少年兵、派遣します!   作:アカザタナ

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オルガは三日月を、三日月はオルガをそれぞれ必要として、お互い信頼しあってるの本編見ててよくわかりますね
この二人ほどの相棒はガンダム世界でもそうそう……
え?セイとレイジ?あっはい


軽犯罪と窮地

グレイス王国は夜でも街の灯りが消える事はない

魔王軍に攻められ、今や風前の灯と言ってもいいこの国でも、市民は一縷の希望を信じて当たり前の日常を送っている

ある者は幸せな家族と、ある者は息の合う友人と、ある者は信頼出来る同僚と

 

そしてある者は、将来を誓い合った恋人と

 

「きゃあぁぁぁぁ!」

「な、何ですかあなた達は!」

 

そんな恋人達の前で俺は

 

「俺は怪人カップル狩り男!カップルは爆殺する!」

「そして私はカップル狩り女!カップルは呪殺よ!」

 

車椅子を片手にポーズを組みながら口上を上げた

 

 

 

 

 

 

 

遡ること数日前

 

スパイだと口を滑らせた6号と、それを知ってしまったスノウとが一触即発の状態になった日

 

「スパイとはどういう事だ」

スノウの冷めきった声を聞いた俺達は、言葉を失ってしまった

「………」

「待て、ミカ」

ミカが拳銃を抜いて構えようとしたのを止める

6号はアリスと顔を合わせると、立ち上がって早口に捲し立てた

「お、お前ノックも無しにドア開けるとか!俺らが特殊な事してたら大惨事だぞ!それともエロイベント期待してんのかおっぱい女!」

「というか、この酔っぱらいの戯言を真に受けてんじゃねぇ。そんなだから常日頃6号に……」

 

そこまで言ったアリスは6号に言う

「こりゃダメだ。諦めろ」

 

6号が顔をひきつらせている後ろで、スノウは腰の剣に手を伸ばそうとして、その手を力なく落とした

「……お前達が何者かは聞かない。それは今まで国を守ってくれたせめてもの礼だ……」

 

 

「出ていくがいい。そして、二度と私の前に姿を見せるな……」

 

 

 

 

 

そうして俺達が軍を除隊し、グレイス王国の王都から姿を消してから数日後

俺はグリムの復活に使われた洞窟に来ていた

 

洞窟に入ってしばらく進んだところにある祭壇

そこにいた目当ての人物は、俺を見て目を丸くした

「ふ、副隊長!?どうしたのこんなところで!」

「よぉ、やっぱここだったか」

ゼナリス教の協会は街中を探しても見つけられなかった

だったら祈りを捧げるならきっとここだろうと思ったのだ

 

「急に辞めるなんて……。私達に何か言ってくれても良かったんじゃないの?ロゼがどれだけ悲しんだか……」

「それについちゃ、謝るしかねぇな」

「そうよ、それにスノウや私だって……」

「なぁグリム」

そこまで言ったグリムを止めた俺は

 

 

「ちょっと付き合ってくれるか?」

 

と、乙女心を弄ぶような事を言った

 

 

 

 

 

そして、グレイス王国に怪人カップル狩り男と怪人カップル狩り女が爆誕した

 

 

 

 

「嘘つき!副隊長の嘘つき!!」

さっきまでノリノリでカップル狩り女を演じていたグリムが、俺の服を引っ張りながら涙目で罵る

 

「これで十四組目か……嘘つきって何だよ」

それをはらいながら、メモ帳にチェックを増やす

腕につけられた悪行ポイントを示す数値は200と少し

この調子なら夜明けまでに400はいけそうだ

 

「うっうっ…。こんな夜遅くに女を誘っておいてまさかカップル狩りだなんて。乙女心を弄ばないで!」

「お前だって俺をデートっつってカップル狩りに付き合わせただろ」

そう言われたグリムはばつが悪そうに話題を変えた

 

「……それにしても、どうしていきなりカップル狩りに目覚めたの?副隊長もゼナリス様を崇めたくなったの?」

何の意味もなくこんなバカな事をしているわけではない

これは、最近集結し始めている魔王軍に対抗するための備え

この国で捕まらない程度の犯罪を犯して悪行ポイントを貯めるため、きっと今頃6号とミカも街中で軽犯罪に勤しんでいるはずだ

 

「カップルか魔王軍かお偉いさんか…この中で今ひどい目に逢わせられるのが、カップルだっただけだよ」

「どうしてそこがイコールなの!?カップルを恨む気持ちはすごくよくわかるけど、今日の副隊長は本当にどうしたの!?」

 

 

囃し立てるグリムに、今の俺達の状態を伝えると、少し安心したのか、胸に手を当ててため息を吐いた

「はぁ……。それじゃあ、隊長達は皆元気なのね?」

「おう、この国の外れに小さな家を借りてる。今は皆そこにいるよ」

 

それを聞いたグリムは、どこか遠くを見つめながら言う

「まぁ、これで良かったのかもね。近々、魔王軍が本格的にこの国を攻めるなんて話もあるし。軍にいたらこれまで以上に苛烈な戦いに巻き込まれる事になったでしょうから」

「あー、それについてなんだが……」

 

「俺らは俺らで、魔王軍とは戦わせてもらうぞ」

「……えっ?」

俺の言葉を聞いたグリムが、驚いた目で俺を見る

 

「6号も言ってただろ?この国を出るつもりはねぇって。俺らも、この国を落とされちゃ困るんだよ」

 

それはアリスの提案だった

今の拠点に設置中の、地球とこちらを繋ぐ転送装置は安定化に一ヶ月はかかる

その間に魔王軍によってこの国が落とされれば、転送装置は放棄せねばならない

しかし逆に転送装置さえ完成してしまえば、キサラギから強力な怪人や戦闘員を送り込む事も可能

 

つまり、一ヶ月耐えれば魔王軍なんて屁でも無くなるという事だ

なら、魔王軍を壊滅とまではいかなくとも、グレイス王国に一ヶ月耐えてもらい、後からキサラギの一人勝ちに持っていけばいいという訳だ

 

「副隊長達はこの国の人間じゃないのに…。ありがとう」

そんな俺達の打算を知らないグリムは、暖かな微笑を見せた

 

 

それからもう十数組のカップルを散らした頃、グリムが口元に手を当てて言った

「…ねぇ、確かにやってる事は最低だけど、これって副隊長が私をデートに誘ったって事で間違いないわよね。そうよ、カップル狩りなんて副隊長一人でも出来るじゃない。どうして副隊長は私を誘ったの?私との夜が忘れられなかったの?」

 

と、またそんな面倒くさい事を言い出したグリムに向かって言ってやる

「日頃からカップル狩りしてるお前がいれば、警察に絡まれた時にお前を囮にして逃げられるからだよ」

 

「私をトカゲの尻尾みたいに扱わないで!なんなの?そんなにこのあいだ弄んだことが許せなかったの!?」

 

「今の俺はこの国の軍人じゃ無いからな。あんまり派手なやらかしは出来ないんだよ」

「だったらなんで軍を抜けたのよ。スノウが近衛騎士団の隊長に戻った事と何か関係あるの?」

あいつ隊長に返り咲いたのか

それは俺達をスパイだと見抜いた功績なのだろうか

あれは立場上仕方の無い事だからスノウを責めるのはお門違いだが、あいつが本心で俺達を摘発したとは思いたく無いな

 

「……俺らが抜けてスノウも抜けたなら、今隊はどうなってるんだ?」

「私とロゼも近衛騎士団入りしたわよ。正直、あまり嬉しい話では無いのだけれどね」

いきなり四人も隊員が抜けたのだ

解散してバラバラになっているかと思ったが、スノウが隊長なら二人も悪いようには扱われないだろう

 

「本当に心配だったのよ?ロゼなんて心配で定食が五人前しか喉を通らなかったし、私だって九時間しか昼寝できなかったんだから」

「それ、そこまで心配してなかっただろ」

 

俺のツッコミを聞いたグリムはクスリと笑うと

「だって、あなた達は大丈夫でしょ?そりゃあいきなり居なくなってびっくりしたけど、アリスや三日月がいるんだもの、きっとどこでもうまくやれるって信じていたもの」

俺と6号はカウントしないのかよと言いたいが、グリムは続ける

「でもスノウは違ったわ。まるであなた達のことを忘れようとしてるみたいに、毎日訓練と指導に打ち込んで、ときどき目に見えて悲しそうにしたり苛立ったり……」

 

そこまで言ったグリムは、真っ直ぐに俺の目を見ながら言った

「スノウとあなた達に何があったのか、詮索はしないわ。でも、このまま何も言わずに去っていくのだけはやめて」

 

 

「……ああ。そんな事はしねぇよ」

あれで6号もかなり落ち込んでいたのだ

きっとひょんな事でスノウとも和解出来るだろう

いつかグリムやロゼにも、俺達の任務の事を伝える日が来るのだろうか

その時は、本当に全てを話そう

そんな事を考えながら路地を曲がると……

 

 

 

「ほーらお嬢さん、手も触れないのにズボンのチャックが下りていくよー!」

「きゃーっ!変態!!誰か来てぇぇぇぇ!」

 

 

 

そこには一人の変質者がいた

 

「……ねぇ副隊長。あれって」

「……あれは怪人チャック男だな。目を合わせるなよ、目の前でチャックを下ろされるぞ」

 

どこの国にも変態はいるもんだと自分を納得させながら、踵を返して来た道を戻る

 

「絶対違うわよね!ねぇ待って副隊長!真剣に悩んでた私たちが本当にバカみたいじゃない!」

 

 

 

もう夜も明けるかといった頃

警察と何度かチェイスするハメになりはしたが、無事に目標だった400ポイントを達成した

「まぁ、これで良いだろ。ありがとな」

「……いいように乙女を利用して終わったらポイなんて。この埋め合わせはしてもらうからね」

「……こっちは一応魔王軍と戦うためにやってるんだがなぁ」

「余計この行動の意味がわからなくなったわね……。まぁ私も楽しかったから今日はいいけど……」

そう言って一人で器用に車椅子を押して帰ろうとするグリムを呼び止める

 

「なぁ、やっぱりダメか?」

 

「………何がかしら?」

それを聞いたグリムはとぼけるように言う

 

それは今日グリムを誘ったもう一つの理由

 

俺の目を見て察したのか、グリムが真剣な声色で言う

「……副隊長、この話はもう止めましょう。じゃなきゃ、私はあなたを呪わなきゃならなくなるかもしれないわ」

 

「ああ、呪いで不死になったっていいんだぜ、俺は」

 

そんな自暴自棄とも言える俺の言葉を聞いたグリムは、顔を暗くする

その顔は怒っているようにも見えた

 

「副隊長、前からときどき思うことがあったけど、何をそんなに焦っているの?」

 

「言っただろ?俺には力が無ぇんだよ」

 

 

「ミカは昔、俺のために身をなげうって戦った事があんだ。俺はその時……いや、その時だけじゃねぇ。いつも…いつも俺はそれを、ただじっと待つしかできなかった。それで、ミカが遠くに行っちまうんじゃないかってずっと不安だった」

 

そうだ

 

俺達は、俺達のたどり着くべき場所を目指して進み続けた

 

俺はそのために、ミカ達の進む道を指差し続けた

 

でも、そこを進むのはいつだってミカで

命令を下した俺は、それを見ているだけで

 

なら俺は……

 

「俺はもう、三日月に守られるだけじゃダメなんだ。俺はあいつを、男として尊敬してる。あいつのために、俺はいつでも、意気がって、最高にカッコいいオルガ=イツカじゃなきゃダメなんだ」

 

そこまで聞いたグリムは、真剣な、それでいてどこか悲しそうな顔で言う

 

「副隊長……。あなたの気持ちは分かったわ。でも、あなたの仲間も、そう考えていたんじゃないの?」

 

 

「あなたは確かに三日月ほどの強さは無いかもしれない。けれど、そんなあなたを必要としていた人がいた……。そんなあなたのために強くなろうとした人がいたんじゃないのかしら」

 

 

 

「あなたが仲間をどれだけ大切に思っているかは分かったわ。でも私には、今のあなたは自分を追い込んでいるだけにしか見えないの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日

 

アリスが借りた俺達の拠点で

「うわぁぁぁぁ!聞いてくれよお前ら!!街の連中が酷いんだよ!」

買い出しに行ってきた6号が泣きながら作戦会議室に飛び込んできた

きっと何か酷い目に逢ったんだろう

大丈夫だ、何があっても仲間である俺達だけはお前を温かく迎え入れてやる

 

「どうしたチャックマン。チャックの換えなら仕立て屋に行けよ?」

「どうしたんだいチャックマン。チャックに皮でも挟んだのかい?」

「オレ、チャックって使ったこと無かったけど、ああやって使うわけじゃないと思う」

「チャックチャックうるせぇよ!!こちとら魔王軍と戦うためにやってんだぞ!」

 

涙目で文句を言う6号に、アリスが尊敬と呆れを含んだ目で見ながら言う

「悪行ポイントを稼いでこいって言ったのは自分だが、まさかあんな方法で貯めようとするとは思わなかったよチャックマン」

「しかも、500ポイント近くもな。あんなんでそこまで稼ぐとは、やるじゃねぇかチャックマン」

「ちくしょう!この街の連中も覚えてろよ!全部終わったら俺がただの変態じゃないって知らしめてやる!」

一応変態って自覚があったようで何よりだよ

 

 

「オルガが400、6号が500、三日月が400、細かいのを合わせて1400はポイントが使えるわけだ。これだけあればかなりの装備や武器を呼んでも平気だな」

「うひょー。俺、今までそんなポイント貯めたことねぇわ。なぁ、少しエロ本に使っても…」

「良いわけねぇだろ。それで、どうするんだ?」

 

「まずは地雷だな。6号とオルガからそれぞれ200出して400ほど使って、小型の魔族用のクラスター系のヤツと、ゴーレム用の対戦車タイプをそれぞれ用意しよう」

 

「それと三日月の分だが、バルバトスは現状一番安定した戦力だ。三日月が持つ300ポイントはそのままバルバトス形態用にとっておいて、あとは好きに使っていいぞ」

ミカは以前はじゃんけん屋とダスターの塔の稼ぎで一時期700近くポイントがあったのだが、あいにく地球ヤシと農作物の本に道具、それといつの間にか頼んだ子供用の教科書やトレーニング器具に使ってしまった

 

「そういや昨夜ミカは何してたんだ?」

「街の人の家とか店に行って、高そうな物を壊したり持ち出したりしてたよ」

 

「…それって普通の泥棒なんじゃ」

「違うぞオルガ、これには借金の取り立てという大義名分があるんだ。だからちょっとやり過ぎて悪行ポイントを稼いでも、犯罪にはならない」

そんな都合よくいくもんかなぁ

 

「これで残るはオルガに200と6号に300。切り札級の装備には200は残しときたいところだが」

 

それを聞いた6号は嬉々として言う

「じゃあ100ポイントは好きに使っていいって事だよな、何呼んでやろうか」

「切り札ってのは何があるんだ?戦車とかビーム兵器とかか?」

 

「なんでもあるぞ。

森の植物に寄生して全部枯らし、最後には自分も死滅する生物環境兵器。

太陽光を使ってレーザーを生み出し、圧倒的な制圧力を持つ巨大虫メガネ。

超エネルギーで杭のような物を打ち出すことで、高い貫通力を誇る準禁止兵器。

電子部品に影響を与え、連鎖的に崩壊させる事で都市や宇宙基地を壊滅させるミサイル……」

と、アリスの口からヤバそうな兵器が次々に語られる

「あれ?もしかしてキサラギってかなり危険な組織なんじゃ」

「なんで古参のお前が驚いてんだよ……。というか一つはなんか聞いたことあるような……」

 

「他にも毒ガスやら巨大電子レンジやらいろいろとあるが。まぁ、そこまでの物は今のポイントじゃ呼べんな。対戦車ライフルか、TNT火薬の無誘導ミサイル程度がせいぜいだろう」

「ま、ヒーローじゃなくて魔王軍相手ならそれでも充分だな」

「おう、魔王軍の進行ルートは割り出してあるから、明日は地雷埋めに付き合ってもらうぞ」

 

 

 

翌日

 

俺達が朝から地雷埋めに性を出してから街へ帰ると、なにやら不穏な空気に包まれていた

誰も彼もが憔悴したような顔で青ざめ、中には嗚咽を漏らすものまでいる

「いったい何があったんだ?」

「こりゃ相当な何かがあったな。謎の変質者が出たときでも、ここまで街の空気は悪く無かったぞ」

「なぁ。もう忘れたいからやめてくんない?」

 

 

変質者として肩身の狭い俺達を路地裏で待たせ、情報を収集してきたアリスの口から状況が伝えられる

「自分が仕入れてきた情報によると、勇者は魔王軍四天王の一人、風のファウストレスとやらにランダムテレポートという魔法で道連れにされたらしい。この魔法はどこに繋がるか使用者にもわからないトンデモ魔法らしくてな。まぁ確率からいって生存は絶望的だな」

 

「マジでか……。でも勇者ってのは予言まであるたいそうな存在なんだぞ。けろっと帰ってくるんじゃねぇか?」

「どうだろうな…。まぁ俺達も同じような目にあっているかもしれないわけだし、こっちは確立の高い転送で助かったぜ」

 

「………………そうだな」

そんな6号の言葉を聞いたアリスは少し固まってから答えた

「なぁ、今の間は何?」

「…本当に他人事じゃなくなってきたな」

次にキサラギの幹部にあったら、特にリリスに対しては、組織の幹部の有り様について説教してやりたい

 

「しかし、このまま勇者が戻って来ないとして、この国は大丈夫なのか?」

 

「……無理だろうな。単純に敵幹部クラスの戦力を失っただけじゃない。この国にとって勇者は最後の希望なわけだから、その勇者が不在とあっちゃ魔王軍には追い風だし、この国にとってはお通夜日和だ」

「なんとかならないの?」

「ならないな。そもそも自分らの作戦に、膠着状態は必須の条件だ。今となっちゃ、魔王軍は是が非でも王都を落とそうとしてくるだろう。この国は戦力としても劣っているし、何度か防げても焼け石に水ってヤツだ」

 

そんなアリスの分析を聞いて、俺達は顔を見合わせる

 

今の俺には、6号とアリスが何を考えているか手に取るようにわかる

……正直、わかりたくないし、外れてほしい

 

しかし、現実は非情だ

 

 

「「バックレるか」」

 

6号とアリスは潔く諦めた

 

 

 

 

 

「おいお前ら!せめてもうちょっと悩んだり葛藤したりとかあるだろ!」

俺は荷物を纏めて退散しようとする6号とアリスを引き止めていた

グリムにあんなこと言った手前、これで早々に逃げ出しては格好がつかないし、あいつらを見捨てるなんて事は………

「お前アリスの話を聞いて無かったのかよ!この国はもう終わりなんだよ!」

そんな事を自室から叫ぶ6号

 

「っ!お前、自分が情けなくねぇのかよ!」

「情けねぇよ!女子供が命かけて戦おうってのに逃げ出そうとしてる自分がよ!」

俺がたまらず叫ぶと、6号も部屋から飛び出して叫んだ

 

6号も逃げたくは無い

 

そんな事は俺にだってアリスにだって、当然本人にだってわかっているはずなのだ

 

だが当人はまだ意地を張っている

 

「だったら!命張って戦ってやろうじゃねぇか!」

 

「………っぬぅあぁあ!!!」

俺の言葉に、頭を抱えて悩む6号

あと一押しだという瞬間、俺達の家のチャイムが鳴った

 

「うるせー!こんな忙しい時にどこの誰だ!」

6号が肩を怒らせて玄関のドアを開けると

 

「お久しぶりです6号様。お話があって参りました」

そこには、多数の兵士を連れたティリスが、笑顔で立っていた

 

 

スパイとして追われた俺達に、王女様直々に何の用かと思ったが、俺達を他国のスパイだと知った上でのお願いだった

一応、俺達が他国のスパイではないかと以前から探ってはいたようだ

しかし、本気でこの国のために戦う様子から俺達をただの魔王軍のスパイとは考えなかったようだ

そして、他国の人間なら、グレイス王国の最後をその目で見て、自国に帰った後に、魔王軍の脅威とグレイス王国の生き様を伝えて欲しいとのこと

 

そんなティリスの切なる願いを聞いてはさしもの6号も折れるしかなく

結局俺達は城に戻って来ることになった

 

6号が承諾した際、ティリスの口元が少しにやけた気がするがきっと気のせいだろう

王女とはいえあんな年端もいかぬ少女なのだ

さすがに6号が土壇場で断れないお人好しと踏んで迫ったわけでは…

 

 

 

「あ!隊長だ!」

「あら、聞いたわよ。隊長達ったらスノウのセクハラに耐えられなくなって辞めたんですって?」

「お前たち!それはこいつのデマだ!」

城のバルコニーで明日の事を考えていると、元隊員達がやって来た

明日の打ち合わせや訓練があるだろうに、わざわざ抜けて来たのか

何より、ロゼとスノウも元気そうで何よりだ

 

変わらない様子の三人を見て、6号が言う

「お前らも明日はヤバくなったら逃げろよ」

そんな6号の台詞を聞いたスノウは、何を言うかといった顔で俺達へ向けて宣言する

「バカを言うな!我々は誇り高き近衛騎士団、逃げるくらいなら玉砕を選ぶ。そうだろうお前たち!」

 

「「えっ」」

 

「おい。えっ、て言ったぞ」

スノウが震えながら二人を見る

だが当の二人は俺と6号の方を向いて言う

「あ、あたしはもっと強いキメラになるために、こんなところじゃ死にませんよ!」

「わ、私もよ!生き残って、絶対素敵なお婿さんを見つけるんだから!」

「お、お前たち……!」

スノウが愕然とした表情を見て、6号が鼻で笑う

「へっ、裏切られてやんの」

 

それを見たスノウは顔をひきつらせて6号に詰め寄る

「くっ、貴様!ティリス様に言われたからといって、あの事が許されるわけでは無いぞ!」

 

「なんだぁ?いつまでもケツの穴の小さいヤツだな……。おい止めろ!剣を抜くな!明日魔王軍が来るんだぞ!味方同士で争ってどうすんだよ!」

そうしていつもの喧嘩を始めた6号とスノウを見て

ロゼとグリムは楽しそうに笑った

 

 

その晩、部屋は他にも空いているはずなのに、何故か四人全員が、以前俺達が寝泊まりしていた部屋に押し込まれた

「なぁ、明日はどうする?」

6号がそんな事を聞いてくる

 

「俺は前線に出ようと思う」

「………」

ミカが抗議の視線を送ってくるが、それを目で制する

 

「本気か?もし戦闘が始まれば、前線から離脱するのは困難だぞ」

「あいつらが中央に構えるらしいからな。ここまで来たら、見捨てるなんてできねぇよ」

 

「心配すんな。いざとなったらあいつらも連れてなんとか逃げてやるよ」

「そんな心配してねぇよ!……ただ、キサラギ社員を置いて行くのが嫌なだけだ!」

「それ、対して言ってること変わんねぇぞ?」

「うるせぇ!」

結局6号も、ただの良いヤツって事だ

 

「ミカ、お前は?」

「……オルガが前に出るなら、俺も出るよ。あいつは俺が殺らなくちゃ」

あいつとは、あの黒いモビルスーツの事だろう

ミカが一度倒した相手とはいえ、あの時も本当にギリギリの勝負だった

今のミカも、あの時より腕は上がっているが、それでも油断ならない相手だ

下手をすればまた………

 

 

「さすがにオルガ達を前線に放置するわけにはいかねぇよ。ギリギリまで城で待って、旗色が悪くなったらスノウ達を回収に行け。自分と6号は城から援護する」

 

いつものようにアリスが纏め、俺達はそれに頷く

 

こうして、俺達はこれが最後になるかもしれない作戦会議を終えた

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