少年兵、派遣します!   作:アカザタナ

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二つの外交

魔王軍との戦闘も減り、若干暇をもて余し始めた頃

 

俺は、先に来ていた6号と共に、城の謁見の間でティリスから話があると呼び出された

「オルガ様、そして改めて6号様。本日はご足労いただき、感謝します」

そう言って軽く会釈するティリス

 

俺がその上品な立ち振舞いに圧されていると、6号が耳打ちして言った

「オルガ、ティリスったら中庭でとんでもないことを叫んでたんだぜ、後で教えてやるよ」

「へぇ、まぁ姫様ってもはしゃぎたい年頃だしな」

「どうして二人とも妙な納得をするのですか!元はといえば6号様のせいなのに!」

 

6号のせい…もしかしてアレをさけんだのか

 

「…それで、話というのはそのアーティファクトの事なのですが……。オルガ様?」

顎に手を置いて考え込む俺にティリスが声をかける

 

さっきから気になっている事があるのだ

それはティリスの脇に控える一人の男

「なぁ、あんたどこかで………」

「ひ、人違いじゃないかな」

俺の言葉に、露骨に目を反らす男

 

どこか疲れたような肉の落ちた顔、分けた黒髪、ヨレが見えるもしっかりと堅めたスーツ

どこかで見たことあるような……

 

「あっ!あんたビスケットの兄貴だろ!ドルトコロニーの!!」

「そ、そんな人は知らないよ!私に構わないでくれ!!」

その男は顔を隠して言うが、その言い方では本人だと言っているようなものだ

俺が詰め寄るとティリスが顔をしかめて言う

「彼には失踪した参謀の代わりをやってもらっているのですが……。お知り合いなのですか?」

 

「い、いえ。何のことやら……」

「お前、うちの炊事係をギャラルホルンに売ろうとしたよな、あの事は忘れてねぇぞ」

「ああもう!放っといてくれ!今は君たちとは関わりたくない!!」

「放っとけって言われてもなぁ、こっちは……」

 

俺が今にも首元を掴もうかとしたとき、ティリスが声をかけた

「オルガ様、サヴァラン様と何があったのかは知りませんが、ここはわたくしに免じて許してはくれませんか?彼はこの国のために懸命に尽くしてくれているのです。すぐにとは言いませんが、どうかお願いします」

 

そう言って頭を下げるティリス

前から思っていたが、この年でいっぱしの統治者をこなしているのはさすがとしか言いようがない

 

「……分かったよ。あれも事故みたいなもんだしな……」

「僕はここで新しい人生を始めたんだ、積もる話はとりあえず後にしてくれよ………」

 

 

 

二人の意思を汲みひとまず退いた俺に、ティリスが話し始める

 

「お二方をお呼びした理由なのですが、実は護衛の任務を頼みたいのです」

 

深刻そうな顔のティリスが続ける

 

「アーティファクトが壊れてからは、資源大国である隣国のトリス王国から水精石という水を産み出す石を輸入して必要な時期を凌いでいたです。ですが一応アーティファクトが直ったとの事で、今年は輸入量を減らしてもらったのです。なのにお父様が……」

 

王様に何かあったのか

もう歳もそれなりにいっていたと思うが老衰だろうか

 

しかし、俺達にも公開されていないとなれば、もっと何か別の…

 

「逃げました」

「よし6号。その王様はキサラギで見つけてケジメをつけさせよう」

「お前無責任な上司嫌いすぎだろ…。というか王様が居なくても、ティリスが叫べばいいじゃん」

 

「叫べませんよあんな祝詞!」

 

顔を赤くして両手で押さえるティリスから、サヴァランが少し呆れながら話を引き継ぐ

「それで、トリスに輸入量を減らすのを止めてもらうよう外交官を派遣する事になったのですが……。こちらの一方的な事情で減らしたものをまた増やしてくれるかどうか……。そう悩んでいたのですが…その……」

サヴァランはそこまで言って口を籠らせてティリスの方を見る

 

「トリスの第一王子は大変な好色で知られているので、『性格はアレですが容姿だけは整っているスノウを外交官として派遣すればいい』と……」

 

「なぁティリス、あんたへの信頼が揺らいでるんだが」

「俺ももう話の続きを聞きたく無いんだけど」

 

俺達が引いているのもお構い無しに、ティリスが笑顔で言う

「私は護衛をお願いしているのですよ?あの子を売ろうという気はありません。ただ、美女好きで知られる王子の事、スノウを見ればきっと良からぬ事を考えるでしょう。その現場を押さえて糾弾してください」

 

サヴァランが目を反らしながら言う

「外交官に手を出せば国家間の大問題です。そうなれば交渉は有利に進められると……」

「それ、俺の国じゃ美人局って言うんだぜ」

 

俺はティリスの横で苦虫を磨り潰したような顔をしているサヴァランに対して言う

 

「あんたはもっとまっとうな人間だと思ってたよ」

「私だってこんな事好き好んでやりたくないさ……。でも肝心のティリス様が悪どいことばかり考えてるんだ……」

腹黒姫様の側近も、それはそれで大変そうだな

 

「詳しい交渉はこちらで行いますから、皆様には護衛だけしていただければ大丈夫です。それに、今回の報酬としてアリスさんから頼まれたものを用意してありますので」

 

 

 

ティリスから任務を受け取った俺達は、キサラギのアジトでアリス達に報告した

「この国の遺跡の調査、ね……」

「ああ、ロゼの事だけじゃなく、この星のオーパーツは可能な限り情報を集めときたいからな」

 

ティリスから提示された報酬は、この国とトリス王国に眠る古代の遺跡の位置だった

「しかし、外交官としてスノウを派遣するから護衛しろ、か。6号、今度はバカな事やらかすなよ?いくら自分が高性能だからって、何度もフォローしてられねぇからな」

そうアリスが言うと、6号は自信ありげに言った

 

「お前がリリス様に何を吹き込まれたか知らんが、まぁ見とけ。最古参の戦闘員は外交だってできるんだ」

「余計な事すんなって言われてんだぞ」

「お前の交渉はチンピラ相手の値引き程度だろ」

 

 

「まぁ、詳しい話は向こうでサヴァランとスノウがやるんだし、俺らはただ護衛すればいいんだからそうそう失敗はしねぇだろ」

俺がそう言うと、シノがうなずきながら言った

「しっかし、ビスケットより先にその兄貴に会うとはな~。交渉はオルガの分野だから任せるけどよ、何かあったら三日月を頼れよ?」

そう言うシノはトラ男達と一緒に防衛に残る事になっている

まぁシノは交渉の席には出席した事は無いし、自分の仕事をよく理解している

 

サヴァランの名を聞いてドルトコロニーでの出来事を思い出したのか、ミカが渋い顔をして言う

「あいつ、アトラにひどいことしたからな…」

「俺もそれについちゃ言ってやったが、反省もしてたし、今さら掘り返すのも気が進まねぇしな」

形はどうあれ、あいつもドルトコロニーの労働者のために働きかけた一人なのだ

もしあいつの考えた通りに進めば、ギャラルホルンも交渉の席について組合の奴らも死ななかったかもしれない

 

だが、あのギャラルホルンのやり方を見ていると、始めから労働者側の意見を聞き入れるつもりは無かったのだと思う

サヴァランもギャラルホルンによる被害者の一人と言えるかもしれない

 

 

 

 

翌日、俺達は悪行ポイントで呼んだ車に乗ってトリス王国へ向かっていた

さすがに八人で乗るようにはできていないので、俺はミカを、グリムはロゼを、6号は車を運転するアリスを膝に載せていた

 

道中、ロゼやグリムを見ながらサヴァランが言った

「なぁ、彼女達はどうして着いてきているんだ?」

「いや、俺の隊に任せられた任務なんだから、俺の隊の人間を連れてくのは当たり前だろ?」

そう自分で言いながらも、サヴァランの懸念も分かる

 

「それはそうなのだが……。本当は交渉に子供ばかり連れていくのはあまり……」

サヴァランの言葉に、アリスとロゼが子供らしからぬ反応を返す

「お?自分を人間の子供扱いとはいい度胸じゃねーか。後でキサラギ製高性能アンドロイドの力を見せてやるよ」

「あたしだってただの子供じゃありません!副隊長の知り合いだとしても齧りますよ!」

好戦的な二人の態度に頭を抱えるサヴァラン

 

「ほ、本当に大丈夫なのか…?交渉は舐められたら終いなのだが。その態度も貴族の気に触らないだろうか……。なぁオルガ=イツカ、私は以前の君たちの方が信用できるまであるんだが……」

「鉄華団を評価してくれてるようで何よりだよ……」

これが常識人の反応か……

俺ももうこれ状況に慣れてるのが怖いな……

 

と、そんな横で非常識人達が囃し立てる

「心配するな参謀代理殿。何せ交渉はお手の物のこの私が着いているのだ。今回も賄賂の準備は抜かりないぞ!」

「ねぇ、あなたは妻帯者?そこだけ教えてくれない?ちなみに私は独身よ」

「今度オレの仲間に手を出したら容赦しないから」

 

「ど、どうしてこんな事に………」

俺達の隊は国の中でも異質な役割だったから多少の迷惑は自己責任だったが、それに巻き込まれるのはたまったもんじゃないだろうな

 

なんだかかわいそうになってきた

 

 

 

 

 

スノウが賄賂を要求したり、6号に騙されたロゼが暴れだしたりしたが、トリス王国が城で歓待の宴を催してくれるとのことで俺達はそのための準備支度に取りかかっていた

「お、結構似合ってるじゃねーか」

「そうかぁ?俺は正直スーツってのはあんまり好きじゃねぇんだが……」

俺と6号は適当なスーツを見繕ってもらい、自前のスーツを着たサヴァランと、全員の集合を部屋の前で待っていた

スーツは仕事柄身につける事が多かったが、事務仕事があまり好きでは無かったし、昔から作業服ばかり着ていたから、そこまで気に入っているわけではない

だからといって袴やいつもの戦闘服を着るわけにはいかないが

 

やがて俺達の元にグリムがいろいろと見えすぎている際どいドレスを来てやって来た

そのまま、見せつけるようにポーズを取ってグリムが言う

「ねぇ二人とも、このドレスはどう?セクシー?ねぇセクシー?ムラムラして押し倒したくなるかしら?」

 

着る相手が、名前も知らない美女であれば美麗に映るかもしれない

いや、グリムも十分美女の部類だとは思うが……

 

なんと言うか……

「正直、あんまり似合って…」

「ババア無理すんなとしか言えねぇ」

と、そんな失礼極まりない事を言う6号に、グリムは今まで見たことがない恐ろしい表情で、声を張り上げて叫ぶ

 

「偉大なるゼナリス様ッ!この男に災いを!!不能の呪いに掛かるがいいッ!!!」

 

それを聞いた6号も、これまた見たことがない表情で横に跳ね翔んでそれをかわした

 

呪いが不発に終わったのを確認したグリムが一言

 

「外した……」

 

6号が半泣きの顔でグリムに詰め寄る

「恐ろしい女だなお前は!!俺は今どんな強敵より恐怖を覚えたぞ!!」

「6号、お前は少し口に布を着せることを覚えた方がいい。いや、本当に……」

そう言って騒ぎ会う俺達の元に、今度はスノウがやって来た

 

「どうだお前たち、このドレスは!セクシーか?ムラムラきて財産を貢ぎたくなるか?」

さっきのグリムのように変なポーズを取りながら見せつけてくるスノウ

それを見て、俺と6号は言葉を失い、グリムは頭を抱える

「私が悪かったわ、これからはもう少しだけ自重するわね……」

「ぜひそうしてくれ」

 

 

そんな俺達の元に、最後にロゼとアリスがやってくる

二人とも子供用のかわいらしい……いや、よく見たら結構際どいドレスを身に付けている

アリスはアンドロイドなのにどうやって身体測定を誤魔化したんだろうか

 

「隊長!早く行きましょう!きっと美味しい物食べれますよ!」

ちょっと野性味が強いだけで中身は普通の少女のロゼが、この部隊だと一番まともに見える

 

しかしドレスからキメラの特徴が隠すこともなくはみ出ているが大丈夫なのだろうか

まぁこの世界には魔族なんてのがいる訳だし、全部が全部忌み嫌われている訳でも無いだろう

 

それに、好色の王子というのがどういう女の好みをしているかはわからない

もし問題になったら、それこそ全力で引き留めるのが仕事だが、案外グリムやスノウのような半分ハズレみたいな女性や、子供のロゼやアリスの方がかえって気に入られるかもしれない

 

さっそく問題を起こしかけた俺達を見て、サヴァランが苦い顔で言う

「頼むから余計な事はしないでくれよ……?」

「保証はできない」

そう言うと、サヴァランは肩を落としてため息を吐いた

心配はもっともだが、なんだかんだと言っても俺たちだってそれなりの場数を踏んできた

今さらこれぐらいの任務、なんて事は無いだろう

 

 

 

 

そう思っていた時期が、俺にもあった

 

 

「人選ミスったとかいうレベルじゃねーぞ」

「ああぁぁぁぁ………」

アリスが唸り、サヴァランが膝をつく

 

俺達の目の前には見ることも躊躇われる惨状が生み出されていた

 

 

まずグリムはと言うと

「あら、そうなんですの?わたくし、そういった方が好みなんです~!」

「い、いえそんな……。ハハハ……」

早速、目をつけた男貴族にアタックを仕掛けていた

 

そしてスノウは……

「エンゲル王子はまだか!?好色で知られるエンゲル王子が歓待してくれるのだ!きっと私ならご満足いただける事だろう!」

「そ、その……今しばらくお待ちください……」

もう体を売って既成事実を作る気満々だった

 

その後ろでロゼは……

「おいしいです!おいしいです!」

「ロゼ様、豚の丸焼きは一人で食べる物では……。ロゼ様!骨は食べるところではございません!!」

テーブルにまたがり、料理にしがみついて食べ散らかし、召し使い達を困らせていた

 

そしてミカは……

「オレの仲間がどうかした?」

「……ひっ!い、いえ……!」

隊員に対して白い視線を向ける相手を、片っ端から黙らせていた

 

ミカ…これはちょっと怒らせた方がこいつらのためと思うぞ……

 

 

しばらくして、肥満体型の男が現れた

あれが噂の第一王子エンゲルらしいが、その見てくれはお世辞にも美麗とは言い難いものだ

しかしそんな事関係ないとばかりにスノウは第一王子にすり寄っていく

 

あいつ、もうこのままにした方が幸せなんじゃないだろうか

 

「……私はこの国の大臣と話してくる。ここは任せたぞ」

「おい、俺に押し付けるなよ」

駆け足で離れていくサヴァラン

あいつ、貧民街の生まれなだけあって結構たくましいな

 

「おい6号、お前もあいつらを………」

さすがに全員を静かにさせるには、俺一人では無理だ

そう思って6号とアリスに声を……

 

そこに二人の姿は無かった

 

あいつら、さては逃げやがったな

 

 

俺がどうしようかと悩んでいると、背後に立つ者が現れた

たまたまではなく、何か俺に用があるようだ

きっと俺の仲間を何とかしろという苦情だろうな

そう思って振り向くと

 

 

「相変わらず、愉快な仲間を連れているな。君は」

 

そこにいたのは、見たことのあるウィッグ付きの仮面を被った一人の男

その男は、まるで旧知の仲であるかのように話し掛けてきた

 

 

「………マクギリス……か?」

 

「久しぶりだな、オルガ団長」

 

俺の言葉に男は、仮面で隠れていない口元だけを笑わせて見せた

 

 

 

 

スノウが何やらエンゲルと揉め会い、グリムが頭から水を被っているのを無視し、目の前に立つ最大の問題に身構える

「すぐに分かってくれた様でなによりだ。まさかこんなところでまた会えるとはな。運命というのは、いささか悪戯が過ぎるようだ」

相も変わらず洒落た言い回しと口調で、マクギリスが言う

 

「何でここに居るんだ?」

「では、君は同じ質問に答えられるのかな?」

マクギリスは掴み所無く返してくる

 

「俺は、グレイス王国の使者としてこの国に……」

「私が聞きたいのはそういう話ではないよ」

まるですべて分かっていると言わんばかりに、マクギリスが話を制する

 

「………悪の組織、キサラギの戦闘員として、この星を侵略に来ている」

「そうか……まぁ、おおむね予想通りといったところか」

 

ありもしない前髪を掴む仕草を見せ、マクギリスが言う

 

「じゃあ教えてもらおうか……あんたはここで何をしてる?」

 

俺の質問に、マクギリスは隠す素振りもなく言う

「単刀直入に言えば、下見だよ」

「……下見?」

 

「そうだ、この国と世界が、我々の思惑通りに進んでいるのか……」

「我々……?いや、この世界ってなんだ」

いきなりの話にペースを持っていかれそうになる

 

ダメだ、こいつのペースに持ち込まれるのは……

 

 

「オルガ団長、いずれ君たちにも、また私のために協力してもらうかもしれないな」

 

焦る俺を他所に、マクギリスは声色一つ変えずに言った

 

「あんた……アグニカ=カイエルも、バエルも無い世界で、今度は何をするつもりなんだよ」

 

俺の言葉にマクギリスは、どこか残念そうな、遠い目をして言う

 

「偽善、欺瞞………どこの世界にも、正義に根付く腐敗の芽というものは存在するのだよ。オルガ団長」

 

 

 

「それに、アグニカは……バエルはすでに、私と渾然一体となっている。今の私に、以前のような過ちを期待されては困るな」

 

「また…革命か……?」

 

「それはご想像にお任せしよう。今は私を信じられなくとも結構だ。だが以前も、最終的に私を選んだのは君たち自身だ。

君たちを、甘言で私の都合良く利用した事は認めよう。だが君たちも、それを承知で私に協力してくれたのではないかな?」

 

 

 

「………何が言いたい」

「私は君たちを高く評価している。もし次があれば、またふさわしい席を用意するというだけの事さ」

 

「……あんたの話はよく分かった。けどな、俺も前までの俺じゃねぇ。だから、俺を団長と呼ぶのは、もうよしてくれ」

俺の言葉に、マクギリスはどこか楽しそうに口元を笑わせる

「ああ、わかったよオルガ=イツカ。ところで、お友達が大変なようだが?」

 

 

 

 

「おいおいおい!テメーキサラギ舐めてんのか!」

 

マクギリスの言葉で振り返ると、6号がテーブルの上に飛び乗って、目の前の男にガンを飛ばしていた

その男はさっきスノウが言い寄っていたこの国の第一王子だ

 

「おいオルガ!このおっさん、よりによって魔王軍と手を握ってやがった!」

「なんだって!?」

俺が驚いていると、6号の後ろから何故か手を後ろで拘束されたハイネが現れた

 

「そ、それは一体どういう事ですか!?その話が本当ならば、我が国としては黙っている事は出来ませんぞ!」

スノウの言葉に、第一王子は言う

「なに、無論貴国に敵対するつもりは無い。魔族が戦争を仕掛けたのは巨大魔獣【砂の王】と【蟻の王】に国土を侵食され、他に選ぶ道がなかったからだという」

 

そんな情に流されたような事を言うエンゲルに、俺は呆れながら言う

「あのなぁ第一王子さんよ。勇者がいたグレイス王国すら魔王軍に劣勢なんだぞ?しかも魔王軍は不毛の大地しか持っていないのに、だ。もしここでグレイス王国が敗れたりしたら、もうあんたらに勝ち目はねぇんだぞ」

 

「いいや。エンゲル様のお陰で、この国の古代遺跡から、砂の王に対抗できる兵器を入手できるかもしれないのさ。そうなれば、もう他所を侵略する必要は無くなるんだよ」

俺の言葉に異議を申し立てるように、ハイネが割り込んで言った

「あんたも久しぶりだねオルガ。てっきりガダルカンドの攻撃で死んだかと思ってたが、生きてたんだね。またアインがうるさくしそうだ」

「あいつに、次会う時はミカがぶっ倒すって伝えとけ」

 

単身拘束されて俺たちに囲まれているのにこの余裕…

この国と魔王軍が手を組んでいるというのは本当のようだ

 

「どうかねスノウ殿?我が国は裏切ったのではなく、むしろグレイス王国を助けようとしたのだよ。しかし、どうやら伝わなかったらしい……」

やれやれと首を振るエンゲル

こいつはそんな事が平気でまかり通ると思っているのか?

 

このままではまずいと思ったのか、スノウがエンゲルの腕に体を絡めつかせる

「………っ!エンゲル様はグレイス王国を選んでくださいますよね?ささ、友好の証に仲良く……」

「お、お前そこまで……!?くっ、エンゲル様、あたしだってその……仲良く……」

それに負けじとハイネも、顔を赤くしながらエンゲルに体をくっ付ける

 

それを見せつけられた6号は膝をついて地面に倒れた

エンゲルに男として負けたような気分になっているのだろうか

当のエンゲルが、見てくれは良い二人にあれだけ言い寄られてもそっけない態度を貫いているのが敗北感を煽っているのだろう

6号は思い詰めた顔で、アリスと俺を見て言った

 

「おいお前ら、俺は今から無茶をする」

 

「…耐えろっつっても無駄だろ?」

「自分は高性能なアンドロイドでお前の相棒だ。何をやらかしても、一緒に後始末してやるよ」

 

「なぁ、待ってくれ。君たちはグレイス王国の代表として来てるんだ、そこのところをよく理解して……」

 

 

サヴァランが訴えるように言うが、俺と6号はそれを無視してエンゲルの前に立つ

 

 

「なぁ王子さんよ。確かにあんたのやり方は賢い。どっちが勝っても問題無いように日和見決め込もうってんだからな。けど、こっちはそんなの認めらんねぇんだ」

 

 

 

「だから…俺らを敵に回したこと、後悔すんなよ」

 

 

俺がそう言うと、6号がエンゲルの背後に回る

 

 

 

やってやれ6号

 

 

 

「ちょんまげ!!!」

 

 

 

6号がエンゲルの頭に自分の性器を載せて叫んだ

 

 

 

そんな6号に俺は

 

 

 

 

「何やってんだ6号ぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

誰もが呆然と固まる中で魂の絶叫を放った

 

 

 

 

 

翌日

グレイス王国の謁見の間

 

俺達の前にいるのは、穏やかな笑みを浮かべながら微動だにしないティリスと呆れが怒りを通り越したのか面白い表情で固まるサヴァラン

 

「顔を上げなさいスノウ」

 

ティリスの言葉に、土下座しているスノウの体が小さく跳ねる

 

「まさか友好の使者を送ったら、宣戦布告状を叩き返されるとは思いませんでしたよ」

 

 

まったくその通りだよ

 

 




サヴァラン君はグレイス王国側に人間を増やしておきたかったので登場してもらいました
団員ほどではありませんが、これからもちょくちょく顔を出すと思われます
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