アムロ大尉、ガンダムに乗る。   作:しんしー

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第21話 ヘンだ・刻を越えても

 

――――――◇ー◇ー◇――――――

……

「キッカたちのいるゆうえんちが、ジオンこくのロボットに おそわれているって?」

『そうだ。アムロ、ガンダムですぐに たすけにいくんだ』

「わかった。ガンダム、しゅつどう!」

 

 ガンダムがゆうえんちにつくと、キッカたちは ジオンこくのロボットにつかまっていました。これでは、ガンダムは たたかうことができません。

 

「ふっふっふ、デニム、ジーン、いまのうちに ちきゅうぼうえいぐんのガンダムを やっつけてしまえ」

 

 シャアが ムサイせんかんから いいました。

 そのとき、

 

『アムロ、キッカたちは おれたちがたすけたぞ』

 

 ガンキャノンにのっているカイと、ガンタンクのハヤトが アムロにいいました。

 

「よぉし、ひきょうなジオンこくのロボットには まけないぞ!」

 

 ガンダムは、はりのついたてつのたまではんげきして ロボットをたおしました。

 シャアのムサイせんかんも、ホワイトベースにやられてにげていきました。

 ゆうえんちののりものは こわれて つかえません。キッカたちはがっかりしています。

 

「よし、みんなで なおそう」

「なおるまで、ガンダムであそんでいていいぞ!」

「わあい!」

 

 キッカたちは ほかのこどもたちと たのしい いちにちを すごしました。

 

   * * *

 

 アムロは、ガンタンクのたいほうのさきにのって ジェットコースターのせんろをなおしていました。このせかいにたいむすりっぷしてから、なにかいろいろおかしいなとおもうのですが、なぜか あむろはつっこむ きになりませんでした。

 

“それにしても…『はりのついたてつのたま』とはな…”

 

 アムロはジオンこくのロボットをやっつけたガンダムのぶきをおもいだして、おもわずわらってしまいました。そして、てをすべらせて、もっていたスパナをおとしそうになりました。

 

「…おっとっと…」

 

 アムロはすこし あわててしまいました。

 

 つるっ。

 

 あしをすべらせたアムロは、ガンタンクのたいほうのさきから まっさかさまにおちてしまいました。

――――――◇ー◇ー◇――――――

 …

 

「ルロイ! ガンダムは気づいてくれたのだぞ!」

――――――◇ー◇ー◇――――――

 …

 

「…人は流れに乗ればいい。私は君を、殺す。絶対に、だ」

――――――◇ー◇ー◇――――――

 …

「ララァのいない世界で、何故この私が愚民どもを導かねばならんのだ? アムロ」

「歯ぁ食いしばれ、シャア! 貴様、修正してやる!!」

「うっ、あっ、な、殴ったな…」

「殴ってなぜ悪い? 貴様はいい、そうして拗ねていれば気分も晴れるんだからな!」

「わ、私はそんなに安っぽい人間か!?」

 

 アムロの鉄拳が、再びシャアの頬に見舞われた。

 

「…二度も殴った。父にも殴られたことがないというのに!!」

「それが甘ったれなんだ!! 殴られもせずに一人前になった奴がどこにいるものか!!」

「…今の私はクワトロ・バジーナ大尉だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「…貴様!」

「もうやらないからな。誰が二度と百式なんかに乗ってやるものか!!」

 

 ……

 …

――――――◇ー◇ー◇――――――

 …

 

“なんてことだ…急加速に耐えられるよう筋トレをしていたのが、こんなところで仇になるなんて!”

“…ヘルメットがあったが…即死だった…”

 …

――――――◇ー◇ー◇――――――

 ……

 …

『大尉! 早く百式をΖガンダムに載せてください! もう間に合わなくなる! 大尉ッ。クワトロ大尉ィィィっ!』

 …

 ……

――――――◇ー◇ー◇――――――

 …

 

 

 ……

 …

 

 打ちっぱなしのコンクリートの壁の上方に、明り取りのように小さな窓がある。

 ただし、そこには太く丈夫な鉄格子が固くはめ込まれていた。

 さして広くもない冷たい部屋の中で、アムロ・レイは数人の連邦軍兵士に囲まれていた。

 粗末な椅子に括り付けられているアムロの顔はひどく腫れあがり、流れた血が固まりこびりついていた。顔に特殊なゴーグルを装着した大柄な将校が、巨体を揺すりアムロの前に立って嗤った。

 

「一年戦争の英雄もこうなってはかたなしだな。我々ティターンズの目を盗んで脱走など企むからこのようなことになる」

「…ひと思いに殺せ! この俺を殺してみろ、バスク・オム!」

「フン」

 

 バスクはアムロの挑発を鼻で嘲笑い、カーボン製の警棒で正確にアムロの頬を打ち据えた。アムロは括り付けられている椅子ごと床に倒れた。頬の肉がバッサリと裂けて、生温かい血がアムロの咥内に溢れた。

 

「貴様をこのようなところで死なせるわけにはゆかん。貴重な駒はもっと大切に使わなくてはな」

 

 バスクは軍靴の踵で、ばっくりと裂けたアムロの頬を踏みにじりながら嘯いた。

 

「エゥーゴとやらの連中を誘き出すに使うもよし、人の革新なぞとほざくスペースノイドどもの見せしめにするもよし…どのように使ってくれよう? なぁ、アムロ・レイ」

 

 アムロは歯を食いしばり、痛みと怒りに耐えながらバスクの嘲笑を聞くほかはなかった。

 宇宙世紀0085。

 ティターンズが起こしたコロニーへの毒ガス散布による大量虐殺事件…『30バンチ事件』を知ったアムロ・レイは、地球連邦軍による軟禁生活から単身脱走を試みた。しかし、エゥーゴもカラバもいまだ組織としての体裁を整えられていない状況下での脱走は、あまりに性急過ぎた。あえなくティターンズの手に落ちたアムロは、過激な地球至上主義者たちに自身の存在を利用されようとしていた。

 

「よし、兵ども、この男の手足の自由を奪え。二度とモビルスーツなぞに乗れんようにしてやるのだ。ただし、顔はこれ以上傷つけるな。この男がアムロ・レイだとわからなくなっては意味がないからな!」

 

 アムロの目は霞み、もはや物を見ることもままならなかった。嗤いながら拷問室から立ち去るバスク・オムの靴音が聞こえ、それを見送る配下の兵士たちの敬礼の気配が感じ取れる。彼らの心は、これから行う残虐な行為への昂りを隠そうともしていなかった。

 アムロは初めて、絶望を受け止めた。

 

   * * *

 

「アムロが見つかっただと! 何処にいるんだ!」

 

 制圧したばかりのティターンズ基地の通路を走りながら、ハヤト・コバヤシは通信機に叫んだ。

 連邦軍の軟禁生活から脱走を図ったというアムロが消息不明となり、約2年がたつ。

 反ティターンズ組織の一翼・カラバのリーダーの一人となったハヤトは、漸くかつての戦友アムロ・レイの所在を突き止め、その奪還のために大規模な作戦を遂行したのである。

 基地への突入部隊からアムロ発見の報を受けて、居ても立ってもいられなくなったハヤトは気づけば自ら走り出していたという訳だ。

 ハヤトは基地の奥深くにある収監棟の地下でアムロ・レイと再会した。しかしそれは、言葉にできない衝撃的な再会だった。アムロはティターンズによる壮絶な拷問に耐え、長い幽閉を生き延びていたのだ。

 

「――アムロ!」

 

“…ハヤトか? よく助けに来てくれた…ありがとう”

 

 ハヤトの頭の中にアムロのか細い声が届いた。そのことにも動じたが、ハヤトはそれ以上に、激しい拷問を受けながらろくな手当もされずに放置されていたアムロの無残な姿に言葉を失った。ハヤトの頭の中に、アムロの声が笑いかけた。

 

“大丈夫だ。なんてことはない。…ハヤトともこうして話ができているだろう? なんてことはないさ…”

 

「そうだな…アムロ、おまえニュータイプの力は昔よりも強くなっているな。…オールドタイプの俺でもアムロの声がこんなにはっきり聞こえるんだからな…よかった、アムロ…生きていてくれて本当に良かった…」

 

 ハヤトはアムロの強い意志に、涙と嗚咽を堪えることができなかった。

 

 

 

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