少年兵、派遣します!   作:アカザタナ

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そんなわけで投稿です
シリアス的展開や葛藤も考えていますが、人が死ぬことはたぶんありません。
希望の花は咲くかもしれませんが


プロローグ
目覚め


鉄華団(てっかだん)

 

大人たちに利用され、使われてきた子供たちが作り出した、言うなれば彼らにとって最後の楽園

 

自分たちの居場所、たどり着くべき場所を求め、ただひたすらに進み続けた結果、世界の敵として潰され多くの団員の命が失われ、最後には世界秩序の番人『ギャラルホルン』によって消された

 

そんな鉄華団の団長オルガ=イツカが、暗く冷たい床の次に眼にしたのは、真っ白な照明と天井だった

 

ここはどこだ…

 

状況を確認しよう体を起こそうとするが、出来ない

手足と首がバンドのような物でベッドに拘束されているのだ

 

「遅い!」

「……?」

誰かいるが、顔が見れない

鉄華団の団員の声では無いことは分かるが

 

「脳波が安定してから1か月だぞ!何をやっても起きなかったし、どれだけ寝るのが好きなんだ君は!」

 

首を曲げてようやく声の主が見れた

おそらく少女であろう姿が

科学者のような白衣に身を包んではいるが、背が低くて髪を短く揃えた姿は子供にしか見えない

 

 

「…あんた誰だ?」

「し、知らない!?このボクを!?そ、そんなバカな…キサラギ最高幹部であるボクの顔を知らないなんて…記憶喪失か…?キサラギの医療技術をもってして…?いや、とぼけて無関係なふりをして解放させようって魂胆だろ!そうだよな!?」

 

その少女は捲し立てたかと思えば、急にマントを翻し、手をつき出して叫んだ

 

「そう!ボクこそが秘密結社キサラギの最高幹部が1人!黒のリリスなのだから!!」

 

…………

 

「いや、本当に知らない…」

「嘘だッ!?」

 

驚愕の表情のまま膝から崩れ落ちるリリス

自分が世間の常識に詳しいくない自覚はあるが、これでも鉄華団が拡大して事務仕事を覚えたころからはなるべく情報は収集していたつもりではあるが

 

「なぁ…とにかく教えてくれないか?ここは何処で、なんで俺はここにいる?それと……」

 

 

「なんで俺は仰向けで寝てるんだ?」

 

「…それは君の背中にある生体デバイスの心配をしてるのかい?」

 

床に手をつきうつ向いていたリリスだが、そう言って顔を上げたと思えば凄い速さで立ちあがり、腕を組んで自信ありげに話始めた

 

「なかなか興味深かったよ、あんな前時代的なシステムで人体を機械と接続させようなんてね、さしものボクも少し引いたよアレは」

「まさか、俺から阿頼耶識を除去したのか…?」

 

阿頼耶識システム

 

人と機械を繋ぎ、文字通り1つにすることで、機械の性能を100%以上にまで引き出すための装置

首から背中にかけての神経に埋め込まれ、突起状になるため、これがあると仰向けの姿勢をとることが出来ない

阿頼耶識は無理に切除しようとすると神経を破壊するはずだ…だが指は問題なく動くし、繋がれてはいるが手足も動かすことが出来る

 

「いや、まだ付いているよ。君がその姿勢で寝られてるのはベッドが君の形に合わせて変形させてあるからさ」

「そうか…」

 

そう聞いて少しホッとした

この阿頼耶識とももう長い付き合いになる

一生クズ同然の扱い受ける事を保証するモノだが、これがなきゃ俺も一介のガキ同然だ

愛着がある訳ではないが、無いなら無いで困るものだ

 

「まぁ君のはもう情報を吸い付くしたから取り出してもいいんだけどね、もう1人はまだ時間がかかりそうだけど」

「もう1人…?」

そう言ったリリスが指差す先には、同じようにベッドに寝かせられた鉄華団の団員、三日月・オーガスがいた

 

「ミカ…!?」

「やっぱり君の仲間なのかい?」

 

「そうだ…!おいミカ!返事をしろ!」

動かせない体をひねって、必死になって名前を呼ぶ

 

 

「……オルガ?」

 

ミカが俺を見た

芯のある目で、はっきりと俺を見た

もう見れないと思っていたその目を見ると、胸と目尻が熱くなる

 

何を話そう、何から話そう

 

どう謝ろう

 

そう考えていたからか、部屋に入ってきた別の女に気がついていなかったようだ

 

「お取り込み中良いかしら?初めまして、私は秘密結社キサラギ最高幹部の1人、氷結のアスタロトよ」

「…ねぇ、君も見覚え無い?これでもけっこう有名人なんだけど」

 

しつこく聞いてくるリリスを脇にして立っているのは、黒髪に整った顔立ちの女

最高幹部と言うからにはそれなりの立場の人間なんだろうが……

なんというか…いろいろと際どい

 

オルガ=イツカも、もうガキと呼ぶ年では無いがまだまだ多感な思春期

見せびらかすように開いた胸元、大事な所が見えるんじゃないか心配になるまで上げられたズボン…ズボンかあれ?

 

こんな女性と一対一で心を無にして話に集中できるほど大人でも無い

たまらず視線を反らすが、団長のプライドとして会話は忘れない

 

「…オルガ=イツカ、鉄華団の団長だ…あと、たぶんミカも知らないぞ」

 

またしてもリリスが視界の端で崩れ落ちているが、それよりも…

 

「テッカダン…?聞いたこと無いわね」

「こっちもキサラギなんて聞いたこと無いんだが……って、秘密結社なら当たり前か」

 

お互い自己紹介は完了したが、相手もどうにも腑に落ちない様子だ

 

「し、知らないの?自分たちで言うのもなんだけど、もうぜんぜん秘密でもなんでも無いのだけれど……リリスのことも知らないし、あなたどこの人なの?」

 

そこから話した事はお互い信じられないものだっただろう

 

彼らが言うには鉄華団という組織は存在すらしておらず、人類は火星に入植もしていない上コロニー社会も存在せず、ギャラルホルンも存在しない事

 

この地球も俺の知っている地球ではなかった

 

人口増加による食料不足、貧困、土地不足

一方で進む都市の廃墟化、老朽化

資源の枯渇、環境問題

そしてテロと戦争

 

経済圏同士の軋轢とか、そんな生易しい代物ではなく、まさに存亡の危機に瀕している事

 

 

「いろいろと考察した結果、君たちはボクたちの知らない宇宙の人間だと思う」

「……あんた正気か?」

「ボクとしては君の方が正気じゃないと思うよ…しかし、もしそうなら何とも凄い話じゃないか!まさかこんな形で異世界人に、しかも火星出身者に会えるなんてね!」

 

何故かリリスは興奮した顔で言う

俺としては気味が悪いんだが……

 

「しかも、君たち2人は1度死んだんだろう?よくある王道展開じゃないか!で、チート能力を使ってキサラギの世界征服実現のためヒーローどもをバッタバッタとなぎ倒し……」

「落ち着きなさいリリス…私もにわかには信じがたいけど、見たこと無いそのデバイスといい、この噛み合わなさといい、嘘だとは思えないわね」

「俺だって信じられねぇよ……」

 

死んだかどうかはわからない

あの傷ならすぐに治療すれば助かるかもしれない

 

だが目が覚めたらまったく知らない世界、まったく知らない人間、鉄華団も存在しない

 

そんなことがあり得るのか

昭弘もよく言っていた生まれ変わりってやつか?

いや、俺たちの体は確かにあのときのままだ

傷も記憶も…阿頼耶識も

ならこれは……

 

 

「本当に俺たちは死んで、別世界に来たってことかよ」

 

 

 

まだ本調子じゃないから休むべきだろうと、俺たちの処遇は明日決める事になった

枷も外されたが、部屋は鍵がかけられ、何処にも行けない事に変わりはない

何処か行くあてがあるわけではないが…

 

「体の調子はどうだ、ミカ」

「普通に動くよ、バルバトスと繋がってる時みたいに」

「そうか…そいつは良いことじゃねぇか」

 

あのリリスたちが治してくれたのか、それともこの世界に来るときに治ったのかわからないが、どちらにせよあんなミカを見ずにすむのならそれで良い

 

「なぁミカ…お前はさっきの話、どう思う?」

 

「わからない」

「だよなぁ」

 

「でも、俺はまたオルガに会えて嬉しいよ」

「…俺もだよミカ」

 

「お前らに謝んなきゃな…俺は……とんでもねぇヘマしちまって、その後始末をお前らに押し付けちまった……団長として最悪だ」

 

俺一人が先走って『火星の王』なんてのに食いついちまって

その結果がコレだ

 

 

「オレ、言ったんだ…みんなに」

「…?」

 

「オルガが死んでも、オルガの言葉はオレたちの心の中で生き続けるって」

 

 

「みんな、オルガが逃げ出したなんて思ってないよ」

「鉄華団団長オルガ=イツカは、最後までオレたちに進むべき道を示してくれたって…オレもそう思ったよ」

 

「…ありがとよ、ミカ」

 

もしあの二人の話したことが正しければ、俺だけでなくミカもむこうで死んだ事になる

だとしたらそれは間違いなく俺のせいだ

たどり着くべき場所だなんて言って、大事な家族を死地に飛び込ませちまった

 

団員の死に場所は俺がつくる…か

 

そう言って無理と無茶を重ねて、大勢の家族を失っちまった

 

「俺は…」

「…オルガ?」

 

『間違ってたのか』

 

そうミカに聞くことは出来なかった

 

聞けばそれこそ団長失格だと思ったからだ

 

だが、ずっと聞いてみたかった事でもあるのだ

ビスケットが死んで、ミカの体をぼろぼろにして、名瀬の兄貴も死なせて

 

俺たちは止まらない

そう言っていたが、止まれないの間違いだったんじゃないか

 

そう考え込んだせいで、せっかく仰向けで寝られるようになっても、一睡も出来なかった

 

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