ライスシャワーからの申し出もあり、追加のメニューを急遽組んで、トレーニングに当たっていたが、ライスシャワーは、指示したメニューを愚直に、丁寧にこなしてくれた。
そこに妥協は一切なく、一本一本に魂をこめるかのように走ってくれている。こうした姿勢が、彼女の高水準な能力を支えているのだろう。
「あ、もうお日さま沈んじゃいそう……。」
ライスシャワーは、意外そうにつぶやいたが、追加の練習を始めてから、既にずいぶん時間が経っている。日がくれてしまうのも仕方のないことだろう。
「全然気づかなかった……。ライス、ずっとワクワクしながら走ってたから……。」
「楽しくトレーニングできたなら良かったよ」
「う、うんっ! 楽しかったよ、すっごく……!」
彼女の言葉に連動するように、パタパタとしっぽが揺れている。
ここまで喜んでもらえると、こちらも嬉しくなってしまうな。
「トレーナーさんも優しいし……やっぱり、お兄さまみたいでーー」
と、そこまで言ったところで、それを遮るように、彼女のお腹が盛大になった。
「ひゃあ!? あっ、あっ、あわわわわ、ごめんなさいっ! お腹さん、しーっだよ、しーっ……!」
恥ずかしそうに、自分のお腹に語りかけるライスだが、お腹の方も負けじと空腹を訴えている。
初めてのトレーニングな上に、彼女のやる気もあって、少しオーバーワークだったのかもしれない。
……初トレーニングのご褒美に、美味しいものでも食べにいくことにした。
ライスシャワーに、汗を流して来てもらってから、僕たちは、商店街へと繰り出した。
「あのっ、トレーナーさん、なんでも好きなもの食べていいってほんとに……?」
「ご褒美と、景気づけにね! なんでも言って!」
不安げで、しかしやや期待を孕んだ目で聞いてくるライスシャワーに、胸を叩きながら答える。
ウマ娘の食費というのは、個人差はあるものの、バカにならないのだが、トレーナーは、こういう時のために少し多めのお給料をもらっているのだ。ここは、大人の威厳の見せ所、というやつだ。
「なんでも……! なんでも……なんでも、かぁ……。………………。」
こちらの言葉に目を輝かせると、真剣な様子で考え込むライスシャワー。ふと、見上げた視線の先で、彼女の視線は釘付けになった。
彼女の目線は、ラーメン屋前に掲げられている『爆盛りメガDX』の登りを完全にロックオンしている。
さっそく入店を進めようとした、その時ーー
「爆盛りメガ、本日分ラスト一杯終了でーす! また明日のお越しをお待ちしておりまーす!」
「あ……! はぅ……。」
店主の威勢のいい声を聞いた彼女は、目に見えて落ち込んでしまった。
「……トッピング全部頼んでいいよ!」
「……! い、いいの……!?」
せっかく、喜んでもらうために来たのだからと、そう声をかけると、嬉しかったのか、声のトーンが一つ上がった。
その後、ライスシャワーは、替え玉の二杯もしっかりと食べ切り、満足げに食事を終えた。小柄な様子に似合わず、意外なほど健啖家だったようだ。
こうして、初トレーニングの日を笑顔で終えることができたのだった。