アムロ大尉、ガンダムに乗る。   作:しんしー

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第9話 オデッサの激変

 

 Gアーマーの訓練飛行兼パトロール中である。

 

 Gアーマー形態の時は、ガンダムに乗っているアムロには特にすることがない。

 ガンダム側からGパーツのコントロールができるよういろいろと弄ってはいるが、現時点ではこれと言った何かができるレベルにはない。

 アムロは、GメカAパーツのコクピットにいるセイラの様子をサブモニターでぼんやりと眺めていた。

 

”この人も、いろいろ大変なんだよな…”

 

 セイラ・マスこと、アルテイシア・ソム・ダイクン。

 ジオン・ズム・ダイクンの娘にして、シャア・アズナブルの実妹。

 ザビ家の目を逃れて静かに生きることを望んでいた少女を、戦争は再び翻弄しようとする。

 

 モニターに映る斜めから見たセイラは、正面から見るいつもの凛としたセイラではなく、緊張を隠さない真顔だった。普段はあまり感じさせない、そこはかとない少女らしさが窺える。

 

『なに? アムロ。私のことをじっと見ていたりして』

 

 セイラがまっすぐ前を見つめたままアムロに声をかけた。自分がセイラに見惚れていたことに気づかれていたのかと、アムロは動揺した。

 

「…いえ、えーと、…セイラさんがチャーミングすぎるからです」

 

 咄嗟に口にしてしまってから、アムロは自分の台詞がセイラの地雷を踏んだだろうことを確信した。

 案の定、セイラの顔が侮蔑の表情に変わったのがバイザー越しにも窺える。

 

『アムロ。』

「はい」

 

 アムロは年甲斐もなく緊張しながら答えた。

 

『将来、あなたがそんな言葉で女性を口説く男にならないことを願うわ』

「駄目ですか、こういうの?」

『不潔ね』

「そうでしょうか」

『そうよ。アムロ、高度三千まで急上昇。そこから急降下します』

 

 機体が大きく上方に傾き突然のGに舌を噛みそうになりながら、アムロは、言葉とは裏腹にセイラの心の扉が一つ開いたように感じていた。今のセイラの表情や態度は、気品の高さではなく一〇代の少女の潔癖さが作ったもののように思えたからだ。

 あてがわれていたとはいえ、とっかえひっかえで女性とベッドを共にした軟禁生活の経験も伊達ではない。

 

 わずかに気持ちが緩んだアムロだったが、そんな気分は一瞬にして吹っ飛んだ。モニターの片隅に、ジオンの陸戦艇を見かけたような気がしたのだ。

 

「待ってくれセイラ…さん。…敵の前線がこんなに近くに?」

『本当なの、アムロ』

「見つかったのか…? セイラさん、高度を下げてください。見つかったかもしれません」

『了解』

 

 アムロとセイラは、ジオンの陸戦艇から飛び立った小型の飛行機を目で追った。

 

『プロペラ機のようね。よくわからないけど、ジオンにはない飛行機じゃないかしら』

「調べてみます。…ドラゴンフライ…? 連邦軍の小型連絡機です。どうしてジオンの陸戦艇から出てきたんだ? 撃ち落されもしないで」

『妙ね…』

 

 その時、セイラのコクピットで通信機のアラームが鳴った。ホワイトベースからの帰還命令だ。

 

『どうする? アムロ』

「気にならないか? セイラ…さん」

『なるわ。行きましょうか』

「ええ」

 

 Gアーマーは謎のドラゴンフライ連絡機を静かに追跡した。

 

「そういえばマチルダさんが言ってたな…ミデアの動きがジオンに筒抜けのようだって」

 

 やがてドラゴンフライは連邦軍の陸戦艇ビッグ・トレーに着艦した。Gアーマーも後を追って着艦する。

 

   * * *

 

「まさかと思ったが、貴方が…」 

 

 この後アムロは、連邦軍のとある将軍と対面し、その将軍がジオンと通じていた裏切り者であることを明るみに出すこととなる。それは、アムロ大尉の知らなかった物語である。

 

 そして、オデッサ作戦が始まった。

 

   * * *

 

『アムロ、聞こえるか。敵は水爆を使う』

 

 通信機から飛び込んできたブライトの言葉にアムロは耳を疑った。

 

「水爆?! だってあれは」

 

『そうだ。敵は使ってはならん武器を使うのだ。ミサイル発射まで30秒はかかる。モビルスーツはいい。水爆ミサイルを破壊する方が先だ』

「そんな! できるわけ…ない…かな?」

『データを送る。赤いところが水爆を爆破させるところだ。すれすれのところで叩き切ればいい』

「こんな雑な分解図で…。役に立つのか、ブライト?」

『わからんな。一応南極条約の時の公開データだ。当てにしていい。水爆が本物なら此処もやられるんだ。やるしかない、アムロ』

「本物なら、か…よし、ハヤト、行けっ」

 

 ハヤトが操縦するGメカに乗って、アムロとガンダムは水爆ミサイルを追った。

 発射されたばかりの水爆ミサイルの初速は遅い。接近するのは思いのほか容易いことだった。

 

 だが、問題は此処からだ。

 

 操縦桿を握る掌に、我知らず力がこもる。

 

「や、やれるか…ヤ――――ッ!」

 

 ガンダムのビームサーベルが、水爆ミサイルを切り裂いた。

 

 ……

 

  * * *

 

永井一郎「オデッサの作戦は連邦軍の勝利に終わった。ホワイトベースの少年たちは、此処に親しくレビル将軍と会見した」

 

 

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