少年兵、派遣します!   作:アカザタナ

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祭りは自殺日和

公園の隅に寄せて点てられた小さなテント群

 

その一つの中で、俺は通信機と向き合っていた

 

アジト建設に失敗した事によって、今やテントに取り付けられた小さな通信端末だけが地球とここを相互に繋げる場所になっている

 

「……つー訳で、アジト完成まではもう少し時間がかかりそうだ」

『うーん、やっぱり一筋縄ではいかないようね』

 

俺はアジト建設が難航している事をアスタロトに伝えていた

本来ならこれも6号の仕事なのだが……

 

「なあ、一つ聞いてもいいか?」

『なにかしら?』

 

アスタロトに6号へ対しての文句も垂れたくなるが、それより聞きたい事がある

 

 

「……そのオペレーター。俺の知り合いに似てるんだが」

 

今日はいつもと違いアスタロトだけでなく画面の端に一人通信係のような人間が居るのだが、その通信係というのが……

 

『……お久しぶりですオルガ団長』

 

クーデリアの保護者兼世話役のフミタン・アドモスだった

今までキサラギとの通信にはリリスかアスタロトだけが出ていたのだが

 

『やっぱり彼女も団員だったの?本人は否定してたけど』

「いや、団員じゃないんだが……。出向っつーか、保護者っつーか……」

 

彼女の立ち位置は非常に難しい

俺達の船のオペレーターをやってくれていたが、本業はクーデリアの護衛だったはずだ

しかも後からクーデリアに聞いた話じゃ、実はノブリスから送られてきた監視役だったらしいし……

 

『今後、あなた達からの報告は彼女を通してもらう事になるわ。これからは定期的に通信を入れるように』

 

俺はアスタロトの言葉にフミタンへ視線を移すと、フミタンは少しばつが悪そうにした

 

まあ出自はどうあれ、フミタンもクーデリアのために命を賭けた大切な仲間だったからな

今さら疑ったりなんかしないさ

 

「……分かった。で、そっちはどうなんだ。まだ戦局が安定しないのか?」

『一応、一段落は着きました。ですがヒーロー側にも依然として戦力が残っており、余談を許さない状況が続いています』

 

アスタロトの代わりにすでにオペレーターが板についているフミタンが答えた

 

ヒーローについてはたびたび6号の口から聞かされているが、詳しい事は知らない

悪の組織のキサラギに対抗して創られたらしいし、善行ポイントとかがあるんだろうか

 

「というか通信機に着信が溜まってるんだが、何か重要な知らせでもあったのか?」

『それは……。6号がぜんぜん連絡を入れてくれないのよ。報告書は解読不可能だし……』

「あー………。俺から言っておくか……」

 

アスタロトが不安そうに言う

 

前に6号が本部へ送るために書いていた報告書を見たことがあるが、ハーレムだのモケモケと友達だの頭の痛くなる事ばかりだった記憶がある

 

『ほ、本当?じゃあお願いね?………そ、それでは吉報を期待しています』

「今さら隠そうとしたって無駄だと思うんだが」

『それと!例の黒いモビルスーツの回収班の用意は済んでるから、必要になったらリリスに連絡入れてね!』

 

顔を赤くして誤魔化すようにアスタロトが言った

 

アインについてはもう少し待ってもらうつもりだ

まだ俺達との決着がついたわけじゃないからな

 

『あの……。オルガ団長』

「クーデリアなら、無事地球に送り届けたよ。そのあとも、火星でうまくやってたしな」

 

アスタロトが顔を隠しながら画面から消えていった後、フミタンがおずおずと言った

 

彼女としてはどうしてもそこが気がかりだったのだろう

フミタンは俺の言葉を聞いて大きく胸を撫で下ろした

 

『そうですか……。聞きたい事は山ほどありますが、ひとまずはこれで……』

「ああ。これから……いや、今後ともよろしくな」

 

俺は相変わらずメリハリのあるフミタンに心強さを感じながら通信を終えた

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ副隊長!隊長がどこにいるか知らない!?」

 

俺がアジトを出ると、顔を赤くしたグリムが詰め寄ってきた

 

「知らねぇな……。またホームレスのおっさん達と廃材拾いに行ってるんじゃねぇか?」

「隊長はそんなみっともない事してるの!?そんな恥ずかしい事させないで!」

 

最近は話すたびに騒いでいるグリムをなだめて事の顛末を聞くと、なんでも6号のせいで見ず知らずの女性と一夜を共にする事になったのだという

どうなったらそんな事になるのか理解が及ばないが、6号の行動が読めた事など無かったのを思い出す

 

「もうその女と幸せになればいいんじゃねぇか?」

「私も一瞬そう思っちゃったけど、やっぱり結婚するなら男の人とがいいの!」

 

昨夜の事を思い出したのか顔を隠すグリム

半分アンデットだっつうグリムがどのくらい生きているのか知らねぇが、本当に良い相手は見つからないのか?

 

……いつか運命の人でも現れてくれればいいんだが

 

「じゃあ6号を探せばいいんだな?」

「ええ、ついでに祭りの巡回もするからなるべく人通りが多いところを回ってね」

 

俺はまたいつものようにグリムの後ろにつき、車椅子を押して進み出した

 

 

 

しばらく街を回っていると、大きな建物に人だけでなくぬいぐるみが沢山集まっていたので、俺はグリムを連れて入る事にした

そこはスノウに教えてもらった、ミカがチャンピオンになっている闘技場だった

 

『やはり強い!破竹の勢いで勝ち進み、ついにはチャンピオンとなったこの男を止められる者は居ないのか~!!?』

 

背丈が倍はある対戦相手を関節技でギブアップさせたミカに実況が叫ぶ

 

「やっぱ強ぇなミカは」

「そうねぇ、たまに私たちと同じ人間なのか心配になる時があるわ」

 

俺は歓声で讃えられるミカに感心した

バルバトス抜きでも、対人戦でミカに勝てる人間はそう居ない

それこそトラ男のような人体改造を受けた人間か、ハイネのように魔法を使える能力者だけだろう

 

鍛え上げられた筋肉は人間離れした印象を与えるが……

 

「悪魔なんて言われた事もあるが、ちゃんとした人間だよあいつは。……今度は絞め技か」

「なんというか、容赦がないわよね彼。まだ子供なのに………」

 

次の相手のパンチを避けてそのまま背後に回ったミカが、首を固めて白目を剥かせる

 

ミカの一番の強さは迷わない事だ

 

……それも状況によっちゃ弱さになりえるかもしれねぇが、俺は信じるさ

 

俺は余計な事を考えないよう、入り口で買った串焼きを頬張る

酒場でオーク肉を食わせられた一件以降は少し避けていたが、やはり人間というのは肉が必要だ

合成ではない肉の旨味と塩気が舌に乗って心地いい

 

「なあグリム、この串焼きって何の肉が使われてるか分かるか?食ったことない味がするんだが」

「さあ、何かの魔獣の肉じゃないかしら。祭りが始まるといるのよね、そういうよく分からない肉を売っている屋台って」

 

グリムがそんな不安になる事を言ってくる

ちゃんと国主導で許可制にして取り締まってるんだろうな

スノウみたいながめつい騎士を買収してる奴がいるのかもしれない

 

「ねぇ副隊長。前から気になってたのだけれど、あなたと三日月ってどういう関係なの?」

「簡単に言うと幼なじみってやつだ。もうかなり古い付き合いになるな」

 

俺が躊躇いながら串焼きを口に運んでいると、グリムが俺とミカを交互に見ながら言った

 

ミカと最初に会ったのはいつだったか……

歳ははっきりとは分からないが、場所はあの路地裏だった気がする

 

それからずっと一緒だった

 

「副隊長と三日月ってまさに相棒って感じよね。三日月ってあんまり感情を表に出さないけど、それってあなたを信じてるからでしょう?」

「そうだな、昔からあいつは俺に着いてきてきてくれた。正直俺は、あいつが怖かった時もあった。ミカが振り返ったらいつもそこに居て、俺の言葉を待ってんだ。そんなミカを幻滅させたくなくて俺は……」

 

俺は本当はそんなに強い人間じゃないのかもしれない

 

ミカや鉄華団の仲間が居なかったら、ただの小心者でいたかもしれねぇ、弱音ばっかり吐いてたかもしれねぇ

 

けど、お前らがいたから俺は……

 

「あいつのおかげで俺は見栄張れたんだ。あいつのおかげで俺は前に進めたんだよ」

 

 

そこまで言った俺は、急に恥ずかしくなって頭を掻いた

 

俺、格好付けるのは似合わねぇ気がしてきたな

 

「………おいグリム聞いてるか?自分でもちょっと恥ずい事言ったんだが」

「ふ、副隊長、あれ………」

 

グリムが青ざめながら指差す先には、指をポキポキ鳴らすミカと、泡を吹いて倒れる対戦相手の姿

 

『ああーっと緊急搬送です!これでチャンピオンになってから計八人の病院送りとなりました!』

 

ミカに絞められた相手が力なく担架で運ばれていく様子を眺めていたグリムが不安そうに言ってきた

 

「ねえ副隊長、拳闘士って一応スポーツ選手なのだけれど……」

「………大丈夫だろ。最悪お前が呼び起こせば……」

「死者を迎える祭りの最中に死者を出してどうするのよ!ちゃんとやり過ぎないよう三日月に言っておいて!」

 

グリムを無視していると、肩の力を抜いていたミカと目があった

ミカが顔色一つ変えずにガッツポーズをして見せる

 

たしかに、農作だけじゃ体もなまっちまうかもな

 

この国の拳闘士連中には悪いが、ミカにはしばらく闘技場のヒールとして頑張ってもらおう

 

 

 

 

グリムが『ねぇ、これってデートなんじゃないかしら』とか言い出したのでさっさと闘技場を後にして進んでいると、トラ男を見送っている6号を見つけた

 

「居たああああああああ!!!」

 

6号を見るなり自分で車椅子を走らせてグリムが突っ込んでいく

あんなに元気なんだから車椅子も自分で押して、というか自分の足で歩いてくれねぇもんかな

靴がダメなら松葉杖、せめて電動車椅子とか……

 

俺がリリスに相談してみようか考えていると、6号と一緒にいたロゼが俺の方に来て言った

 

「祭壇に居ないと思ったら副隊長と一緒に居たんですね。最近グリムがあんまりあたしと一緒にいてくれなくて拗ねちゃいそうです」

「グリムもお前がトラ男に盗られたとか言ってわめいてたぞ。ほら、無理な態勢で6号に掴みかかって倒れそうになってるし支えてやれ」

 

慌ててグリムに駆け寄るロゼを見ながら、俺はふと考えた

 

俺達が来た事でこの星はどれだけ変化していくのだろう

 

キサラギはここを植民地にする腹積もりらしいが、そうなったらこの星の住人は奴隷にでもされるんだろうか

 

地球でも植民地支配による先住民の迫害は問題になっていたらしいが、同じ事はしないと信じたい

キサラギはなんだかんだ身内である戦闘員には甘いところがあるし……

 

でもそれで地球の人間を全員救えるのか?

 

今さら反対だなんて言えないが、そうして侵略を繰り返してできたのが今の地球の現状なのだ

 

俺にできるのは、俺らみたいな人間が生まれないよう尽くすだけ…か

 

 

「うおおっ!?この野郎、何しやがる!俺はこのガキのパンツを下ろそうとしただけで……!」

「隊長、なんでそんなバカな事しようとしたんですか!?」

 

俺が考えていると、悲鳴を上げた6号とそこに割り込んだロゼがぬいぐるみにもみくちゃにされていた

 

ぬいぐるみの体ではポフポフとなるだけでダメージは無さそうだが、二人の体はすっかり埋もれてしまっている

さすがに放置してると窒息しそうだな

 

俺が止めに入ろうとすると、そこに別のぬいぐるみが立ち塞がった

気がつくと俺の周囲を数体のぬいぐるみが囲っていた

コイツら、やる気か?

 

「三人とも気を付けて!やっぱり様子がおかしいわ!私の作った依り代には、入る前に生者に危害を加えない事を誓って貰うのよ!」

「これが危害かは人によるだろうが、言いたい事は分かった。じゃあ近くにネクロマンサーがいるんだな?」

 

俺はグリムの言いたい事を理解して辺りを見回すが、周囲はぬいぐるみだらけで見つけようがない

くそっ!里帰りの最中に悪いが、ここは一旦中を改めさせてもらって……

 

「私は今あなた達が使っている仮初めの体を与えた者よ。直ちに危害を加えるのをやめなさい。さもなくば、不死の加護を取り上げてゼナリス様の下に送るわよ!」

「あっグリム!加護を解くときは文言に気をつけて……」

 

そう言われてもなお止まらないぬいぐるみ達に、グリムが指を指す

 

「偉大なるゼナリス様!この場にいる愚かな不死者から、その加護を外したまえ!」

 

俺はグリムが宣言すると同時にその場から飛び退いた

 

それまで俺がいた場所も巻き込んで光の柱が昇ると……

 

「じ、自殺しやがった………」

「……祭りが終わるまでに復活できるんだろうな」

「ど、どうかなあ……」

 

目の前に転がる愚かな不死者達に、俺達だけでなくその場を通りかかった通行人も気の毒そうな顔を見せた

むしろ祭りが終わるまで眠らせといた方がいいんじゃねぇか?

 

 

 

グリムの死体を6号とロゼに任せ、俺は城の一室の戸を叩いた

 

「ようサヴァラン、邪魔するぜ」

「また来たのか。今日は戦闘員を引き取りに来たんじゃなさそうだが、例の件かい?」

 

俺は机に座りながら書類に目を通しているサヴァランに声をかけた

以前からサヴァランにはこうして話を聞きに来ている

 

「おう、で、どうなんだ砂の王と蟻の王は。こっちとしては共倒れしてくれるとありがたいんだが」

 

気になっているのは蟻の王……モビルアーマーの動向だ

 

砂の王と縄張り争いを繰り広げているMAだが両者の実力は拮抗しており、依然としてテザン砂漠を荒らし回っている

 

しかし砂の王とMAで決定的に違うのは、MAの本来の目的は人を殺す事だという点だ

この星の地図がマッピングされていないのか周辺国に侵攻する兆しは無いが、砂の王を放り出してこちらへ攻撃してくる可能性は十分に存在する

 

もしそうなれば、アンデット祭りだのアジト建設だの言っている場合ではなくなる

 

だからこうして定期的に話を聞きに来ているんだが

 

「やはり変化なし、と言う他ないでしょうね。砂の王は逃げ足も速いですし、蟻の王は兵隊蟻を上手く使い潰しているようで……」

 

あの二体はお互い有効打をもたず、逃げ足も速い

初めのうちはMAが優勢だったが、砂の王が学習して一撃離脱の戦法をとるようになってからは互角の戦いになっている

 

「ですが実のある報告も上がっていてね、なんでも兵隊蟻の動きが鈍くなっているのだとか」

「へぇ、部品の劣化か?いや、三百年眠ってても問題なく起動したし……。燃料切れか?」

 

それは以前火星で戦った時もそうだった

MA本体はエイハブリアクターとビーム兵器によって無限の継戦能力を持つが、子機であるプルーマはエイハブリアクターを搭載しておらず、武装も実弾

ゆえに子機の稼働を維持するには補給が不可欠になる

 

「おそらくはそうだろう、あれも機械だからな。けど、それに関して気になる点があってね……」

「なんだ?」

 

些細な事でも貴重な情報だが……

 

「兵隊蟻の活動範囲がどんどん広くなっているんだ。燃料に限りがあるのなら、むしろ活動範囲に制限をかけるべきなのに……」

 

広大なテザン砂漠に子機を拡散させれば、いくら数が多くても砂の王との戦闘に回せる戦力も減る

そうまでして子機を散りばめるという事は……

 

「資源を探してるってことか……」

「でしょうね。それで周辺国の存在がバレれば、おそらく蟻の王は進攻を開始するでしょう。近いのはトリスか、我々か………」

 

もしトリスが落とされれば、俺達の商売仇は減るが……

 

トリスは資源大国だから、燃料だけでなく金属も相当な量保有しているだろう

 

もしMAがそれでプルーマを量産すれば……

 

改めて考えると、やっぱり人類を滅ぼしかけた兵器ってのは伊達じゃねぇな

 

「分かった、気に留めとく。それと、姫さんの悪夢は治りそうか?」

 

俺が尋ねると、サヴァランは肩を落とした

 

「いや、まだ続いてるよ。城の使用人の間でも良くない噂が広がっているし、国王も見つからないしでストレスも溜まっていく一方だ」

「一番のストレスはうちの戦闘員だと思うけどな」

 

最近じゃ、俺とアリス以外の戦闘員は用がなければ城に入る事もできないくらいだ

 

「アンデット祭りについても不穏な噂を聞くし、無事に済んでくれるといいんだが……」

 

サヴァランはそう言ってため息を吐いた

 

サヴァランはもうこの国に骨を埋めるつもりなのだろう

この国のために真剣に働き、悩む姿は見ていて心地いい

 

ビスケットも見つかるといいんだが……

 

俺もできる限りで、この兄弟のために尽くそう

 

「……まあ、すべてが平穏無事ってわけにはいかねぇだろうな。なんせさっきも一人死んだわけだし」

「……彼女に限らず、君の仲間達はしっかり見張っておいてくれないか」

 

すまんそれはちょっと無理だ

 

 

 

 

 

その日の夜

 

 

「おい6号。お前またどっか行くのか」

 

俺は戦闘服を着てなにやら支度している6号に声をかけた

 

「おう。……そうだな、そろそろオルガも連れてってもいいかもな」

「……?お前が前から言ってるポイント稼ぎか?」

 

前からちょくちょく6号はそう言って夜更けにどこかへ出かけているのだ

いい加減何をしているのか教えてくれないと心臓に悪い

後始末をするのはだいたい俺かアリスだからな…

祭り期間だしグリムの責任にもなるかもしれない

あいつはスノウと違って職務を全うしているから、俺達のせいで責任に問われるのはあんまりだ

 

「へっへっへ、今日は俺が先輩としていろいろレクチャーしてやるよ」

 

そう言ってリュックを背負った6号に着いていくと、やがて6号は王城の前で足を止めた

外壁は高いものの、制限解除状態のジャンプなら越えられなくもなさそうだ

 

「おい6号。もしかしてこれからやる悪行ってのは……」

 

ガサガサとリュックから鉤縄を取り出した6号を見た俺は、最近城で怪しい人影が目撃されている事を思い出した

 

「感がいいなオルガ。そうだよ、ティリスの寝室に侵入するんだよ」

「住居侵入は普通に重犯罪だぞ」

 

俺が即座にツッコむと、6号は親指を立てた

話を聞いた時はまさかと思ったが、よりによってお前が主犯かよ

 

「心配すんな。俺達ほどのベテランになれば、痕跡の一つも残さない完璧なスニーキングスキルを身に付けてるからな。それに、この国の法整備はガバガバだってアリスが言ってた」

「俺が心配してるのはお前らの罪状じゃなくてティリスの容態だよ」

 

ティリスが毎晩悪夢を見させられてるのはお前らが侵入してるせいかもしれないんだぞ

 

「……今俺達って言ったな。その口ぶりだとまさか……」

「ああ、今いるキサラギ戦闘員はみんな一回は侵入してるぞ」

「シノは……?」

「俺と一緒に五回は潜入してるな」

 

俺は戦闘員の意外なハイスペックさに驚いたがそれ以上に、こんな連中使って世界征服目指してる幹部連中に畏怖を覚えた

 

それと、シノにはキツく言っておこう

 

俺は6号に連れられて城の見張りを易々と突破し、壁を登ったり地面を這ったりしながら、着々とティリスが眠る寝室に近づいていた

巡回の兵士を物陰でやり過ごしながら小声で6号に話しかける

 

(なるほどな……。そりゃあれだけ悪行ポイントを稼げるわけだ)

(今だってギリギリプラスだけど、もう一回アジトを立てたらまた相当マイナスになっちまうんだよなぁ。ティリスにバレたら止めるつもりだし、今のうちに稼いどかないと……)

 

6号がそう言ってため息を吐く

 

アリスの話では、6号は制限しておかないと底無しに散財するからとまったくその通りな理由で、アジトの建築資材にのみポイントの前借りを許されているそうだ

 

キサラギには制裁部隊という組織があり、ポイントがマイナスのまま放置しているとキツい制裁を加えられるらしい

俺達の中だとアジトの建材にポイントを使いまくっていた6号と、まったくポイントを稼げていない昭弘が現在危ない状況だ

 

 

俺がどう昭弘に狡い事をやらせるか考えているうちに、俺達はティリスの寝室の天井裏にたどり着いた

 

そろりそろりと部屋に入っていく6号に続いて俺も大きなベッドの脇に立つ

そこにはスヤスヤと眠るティリスの姿があった

 

父と兄を失ってなお、この国のために懸命に尽くしているお姫様にこの仕打ち

 

どういう神経してたらこんな事できるんだ

 

(おい6号、お前一体なにするつもりだ?)

(へっへっへ、今日の主役はコレよ………)

 

俺は邪悪な笑みを浮かべる6号を見て決意を固めた

 

仲間が道を踏み外した時、それを止めてやれるのがいい仲間ってやつだ

 

俺は6号に自首を促そうとその肩に手を置く

 

そんな俺をよそに6号はリュックからなにやら箱を取り出すと……

 

(キサラギ製の人気玩具、八裂きミート君危機一髪だ。絶対に落とすなよ)

(お前らが真正のバカで良かったよ)

 

 

俺はうなされるティリスの隣で久しぶりに楽しい一時を過ごした

 

 

……リラックスは全然できなかったけどな

 

 

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