それから数分後。クロトはルクシオンがマスターと呼んだ男子生徒を自分の部屋に入れたのだが、全員が突然色々なことが起こりすぎて何を言えばいいのか分からず、数分間無言で見つめ合うことになった。
「(な、なあルクシオン? これって一体どういう状況? 結局アイツって何者なの?)」
沈黙に耐え切れず男子生徒がルクシオンに小声で話しかけると、ルクシオンはその赤いレンズの単眼でクロトを見つめながら同じく小声で答える。
「(アイツ? 失礼な口は謹んでください。あの人は間違いなく旧人類。本来であれば私が使えるべき真のマスターなのです)」
「(真のマスターって、お前のマスターは俺だぞ? お前を発見したマスターは俺だからね!?)」
「……」
小声で何やら話している男子生徒とルクシオンを、メイは敵なのか味方なのか品定めをするような目で見ており、クロトもまた男子生徒とルクシオンを見ながら考えごとをしていた。
(……! そうだ、思い出した! ルクシオンって確か前世で遊んだ『乙女ゲー』に登場する『課金アイテム』の戦艦の名前だ。それに彼はメイの本来の名前を知っていた。もしかして……)
クロトは前世の記憶を思い出して一つの考えにたどり着くと、それを確認するために目の前の男子生徒にある言葉を投げかける。
「……『日本』」
「っ!? い、今、何て言った……!?」
クロトが呟いた言葉にルクシオンと小声で話していた男子生徒は驚いた顔となって彼の方を見る。それを見てクロトは自分の考えが正しいと確信すると、更に言葉を投げかける。
「『乙女ゲー』、『課金アイテム』、『異世界』……『転生』」
「……………!? お、おまっ!? お前も『転生者』だったのか!?」
男子生徒が反射的に上げた言葉に、ルクシオンもメイも驚いたように彼を見る。
「転生者? 確かにマスターは以前自分がそうだと言っていましたが本当だったのですか?」
「ウソ……!? 司令官の他にも転生者っていたの?」
ルクシオンとメイの言葉を横で聞きながらクロトは男子生徒の目を見ながら頷いてみせた。
「ああ、そうだ。俺は君と同じ転生者だ」
「……!?」
クロトの言葉に男子生徒は驚きのあまり言葉を失った。
それからクロトと、ルクシオンのマスターである男子生徒、リオンはお互い自己紹介をした後、今日までどのようにこの乙女ゲーの世界でどの様に生きてきたのかを話し合った。そして話を聞き終えたクロトとリオンは、お互い呆れたような感心したような微妙な表情となって見つめ合う。
「何というか……。五十過ぎの女性に結婚させられそうになって、自由を勝ち取るために命懸けでロストアイテムを探しに出ただなんて……。中々凄まじい人生を送っているな?」
クロトの言葉にリオンは大きなため息を一つ吐いて頷く。
「全くだよ。それに比べてクロトは凄いよな。父親が実は本当の親じゃなくて、自分の出生を知るために旅立つなんて。俺も空に旅立つならそんなカッコいい理由の方が良かったよ。それに手に入れたロストアイテムが滅亡のメイだけじゃなくてドゥームブリンガー全員だなんて羨ましすぎるぞ?」
リオンが半顔になってクロトを睨みながらそう言うと、クロトは苦笑を浮かべる。
「まあ、な……。これも前世で死ぬ前、乙女ゲーと一緒にラストオリジンをしていた影響なのかな?」
「……乙女ゲーと一緒にラストオリジンを?」
リオンが怪訝な表情となって聞くと、クロトは怪訝な表情となったリオンを不思議に思いながら頷く。
「ああ。前世の俺には幼馴染の男友達がいてな? その男友達と一緒にあの乙女ゲーをしていたんだけど、乙女ゲーが無茶苦茶難しかったのは覚えてるだろ? だから交代でプレイして、俺がプレイしている間は男友達は休憩して、男友達がプレイしている間は俺はラストオリジンで遊んでいたんだよ。それで課金までしてようやく乙女ゲーをクリアしたのはよかったんだけど、その後俺と男友達は階段を踏み外して転倒して今にいたるってわけなんだが……リオン?」
「……………!」
前世の話をしていたクロトだったが、途中でリオンが驚いた顔となって自分を見ていることに気づいて首を傾げる。
「リオン? 一体どうしたんだ?」
「……なあ? お前が前世で乙女ゲーをしたのって、その男友達に誘われたからじゃないか? それでその男友達が乙女ゲーを始めた理由って、妹に押し付けられたからじゃ……?」
「っ!? リオン、どうしてそれを!」
僅かに震える声で聞いてくるリオンの言葉にクロトは思わず声を上げ、それを聞いたリオンは自分の考えが正しかったと確信する。
「お、お前! ■■■かよ!?」
「何でその名前を!? リオン、まさかお前って……!」
リオンが口にしたのはクロトの前世の名前。それを聞いたクロトは再び驚き彼を見て、そんな二人の男子生徒をメイとルクシオンは興味深そうに見ていた。
「どうやら司令官とリオンは前世からの知り合いだったみたいね」
「ええ。マスターが転生について言った時は、疲労による妄想かと思いましたが、二人の会話を聞いて真実である可能性が高まりました」