少年兵、派遣します!   作:アカザタナ

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少年兵、増員します

俺達が古代遺跡で巨大兵器同士の大バトルを繰り広げた翌日

 

 

「……とまあ、そんな感じだ」

 

俺は仮アジトの地下に備えられた地球のキサラギ本部と繋がるモニターから、事の顛末をリリスに報告した

 

『直に報告してくれて助かるよ、なんせ6号の報告書は解読に苦労させられるからね。しかし、過去に存在したであろう超古代文明と、キサラギに似た技術形態の怪人か……』

「もう一度聞くが、アイツの事は何も知らないんだな?」

『知らないねぇ。しかし、君たちがこの世界に来た経路が謎な以上、何が起きてもおかしくは無いだろうさ』

 

無責任にそう返すリリス

 

色々と分からない事がある以上しょうがない事ではあるのだが、もうちょっと危機感を持ってほしい

 

「本当に勘弁してくれよ?6号だって打ち所が悪けりゃ死んでたんだからな」

 

『あの6号がそこまでやられるとは僕も思ってなかったよ。送られてきたロボットのデータを見るとスペック上はデストロイヤーを上回ってるし、思ってたより簡単にはいかなそうかな』

 

マジか……

 

動きは遅いし武器も無いし、性能はそこまで高くないものと踏んでたが、操縦士の問題か

勝てたのはアリスの腕のおかげだろうな

 

「こっちはアレを送ってもらったせいでポイントがすっからかんになっちまったんだ。修理パーツくらいは手配してくれねぇか?」

 

『そうは言ってもねぇ……。本来なら、決戦兵器であるデストロイヤーをほいほい呼び出す事自体が問題なんだよね。こっちでの戦いも激化してるし、戦力は温存しとかないと』

 

「先勝パーティーとかしてるからそんな事になってんだろ」

 

俺達が遺跡の調査に繰り出す前日

キサラギは地球で先勝パーティーなんか開いてやがった

 

それをリリスが世界中に放送したりして、ヒーローの襲撃にあったりしていたが、悪の組織が聞いてあきれるもんだ

 

『まあ、君たちは大事なモルモ………部下だからね。僕も一肌脱ぐとしよう』

「お前ミカに勝手に改造を施した事といい、いつか覚えてろよ」

 

幸いな事に、巨大化をしてもミカの体に異常は見られなかった

そうだとしても、軽々と乱用はできないが

 

『………侵略地は確保できたみたいだし、次はアジトの建設に勤めたまえ。そのための資材のみ、ポイントの前借りを許そう』

「そこはタダで寄越せっての………」

 

相変わらずキサラギはみみっちいと言うかケチと言うか……

こっちは命懸けで地球のために働いてるってのにこの扱い

せめて正規社員である6号とアリスにはマシな待遇で接してほしいもんだ

 

「それと、鹵攪した例のモビルスーツの事なんだが……」

『それについては僕としても調べたい事だらけなんだが、あいにく暇が無くてね。悪いがそっちで面倒見てくれ』

 

あの戦いの後、機能停止したかに見えたグレイズアインだが、やはり中に生体デバイスが埋め込まれているようで、しっかりと生きていた

今は目立った抵抗はしていないが、目下一番の不安要素なのでキサラギ本社に送って調査してもらうつもりだったのだが……

 

「分かったよ……。じゃあ、団員探しの方はどうなってる?」

 

『新しく一人見つかったよ。世界中の戦闘員に探させてるから、もうちょっと簡単に行くと思ってたんだが、なかなか時間が掛かってしまったね』

 

リリスの返答に、体が熱くなる

 

「そうか!誰なんだ!?名前は……!」

 

誰でもいい

 

昭弘、ビスケット、アストン、ハッシュ……

 

名瀬の兄貴、アミダさん、ラフタさん、フミタンでもいい

 

もう一度会えるなら俺は………

 

『昭弘・アルトランド君だね。彼も阿頼耶識にデータが残留してたから、現在チューン作業中さ』

 

「昭弘……!そうかあいつ……!」

 

昭弘にまた会える

 

それは何よりも嬉しい

 

けど……

 

 

本当なら会えない方が良かったよな……

 

 

俺のそんな気持ちが顔に現れていたのか、リリスがモニター越しに覗き込みながら言う

 

『ちょっと悲しそうだけど、どうしたの?』

「いや、こっちの世界で会えるってことはあいつも死んだって事で……。それは俺の責任で……」

 

『あー……。まぁ良いじゃないか、せっかくまた会えるんだから』

 

気遣いなれていないのか、照れ臭そうにしながらそんな事を言うリリス

 

「ありがとよ。それで、こっちに来るのはいつぐらいになりそうだ?」

『本当は彼にも地球で戦ってほしいくらいなんだけどね……。チューン作業にはあと二日はかかると思うよ』

 

チューン作業というのは、おそらくガンダムグシオンの事だ

ミカのバルバトス、シノのフラウロスと並ぶ鉄華団の大戦力だ、きっと活躍してくれるだろう

 

「そうか。じゃあ頼むぞ」

『任せといてよ。そっちも、6号とアリスによろしくね』

 

 

 

 

リリスとの通信を終えた俺は、6号の代わりに王城へ呼び出されていた

 

「オルガ様。先日の任務達成ご苦労でした」

「おう」

 

ティリスが深々と会釈して迎える

俺がそれに軽く返すと、いつもならスノウが突っ掛かって来るのだが、今日はもじもじとしながら俺に話しかけてきた

 

「オ、オルガ。6号は本当に大丈夫なのか?皆で見舞いにと思ったのだが、アリスには絶対安静だと断られてしまったのだ……」

「平気だよ。あいつはあれぐらいでくたばるタマじゃねぇし、アリスに任せとけ」

 

俺の言葉を聞いたスノウは、ほっと胸を撫で下ろす

 

なんだかんだ言って、6号が心配なんだな

あの王都での戦いじゃ、6号にパンツ降ろされたのにキスまでしたらしいし、本当にツンデレってヤツなのかもしれねぇな

 

 

「それで、トリスとの和平交渉は進んでるのか?」

 

俺の質問に、すっかりティリスの側近が板についたサヴァランが答える

 

「それが、思うようには進んでいなくてね。向こうは水精石という外交カードを持っているから依然として強気な姿勢を貫いているんだ」

 

「こっちにゃアーティファクトがあるんだし、他国の水精石の需要を無くしてやると脅しを掛けてみるのはどうだ?」

 

アリスの話では例のアーティファクトはトリスを始めとする周辺の国々にまで影響を及ぼす強力な物だそうだ

それを盾に、向こうの主要産業に脅しを掛ければ………

 

そう考えたが、サヴァランは首を横に振る

 

「アーティファクトの事は我々も提示したんだが、直ったと言っておきながらまだ一度も作動させていないのがバレてね……。どうやらこちらのハッタリだと思い込んでいるようだ」

「なぁ姫さん。ここはやっぱり腹くくって……」

 

俺がそう言うと、ティリスはにっこりと笑い

 

「皆様は砂の王に対抗出来るという兵器を破壊なされたのですよね?ならば砂の王から水の実を採取する事も、もはや難しく無いのでは?報酬として、この国で調べていた遺跡の調査結果を提示しますので………」

 

早口で捲し立てるティリス

 

どんだけ嫌なんだ

公衆の面前でなくては効果が無いので、恥ずかしいのはわかるが………

 

「いや、ラッセルを捕まえたからそれはもういいよ。アイツは記憶も残ってるみたいだからな」

 

水のラッセルは現在この城の地下牢に入れてもらっている

身体能力も高いロゼと違い、ラッセルは魔法が使えなければただの非力な子供だった

見張りも立ててあるし、脱走の心配は無いだろう

アイツが素直に情報を渡すとは思えないが、そこは最悪アリスに任せよう

 

「………そうです。水の四天王なら、搾れば水が大量に染み出てくるのでは………?」

「お前、そろそろ自重した方が良いぞ……」

 

とうとう人道から外れ始めたティリスに釘を差し、俺は地下牢へと向かった

 

 

 

牢の中で鎖に繋がれたラッセルが、階段を降りてきた俺を見て鼻で笑った

 

「……なんだお前か。アイツはどうしたんだよ。もしかして死んじゃった?」

「お前ごときに殺せるほど、6号はヤワじゃねぇよ。分かったら知ってる事全部話せ」

 

俺の言葉を聞いて、ラッセルはそっぽを向いた

 

「嫌だね。拷問でも何でも好きにすれば良いさ!戦闘キメラに何をやったって無駄だけどね!」

 

こんな状況でも、相変わらず生意気な事を言うラッセルに内心呆れながら言う

 

「……まぁ好きにしろ。こっちはお前のためを思って言ってやってるんだ。それに、今日の目的はお前じゃねぇからな」

 

そう言って、ラッセルの隣の牢の前へ移る

 

「よう。調子はどうだ?」

 

『………黙れ』

 

そこには、金属製の槍で手足を封じられた黒いモビルスーツ

 

アインの姿があった

 

「お前メシは良いのか?人の姿になってるところを見たことねぇが、ずっとそのままなのか?」

『……私の役目に、そんなもの必要ない』

 

何とか話を進ませようとするが、相変わらずこちらを拒絶するアイン

 

「………俺達が殺したギャラルホルンのパイロットが、お前の恩人だったんだってな」

『………クランク二尉だ』

 

俺達が鉄華団を立ち上げるその時

 

俺達が倒したパイロット

 

名前はクランク=ゼント

 

「…そのクランク二尉の仇討ちで、俺達を殺そうとしたんだろ?」

『………………』

 

「……もういいじゃねぇか。お前が居るって事は、きっとこの世界のどこかにクランク二尉も……」

『私に残された使命は、貴様らを殺す事だ…!もうそれしか無い……!』

 

そう言って目を光らせてこちらを睨むアイン

 

「………分かった。何かあったら呼べよ。お前の面倒を見るのは俺達の仕事だからな」

 

俺は背後に憎しみの視線を感じながら、地下牢を後にした

 

 

 

 

俺は城を出て、街中にある広場に向かう

 

 

「おうオルガ。悪いな色々と任せちまって」

「構わねぇよ。6号はまだ目を覚まさねぇのか?」

 

そこに建てられたキサラギの仮アジトの一室

 

アリスが6号を看病している部屋に入った

 

「ああ。まあどこかの誰かさんの時は一ヶ月待たされたんだ。気長に待つさ」

「……あの時はありがとよ。でも6号の悪戯を止めなかったのは同罪だからな」

 

6号が運ばれてから、アリスは付きっきりで6号の面倒を見ている

俺の時も同じような事をさせていたと思うと、頭が上がらない

 

「お前は平気なのか?アインに派手にやられてたが」

「高性能な自分は、あれぐらい何て事ないさ。デストロイヤーさんはかなり損傷しちまったがな」

 

そう言って、少し悔しそうにするアリス

俺達がポイントを全て使ってまで呼んだ兵器に傷を付けられたからだろうか

 

いずれにせよ、今回は誰も何も失わずに済んだ

……一人を除いてだが

 

「リリスが修理パーツは送ってくれるってよ。あとは、また俺の元仲間が一人増えるな」

「そうか。アジト建設には一人でも多く人員が欲しいから、増員は大歓迎だ」

 

「トリスと魔王軍から奪った土地って、魔の大森林のすぐ側なんだろ?そんなとこにアジトなんか建てて大丈夫なのか?」

「もし抵抗が激しければ、森ごと焼けばいいさ。最悪、禁止兵器や枯れ葉剤で森そのものを吹き飛ばす」

 

そんなことしたらこの星が第二の地球になりそうなんだが、そうなったら本末転倒じゃねぇか

 

「これから忙しくなるぞ。グリムが祭りだなんだと騒いでたが、お前は関わるなよ」

「あいつ結局このあいだも死んでたし、できるだけ目は離したく無いんだがなぁ……」

 

耳を澄ますと、外からグリムがロゼに泣き付く声が聞こえてきた

この短期間で二回も干物になったのに、元気な奴だ

 

 

 

 

それから二日後

 

6号が目を覚ましたと聞き、俺は新しく加わった昭弘を含めた四人で病室へ押し掛けた

 

アリスに下の世話をさせていたのが相当ショックだったのか、股間を押さえながらシクシクと泣く6号

その女々しい動作はなんなんだ

 

「……で、あんた誰?」

 

ベッドで布団をかけ直しながらこちらを見た6号が、見慣れない顔を見つけて言った

 

「昭弘・アルトランドだ。オルガの仲間って言えば、信用してくれるか?」

「……本当にただの人間?素でトラ男さんくらいあるんだけど」

 

昭弘のガチムチで長身な体を見て驚く6号

確かに俺も昭弘よりデカイ人間は見たこと無い気がするな

 

「昭弘は良い奴だから心配すんなって!ちょっと真面目すぎるけど、彼女だっていたんだからよ!」

 

警戒する6号を和ませるようにシノが言うが、6号はさらに目を丸くして言う

 

「……お前らって結構モテるんだな」

「………彼女?何の事だシノ」

「お、お前まだそんな事言ってんのか……」

 

呆れて頭を押さえるシノの脇から、ミカが出てきて昭弘に言う

「ラフタにも、また会えると良いね」

「…ああ、そうだな」

 

 

 

 

 

 

まだ足元がおぼつかない6号と共に、俺達は城の地下牢へと足を踏み入れた

 

「よう、元気そうだな」

 

6号が、そこにいるラッセルに声をかける

 

「……しぶとい奴だな、あれだけボロボロにしてやったのに。大挙してどうしたんだ?」

「最近皆にしぶといだけだって思われてるから止めてくれよ。ここに来たのはお前に用があるからだよ」

 

6号に続いて、俺が言う

 

「おいラッセル。最後にもう一度だけ聞いてやる。俺達に協力しろ」

 

これが本当に最後の機会だ

 

これがダメなら、6号に任せる事になっている

ヘタレなコイツの事だから、そこまで非道な事はしないだろうと踏んではいるが、建前があると調子に乗るのもコイツなのだ

 

「嫌だね。どうせこの国のために水を出せとか言うんだろ?お前らの頼みなんか聞くつもりは無いよ!」

 

そんな事を言いながら口元を歪ませるラッセルに、俺はため息を吐く

ここまで強情に抵抗するなら仕方ない

 

「……んじゃ、あとは任せて良いんだな?」

 

俺は、秘策があると言う6号に向かって聞く

 

「おう。つーわけで、トラ男さん。頼みます」

 

そう言って6号がトラ男に深々と頭を下げる

 

………トラ男?

 

「よし、あとは俺に任せとくにゃん。むしろ、こっからは俺のお楽しみタイムってやつだにゃん」

そう言って舌舐めずりしながら牢の前に出るトラ男

 

………これってヤバい奴じゃねぇか?

 

俺が危機感を募らせている間に、トラ男は顔を牢の檻に当ててラッセルを凝視する

 

「……なんだコイツ?おい獣人、ボクの言葉が分かるか?何とか言ってみろよ!」

 

ラッセルが虚勢を張るが、トラ男は黙ってラッセルの体を見続けると

 

「よくやったお前ら、今度美味い酒でも奢ってやるにゃん」

 

「さすがトラ男さん、キモいだけじゃなく太っ腹でカッケーっス」

「お、おいおいトラ男よぉ……。いや、俺が言える事じゃねぇけどよ……」

「シノはヤマギの事があるしね。で、オルガ。このまま任せて良いの?」

「そうだなぁ………」

 

俺達が困惑しているのを見て、それまでラッセルをじっと見ていた昭弘が口を開いた

 

「俺が見張ってる」

 

と、昭弘が言った

 

「敵だったとは言え、子供に変な事はさせねぇよ」

「……そうか。んじゃ、任せるぞ」

「昭弘にゃんは子供に優しい良い奴の匂いがするにゃん。でも、俺は嫌がる子供に酷い事はしないから安心するにゃん」

 

トラ男が昭弘にニカッと笑って見せるが、昭弘はピクリとも動かずに事の成り行きを見守っていた

 

「お、おいお前らは何を言ってるんだ?」

 

自分が置かれている状況を理解できていないラッセルが、一人困惑する

 

「お前もバカだな。俺達の話に乗っておけば、ただ水を生成するだけで済んだのに」

「………は?」

 

俺が檻から離れながらそう言うと同時に、トラ男が立ち上がって言った

 

「俺の名前はトラ男。ちいちゃい子が大好きな、引退した暁には改造手術で美少女にしてもらう予定の怪人にゃん」

 

「………………は!?」

 

 

その後、トラ男の脅迫とも呼べる愛情の押し付けによって、ラッセルは涙目で要求を受け入れた

 

グレイス王国のために、毎日水を生成すること

 

女装して、だが

 

 

俺は早速ラッセルを連れ出しすトラ男と、その見張りに付いていった昭弘を見送りながら考える

 

 

[反抗するなら最後まで、裏切るのなら真っ先に]

 

そんなキサラギの社訓の意味が分かった気がした

 

 




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