少年兵、派遣します!   作:アカザタナ

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不死と復活

「案の定というか…負けたようだな。連中の表情が暗い」

奪った物資とグリムの死体を載せた荷車を引きながら、出撃前に集まった本陣へ帰還した

 

本隊の方はこっぴどく負けたらしい

見ると、残っている兵士も皆傷だらけ

キサラギで改造手術を受けた6号や、ミカですら手を焼かされた相手が二人もいたのだ

その辺の兵士など雑兵もいいところで、足止めも難しいだろう

「なぁ、あの苛立ってるおっさんが今回の指揮官なのか?」

俺が指差す先には、偉そうな服を着て兵士達に罵倒を浴びせる一人の男がいた

「あれはこの国の参謀殿だ。全線に立つことは無いが、負けるといつも出張ってきて叱責を浴びせているな」

そんなスノウの言葉に、アリスが口元をにやけさせながら言う

「おい6号、今こそ手柄を勝ち誇る時だ。たっぷり恩を着せてこい」

「任せろ!」

嬉々として向かう6号にスノウが顔をひきつらせる

「お、お前らはなんてゲスな事を…だがそういうのは嫌いじゃないぞ。失態を犯したエリートをネチネチ追及するのは最高に楽しいからなぁ」

 

普段なら、お前らそういうところだぞと言うところだが、今の俺は違う

 

「6号、その役目、俺に任せてくれ」

 

 

 

 

 

「よぉ、あんた。ずいぶんと荒れてるな」

 

「なんだ貴様は?わしはこの国の参謀だぞ……おや?誰かと思えば、例の部隊に配属された外国人じゃないか。貴様ら、戦闘中いったい何をしていたのだこの役立たず共が!」

 

………あ?

 

「お前状況わかってんのか。そのセリフを言えんのは、お前か、俺か、どっちだ?」

「な、何を!」

 

「お前らが無謀な戦いをしてる間に、俺達は敵の補給部隊に大打撃を与えてやったんだ。しかも、敵の幹部を二人も相手にしてな」

「補給部隊など狙って何の意味があるというのだ!」

「あんた正気か?魔王軍の狙いはこの国の領土なんだぞ。だったら、俺達を負かしたとしても、それを維持出来るだけの物資は必要不可欠だ。それが無くなった以上、あいつらはここに留まることは出来ねぇ」

 

戦のいの字も分かっていないバカのハゲ向かって言う

「無能な指揮のせいで、死ななくていいはずの兵士が大勢死んだ。この落し前、あんたいったいどうつけるつもりだ?」

屈辱に顔を歪める参謀の顔を前に

俺はこの世界に来て初めての悪行ポイントを手に入れた

 

 

 

あれが悪行なのかと納得いかないまま、アリスに言われた小さな洞窟の中に入る

進んでしばらくすると、天井が吹き抜けになった祭壇のようなものがみえた

祭壇の上にグリムの死体が置かれた台座の周りに隊の一同が並んでいる

「おう、早かったな。一応、準備終わったみたいだぞ」

「こっちもうまくやったぞ。あのおっさん、相当屈辱だっただろうな」

俺の言葉に、ロゼ以外の全員がよくやったと口元をにやけさせる

 

「こんな所でグリムは復活出来るのか?」

「ああ、まぁ復活と言っても、ここに供物と死体を放置しおくだけだがな。夜になったら勝手に蘇っている事だろう」

そんな雑な……

「供物ってのはそこに置かれたガラクタの事?」

「あっ、それはあたしが大事にしてた靴下です」

それ、別にグリムゆかりの物じゃないと思うんだがそれでいいのか

 

割とよくある事なのか、スノウとロゼは手際よく準備を済ませ、アリスはいまだ胡散臭そうにグリムを眺めている

「さて、私はもう帰らせてもらう。今夜はゾーリンゲル社のナイフ特番があるからな」

「あ、私も補給物資食べちゃいますね!」

「自分はショットガンの手入れでもするかな。お前らはどうする?」

 

「俺はここにいるよ。グリムがどうやって復活するか気になるしな」

「それは俺も気になるから、ここに残る。ミカ、お前は?」

そう聞かれたミカがポケットの中の布を引っ張って言う

「もう地球ヤシが無くなりそうなんだけど、何かいい手無いかな」

「なら、自分に任せろ。仕事と引き換えに自分が取り寄せてもいいし、そろそろ三日月にも悪行のなんたるかを教えてもいいからな」

そんな不穏な事を言いながら、俺と6号以外の全員が祭壇を後にした

 

 

 

 

 

「なぁオルガ、お前って結構良い奴だよな」

「……何だよ急に」

皆が洞窟を去ってしばらくして、6号がそんな事を言い出した

「いや、キサラギに新入りが来た時は可能な限り顔を会わせる事にしてるんだが、お前は何と言うか……真面目なお人好しって感じがするんだよな」

と、いきなり変な事を言う6号

腹でも壊したかと言いたくなったが、それを飲み込んで俺も返す

「お前も、決して真面目じゃあねぇと思うが、お人好しだろ?グリムの事を心配して残った癖に」

「そ、そんなんじゃねーよ!ただ、頭が吹っ飛んでも生えてくるって聞いて子供の頃飼ってたトカゲを思い出しただけだ!」

「それ、グリムが聞いたら怒るだろうな」

「そしたら、今回役立たずだった事を引き合いに出して逆ギレしてやる。そんで、またスカート捲ってやろう」

「おまっ…」

6号とそんな談笑をしながら時間を潰していると、祭壇が光に包まれた

それが収まった後、祭壇におかれていた供物は無くなっており、寝かされていたグリムの体が小さく動いた

 

やがてその体は起き上がり………

 

「……隊長に副隊長?そんな所で何やってるの?」

 

本当に…………

 

「お前が蘇生するのを待ってたんだよ」

「そう………。えっ!?ちょっと副隊長!?」

「すまねぇ!お前が死んだのは俺の責任だ!」

まだ意識がはっきりしないのか、頭を押さえるグリムに、俺は突然土下座をして言う

「勝ち戦だと油断して、お前をあんな無防備な状態で放置した俺の落ち度だ!本当にすまねぇ!!」

 

顔は見えないが、唖然としたグリムの声が聞こえる

「ちょ、ちょっと副隊長!?別にいいのよそんな気にしなくて!元はと言えばあんな所で寝てた私のせいでもあるし!」

「……そ、そう言えばそうじゃん。それに、お前この戦いで何もしてないじゃん」

「お黙り隊長!ゼナリス様の超パワーは夜じゃないと発揮できないのよ!」

あっけにとられていた6号が、フォローなのかグリムに突っ掛かる

「そんな事関係ねぇ、副隊長として、お前らの命を預かる立場だってのに俺は……!」

「なぁオルガ、その言い方だと俺にも責任がある感じなんだけど、今回こいつが死んだのはほとんど自業自得みたいなもんじゃないか?」

「ねぇ副隊長、本当に止めて!そこまで本気で謝られるとこっちもどうしたらいいのかわからくなるわ!あと隊長は呪うわよ!」

 

 

6号に諭され落ち着いた俺に、グリムが少し安心したような顔で言う

「それにしても、二人は変わってるわね。今まで所属してた部隊じゃ、私の復活を待っていてくれる人はいなかったわよ?」

「なんか、この国に来て初めて人として誉められてるっぽいんだが」

いざ誉められると弱いのか、6号が手を頭の後ろに回しながら言う

「ええ、誉めてるわよ?普通の人はゼナリス様を崇めているだけでも嫌な顔をするのに、こうやって普通にしてくれてるし。ロゼの事も特に気にしなかったでしょ?」

 

「二人に忠告してあげるわ。厄介者ばかり集められる隊は、毎回危険なところばかりに送られるの。だからとっとと止めて、この国を出た方がいいわよ?」

「いや、何言ってんの?俺は今の隊から離れないよ?」

「俺も、そんなことする気は微塵も無いぞ」

「………な、何言ってるの?危険な最前線だとか、捨て駒みたいな任務ばかり与えられるのよ!?」

何だそんなことか……

「俺がもといた組織じゃあ、魔王軍の幹部クラスが入り乱れる戦場に身一つで送られたりしてたんだぞ。今日だってその四天王と会ったけどこうやってピンピンしてるしな」

「俺だって、こっちの何倍もの戦力のある連中に気合いと根性だけで打ち勝ってきたんだ。今さらこんな戦況、屁でもねぇよ」

「………えっ?それはなんというか、運が良かったわね。普通は四天王クラスと対峙したら、まず無事じゃすまないわよ?」

運……たしかに運が良かっただけかもしれねぇ

けど、そうじゃないかもしれないだろ?

「あの程度の相手なら、万全の状態なら五人は相手に出来るな。ヒーローって基本五人組で襲ってくるし」

「あんなやつ本気のミカの敵じゃねぇよ。俺ももっと装備が使えりゃあな…そういや結局獅電には一度も乗ってねぇなぁ」

 

 

「隊長達は一体何者……」

 

「そんな事いいじゃないか。て言うかよく考えたら俺の隊って女と後輩しかいないじゃん。こんなん頼まれたって辞めねーよ!」

「結局お前はそこだよなぁ。ま、良いけどよ」

 

「…さて、もう随分遅い時間だけど、これからどうするの?今日は作戦行動があったから、明日はお休みよ?」

「マジで?俺、前の職場で三日間徹夜で戦闘した後で上司にパシりに使われたことがあるんだけど」

「うちはそこまで酷く無かったが………いや、一週間近くぶっ通しでゲリラ戦やらせたりしたな」

あれは状況が状況なので仕方なかったようなものなのだが、メリビットの言う通り、違う方法もあったのだろうか

そんな俺達の職場のブラック事情に少し引きながらグリムは

「そ、そう……。結構苦労してるのね。ねぇ二人とも、もしどちらかこの後予定が無かったら……」

 

「私とデートしない?」

 

そんな、思春期を弄ぶような事を言ってきた

 

それを聞いた6号が少し考えてから言う

「いいけど、カップル狩りとかじゃないだろうな」

 

……何でこういうときだけ冷静なんだお前は

 

 

 

 

 

夜の歓楽街

 

それは子供たちは寝静まり、夢を見始める頃に開く大人の世界

 

美男美女があちこちで体を絡めて歩く道で俺は…

 

「あははははははは!!」

「夜の町中で何させられてんだ俺は!くそっ!」

 

車椅子にグリムを載せて爆走していた

 

本当になぜこんな事をしているだ俺は

 

イチャイチャしているカップルに、幾度となく車椅子を手に突っ込みながらずっと同じことを考える

当のグリムが満足そうな顔をしているし、俺も悪行ポイントが加算されるのでそれは良いのだが……

別にあいつらが別れてもお前に惚れる訳じゃ無いだろとうっかり言った時のグリムの顔はそれはそれは恐ろしいものだった

 

ちなみに、悪行ポイントの稼ぎ方を知らないんだからちょうど良いだろと、6号は帰っていった

たぶんそんな事まったく関係無しに、面倒だからとっとと寝に行ったのだろう

あいつは女好きの癖に相手を選り好みするところが最高に図々しい

「副隊長!この車椅子は凄いわ!軽いし速いし、こんなの知ったらもう前の体には戻れない!」

「ああそうかよ!なんてったってキサラギ製だからな!あいつらの事だ、きっと変形とかジェット飛行とかついてる奴もあるぞ!」

「最高よ!今夜は最高の夜だわ!あっ!副隊長見なさいな!前方にカップル発見よ!」

「ちくしょう!ああ分かったよ!連れてってやるよ!どうせ後戻りは出来ねぇんだ!連れてきゃいいんだろ!途中にどんな障害があろうと!お前を!俺が連れてってやるよ!」

 

《悪行ポイントが加算されます!》

 

数えきれない程のカップルの間に突っ込み、悪行ポイントがそれなりに貯まったころ

俺達の前に一人の女が立ち塞がった

「そこの二人!なんて迷惑な事をしているの!?ここはカップル憩いの逢引き街なのよ?そんな物で走り回るならよそでやりなさい!」

「だからこそよねぇ?」

「……えっ?」

 

「確信犯なの!?ちょっと署の方まで来てください!話はそこで伺います!」

聴いても大した話は出てこないと思うのは俺だけだろうか

そんな俺をよそに邪悪な笑みを浮かべたグリムが警官に囁きかける

「汝、こんな遅くまで働かされる者よ、素直になりなさい。憎いでしょう、カップル達が!」

「いえ、私は彼氏がいるんですが……」

それを聞いて車椅子の上からげしげしと警官を蹴りつけるグリム

これって公務執行妨害にあたらないだろうな

流石に本物の犯罪を進んでやるほど落魄れるつもりは無いんだが……

 

と言うか

「お前足普通に動くじゃねぇか。何か問題があるのは腰か?」

「これは呪いの反動よ、ゼナリス様の力を借りる時は、いろいろと制約があるの。まず、呪いは必ずしも成功するとは限らないの。私ほどの場合、成功率は八割といったところね。そして呪いにはそれ相応の対価が必要で、失敗するとその呪いは私に降りかかるわ」

 

「……そうか、それで足の力を」

「これは靴を履けなくなる呪いのせいね」

「お前、ちょっとミカに謝ってこい」

「な、何でよ!三日月は普通に歩けてるじゃない!」

ミカはあれでも右半身不随になったことがあるんだよ

それも、俺や鉄華団のためにバルバドスのリミッターを解除した結果でだ

なのにこいつときたら……

 

警官の女もあんまりな理由に呆れたのかやるせない表情を見せる

「な、何てしょうもない事を……。なんだか署に連行するのもバカらしくなってくるわね……」

 

それを聞いたグリムは目を光らせ、いかにもお手製な人形を懐から出して掲げ……

「しょうもないですって!?そこまで言うなら見せてあげるわ!偉大なるゼナリス様!この彼氏持ちに災いを……!」

「止めろバカ!警官にそんなことしてただで済むわけねぇだろうが!ずらかるぞ!!」

「あっコラ!待ちなさい!」

「そうよ副隊長!あの女にはタンスの角に足の小指をぶつけた痛みを味わせてやるの!」

何でそうしょうもない呪いしかかけられないんだ

 

ひととおり走り回って警官を撒いた俺達は、人通りの少ない路地を進みながら文句を垂れる

「まったく…。お前だって一応はこの国の兵士なんだろ?カップル狩りといい、バカはほどほどにしろって」

「それはそうだけど…副隊長だって途中ノリノリだったじゃない」

あれはいろいろと自暴自棄になってたからだよ

グリムを死なせて気分も落ち込んでたし、悪行ポイントも稼げたからな

 

しかし警察組織相手となると話は別だ

ここの警察に、ギャラルホルンほどの横暴と権力は無いだろうが、それにしたって心臓に悪い

「でも警察に手を出すのは止めとけよ。ああいう組織に手を出すとろくな事にならないからな」

 

「いやよ、これはゼナリス教の教義でもあるんだから。それに、警官ってのは職務に追われるあまり、出会いに乏しいものなの。あの女は例外だったけど、きっとみんな私の気持ちを理解してくれるわ」

「そんなバカな宗教があってたまるか。それに万が一捕まってみろ、アリスがどんな顔をするか…」

 

 

 

「ふぅ、今日はこのぐらいね。ありがとう副隊長、楽しかったわ」

「何一仕事終えてスッキリしたみたいな顔してんだ……。まぁいい、家まで送らなくても大丈夫か?」

グリムを一人でいかせると、またカップルに噛みついて今度こそ留置場送りにされかねない

それを抜きにしても、これ以上変な呪いを自分に重ねたら本格的に足手まといになる可能性がある

 

俺の心配を聞いたグリムは、何を勘違いしたのか頬を染め

「副隊長?それってもしかして乙女の部屋に入れるんじゃないかって期待してるの?ダメよ。私たちまだ出会って日も浅いんだから……。こういうのはもっと段階を踏んでから……。ねぇ待って!無言で立ち去ろうとしないで!」

 

車椅子に座りながら器用にしがみつくグリムを振りほどきながら、グリムに聴きたい事があったのを思い出す

「…なぁ、そういや一つ聴きたいことがあるんだが」

「……なぁに?」

 

 

「その不死の力ってやつは、誰かに与えたり出来るのか?」

その質問に、グリムは顔を固め、俺の体を掴んでいた手を離した

 

グリムの不死の話を聞いてから、ずっと気になっていた事を尋ねる

グリムが、険しい表情で言う

「副隊長、それはどういう事かしら」

「そのままの意味だよ、誰かから貰ったりして手に入れられる物なのか?」

 

俺の質問に、グリムは表情を曇らせる

その顔は、なんだか悲しそうにも見えた

 

「……副隊長、悪いけどそれは教えられないわ。でも、これはあなたのためでもあるのよ」

そこまで言ったグリムは、一息ついてから、俺の目をまっすぐ見て言った

 

 

 

「死ぬのは、本当に辛いから」

 

と、そんな当たり前の事を言った

 

 

「知ってるさ。俺も、一度死んでるからな」

 

 

それは、ミカとキサラギの幹部以外、誰にも言っていない秘密

当然、グリムが驚きの表情を見せる

「……えっ?……ちょっと待って、それってどういう事なの?まさか副隊長もゼナリス様を……」

 

「いや、理由は知らねぇ。でも、俺は確かに一度死んでるんだよ。だから死ぬのが辛いってのはわかる」

 

 

 

「けどな、死ぬより辛い事だってある」

 

 

 

「今の俺にとって、仲間を……家族を喪う事は…俺が死ぬよりも……何よりも辛い事だ」

 

「けど俺には力がねぇ、ミカやお前みたいな力が」

 

「それでも、俺は守りてぇ。護らなくちゃならねぇ。俺の大事な仲間を、自分が腑甲斐無いせいで目の前で喪うのは、もうたくさんだ」

 

 

 

 

 

 

翌日

 

結局あの後グリムが何かを言うことはなかった

 

そして俺に与えられた一応の休日ではあるのだが、特に何かする事があるわけでも無い

思えば何もやることがないなんて状況、かなり久しぶりな気がする

しかし職業病というのは恐ろしいもので、何もする事が無いと逆に不安になってくる

しょうがないので、昨夜の警官が居ないか気を配りながら街をうろうろしていると

 

「………何してんだミカ」

「あ、オルガ」

何やら人集りがあると思って覗いてみたのだが、何故かそこには屋台を出してカウンターに座るミカがいた

 

その店の看板には大きな文字でこう書いてある

「何やってんだこれ、じゃんけん屋……?」

 

ルールは簡単、ミカに負ければ出した小銭を支払い、勝てば今までミカがここで稼いだ金を全て手に入れる

普通ならこんなふざけた商売成り立つ訳が無いのだが、何故か次々に挑戦者が雪崩れ込んでくる

周りの連中が興奮している理由は、ミカの脇にどっさり積まれている金貨が大量に詰まった袋だろう

 

「ちくしょう!おい小僧!心を詠む魔法なんか使ってねぇだろうな!」

「また負けた!いったいどうなってんだ!」

おそらく今まで負けてきたであろう男達が、地に膝をつけて叫ぶ

 

「アリスに言われたんだ。ここに座って、じゃんけんに勝ち続けるだけで良いって」

そうミカが言う間にも、新たな挑戦者が現れ、金を台に置く

 

そしてお互いの拳が振り下ろされると……

 

「んあぁぁぁぁぁ!!」

「おい!もう何連勝だよあれ!」

「おかしい!絶対おかしい!!」

「でも魔法を使ってる素振りも無かった…まさか幸運の女神の加護でも……!?」

騒ぐギャラリーをよそに払われた金を無造作に袋に詰めるミカ

 

ミカが勝ち、挑戦者は負けた

それだけなら、運が良かったなで終わるのだが

 

周りの連中は気づいていないが、俺にはわかる

ミカは、相手が何を出すか分かってから自分の手を決めているのだ

つまり、超高度な後出しじゃんけん

ミカの超人的な反射神経の成せる技だが、それを隠してやっていると言う事は……

 

《悪行ポイントが加算されます!》

小さな効果音と共にミカと俺にだけ聞こえるアナウンスが流れる

 

「なるほどなぁ……」

これぐらいならキサラギで改造手術を受けた6号にも出来そうなもんだが、あいつがやると絶対ボロが出るだろう

 

とうとうイカサマだとキレて暴れだした相手をアイアンクローで返り討ちにするミカを背に、俺は城の兵舎に帰る事にした

 

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