アムロ大尉、ガンダムに乗る。   作:しんしー

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第12話 シャアが来る①

 

 宇宙世紀0079、12月2日。

 ホワイトベースは二時間後に出港するティアンム艦隊のおとりとなるべく、ジャブローから宇宙に向けて発進した。

 アマゾンの空を羽ばたく何万ものフラミンゴが、ホワイトベースの旅立ちを見送る。

 

「ところでハヤト…本当なのか、これから宇宙に出るっていうのにガンタンクで戦うって」

「ああ。連邦軍だって戦力は少ないんだ。使えるものは使わないとな」

「だけど…ガンタンクはモビルアーマーですらないんだぞ。いくらなんでも…」

「モビルアーマー? ジャブローの教練で聞いた…大西洋でアムロが戦ったっていう変なやつかい?」

 

 緊迫感のないハヤトの態度に、なにかアムロは気が削がれた。

 

「いや…いいんだ。ハヤト、頼むからフラウ・ボゥを泣かさないでくれよ」

「なんのことだ?」

「…いや、いいんだ」

 

 アムロはハヤトの無事を心の底から祈った。

 

 その、モビルアーマーと、散々戦う羽目になった。

 まず、巨大な三角形のボディに一対のマニピュレーターが付いたモビルアーマー…確かビグロとか言う機体と戦った。とてつもない加速力を誇るこの機体との戦いでは、アムロは敵機にとりついたと同時に失神させられた。

 撃破はしたものの、ガンダムの教育型コンピューターの記録を見る限り、かなり危機一髪の状況だった。

 結局、意識は歴戦のパイロットであるアムロ・レイ大尉であっても、肉体的には何処にでもいるハイスクールの少年のそれなのだ。ア・バオア・クーでシャアと繰り広げたフェンシングはニュータイプ能力による先読みで何とかなったが、急加速・急制動に対するGの問題は、突き詰めれば単純に身体を鍛えているか否かなのである。

 

 巨大な顔と鉈を装備した、黄色い奇怪なモビルアーマーとも戦った。

 ビグロはシャイアン基地で眺めた一年戦争の記録にあった機体だったが、こちらの機体は戦後のデータベースでも見たことのないモビルアーマーだった。

 アムロはビグロの加速力に翻弄された経験から、ガンダムをモビルアーマー化して出撃してみた。

 GパーツのBメカ部分をガンダムに履かせて加速力を向上させてみたのだ。

 

 結果、あまり関係がなかった。

 

 黄色い巨大な顔だけのモビルアーマーは、その軌道を簡単に読むことができ、あっけなく撃墜できたのだ。

 戦略的なタイミング…という意味でも、あのモビルアーマーが何だったのか、アムロにはちっともわからない。

 

 だが、そんな機体に小破させられたガンタンクのハヤトが心配である。

 転生前のソロモンの戦いでは、ハヤトはガンキャノンで出撃しても被弾し負傷した。ガンタンクでは撃破されて戦死しかねない。

 前世では一年戦争を生き延びたハヤトだが、今回もそうとは限らない。

 リュウやマチルダが生き残ることができた…つまり歴史が変わる可能性があるなら、その逆も十分にありえるのだ。

 

 ソロモンの戦いの後の話ではあるが、謎のモビルアーマーとも戦った。

 パイロットはおそらくニュータイプ…シャアともララァとも違う第三の男、だ。いや、男なのは間違いないだろうと思うが、正直なところ定かではない。

 操っていた機体はジオングと同じ有線式のサイコミュ搭載機だろう。有線式サイコミュの機体はパイロットの意志を感じ取りにくいのだ。

 ガンダムがオーバーヒートするほどの戦いの末、謎の機体をアムロは撃破した。

 わかりあうことはできないかと呼びかけていたのだが、パイロットはまるで死に急いでいるかのようにアムロの呼び掛けに答えなかった。

 

 この戦いの後、ガンダムはマグネット・コーティングにより反応速度を強化することができた。

 しかし、ガンダムの追従性は大幅に高まったものの、実用初期の技術はアムロが期待していたレベルに及ぶものではなかった。

 それでも、これでララァやシャアと渡り合うことはできるだろう。

 もちろん戦わず和解することができればそれに越したことはないのだが、万が一の備えは必要だ。

 

 そう言えば、シャアの乗るザンジバルとも戦った。

 この時アムロはホワイトベースの進路上にいるムサイの艦隊と戦っていたため、あまり印象にない。

 だがこの戦いのダメージを癒すため、ホワイトベースはサイド6へ寄港する。

 

 そこには、ララァが待っている。

 

   * * *

 

「…天気の予定表ぐらいくれりゃあいいのに」

 

 サイド6の田園風景の中をエレカで走りながら、突然の雨に降られたアムロは静かに毒づいた。そして、そんなセリフを我知らず口にしたことに、またため息をつく。

 この時、このタイミングで雨に降られることをアムロは覚えていたからだ。にも拘らず、多分、前と同じセリフを自分は口にした。

 今のアムロは、歴史という名の河を流されている。

 

 アムロはこれからララァに会う。

 この突然の雨を避けるために軒の下を借りたコテージに、ララァがいるのだ。

 意思に反して呟いた今のセリフが、これから起こる運命の出会いが今度もまた起こることをアムロに確信させた。

 

 宇宙世紀0079に転生して約3か月。

 アムロはいくつかのことを理解し始め、そして大きな疑問に突き当たっていた。

 

 理解したことは、自分が取った行動により歴史の改変ができることと、改変ができても歴史の大筋は変わらないということだ。

 歴史の改変が可能であることはリュウやマチルダ、ランバ・ラルの生存で証明され、アムロは確信を持っていた。

 しかし同時にそれは、歴史の大筋が変わることがないということもアムロに実感させていた。

 例えばリュウ・ホセイは、死ぬことはなかったが負傷によりホワイトベースから離脱した。そしてアムロが前世で知るとおり、代わりにセイラがパイロットに抜擢され、また、リュウの代わりの補充パイロットとしてスレッガー・ロウ中尉が配属されてきた。

 歴史は、アムロが知るとおりの流れと大筋では変わっていないのだ。

 もっともこれは、彼らの生死が歴史の大きな流れに影響を及ぼすものではない、ということにすぎないのかもしれない。

 

 だが、それでいて『歴史』は大きく改変されてもいる。

 アムロの記憶ではホワイトベースはオデッサ作戦には間にあわなかった筈が、今回の宇宙世紀0079では水爆ミサイル切りなどと言う無茶ぶりをされた。コアブースターはGメカという面白メカに取って代わられているし、ハヤトはガンタンクで宇宙を駆けている。

 これは、歴史の改変によるバタフライ効果、というやつなのだろうか。

 

   * * *

 コテージが見えてきた。

 

 

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