっているの? 今、私達、二人っきりなのよ? だ、だから、今晩くらい私だけを見て、私と……」
顔を赤くしたメイが恥ずかしそうにそこまで言って、勇気を出して次の言葉を言おうとしたその時……。
「くわpushedはすn⬛︎⭐︎あelk いぃーーーーーーー!」
クロトとメイの間を銀色の閃光が何やら理解不明な合成音声を放ちながら通り過ぎていった。
「はぁっ!?」
「な、何なの一体!?」
突然の出来事にクロトもメイも驚いた顔となって閃光が通り過ぎた先を見ると、そこには金属製のボールのようなものが宙に浮かんでいて、中央にある赤いレンズの単眼がクロトの顔を凝視していた。
「お、お、お……!? こ、この脳波、この生命反応、まさに旧人類……! まさか、まさか本当に生き残りがいただなんて……!」
金属製のボールはクロトを凝視しながら合成音声を発していて、何故かクロトはあの金属製のボールが人間であれば今頃涙を流しているように感じられた。
「旧人類ですって……? ちょっと貴方! 一体何者なの? どうして旧人類のことを知っているの?」
先程の言葉に聞き捨てならない単語があった事に気づいたメイが金属製のボールに問いかける。彼女の言う通り、この世界の人間は旧人類の存在を知らない者がほとんどで、メイの指摘に気づいたクロトも目の前の金属製のボールに注目する。
「……これは失礼。お見苦しいところをお見せしました。私の名前はルクシオン。今から遥か昔、旧人類によって建造された宇宙移民船です」
「………ルクシオン?」
金属製のボール、ルクシオンの名前を聞いて眉をひそめるクロト。今聞いた名前が今よりずっと昔、ここではない何処かで聞いたような気がしたからだ。
「司令官? 一体どうしたの?」
怪訝な表情を浮かべるクロトにメイが話しかけ、彼が何かを言おうとした時、今度は部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。
『ルクシオンが入った部屋ってここか? すみませーん! この部屋に変な金属製のボールが飛び込んできませんでしたか? それ、俺が間違って投げてしまったボールなんですけどー』
「マスターですか……。こんな時にやって来るなんて本当に無粋な人ですね」
ドアの向こうから聞こえてくる男の声にルクシオンをそう呟く、クロトはもしルクシオンが人間であれば今頃舌打ちをしているような気がした。
「……司令官。外の男を部屋に入れて」
「いいのか?」
メイの言葉にクロトが聞くと、彼女はルクシオンから目を離すことなく頷いた。
「ええ、このルクシオンから詳しい話を聞きたいし、それなら外の男も参加させた方がいいわ。私はこのルクシオンを見張っているからお願い」
どうやらメイはいきなり現れたルクシオンを警戒しているようで、彼女の言うことも理解できたクロトは頷くと、緊張しながらドアを開けて外にいるルクシオンがマスターと呼んだ男を部屋に入れることにした。
「い、いやー、すみません。ちょっと手が滑ってしまって……って!? な、何でここに『滅亡のメイ』がいるんだ!?」
『『!?』』
ドアの向こうにいたのはクロトと同じ年頃の男子生徒だったのだが、その男子生徒は部屋にいるメイの姿を見て思わず大声で叫び、それを聞いたクロトとメイは目を限界まで見開いて驚くのであった。