八幡とアクアリウムと彼女   作:myo-n

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中々まとまらなかったので中編を分割しました。



中編-1

「お兄ちゃーん朝だよ〜」

 

「んん……」

 

小町の声が聞こえる。

起きあがろうと布団を少し剥いでまた元に戻す。

 

「寒い……あと5分」

 

寒すぎて体が外に出たくないと訴えている。

だからとうてい布団からは逃げ出せそうもない。

仕方ないのでそのまま二度寝を決め込もうとした時、勢いよく布団が引っ剥がされた。

 

「も〜、朝だって言ってるでしょ?」

 

「とんでもない事をしてくれましたね小町さん」

 

人類は寒さには勝つ為に体をあの手この手で体を温める。

だから二度寝は正当化されても何の問題もない。

よって俺を寝させたまえ。

 

「むしろ献身的に起こしに来てて、小町的にポイント高めだよ?」

 

「はいはい、かわいいかわいい」

 

適当に頭を撫でておく。

やだ、今の八幡的にポイントたかーい。

 

「むぅ、全然感情がこもってない!」

 

「込めたら込めたでドン引きするだろ」

 

「まぁそうだけど」

 

「ほれ見ろ」

 

「とにかく、朝ごはんできてるから早く食べてね!」

 

「分かった」

 

顔を洗って、歯を磨く。

案外これだけでもかなり目が覚めるものだ。

あとは多少の寝癖を直しておくか……まぁ誰も気にしないと思うが。

 

リビングに行くと小町がもう出ようとしていた。

 

「今日学校で用事あるから先行くね!食器は洗っといて!」

 

「分かった。鍵は締めとくわ」

 

小町を玄関まで見送る為にマッ缶片手に着いていく。

そういえば最近毎日飲んでるな……ちょっと控えるか。

 

「あっ、そうだ!」

 

小町が何かを思い出した。

何だろう嫌な予感がする。

具体的にはチから始まる物が出てくる気がする。

 

「チケットの事ちゃんと決めないとだよ!」

 

「…………休んでいい?」

 

「駄目!じゃあ行ってきます!」

 

「いってら……」

 

ドアの鍵を閉める。

リビングに戻ってマッ缶の中身を一気に飲み干す。

 

「はぁ……行きたくねぇな」

 

テーブルに置いてあるのはアクアリウムSOBUのカップル限定ペアチケット。

 

偶然手に入って持て余していたら、現雪ノ下達に情報が広がり現在進行形てわ選択を迫られる状況になっている。

 

正直誰を選んでも碌な目に遭いそうにないので捨てたい。

何でこんな物が当たるのか……物欲センサーには仕事して欲しいものだ。

だから週明けの今日、物凄く、非常に、それはもう学校に行きづらいという訳である。

 

「休めるか電話かけてみるか」

 

『もしもしこちら総武高校の平塚です』

 

「……平塚先生かよ」

 

なんてこった。

これじゃあズル休みできないじゃないか。

クソッタレな神様め。

ダメ元でやってみるか……。

 

「ゴホゴホ……2年の比企谷です。今日は体調が悪『仮病だな』………すんませんした」

 

即バレしたんだけどエスパーかこの人は。

他の先生ならこれで休めるのに。

 

『全く……ズル休みは良くないぞ?』

 

「いや、でも出席日数足りてるんで別に1日くらい『1日くらいなんだ?』何でもないです、はい」

 

電話越しなのに圧が凄い。

今、受話器からゴゴゴゴゴって聞こえてきた。

うん、これは無理だな学校に行こう。

じゃないと命が危ない。

 

『ところで比企谷、アクアリウムSOBUのチケットの話なんだが』

 

「すんません、もう遅刻しそうなんで切りますね」

 

『おい、話はまだ』ピッ

 

「あっぶね」

 

今最も触れたくない話題だ。

というか、先生よ。俺なんかと行くよりもっと婚活に力入れた方がいいんじゃないでしょうか。

 

「さてと……行くか」

 

重い腰を上げて学校へと向かう。

そしていつも通り下駄箱で靴を変えていると何かが飛びついてきた。

 

「はちまーん!」

 

そう、天使(戸塚)だ。

屈託のない笑顔、溢れる可愛いオーラ、そして慈悲深い優しさ。

神は彼にニ物も三物も与えているに違いない。

 

「結婚しよう」

 

「えっ?」

 

「いや、何でもない。おはよう」

 

もういっその事戸塚を誘うか?

戸塚レベルなら全然隠せるだろうし。

 

 クォレハ、ハチトツノニオイ!!?

 

……やっぱりやめておこう。

何か背筋が凍った。

 

その後戸塚と別れて教室に入る。

まだ予鈴まで時間がある。

なので喋っている由比ヶ浜に気づかれない様に荷物だけ置いて素早く屋上へ向かう。

 

ふっ、我ながら完璧なステルスだ。

 

「ふぅ……疲れた」

 

設置されてるベンチに腰をかける。

さて、誰と行くか考えないとな。

……微妙に日差しが暖けぇな。

 

……

 

「おい」

 

「ひゃい!」

 

うとうとしてる時に声をかけないでほしい、心臓に悪いから。

 

「予鈴、なってるよ」

 

声の主は川なんとかさんか。

妙に低い声だったから少しビビったぞ。

 

「……どうしてここにいるんだよ」

 

「私がここにいちゃだめなのか?」

 

「いや、別に駄目じゃないが……」

 

まぁ川なんとかさんもボッチだから、あのむさ苦しい教室から抜けて予鈴まで一人で過ごしたかったのだろう。

 

「ならいいさ。ほら、教室に戻るよ」

 

川なんとかさんに腕を掴まれて立たされる。

そう言えば予鈴鳴ってるんだった、少し急いで戻らないといけない。

 

「さんきゅ」

 

「あぁ」

 

「……あの、手離してくれません?」

 

何故かそのまま腕を掴まれている。

これじゃあ物理的にも精神的にも移動しづらい。

 

「………………」

 

おい、何故そんな悩む。

俺の腕なんか掴んでても良い事ないだろ。

 

「早くしてくれないか」

 

「……分かったよ」

 

腕が自由になると同時に本鈴が鳴る。

何故腕を離してくれなかったのか聞きたかったが、生憎と時間がなかった為慌てて教室へと向かった。

 

もちろん、平塚先生にこってり絞られましたとさ。

 

-昼休み-

 

決戦の時はやってきた。

チャイムと共に素早く支度を済ませ、ベストプレイスに向かう。

 

なるべく気配を消しつつ教室を出ようとしたら、誰かに肩を掴まれてしまった。

 

「ねぇヒッキー!お昼ご飯一緒に食べよ!」

 

一番捕まりたくない由比ヶ浜に捕まってしまった。

出口から一番近い席だからと油断したのが駄目だったか……。

 

いやまだだ、俺は何としてもぼっち飯を食べるんだ。

 

「断る」

 

「えぇ〜!何でなの?」

 

近い近い、距離感バグってますよガハマさん。

これだからビッチは困る。

まぁこれで勘違いする俺ではないが。

 

「ほら、アレがアレでアレな用事があるから」

 

「良かった〜!じゃあ行こっ♪」

 

「話聞いてた?」

 

「うん、ヒッキーがアレとか言うのは暇だって事でしょ?」

 

「どうしてそうなる」

 

強引すぎやしませんかねガハマさん。

名探偵真っ青な推理力だよ。

だが事実、予定がないから言い返せない。

 

「あたしと食べるの……いや?」

 

ガヤガヤ

 

クラスメイトの視線が徐々にこちらを向いてくる。

やばい、そんなに目をウルウルさせるな。

俺が泣かしたみたいになっちゃうだろ。

 

「はぁ……分かったよ」

 

「ほんと!?」

 

「あぁほんとだよ。ほら、行くぞ」

 

「えっ、ちょ、ヒッキー!?」

 

一刻も早くこの場を離れたいが為に由比ヶ浜の腕を掴んで屋上へ連れて行く。

 

「ほら、着いたぞ」

 

あんな空間で飯なんか食えるか。

あと少しでもいたら具現化した視線に貫かれる所だったぞ。

 

「あの、ヒッキー……」

 

「何だ?」

 

「手……」

 

由比ヶ浜が下ろした視線の先には俺の手に掴まれている腕。

 

「……っ、すまん」

 

一刻も早くその場を去りたくて腕を掴んだことを忘れていた。

 

「あ、謝らなくてもいいよ!ヒッキーの手、暖かかったし……」

 

それは遠回しに俺がゾンビじゃなかったとでも言っているのだろうか。

とうとう由比ヶ浜も雪ノ下並みの毒舌を覚えたのか……

 

……うん、それはないな。

だって、アホの子だし。

 

「そうか」

 

ベンチに腰をかける。

そして由比ヶ浜は当然のようにすぐ隣に座ってくる。

しかもぴったりと張り付く様に。

 

「おい、少し近くないか?」

 

「そ、そうかな?ほら、屋上って寒いし仕方ない事なんだよ!」

 

たしかに、それは一理ある。

ズボンを履いてる俺ですら肌寒いのにスカートの由比ヶ浜が寒くないわけがない。

 

ただ、この距離は駄目だ。

何かの拍子で勘違いしそうになってしまう。

そして振られるまである……いや、振られるのかよ。

 

「なら部室に行くか。暖房ついてるし」

 

鍵を借りに行くのは少々面倒だが、致し方あるまい。

そして、立ち上がろうとした。

 

「待って!」

 

「うおっ!?」

 

服を引っ張られて椅子に降ろされた。

地味に尻を打った、痛い。

 

「何のつもりだ?」

 

「あ、いやその……寒くないからご飯食べよ?」

 

「それならこんなに密着する必要ないだろ」

 

「うっ……うう」

 

おろおろされてもこっちが困るわ。

それに鼻水出てるし、ほんとは寒いのに何故我慢するんだよ。

 

「はぁ……取り敢えずこれ巻いとけ」

 

ブレザーのポケットに入れていたマフラーを渡す。

由比ヶ浜は驚きながらも、マフラーを巻いた。

ついでにティッシュも手渡す。

 

「ほら、鼻水出てんぞ」

 

「あ、ありがと……」

 

顔を赤らめる由比ヶ浜。

やっぱりこいつも痩せ我慢してただけで寒かったんだろう。

 

「よし、じゃあ部室行くか」

 

「えっ?」

 

「マフラーつけても足の方が寒いだろうが」

 

特に由比ヶ浜のスカートは短い。

夏と冬を間違えてませんかというぐらいには。

ほんと、ギャルって凄いな。

 

「そうだけど……そーだけどー!」

 

「異議は認めん」

 

由比ヶ浜相手に口論で負ける気はしない。

伊達に雪ノ下の相手はしていないからな。

 

「ぶーぶー!」

 

「行かないなら置いてくからな」

 

これ以上は付き合ってられない。

というか寒い、超寒い。

曇ってて日差しも出てないし余計寒い。

早く校内に戻らないと凍死しそうだ。

 

まったく誰だよ屋上に連れてきた奴……俺だわ。

 

「ちょっ、ヒッキー待ってよ〜!」

 

ちなみに屋内に入った瞬間、マフラーは返されましたとさ。

 

---

 

「……で、そこの腐り谷君が由比ヶ浜さんを強引に校内を引き連れ回したというわけね」

 

何だろう、合ってるのに合ってない言い方をするのをやめてもらいたい。

元々昼飯誘ってきたのは由比ヶ浜の方だし俺は無罪だ。

 

「……何でお前がいるんだよ」

 

「あら、私がいたら何か問題でも?」

 

「いやそういうわけじゃないが……」

 

どうりで奉仕部の鍵がなかったわけだ。

昼飯くらい自分のクラスで済ませろよ。

……人の事言えないけど。

 

「そう言えばゆきのんはお昼ご飯食べたの?」

 

ナイスだぞ由比ヶ浜。

出来れば昼休みいっぱいまで喋り続けてくれ。

 

「えぇ、私は既に済ませているわ」

 

「そっか〜。じゃあヒッキー、お昼ご飯食べよ!」

 

隣に椅子を持ってきて弁当を広げる由比ヶ浜。

俺もそれに釣られて小町特製のお弁当を広げる。

 

「すごーい!小町ちゃんほんと料理上手だよね〜!」

 

近い近い近い。

距離感バグってますよガハマさん。

そんなに弁当が気になりますかね。

小町の愛(八幡希望)しか詰まってないぞ。

 

「…………」イラッ

 

「当たり前だろ。小町が作った物なら例えダークマターでも上手いと言える自信がある」

 

「ヒッキー超シスコンじゃんキモイ!」

 

「キモイかどうかはアレだがシスコンは勲章みたいなものだろ」

 

「それを本気で勲章と考えているのなら今すぐ矯正施設に行った方が小町さんと貴方の為よ」

 

「そうか?むしろ兄弟愛は神聖な物だと思うが」

 

「あら、小町さんからすればそうではない可能性の方が高いと思うのだけれど」

 

そんな事はない。

たまにゴミを見る目で見られたり、翌日の晩飯がオールトマトになってたり、俺のせいで嫁にいけないとか言われるだけだ。

…………あれ、これって結構邪魔だと思われてないか?

悲しい、泣きそうになるわ。

 

「まぁそういうのは置いといてさっさと飯食うか」

 

黙々と食べ始める。

うむ……相変わらず小町の料理は美味い。

胃袋掴まれるどころか握り潰されるまである。

今の八幡的にポイント高いな。

 

「……」ジーッ

 

「……」モグモグ

 

「……」ジトー

 

「……食べ辛いんだが」

 

「あら、自意識過剰にも限度があるわよ自意識谷君」

 

いや、ガン見しといてそれはないだろ……とは言えず、適当に返して黙って食べ進める。

 

「……」チラッ

 

「……」モグモグ

 

「……」チラッチラッ

 

「……だから、食べ辛いんだって」

 

「べっ、べべ別にヒッキーの事見てないし!目にゴミが入っただけだし!!」

 

由比ヶ浜よ、それは泣いてる時の言い訳だぞ。

全く……2人とも様子がおかしくて調子が狂う。

早く帰りたい、まだ昼休みだけど。

 

その後、気まずい空間で弁当を食べ終えると予鈴が鳴ったので足早に教室へと戻った。

 




ちなみにこの物語はマルチエンド式です。
乞うご期待。

各終編ルートの順番

  • ゆきのん
  • ガハマちゃん
  • 平塚せんせー
  • はるのん
  • 川なんとかさん
  • いろはす
  • シークレット1
  • シークレット2
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