少年兵、派遣します!   作:アカザタナ

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搭と悪党

俺達が最初の戦いを終えてから数日が経過した

あの後何度か出撃し、魔王軍の手勢と小競合いを繰り広げているが、ハイネやガダルカンドの姿は無い

おかげで俺達は特に苦戦することもなく順調に手柄を挙げているわけだが

 

「おかしい……」

ある日、6号がそんな事を言い出した

「……何がだ?」

「珍しいね、6号がそんな難しい顔するなんて」

「三日月も6号の事が分かってきたじゃないか。どうした6号、何か気になる事でもあったのか?」

いつになく深刻そうな顔をする6号に、何かあったのかと三人とも6号に向き直る

 

「俺達はここに来て、度重なる活躍を収めた。なのに、誰も俺の事を好きになる気配がないんだ」

「「………は?」」

「………」

そんな6号のふざけた台詞に、アリスと俺はポカンと口を開け、ミカはポイントで取り寄せた農作の本を読む作業に静かに戻った

 

俺達の反応が納得いかなかったのか、6号が立ち上がって捲し立てる

「は?じゃない。いいかお前ら、俺はこの星に来てから今までいろんな女と出会ってきた。俺の隊の連中に加え、炎のハイネまで!それにこの国は戦争中だから騎士団も警官も女ばっかりだ!なのに!」

「その警官達から、街中を疾走するグリムを何とかしろって苦情が来てるぞ」

あいつまだそんな事やってんのか

「な、の、に!!何でか知らんが未だ何一つ色気のあるイベントが起こらないんだ!」

 

「スノウが男湯と女湯を間違えて俺の入浴中に入ってきたりとか!」

「だからお前、風呂入るとき着てた服を毎回見辛い位置に隠してたのか」

スノウも貴族連中に弱みを作ってやろうと定期的に同じ方法を使ってるからたぶんバレてるぞ

 

「寝ぼけたグリムが部屋を間違えて俺の布団に潜り込んで来るとか!」

「部屋に入ってきたらたぶんオレかオルガが気付いて止めると思うよ」

そもそもあいつと俺らとじゃ生活サイクルが真逆だから寝ぼけるて来る事はあるのか疑問だが

 

「腹を空かせたロゼがウインナーと間違えてうっかり俺のを……とか!」

「それについてはただただ最低なだけだぞ」

うん、それについてはただただ最低なだけだぞ

 

「俺は負け続きだったこの国に初の勝利をもたらした英雄様だぞ!それだけでも惚れられ要素は高いはずだ!しかも俺は、ラッキースケベを期待して廊下や交差点の角で待ったりと日々の努力も怠っていない!」

「あれ、邪魔だから止めてくれって色んなとこから苦情がきてるぞ」

「お前が面倒を起こすと俺達にしわ寄せが来るんだから止めろよ…。このあいだなんかも黒い服の人はお断りだって入店拒否されたりしたんだぞ……」

 

苦言を呈しても6号の欲望は収まるところを知らない

「俺も美少女に告白されて偶然突風が吹いて聞こえなかったりだとか、相手の好意にちっとも気づかず、『この鈍感男!』とか罵られたい!そんでそんで、何人かの美少女に『一体誰を選ぶの!?』とかいって修羅場に発展してみたい!そこからさらにアスタロト様とかベリアル様に、『行かないで6号、実は私あなたの事が………』とか言われてーなーちくしょう!!」

 

…………

 

「…今日の6号は一段と頭がおかしいぞアリス。だから6号をこの星の薬草の実験台にするのは止めとけって言ったじゃねぇか」

「ちゃんと成分に問題は無いからお前も安心して生活しろ。おい6号、ちょっと医務室までついてこい。自分が精密検査してやるからな」

おい、その言い方だと俺にもなんか投与しただろ

 

「俺は正気だっつーの!」

「正気じゃない奴はみんなそう言うんだぞ。まったく……」

人間くさく深いため息を吐いたアリスは、6号の手を自分の胸に持っていくと……

「あんあんあーん」

 

……え?今の何だよ

 

「美少女の胸が触れて良かったな」

「ロボットのシリコン揉んで何が楽しいんだ!あともうちょい感情込めて言えよ!て言うか違うんだよ!いや、もちろんエロい事もしたいんだけども!」

「お前って奴は……」

大声で囃し立てる6号の声が聞こえたのか、ドアからスノウの声が聞こえた

「き、貴様ら一体何を叫んでいる!ドアの外まで聞こえているぞ!今から会議を行うからお前達もついてこい!」

6号とアリスが何をしていたのか気になったのか、ドアからスノウが少しだけ顔を出した

そこにミカが近づいて言う

「ねぇスノウ、ちょっと6号と一緒にお風呂入ってくれない?」

「たたっ切るぞ三日月!お前まで頭がおかしくなったのか!?」

「そうだぞ三日月!こんな胸だけの女と風呂なんて入ってもそんなにしか嬉しくない!」

「お前いい加減にしろよ!?何でさっきと言ってること変わってんだ!!」

「……医務室の予約は一杯だなこりゃ」

 

 

 

 

先程の会議の内容は、勇者が敗北したという話だった

なんでもダスターの搭と呼ばれる場所にある秘宝とやらを手に入れなければ魔王のいる城への道が開かないらしく、そのために搭を攻略に行ったが返り討ちにされたそうだ

ジリ貧なグレイス王国として勇者だけが最後の綱であり、その勇者のため、総力戦でダスターの搭を攻略するとのこと

そこで6号が吹き抜けになっている搭の構造を利用して焚き火でいぶり出す作戦を立てたのだが却下されたらしい

「で、正面突破って訳か。ホントにこの国の連中は戦術ってもんを理解しようとしねぇな」

「残虐な行いは人民を恐れさせるからな。貴様らの基準で戦っていてはどちらが魔王軍か分からなくなるぞ」

そういうのは国内から卑怯者を追い出してからにしろと言いたい

「ま、そういう訳だから、俺達はこのままここでのんびりしようぜ」

荷物から携帯式のコンロを取り出してコーヒーを入れだした6号に、スノウが突っかかる

「な、何を言っている、既に搭の攻略は始まっているんだぞ!しかも相手は勇者すら任したとびきりの手柄首だ!」

「お前なぁ、勇者って強いんだろ?その勇者を負かした奴を正面から倒そうなんて怖いじゃん。夕方になってグリムが起きるまで待って、それでも搭が落ちてなかったら考えようぜ」

「き、貴様というヤツは!戦闘においてはそこそこ頼りになると思っていた私がバカだったわ!もういい!私一人で行ってやる!手柄は分けてやらんからな!」

あいつ人の手柄は横から頂戴しようとしてくる癖に自分の手柄は譲らないつもりか

あいつが出世出来た理由がわかった気がする

 

「いいんですか?一人で行かせちゃって……」

さすがに心配なのか、ロゼがスノウの後ろ姿を眺めながら言うと6号は

「あいつそこそこ強いしやられる事は無いだろ。その内疲れて帰ってくるよ」

信頼してるんだかしてないんだか分からん事を言った

 

 

「……ハァ………ハァ……」

6号の言った通り、息を切らしたスノウが搭から帰ってきた

息が上がっているが、大した怪我もしていない辺り、やはり実力は本物のようだ

「……ま、まだグリムは起きないのか?もう夕方だぞ……」

そう聞かれたミカは黙って指差す

そこには車椅子で寝ながら何かうわごとのように呟くグリムの姿

「あああ…スノウが……、スノウが真っ赤な顔で隊長に……私の胸でも何でも好きにするがいいと……はしたないおねだりを……」

それを聞いたスノウが腰から剣を抜く

「待てスノウ、もうすぐ起きそうなんだから永眠させようとするんじゃねぇ」

「あうあ……それに副隊長が……俺がお前を守ると……お前は大事な家族だって言って…」

それを聞いた俺は腰から銃を抜く

「待てオルガ、銃で殺すと復活の時に弾丸の摘出が面倒だ、ナイフでサッとやれサッと」

もう復活させる必要無いんじゃないだろうか

「二人とも止めてください!これでも今度こそ活躍するんだって張り切ってたんですよ!?」

「……はっ!私今素敵な予知夢を……」

確かに仲間は家族同然だが、グリムは絶対違う捉え方をしてるだろ

「オルガ……お前いつグリムと良い仲になったのだ?」

「なってねぇよ、二人で車椅子使ってカップル狩りしただけだ」

「あれお前の仕業だったのか」

「それよりアリス、どうだ?行けそうか?」

搭の外壁を触っていたアリスに尋ねる

「おう、搭は頑丈な石造りだが、キサラギ製プラスチック爆弾の敵じゃない。何ヵ所か爆破すれば崩れ落ちるだろうよ」

「オルガもキサラギ色に染まってきたじゃねぇか。こういう作戦は俺も大好きだぜ」

そんなアリスと6号を見て何かを察したのか、スノウが震えながら俺を見つめる

「お、おい貴様らまさか……」

「ああ、こんな何のためにあるのか分からない搭、残しとく意味もねぇ。こっちには三日月がいるんだ。ちゃっちゃと秘宝をいただいて、搭ごと吹き飛ばす」

俺がそう言った後ろで、ミカの姿が白い悪魔へと変貌を遂げた

 

 

 

ダスターの搭の最上階

そこに、何人もの兵士を返り討ちにして上機嫌の二人の魔族がいた

「フハハハ!これで何人目だ兄弟?俺はまだ、かすり傷一つ負わされてはおらんぞ!」

「ヒッヒッヒッ!ま、勇者ですら敗北した俺達に、ただの兵士など敵うまいよ!」

これから何が起こるかなど知るよしもなく、高笑いを重ねながら言い合う

「フハハハ!夢が広がるな兄弟!そうとも、俺達が揃えば、最近良い手駒を手に入れたって噂のあのハイネだって敵うまい!」

「ヒッヒッヒ!そうともさ!いずれ世界に轟くぜ!俺達………」

「秘宝ってどれ?」

「ん?ああ、秘宝ならそこの台座に……」

 

…………

 

「だ、誰だてめぇ!!?」

「こいつ俺達の配下じゃねぇぞ!?」

あまりに自然に聞いてきた謎の金属製の魔物に、うっかり秘宝の場所を話す二体

「ど、どうやってここに来やがった!!階段はここだけ………!」

「まさか飛んで来たとでもいうのか!?あ!おい待て、秘宝は渡さん!」

 

形無しの番人に踵を返しながら無線機で報告する

「盗れたよアリス」

『ご苦労さん。じゃ、やるか』

 

「は?おい貴様一体何を……」

「お、おい!人間の兵士達はどこに行った!?」

 

 

 

三日月がスラスターを全開に飛び上がった瞬間、ダスターの搭は基礎部分を木端微塵にされ、音を立てながら崩れ落ちた

 

 

 

 

「き、貴様らは……………」

「どうだ?これが鉄華団流の搭の攻略だ」

「なかなかやるじゃねぇか。キサラギ流に負けず劣らずの良い作戦だったな」

「ああ、俺はオルガはやれる男だって信じてたぜ」

「ねぇ、これ結局私何もしてない……」

「ふ、副隊長酷い………」

 

巻き込まれた魔物達の悲鳴と共に、いつものアナウンスが流れる

 

《悪行ポイントが大量に加算されます!》

 

 

 

 

 

俺が悪の組織としての不思議な達成感を得、代わりに隊員と騎士達にゴミを見る目で見られた日の晩

「おい、お前達。居るか?」

俺達の部屋にスノウが訪ねてきた

「清く優しい6号さんは、川のゴミ拾いに出掛けてるよ」

「ふざけるな!居るじゃないか!」

6号の言葉にたまらずドアを蹴り開けるスノウ

「こんな時間に男の部屋に来るなんて、誘ってんのかおっぱい女」

「夜遅いんだからあんまり大声出すなよ守銭奴女」

「おいおっぱい女。自分は気を利かせて席外しといた方がいいか?」

「そのバカな呼び名は止めろ!あと、貴様は普通の罵倒を混ぜるな!」

 

スノウは苛立ちでプルプルと震えながら、俺達の前に両拳ほどの大きさの袋を差し出した

「何だコレ?」

「それは貴様の給金だ。ここ最近の戦果の報奨も含めたな」

それを見て固まる6号を不審に思い、俺とアリスはその袋の中を覗くと

「おお…」

「ワオ…」

そこには金貨のような物がぎっしりと入っていた

「まったく、私はまだ納得していないからな。あんな搭の攻略などあんまりだ。確かに犠牲も少なく搭の秘宝を手に入れ、魔物を壊滅させることが出来たが……おい、何を固まっている?」

「なぁスノウ……この金貨の量だと、この国でどのくらいの価値があるんだ?」

「ああ、お前は紙幣価値すら忘れたのか。その量だと、一つの家庭が一年は贅沢な暮らしが出来る程度だが…不満か?分かるぞ、私も金に関してはうるさい方だからな」

 

『お前ら、俺もうスパイ辞めるわ』

 

と、そんな6号の告白を………

『おい待て早まるな。お前日本語で言ってくるって事は本気だろ』

『お前、俺らの任務に地球の未来がかかってるのを忘れたのかよ』

 

慌てて制止するが、6号は振り返って目尻に涙を浮かべて叫ぶ

『いいか、よく聞け。俺はサハラ砂漠で一ヶ月以上戦闘させられてようやく帰ったと思ったら、何の労いもなく上司にパシりに使われた事があるんだぞ!そして給金はいろいろ引かれて手取り十八万だった!』

 

『むしろ、なんで今まで辞めなかったのか不思議なくらいだな』

『そもそもキサラギって辞めたくなって辞められるもんなのか……?』

キサラギのブラック事情を聞かされ、今さら入った事を後悔する

 

「どうしたお前達。また変わった言葉を使いだして」

「気にすんな。貰った金が予想以上に多かったから興奮してるんだ」

「そ、そうなのか?ならいいが……これはお前達の分だ」

そう言って、6号と同じ袋を俺とアリスとミカにスノウが渡す

「おおう、これはどうも。人様から何かを貰うだなんてショットガン以来だな」

「手数料とか言ってちょろまかしたりしてないだろうな」

「しとらんわ!」

俺達が浮き足立つよそで、ミカは貰った袋を無造作に部屋の隅にある何倍も大きな袋の上に投げ置いた

それを見たスノウが不審そうに尋ねる

「そういえば三日月はずいぶんと荷物が増えたな……。なんだその袋は」

「これ?お金」

「……全部か?」

「うん」

そこまで聞いたスノウは膝をついて三日月を見上げる姿勢をとると……

「三日月様、実は私にいい話があるのですが」

「お前、子供に金をせびって悲しくならないのかよ」

お前だって昨日は飲み代が欲しいとか言ってミカに泣きついてただろ

 

 

 

その翌日

 

俺はまたしても暇を潰すために街へくり出す事にした

 

ミカはもっぱら部屋で野菜や農業に関して書かれた本を読み漁っている

スノウが仲介料を要求して城の図書館から本を持ってきたが、ミカは俺達の言語ですら上手く読めるか怪しいのに、この星の文字で書かれた本なんて読めるわけ無いので丁重にお断りした

別に仲介料がかなり割高だったからではない

 

何か面白い事でも無いかと兵舎を出た時、ロゼの叫ぶ声が聴こえてきた

「勘弁してください!本当に無理なんですって!」

「何やってんだお前ら」

魔王軍幹部クラスの実力派変質者でも出たかと思って駆けつけると、そこにはロゼを押さえつける6号と、その前で昆虫を手にわきわきさせているアリスがいた

 

状況を飲み込めないでいる俺を見つけたロゼが、助けを求めて懇願してくる

「ふ、副隊長!副隊長は助けてくれますよね!あんなことしても、仲間には優しい人だって信じてますから!」

あんなこととはダスターの搭を魔族ごと粉々にしたことだろうか

あれはあの状況での最適解だったと思うんだが

しかし、ロゼがそこまで怯えるなんて一体どんな虫なのか

気になってアリスの掴んでいる虫を見ると、何かと思えばただのバッタだった

「なんだ、バッタって不味いのか?」

「いや、日本じゃみんな大好きだぞ」

「だとよ。食ってみたらどうだ?」

「副隊長もそっち側なんですか!?もう誰も信じられない!」

6号に押さえつけられながら必死の抵抗を見せるロゼを前に、アリスに目的を尋ねる

「嫌なら別に無理しなくて良いと思うんだが…なんで急にこんなことを?」

「いやな、コイツは食べた物の遺伝子情報を取り込んで、それに影響されるだろ?」

「すまん、さっぱり分からん」

俺だって最低限の教養と基礎知識が備わってるだけで、学力的には6号と大差ない

ただちょっとまともな思考が出来るだけだ

「……そうか。まぁつまり、ロゼの体がどうなってるのか調べてたんだよ」

 

「それは俺も気になるけどよ…だったらなんでバッタなんだ?」

「そりゃ、バッタの力を取り込めば最強になるからだよ。キサラギじゃあ、バッタ型の怪人はタブーだったほどだ」

「へぇ、なら強くなれて良いじゃねぇか。なぁ」

「そんなわけ無いじゃないですか!たまに思いますが副隊長ってものを知らない時がありますよね!」

 

 

 

面白がった俺も加えた三人でロゼにバッタを食わせようとしたが、『やっぱり人類は愚かで滅ぼすべき存在なんだ!』と物騒な事を良いながら俺達を丸焦げにしようとしたので結局は諦めた

急に暴れて疲れたのか、ロゼが壁際で座り込み、それに合わせて俺達も横に背をつける

「前から聞きたかったんだけど、お前はどうしてここの連中にこき使われてんの?その強さならもっと良い仕事だってあるんじゃないか?」

「それもそうだな。なんなら真っ当に働いて、金で魔獣の肉を買ったって良いわけだし」

「あたしに戦う以外の事なんて出来ませんよ…。それに、あたしは自分の正体を知りたいんです。あたしがこの国のために働いたら、研究結果を教えてくれるって約束でして……」

 

いったいどれ程前の話なのか検討もつかないが、とある老人によって、ロゼは産み出された

しかし、その老人は禁断の秘術に手を染めて命を落としてしまい、その老人は秘術の直前、ロゼに様々な遺言を残した

 

ロゼが覚えているのはそれだけであり、ロゼ本人も研究や遺跡の事について何も知らないので、現在この国が進めている調査以外で、自分のことを知る方法が無い

 

そしてこの国はそれをいいことに薄給で死地に放り込んでいるわけだ

 

『なぁアリス。今からでも違う国に乗り換えて、グレイス王国に宣戦布告させよう』

『まぁ待て、そんな事しなくとも遺跡の情報さえ手に入れれば、ロゼの引き抜きはそう難しい事じゃない。今一番の脅威である魔王軍さえ潰せれば、グレイス王国も侵略対象だしな』

『ロゼはすでに見た目も怪人っぽいしな。きっと優秀な戦闘員になるぞ』

 

「な、何ですか変な言葉を喋りだしたと思ったら、急に笑顔になって……」

6号とアリスがロゼの肩を両側から掴み、俺はロゼの頭の上に手を置く

「ロゼ、今日から正式な仲間にしてやろう」

「ああ、仲間ってのは家族同然だ。安心しろこの国の連中みたいに酷い扱いはしねぇよ」

「そうだな、これからは自分を母親だと思ってくれていいぞ」

「あ、あたし正式な仲間じゃ無かったんですか!?と言うか、だったらバッタを食べさせようとしないでくださいよ!それにアリスさんの方があたしより年下じゃないですか!な、何ですかこのバッジ!勝手にくっ付けないでくださいよ!何で急に拍手するんですか!やめてください!バッタも地球ヤシも食べませんから!」

 

ひとしきりロゼで遊んだ俺達は解散し、それぞれまた暇になった

俺はと言うと、前々から気になっていた事をロゼに尋ねた

「なぁロゼ、お前夢は何かあるのか?」

「夢ですか?前にも言いましたけど、世界中の魔獣を食べて最強のキメラになる事です」

それは最初の戦闘の前にも聞いた、お爺ちゃんの遺言の一つ

 

「そりゃ、お前を造った人間の夢なんじゃねぇのか?」

俺の質問に、ロゼが目を落として言う

「それは……わかりません………。でもあたし、お爺ちゃんのことが大好きだから、お爺ちゃんの願いは叶えてあげたいんです」

「そうか……」

 

「…やっぱり変ですよね。あたしにお爺ちゃん以外の記憶がほとんど無いからかもしれません。あたし、皆の言う生きる目的も全然理解出来なくて……」

「いや、変じゃねぇよ。そりゃ、すげぇ立派な事だ。その爺さんも、お前みたいな孫を持って誇らしいだろうよ」

「…副隊長………」

本当の家族かどうかとか

そんな事は重要じゃねぇ

 

子供と親が互いを信じる事

これに勝るもんはねぇ

 

「ロゼ、お前好きな事は?」

「た、食べる事です!」

俺の問いに、ロゼが元気よく答える

 

「よし、じゃあ、それがお前の生きる理由だ。うめぇもん腹一杯になるまで食って、強ぇえもん吐くくれぇ食って、世界で一番のキメラになれ!そうすりゃお前は世界で一番の自慢の孫になれるんじゃねぇか?」

「………!」

 

俺に出来る事なんか、悩みがあったら相談に乗って、敵がいたら一緒に戦うくらいのもんだ

 

でも、それをしてくれる仲間がいるだけで、救われる奴も大勢いる

 

俺ももれなくその一人だった

 

 

鉄華団の団長だった男として、迷える家族は見捨てねぇ

 

 

「ありがとうございます副隊長!あたし、いつか隊長や副隊長も食べて、最強のキメラになって見せます!」

悪いが、それは遠慮させてくれ

だが、無邪気そのものなロゼの笑顔を見ると、それも良いような気がしてくる

いや、やっぱりダメだが

 

「よし!じゃあ俺の初給料でパーっと行くか!」

「わーい!副隊長素敵ー!」

 

こうして俺は戦闘キメラの本気の食欲を味わうことになり、当然初給料は消えて無くなった




ロゼの話は時系列的には前の回なのですが、今回に入れこみました

人の手によって産み出されて、目の前で唯一の肉親を失って眠りにつき、自分の正体も分からず何度も死地に送り込まれる
こう考えるとロゼだけ話が重い気がしますが、たぶんそんな深刻な話にはならないでしょうね
きっとろくでもない秘術だったに決まってますよ(紅魔族を見ながら)
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