異世界にタワマンを! 奴隷少年の下剋上な国づくり ~宇宙最強娘と純真少年の奇想天外な挑戦~   作:月城 友麻

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2-8. 電子決済

「あの人はどうなったの?」

「ちょっとお仕置きしただけ。しばらくしたら正気に戻ると思うよ。もう二度と声かけようと思わなくなってるだろうけど。きゃははは!」

 そう言ってうれしそうに笑った。

 オディーヌはすれ違う人のファッションを興味深そうに観察しながら、シアンの後をついて行く。太ももののぞく短いスカートに厚底の靴だったり、極彩色のパーカだったり、オディーヌの目はキョロキョロとせわしなく動く。一人一人素材も色も形もみんな違う服をまとっていて、綺麗だったり、カッコよかったり、難解だったり、服装を見ているだけでオディーヌは圧倒されていたのだ。

 

「これ食べよう!」

 シアンは立ち止まり、道端のイチゴのスイーツショップを指さした。大きなイチゴがいくつも串に刺さり、飴でコーティングされていてとても可愛い。

「あー、はい。お主らも食べるか?」

 レヴィアはレオとオディーヌに聞く。

 二人とも遠慮がちにうなずいた。

「じゃ、四本おくれ!」

 レヴィアはそう言ってイチゴ串を受け取った。そして、iPhoneを機械にかざしてピピっと鳴らす。

「まいどあり~」

 オディーヌはその様子を見て驚いて聞いた。

「えっ!? 今のでお金を払ったんですか?」

「そうじゃよ、電子決済」

 そう言ってレヴィアはイチゴにかじりつき、

「おぉ、これは美味いのう」

 と、パアッと明るい顔をした。

「もしかして、その道具の中にお金が入ってるんですか?」

「これはただの端末じゃ。お金のデータはサーバーと言って遠い所の機械の中で管理されておる」

「それはつまり……、価値の創造……ですか?」

「お、良く分かっとるのう。現金にしちゃったら持ち主だけの所有物じゃが、サーバーに置いておけば保管者もその価値を間接的に利用できる。実質的に金の量が増えるんじゃ」

「すごい……」

「金融工学の一つじゃな。この国は銀行や証券や金融商品で高度に金の価値を何重にもふくらまし、現金の五十倍もの量のお金が社会を駆け巡って高度に繁栄したんじゃ」

「うわぁ……。それ、国づくりには絶対必要ですね」

「ま、そうじゃろうな。後で教科書をあげよう」

「あ、ありがとうございます! やっぱり来てよかった!」

 オディーヌはうれしそうに笑った。

「よーし、展望台行くぞー!」

 あっという間に食べ終えたシアンはそう言って歩き出した。

「あー、ちょっと待って!」

 レオは急いでイチゴを頬張り、シアンを追いかける。

「あのお方はせっかちじゃのう……。でもまあ展望台はいい選択かも知れんな」

 そう言いながらレヴィアはオディーヌと一緒に追いかけた。

 

         ◇

 

 ポーン!

 

 高層ビルの四十五階にある展望台にエレベーターがついた。

 ドヤドヤと他の客と一緒に降り、エスカレーターを上る一行。すると、ガラス窓の向こうに煌びやかな東京の夜景が広がっていた。

「すっ、すごい……」

 レオもオディーヌも目を真ん丸くして見入った。

 六本木ヒルズにオレンジ色にライトアップされた東京タワー、あちら側には新宿の高層ビル群、見渡す限りびっしりとビルで埋め尽くされ、宝石箱をひっくり返したような煌びやかな夜景が続いている。

「これが東京じゃよ。一千万人が住む巨大な都市じゃ」

 レヴィアは二人の後ろから説明する。

「一千万人!?」

 レオは驚いて振り返る。

「そうじゃ、ニーザリの百倍じゃな。ちなみにこの国全体では一億人以上じゃ」

「一億人……。もう想像できない量だね……」

「そんなに多いのに、一人一人はかけがえのない存在として人権を保障されて暮らしとる。まぁ、よくできた国じゃよ」

「王様は何してるの?」

「王様は……、あっちのほうに皇居というお城があってな。そこに住んどるよ」

「やっぱり王様がこの国を治めているの?」

「それが違うんじゃ。王様はいるだけで実権はない」

「え!? じゃ、誰が治めているの?」

「国民が選んだ人たちが数年ごとに変わりながら治めているんじゃ」

「すごい! 理想だね!」

「じゃが……、それでも問題はまだまだ山積みみたいじゃよ」

「いや、でも、奴隷や貧困に悩まされない国……最高ですよ!」

「うん……まぁ、そう……かもな。とりあえず、このくらいの体制が整えば国づくりも完成と言っていいじゃろうな」

 オディーヌが横から聞く。

「実権のない王様なんて、上手くいくものですか?」

「この星ではそれがスタンダードじゃよ。多くの国で王様は君臨するけど統治はしないんじゃ。そして、どこでも国民は王様が大好きじゃ」

「そ、そうなんですね……」

 オディーヌは夜景を見つめながらつぶやくように言った。

 

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