アムロ大尉、ガンダムに乗る。   作:しんしー

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第7話 ランバ・ラル、即行!

 ランバ・ラルである。

 

 この男との戦いが厄介だ。

 モビルスーツ戦でアムロに敗れグフを失ったランバ・ラルは、ホワイトベースに白兵戦を挑んでくる。

 ルナツーを発ってから此処まで奇跡的に死者が出ていないホワイトベース隊だったが、この白兵戦では幾人もの少年たちの命が奪われる。

 ランバ・ラル自身も戦死し、その伴侶のハモンも跡を追って命を落とす。そして、リュウ・ホセイもだ。

 

 ランバ・ラルに対しては、アムロにも想うところがあった。

 ランバ・ラルは、生き残るためにただ必死で戦っていただけのアムロが初めて超えたいと思った相手だった。

 それまでもシャアに対して勝ちたいとは思っていたが、それは戦闘の勝敗のことである。

 人として…男として超えたいと思ったのは、ランバ・ラルがアムロにとって初めての人間であった。 

 

 それ故に、どうしたものか…とアムロは考える。

 

 戦争をやっていて敵を殺したくない、などというのは傲慢だとアムロは考えている。

 アムロは、自身にニュータイプの才能とパイロットとしての高い技量があるとはいえ、いつ誰かに命を奪われても仕方がないという覚悟を持って敵を討っている。

 だが、ランバ・ラルに対しては、できるならば死なせたくないという思いがアムロの中にはあった。

 自身が乗り越えるべき男としてアムロの前に立ちはだかり、生き様を見せて散っていった、ある意味では師といってもいい男なのだ。

 しかし、あの男は生半なことではホワイトベース撃破をあきらめないだろう。

 それこそ、彼の命を奪わない限り…だ。

 

 考えたうえで、アムロはもう一度ランバ・ラルと会うことにした。

 会って戦いをやめてくれ、などというつもりはない。ただ、とにかくもう一度会ってみようと思ったのである。

 記憶にあるとおりならアムロはガンダムに乗ってホワイトベースを脱走しランバ・ラルと出会うのだが、10年以上軍人をやっていたアムロにはそんな恐ろしい真似はできなかった。

 アムロはブライトに交渉し、単独でパトロールに出ることにした。

 ブライトは、少年でありながら妙に達観し冷静なアドバイスで自分をサポートしてくれるアムロのことを、頼りにしつつもどうにも扱いづらく思っていた。だが、アムロはブライトの顔を立てつつ巧みに振舞っているので、聞く耳を持たざるを得ない。しかめ面をしつつ、ブライトはアムロの申し出を了解した。

 

 ガンダムが、夜の砂漠に飛ぶ。

 

   * * *

 

 …あれ?

 

 ランバ・ラルとは、出会えなかった。

 

   * * *

 

 よく考えてみれば当たり前である。

 

 アムロは自分が何時頃、中央アジアのどのあたりで脱走したか明確に覚えていたわけではない。

 多分この辺のタイミングだろう、くらいでパトロールと称して砂漠に出たのだ。出会うことができないのも当然だろう。さらに言えば、今アムロが生きているこの歴史もアムロの行動により本来の歴史から改変されてきている筈だ。本来の歴史から乖離していけば、ホワイトベースの仲間たちを守る戦いも難しくなる。アムロは頭を抱えてホワイトベースに戻った。

 

 で、ランバ・ラルが攻めてきた。

 ガンダムで出撃し、アムロはビームサーベルで応戦する。ビームライフルはあえて投げ捨てた。記憶のとおりならば、多分この戦いはガンダムがすんでのところでグフの腕を切り飛ばし、だが互いにコクピットの装甲を破られ、そしてお互いの顔を認めたあの瞬間の戦いなのだ。

 

「やってみせるっ!」

 

 ガンダムは赤熱化したグフのヒート剣をかつてよりもさらにぎりぎりでかわし、ビームサーベルでグフの腕を付け根から切り飛ばした。サーベルを形成する高熱の粒子はグフのコクピットの装甲を切り裂き溶かす。一方、一瞬早く自身の間合いのうちに入られたグフのヒート剣は、ガンダムの腹部を撫でることもできず砂漠に落ちていた。

 

「ちいいっ、このランバ・ラルとしたことが!」

 

 ランバ・ラルは溶解してまだ柔らかいグフの装甲を手で押しのけ、視界を確保した。

 ビームサーベルの刃が消え、数メートル先のガンダムの胴体の装甲が開く。中から、白いパイロットスーツの少年が姿を見せた。

 子供か、とランバ・ラルは思わず呟いた。その少年が、パイロットシートから叫びかけてくる。

 

「ランバ・ラル! もう引いてくれ! あなたの負けだ」

「俺の名前を知っているかよ、小僧。なら、このランバ・ラルが引くと思うか!」

「この戦争はもうすぐ終わる。ジオンが負けるんだ。無駄死にすることはない」

「俺は戦争屋だ。戦いを投げ出して引いたりはせん」

「わからず屋が…!」

 

 アムロが歯噛みする間にランバ・ラルはグフのコクピットから脱出し、ワイヤーフックをガンダムに投げつけた。それにつかまり、振り子のように宙に舞う。

 

「小僧、自分の力で勝ったのではないぞ。そのモビルスーツの性能の…」

「ビームジャベリン、伸びろっ」

 

 ガンダムの右手からジャベリンの柄が伸び、切っ先の高熱の粒子がランバ・ラルのぶら下がるワイヤーを瞬時に焼き切った。

 

「あ」

 

 どてっ。

 

 青き巨星、堕つ。

 

 砂漠とはいえ、数メートルの高さから意図せず落ちたランバ・ラルの両脚は粉砕された。命に別状はないようだ。パイロットシートから立ち上がったアムロはため息をつきながら、ランバ・ラルを見下ろした。

 

「殺せ、小僧! 戦場で敵のパイロットに情けをかけると命取りになるぞ!」

「その怪我が治るころには戦争は終わってます。早く宇宙に帰ってください。戻れなくなりますよ!」

「この借りは返すぞ、小僧!」

「ホワイトベースはもう行きます。すぐにハモンさんたちが見つけてくれますから、少し我慢してください」

 

 アムロはランバ・ラルに敬礼し、背を向けた。

 

 





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