少年兵、派遣します!   作:アカザタナ

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遅くなりましたぁぁぁぁ!!
私生活が立て込んでましたが、これからはマシになるかと思われます。
それでは


少年兵は祭り囃子
死体は浄化


「おい6号。グリムが呼んで……」

 

グリムに頼まれて6号を探しに来た俺が、アジトの一室に足を踏み入れる

 

「………何やってんだ?」

 

愕然となった俺の目の前に居たのは、女装して窓を拭くラッセルと、その脇で雑巾を絞る昭弘

そしてラッセルのスカートを捲ってまじまじと見ている6号とトラ男

 

何とも頭の痛くなる光景に、俺は思わず尋ねた

 

「オルガ、お前もこっちに来て、世界の真理に触れてみろ」

「……いや、遠慮しとく」

 

どこか達観した目で誘ってくる6号を断り、俺はバケツの前に屈んでいる昭弘に目を向ける

 

「昭弘、お前は何やってんだ」

「見りゃわかるだろ。雑巾絞ってる」

 

それは分かる

分かるんだが………

 

「これは、その……どうなんだ?」

「…その格好で働けば刑期を短くしてやるんだとさ。本人も慣れてきてるしな」

 

昭弘は小さくため息を吐いてから言った

まぁ、ラッセルはあくまでも捕虜なんだし決定権は俺たちにあるから普通の事か?

いや、男子にこんな格好させてこき使うのは普通ではねぇが……

 

「……そうか。うん……まぁラッセルの好きにしたら良いと思うが……」

「ボクだって好きでこんな格好してるわけじゃないよ………」

 

俺が精一杯気を使って言うと、それまで遠い目で窓拭きに勤しんでいたラッセルが言う

その目に見えるのは怒りではなく困惑と呆れ

 

トラ男いわく、格好はメイド服の類いらしいが、俺が知ってるメイドの着ていた服と違い、ヒラヒラフリフリとしたデザインといろいろと見えそうなスカートのせいで、あまり正装という感じはしない

セブンスターズの使用人はあんな格好はしてなかったが……

正直男の身でいるうちは一生着たくない

 

「そうは言ってもラッセルにゃん、毎晩俺の抱き枕になってる時だって満更でもなさそうだったにゃー」

「……勝手に言ってろ。お、おいお前、その目はやめろよ!別に変な関係にはなってないからな!」

 

トラ男の言葉を否定しながらも、恥ずかしいのか少し顔を赤くするラッセル

たぶん本当に何もしていないんだろうが、聞くだけだと犯罪臭がすごい

俺も今ではトラ男を信頼してはいるが、何か間違いが起こらないか心配になる

 

「昭弘、これで良いのか?」

「別に構やしねぇさ。少なくともトラ男は、デブリの飼い主とは違げぇよ」

「俺はちいちゃい子を泣かせるのは好きじゃねぇから安心するにゃん。ラッセルにゃんの方からデレる日を待つにゃん」

「そんな日は絶対に来ないからね……」

 

俺たちがそんな話をしていると、俺に続いてロゼが扉を開けて入ってきた

 

「副隊長!いつまでかかってるんですか!早くしないとグリムが………」

 

そこまで言ったロゼは、6号にスカートを捲られているラッセルを見て固まった

 

「………おい同族?ボクだって好きでこの格好をしてるわけじゃないんだ。その反応は傷つくんだけど」

「あ、え……??えっと、隊長は何でラッセルさんのスカートを……??」

 

ロゼが何とか平静を取り戻して6号に問いかけるが、当の6号はスカートから手を離さないまま、俺に言った

 

「おいオルガ、さっきもグリムがどうのとか言ってたけど、何かあったのか?」

「ああ、グリムが俺達に城へ来いってさ。緊急とか言ってたから内容は聞かないで急いで呼びに来たんだが……」

 

「グリムがぬいぐるみを買ってきて欲しいそうです」

 

ロゼの言葉を聞いた6号は、自然な動作でラッセルのパンツを………

 

「スルーして続行すんな!お前が来ないと代わりに俺が呪われるだろ!!」

「邪魔にしかなってないからさっさとどっか行け!あと昭弘は絞りすぎだ!もうほとんど水分が残ってないじゃないか!!」

「ん…すまん」

「6号、お前はオルガにおとなしく付いていくにゃん。こんどラッセルにゃんの服のチョイスをお前にもやらせてやるからにゃあー」

 

 

 

 

 

名残惜しそうにする6号を引っ張ってたどり着いたのは、町外れにある空き地

そこでグリムが何やら魔方陣の側でわたわたしている

 

「遅ーい!急いでって言ったでしょ!!ねぇ、口元のタレは何!?あなた達食べ歩きしながら来たでしょう!!」

「何それ。ウネウネしてて気持ち悪りぃ……」

 

グリムの前にいるのは、泥で造られた触手のような何か

 

「悪霊よ!野放しにしておけないから、こうして土くれで作った依り代に閉じ込めてるのよ!それよりぬいぐるみよぬいぐるみ!買ってきてくれた!?」

 

グリムがそう言うと、しょうがねぇなと言わんばかりに6号が懐を漁る

 

「キサラギのマスコット、八つ裂きミート君だ。背中のボタンを押すと喋るんだぞ」

『コンニチハ、ボクミート!ヒーローハヤツザキダ!』

 

そう言って6号が取り出したのは、モヒカン頭に戦闘服を着た小さな人形

いつだったか見せてもらったキサラギのマスコット人形だ

なぜ悪の組織にマスコットが必要なのかアスタロトに聞いた事があるが、社のイメージアップらしい

悪の秘密結社がイメージアップとかもはや意味不明だが

 

「気持ち悪っ!なに、この愛らしさの欠片も無い人形は!」

「そうかなぁ、よく見ると結構可愛いような……」

「たしかに可愛げは無いが、案外愛嬌のある顔してるぞ」

 

グリムが嫌悪の表情を露にするが、ロゼと俺は八つ裂きミート君をつついて言う

こういうのをキモカワとか言うのだろうか

愛でたいとは思わないが、どこか味のある風貌は何か魅力があるような……

 

「あなた達一体どういう感性してるの!?こんなのに悪霊を詰め込んだらホラーそのものじゃない!!」

 

引いているグリムの前に、6号がミート君を突きだして背中のボタンを押す

 

『コンニチハ、ボクミート!イキオクレハヤツザキダ!』

「どんなレパートリーしてるんだよ……」

「その人形寄越しなさい!セリフに悪意があり過ぎるでしょう!!」

 

とてもデフォルトで入っている音声とは思えないが、心を代弁してくれたりするのだろうか

 

俺がそう思ってミート君を持ち上げると、裏で動き続けていた悪霊が膨張し始め……

 

「なあ、なんだか様子がおかしくねぇ?」

「えっ?……ああっ!?マズい!」

 

グリムが慌てて手をかざすが、悪霊はそのまま破裂して辺りに泥を撒き散らした

 

「…………お前ら覚えてろよ」

 

ロゼと6号に盾にされた俺は顔にかかった泥を落としながら言う

たしかに俺は死んでもいいわけだから正しいよ

でもそれとこれとはまた話が違ってくるだろ

 

「いいかオルガ、全責任はグリムにある。ロゼ、グリムを取り押さえろ」

『ムノウナブカハヤツザキダ!』

 

両手を広げてワキワキさせながら近づく6号と、ミート君を口元にジリジリとグリムににじりよるロゼ

俺も服の汚れを落としながら後に続く

 

「ちょ、ちょっと三人とも?もうすぐアンデッド祭りが始まるんだから、私に何かあったら大変な事に……待ってごめんなさい!お願い許して!!」

 

 

 

 

 

「で、結局アンデッド祭りって何をする祭りなんだ?」

 

ひとしきりセクハラして満足した6号が、いまだ泣き声を上げるグリムに尋ねる

 

「毎年この時期になると行われる、ご先祖様をお迎えする儀式ですよ。お祭りになると美味しいものがタダでたくさん食べられるので、あたしは好きです」

「グスッ……。だからちゃんとした依り代を用意しないとそこらの死体に取り付いちゃうのよ。さっきのも、仮の依り代だったから耐えられなかったの」

 

二人の説明に、だいたいの概要は理解出来た

グリムが以前やっていたように死者の霊を呼び出し、それをぬいぐるみや人形に入れて現世に招き、それを祝ってお祭りしようというわけだ

 

「で、ゼナリス教の教祖であるお前がその祭りを取り仕切ってると……」

「まあ何となく事情は分かったよ。じゃ、俺らはもう帰っていいか?」

 

面倒事の予感をキャッチしたのか、6号が踵を返して言う

 

「待って!アンデッド祭りまでもう一週間しか無いの!それまでに依り代を揃えなきゃいけないから、それを手伝ってほしいのよ!」

 

グリムが仕事をこなせなければ、この国の人間がご先祖様や喪人に会えなくなるんだよな

そう思うと、俺も何とか手伝いたくなるが…

 

「面倒くさそうだから遠慮しとく」

「悪いが、アリスにその祭りには関わるなって言われてるんでな」

『チカラガホシケリャ、タイカヲヨコセ!』

 

俺と6号だけでなく、ロゼにまで逃げられそうになったグリムはたまらず泣きついてきた

 

「お願いよぉぉぉぉぉ!!手伝ってくれるならサービスしてあげるから!あとロゼはいい加減自分の口で話しなさい!」

 

グリムの抗議に、6号と俺は顔を見合わせると

 

「サービスも何も、軽いセクハラならいつもやってるからなぁ」

「お前、最近ちょっと自意識過剰なんじゃないか?昭弘にも色仕掛けして玉砕してただろ」

 

「何でよぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

「つーわけで、例の祭りの手伝いすることになった」

「何がアンデッドだバカにしやがって、アンドロイドの自分に喧嘩売ってんのか」

 

あの後、結局グリムの手伝いをすることで決定し、俺たちはアジトのアリスにその事を話した

 

「どうする?祭りの期間中はアジト建設は延期するか?」

「そうだな。よし、全員で祭りの妨害に取りかかるぞ」

「たぶんそんな理由で言ったんじゃないと思うぜ」

 

またアンデッドやら呪いやらに拒否反応を示したアリスが物騒な事を言うが、この国ではもう定番行事みたいだし、邪魔したら何されるかわからんぞ

 

 

 

「……で、なんでコイツがここに居るんだ?」

 

何故か俺たちのアジトに居て、何故か火薬を広げて弾丸造りに勤しんでいるスノウを見て6号が言った

 

「愛剣のローンの支払いで、本格的に金に困っているみたいでな。真剣な顔で体を売ろうか悩んでいたから内職させてるんだ」

「俺はどっからツッコめばいいんだよ」

 

黙々と作業していたスノウが、出来立ての弾を目を輝かせながらアリスに見せる

 

「アリスさん!出来ました!」

「よし、まだ作りが甘いが上手くなってきたな」

 

アリスに褒められてパアッっと笑顔になるスノウ

 

「ふへへ…!………なんだ6号、いやらしい目で私を見て。お触りしたら金を取るぞ」

 

変わり果てたスノウの姿に、6号が目尻に涙を浮かべる

いや、コイツは落ちるべくして落ちたような気もするが……

 

「そういや、昭弘はどこ行ったんだ?」

 

スノウの隣で同じように弾を作っていたシノが聞く

言われてみれば、部屋の中に昭弘の姿は無い

もう夜も更けてきてるが、他の部屋にいるのだろうか

 

俺たちの疑問に、アリスが答える

「昭弘なら、ラッセルを鍛えに行ったぞ。あいつはキメラの癖に貧弱だから、変身してない昭弘にも完敗したらしいからな」

「昭弘の訓練に付き合わされてんのかよ!あいつ大丈夫かなぁ……」

 

昭弘のトレーニングと言えば、同じ鉄華団の男衆でも音を上げるほどのハードスケジュールだ

まだ子供なラッセルの筋肉が破壊され尽くさないか心配だが、たしかにラッセルは魔法に頼りきりだし少しやらせてみるのもアリかもしれない

 

「……じゃあ、俺はそろそろ行くかな。オルガも来るか?」

 

グリムに言われた時間が近づき、6号が立ち上がって俺に声をかけてきた

 

「あー…どうだアリス」

「どっちかだけだ。弾の製作だって必要な仕事なんだぞ」

 

俺が顔を向けると、アリスは嫌そうな顔をしながら言った

 

「オルガ、俺にはやることがあるからグリムは任せたぞ」

「やることってなんだよ、お前は弾丸作るの下手くそだったろ。それは俺がやってるからグリムの面倒はお前がだな……」

 

「俺の仕事は悪行ポイントを貯める事さ。これを見ろ」

 

そう言って6号は、腕の悪行ポイントカウンターを見せつけた

 

「……お前いつの間にこんな貯めたんだ?」

 

6号のカウンターの数値は300以上

デストロイヤーを呼ぶのにすっからかんになっていたはずだが、もうそんなに貯めたのか

 

「お前らには秘密だ。今度なんかプレゼントしてやるよ」

 

ニヤニヤと笑う6号に一抹の不安を感じながら、俺は待ち合わせの場所に向かった

 

 

 

 

 

「さあ副隊長、準備はいいかしら?ほらほら、ロゼもしっかり車椅子押して!」

 

夜行性を発揮したグリムが、昼間とは見違えるようなテンションで言う

 

俺は宇宙での生活も経験してるから、昼夜というより時間できっちりと動くように心がけている

でないと時間の感覚が狂ってしまうからだ

人間として、一応昼に起きて夜に寝る生活から外れたくは無い

 

「で、人形の材料ってなんだ?その辺の生地と糸じゃダメなのか?」

「人形自体はそれでもいいけれど、それとは別に花が必要なのよ。それは死者が正式に地上に留まるための許可証になるの」

 

「へぇ…やっぱり花ってのは大事なもんなんだな。俺もそういうこともっと考えるべきだったかもな」

 

俺達は葬式の時くらいしか花に興味をしめさなかったが、聞いた話じゃ花にもそれぞれ意味があるらしい

死を意味する花、彼岸花なんて聞いた時は驚いた

 

「副隊長も案外ロマンチストじゃない!だから今から魔の大森林に行って、その花を摘んでくるの」

 

「……俺、魔の大森林は魔族でさえ開拓を投げる危険地帯って話を聞いたんだが」

「そうね、それにあの森には蛮族だっているの。そんなところにか弱い乙女が一人で行ったらどうなるかしら?副隊長は可愛い部下が傷物にされるのを黙って見たりしないわよね?」

 

そんなグリムの言葉

脅迫……なのか?

教祖としての責任感から、自ら危険な地へと足を踏み入れようとしているわけだが

 

いやあんまり迷わないな

 

仲間がピンチになったら助けるのが俺達だが、グリムは割と死んでも平気なヤツだし……

 

「もう早く済ませて帰りましょうよ……。あたし、お腹いっぱいご飯を食べたからもう眠いんですよ……」

 

俺がこめかみを押さえていると、眠たそうに車椅子を押していたロゼが欠伸まじりに言った

 

「可愛い部下ってのはロゼみたいな部下だけだ。お前が襲われても原形があるうちは放置するぞ」

「なんだか副隊長の私への扱いがどんどん雑になっていく気がするわ……」

 

 

とても車椅子に適した環境とは言えない道なき道を進んでいると、木の陰にひっそりと咲いた小さな花が見えた

 

「あの白い花がそうよ。じゃあ、私はここで待ってるから……」

「おい、お前も摘めよ。なんで教祖がやらねぇんだよ」

 

「私はもうたくさん依り代を作ったんですぅー!副隊長はゼナリス教徒なのになにもしてないからこうして働いて貰ってるのよ!」

「入信した覚えはねぇからな俺は。というか森の中に車椅子で入ってくるなんて正気か?」

 

木の根っこに突っ掛かって進めなくなっている車椅子を見て言う

グリムは遺跡でも車椅子を使おうとしていた

普通に歩けるんだからなるべく歩いてくれた方が手が空いていいのだが

 

「車椅子って色々と便利なのよ。自分で漕がなくても誰かに押して貰えて楽ちんだし。それにパッと見た感じ、儚げな病弱美女の印象を与えられるでしょう?」

「まったく経験が無いのに打算的なところがダメなんだと思うぞ俺は」

 

腕に掴みかかってきたグリムをいなしていると、反対の袖をつまんでロゼが言った

 

「グリムはこのままの方が運びやすくていいですよ。昼間は大体寝てますし、目を離すとちょこちょこ死ぬので」

 

ロゼに言われたグリムが不満そうな顔を見せる

 

「ねぇ、私が死んでる時の扱いもうちょっと良くしてくれないかしら」

 

「その辺の野菜と一緒に荷車に載せられて、アリスに謎の薬を投与されて、6号にパンツ捲られることの何が不満なんだ?」

「全部不満に決まってるでしょ!!というかアリスは私の体に何をやってるの!?」

 

グリムが騒いでいると、森の奥から何かがうごめいている音が聴こえてきた

 

「……おい、何か来てるぞ。グリムの叫びに反応したな」

「私のせいなの!?元はと言えばあなた達が……!」

 

グリムの口を押さえて、ロゼがこちらへ迫る何かを警戒する

 

音からしてそこまで大きくは無さそうだが……

 

「おい、こいつは………」

 

暗闇から現れたのは、体が腐敗して所々が崩れ落ちた死体

それも立って歩いている死体だった

 

アンデッドとは自分の事だと言わんばかりに、腐った体を引きずりながら数体の群れがこちらへ向かってくる

 

「ゾンビ!?ねぇ副隊長ゾンビよ!ふふ、ここは私に任せなさいな!」

「そう言うなら任せるけどよ……。ロゼはゾンビが苦手なのか?」

 

車椅子から飛び上がったグリムが言う

その言葉を信じた俺はゾンビの群れから半歩身を引き、ゾンビの腐臭に鼻を押さえているロゼに言った

 

「あたし無駄に鼻が良いから、この臭いだけで倒れそうで……。副隊長も嫌いなんですか?」

「嫌いってか……単純に気持ち悪いだろアレ」

 

まあ今の俺も似たようなものなのかもしれないけどな

 

どういう理屈か知らないが、死んだ人間を生き返らせている事は凄い事だと思う

しかしここまで腐敗していて、意識もあるようには見えないと……

 

「俺と同じように、あいつらも誰かに呼び起こされたのか?」

「どうでしょう、ゾンビが自然発生するかは知りませんが……。誰かに願って呼び出されたんじゃなくて、単純なしもべとして操るだけのネクロマンサーもいますし」

 

眠りについた死者を自分の私利私欲のためだけに操る

そんな事は死者への冒涜に他ならない

 

「もし犯人がいるのなら、捕まえて償わせてやらなきゃな」

「隊長や副隊長って変なところで正義感発揮しますよね。そういうところは嫌いじゃないです」

 

ロゼが嬉しそうにそう言ってくる

これは別に正義感じゃない

 

誇りを持って死んだ人間に対して敬意を払わない行動が嫌いなだけだ

 

 

「おいグリム。そろそろゾンビの始末は終わったか?」

「痛い痛い!!ちょっと二人とも助けて!!」

 

俺が声をかけるとゾンビに群がられたグリムが、手を伸ばして助けを求めた

その様はとても上手くいっているようには見えない

 

「おい、さっき私に任せてっつってただろ」

 

「違うの副隊長!普段ならアンデッドのアイドルであるグリムさんに手なんて上げないの!このゾンビ達は何かがおかしいわ!」

「い、いつもは上手く説得してくれるんですが……。あたしもこんなグリムを見るのは初めてです」

 

ゼナリスを崇める教徒が不死であるアンデッドに敵視されている?

それはつまり……

 

「お前とうとうゼナリスに見捨てられたのか」

 

「違うわ副隊長!たしかにちょいちょい意味もなく死んでいるけど、こうしてアンデッド祭りのために頑張ってるしカップルに裁きを下してるもの!」

 

なんでグリムの中で不死と災いの神がカップル撲滅と結び付いているのか甚だ疑問だが、たしかに貴重な教祖をないがしろにするとも思えない

 

「いいわよ!これぐらい自分でなんとかしてみせるから!偉大なるゼナリス様!この場に満ちた不死の加護を取り払い、あるべき形に戻したまえ!」

 

やけくそ気味のグリムがそう叫ぶと、ゾンビ達のいる地面から青白い光が天に向かって高く伸びていく

光が辺りを包んだと思った瞬間、グリムを袋叩きにしていたゾンビ達の動きが止まる

 

おそらく、アンデッドの不死を取り払ったのだろう

加護を失ったゾンビ達がバタバタと倒れていく

 

初めてグリムの聖職者らしき姿を見た俺は、一言謝ろうと何故かピクリとも動かないグリムに手をかけ

 

そのグリムの体が地面に倒れ伏した

 

 

 

「……もしかして自殺したのかコイツは」

 

「……これ、いつもの儀式で治るのかなぁ」

 

というか一歩前にいたら俺も死んでたんじゃないか

 

 

 

 

 

グリムの死体をロゼに任せ、俺がアジトに戻ってきた頃にはもう夜明け前だった

 

6号はまだ留守か……?

 

こんな時間までどこでどんな悪行に励んでいるのだろうか

 

アジトが完成すれば一応あいつが本部長になるのだ

そろそろ隊長としての自覚を持ってほしいもんだが、いったい何をしてるんだろうか

 

まあ、あれでなかなか人に好かれやすい性格だし、もう少し常識と気品が身に付けば問題は無いだろう

おそらく事務はアリスがやってくれるし、俺も二人をサポートすればいい

 

そんな事を考えながら床についた次の日の朝、俺は爆炎に包まれて目を覚ました

 

 

 

 

「……とうとうやらかしやがったな」

 

「………すいませんでした」

 

「お前、人の命を何だと思ってやがる」

 

「………すいませんでした」

 

煤だらけの顔をひきつらせる俺の前で、正座しながら同じ言葉を繰り返すスノウ

 

聞いたところによると、昨晩火薬を放置したままその側に二代目フレイムザッパーを置きっぱなしにしたらしい

 

そのせいで、俺はまた死んだ

 

どうして戦場でもなんでもない街中の、しかも自室で死ななければならないのか

 

ミカ達はとっさに変身して無事だったし、6号とアリスはたまたま外に居たから無傷

他の戦闘員達も外のテントで寝泊まりしていたから大丈夫だった

幸いというか、死んでもいい俺しか被害を受けなかったわけだ

 

「で、これからどうするの?」

 

瓦礫の中から野菜の苗を掘り起こしていたミカが聞く

 

「こうなったら、アジト建設を早めるしか無いな。スノウ、お前も手伝えよ?」

「はいアリス様!」

「様はやめろって言ってんだろ」

 

アリスに泣き付くスノウを見ていた6号が、ため息混じりに言い寄る

 

「ったくしょうがねぇなぁ。グレイス支部長であるこの6号さんに野宿させるんだから体で接待しろよ?というかお前の家に泊めろよ」

「家ならもう追い出された。城の兵舎も空きがない。だから私も野宿するしかないのだ」

 

さらっととんでもない事を言うスノウに、倒れた柱を押し上げながら昭弘が言った

 

「お前は剣をいくつかコレクションしてただろ。それ売って当面の生活費にしたらどうだ」

「な…!それだけはダメだ!今の私だと足元を見られて安く買い叩かれるに違いない。こうなったら体を売ってでも……」

「金に取り付かれた女は怖いにゃあ」

 

家が吹き飛んだというのに、みんなすぐにいつもの調子を取り戻していく

 

……平気ではあるんだが、もうちょっと俺が死んだことに対して反応してくれよ

 

いつも足蹴にされているグリムの気持ちが少し分かった気がした

 

 

「しかしスノウに任せた分だけじゃ、あそこまでの爆発は起きないと踏んでたんだがな」

 

あっぶね~。実は俺も火薬放置しちまってたから、証拠隠滅できて助かったぜ

 

シノお前ふざけんなよ

 

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