アサルトファング Bestia Oratorium   作:羽桜千夜丸

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 投稿ペースを落としてから初めての更新です。やや短めのエピソードとなりました。

 ちょくちょく構想を練り直せるのはいいですね。



第7話 新たな戦術

 

 それは、とある日の午前中。

 一葉は教導官室に呼び出されていた。

 

「……助言、ですか?」

 

 怪訝な顔をする一葉の前で、デスクに着く教導官が言う。

 

盾の乙女(ヘルヴォル)は内外に誇るべき、エレンスゲ女学園の象徴ともいうべき存在。よりよい成果を出せるよう、助言をするのは当然だ」

 

「どのようなご指導をいただけるのでしょうか?」

 

 言葉とは裏腹に、一葉には微塵も興味はない。が、聞くだけは聞いておくことにした。

 

 

「芹沢千香瑠を、ヘルヴォルの所属から外しなさい」

 

 

 案の定、一葉が聞きたくない類の助言が出る。

 

「………」

 

「不服か?」

 

 以前と似たようなやりとりに、一葉は呆れていた。

 

「はい。お考えをはかりかねます」

 

 教導官側もこの反応を予想していたのか、デスクの背後にある大きなモニターに資料を映しながら話し始める。

 

「君たちのパフォーマンスは実戦や訓練での成績をもとに、こちらでも分析している。芹沢千香瑠が、君たちの作戦行動における枷となっていることは明白だ」

 

「………」

 

 一葉が黙っていると、さらに教導官が続ける。

 

「君たちの戦闘プランも評価した。作戦の穴を瀑銀隊に埋めさせるのは結構だが、芹沢千香瑠のフォローに回すケースが目立つ。効率的とは言いがたい。心当たりもあるだろう」

 

 そう言って、教導官はモニターから千香瑠の成績以外の資料を消す。

 

「これは君の人選ミスだが……とは言え、責任を問うつもりはない。取り返しのつかない失敗はまだないならな。特別に序列の高い生徒との入れ替えを認めよう」

 

 一葉の心中では答えなど決まりきっている。

 

「場合によっては一桁台の序列の者を用意する。序列84位との入れ替えは、ヘルヴォルにとって有益なはずだ」

 

「お言葉ですが、教導官殿。そういった問題ではありません」

 

「では、君は彼女のこの成績をどう考える?芹沢千香瑠をヘルヴォルの所属とする合理的な説明を……」

 

「説明の必要を感じません」

 

 教導官の言葉をピシャリと遮った。

 

「何だと?」

 

「ヘルヴォルのメンバーの任命権は私にあり、私は千香瑠様をメンバーに加えたことを後悔していません」

 

 加えて、一葉は事前に調べていた内情を教導官に突きつける。

 

「それに、ほとんどの序列一桁台のリリィたちが瀑銀隊……冬賀の存在を疎み、蔑ろにしてきたことは知っています。他の生徒との入れ替えは、かえって私たちの足並みを乱します」

 

「………」

 

「ヘルヴォルと瀑銀隊は成果を出しています。そしてこれからも、成果を出し続けます。私は私のやり方で、学園の皆様が望む以上の成果を上げてみせます」

 

 教導官はため息を吐いた。

 

「……戦いに仲よしごっこを持ち込まれても困ると言っているんだ」

 

「貴方方は、人の絆を軽んじすぎているんです!」

 

 

 言い合いを続ける一葉と教導官。その2人がいる部屋の外では……。

 

 

「………」

 

 

 千香瑠が悲しみに染まった顔で立っていた。

 

 

 しばらくして、ヘルヴォルの控室では……。

 

「一葉のやつおっそいなー。いきなり教導官に呼ばれたって、今度は何しでかしたんだ」

 

「お、おこられてる?一葉、おこられてる?」

 

「だとしても、気にするようなタイプじゃない。心配しなくても大丈夫」

 

 恋花、藍、瑤の3人がテーブルを囲んで話していた。

 

「そうそう。千香瑠のお茶と冬賀のお菓子でも飲み食いしながら気長に待ってれば……」

 

 だが、恋花の前で紅茶を淹れる千香瑠は、不安な顔で考え込んでいるようである。

 

「………」

 

「千香瑠?どしたの?」

 

「あ……ううん。なんでもない」

 

 顔を上げる彼女だったが……。

 

「いや、お茶淹れてくれるのはいいんだけど……めっちゃこぼれてるから」

 

 千香瑠が注ぐカップから紅茶が溢れ、ソーサーをヒタヒタにしてテーブルまで流れていた。

 

「あ!ご、ごめんなさい!すぐに拭くわね!」

 

 彼女は慌てながら調理スペースに布巾を取りに行く。その背後から藍が呼び止めた。

 

「千香瑠、今日のおかしは?」

 

「ああっ…クッキー焼いてないわ…!ど、どうしましょう…」

 

 焦りながら調理スペースに入る千香瑠。入れ違いで冬賀が出て来た。手には艶やかな小豆色に輝くものを載せたトレーを持っている。

 

『本日は羊羹でございます』

 

「え……羊羹…?」

 

『本日のお茶請けにと、千香瑠様ご自身が用意なさったものですが……』

 

「あ…そ、そうだったわ。ありがとう、冬賀くん……」

 

 冬賀は笑顔で頷き、小皿に載った羊羹を恋花たちの前に並べた。

 

「瑤、冬賀……千香瑠ってなんかあったの?」

 

「……さあ?」

 

『心当たりはございませんが……今はこちらをご賞味ください。落ち着いてからお話しする方がよろしいかと』

 

「…そうね」

 

 恋花は前に置かれた和菓子に目を落とす。

 

「にしても、紅茶のお供に羊羹って……」

 

『ご安心ください。大変合いますので』

 

 不思議そうな顔の恋花の隣で、瑤と藍は羊羹の形に目を奪われていた。

 

「……くまさん羊羹…!」

 

「かわいいー」

 

「どうやって作ったの…?」

 

『手作りチョコレートの成形などに使うシリコン製の型に流し込んで固めました。レシピは自分の知っているものですが、作業は全て千香瑠様です』

 

「冬賀……ダンスといい和菓子といい…あんたのその妙な女子力、どっから来てんの…?」

 

 

 恋花が疑問を口にしていると、千香瑠が布巾を持って戻って来た。彼女がテーブルを拭き終わる頃、一葉が控室に到着する。

 

「お待たせしました!すみません、遅れてしまって!」

 

 今日もまた、彼女は大きな荷物を抱えていた。

 

「いいっていいって。初日に1時間近く待たされたときほどの驚きはないって」

 

 蒸し返して茶化す恋花に、一葉は頬を染めて謝る。

 

「そ、その節はすみませんでした!」

 

「恋花、いじらないで」

 

「あっはっはっ!」

 

 もはや見慣れたやりとりをする瑤と恋花。一方、藍は心配しながら一葉の近くまで歩いていた。

 

「か、一葉?なんのお話しだったの?お…おこられちゃった?藍、よしよしする?」

 

「ああ…ううん。そうじゃなくて、すごく褒められたの。ここのところいい戦績を残せてるから……」

 

「………」

 

 藍は安心したようだが、冬賀は一葉の作り笑いを見抜いていた。

 一葉に賛同する形で、恋花が続ける。

 

「あー。まあ、やっぱ藍を中心にした連携が回り出したのが大きいよなぁ」

 

「うん。藍、すごく頑張ってる!」

 

『素晴らしいご活躍です。藍様』

 

 恋花たちに褒められた藍は、胸を張って千香瑠を見た。千香瑠はやっと一息ついてソファに座っている。

 

「えっへん。千香瑠。藍、すごい?」

 

「…え?あっ、うん。すごいよ、とっても。それに比べて……

 

「……千香瑠?」

 

『いかがされましたか?』

 

 シュンとする千香瑠に、瑤と冬賀が声をかける。

 

「あ、ううん?!なんでもないわ。独り言!」

 

 

 そんなこんなで、普段通りに一葉が取り仕切るミーティングが始まった。荷物は傍らに置かれている。

 

「それで、ですね。ちょっと早いんですが、次の訓練のステージに上がろうかと思うんです」

 

 彼女の提案に嫌な予感を覚えた恋花が真っ先に声を上げる。

 

「まさかまた、ムカデ競走みたいに無茶なトレーニングしようなんて言わないよね?!」

 

「基本的にはもっと無茶です」

 

「はあ!?」

 

 なぜか得意げにとんでもないことを言う一葉。呆気に取られる恋花を置いて、彼女は続ける。

 

 

「皆様、必殺技を習得しませんか!」

 

 

「ひ、必殺技?!」

 

「かっこよさそう。藍、わくわく」

 

 驚きを隠せない千香瑠の横で、藍は目を輝かせていた。恋花が呆れる。

 

「必殺技って……そんな漫画じゃあるまいし…。瑤も冬賀もなんか言ってやって?」

 

 だが。

 

「わくわく」

 

「………」

 

「瑤も?!」

 

 瑤も藍と同じく目を輝かせ、冬賀はどこか遠くを見ているようだった。

 

「冬賀、なんか悟ったみたいな顔してるけど……」

 

『……何とはなくですが、一葉様がやろうとしていることが予想できましたので……』

 

 恋花は一葉に向き直った。

 

「あのね、なんだか知らないけど…必殺技?そんな都合のいいものがあったら皆使ってるでしょ?派手なものにはリスクがあんの。地味に、基本に忠実に…よ」

 

 彼女に指摘されても、一葉はドヤ顔を崩さない。

 

「リスクの把握さえしていれば、使える派手さも存在しますよ!色々な条件があるので、いつでも使えるというわけではないですが……」

 

 一旦言葉を区切り、皆を見渡す。

 

「必殺技があるのとないのとでは、取りうる作戦行動の幅が段違いに広がります。特に、追い詰められた土壇場では。運用次第では、私たちより遥かに上の戦力にも立ち向かっていける。そんな攻撃方法です」

 

「………」

 

 ここまで聞いて、冬賀が何となく予想していた必殺技の正体が確信に変わった。

 

「あの……具体的には、どういったものなの?その必殺技は」

 

 千香瑠の疑問に、一葉は頷いて答えた。

 

 

「ノインヴェルト戦術」

 

 

「……ノインヴェルト…!」

 

『やはりそれでしたか……』

 

 息を飲む瑤の横では、冬賀が苦笑いで呟いた。

 

「へえ、なるほど…。すごいの引っ張り出してきたな……」

 

「ねえねえ、のいん…ってなに?つよいの?」

 

 藍に見上げられた千香瑠が答える。

 

「え、ええ。ノインヴェルト戦術というのは、チームで行う戦術なの。マギの塊…マギスフィアをボールのようにパス回ししながら、皆の力を注いで、大きくしていって……。最後にそれを敵にぶつけることで、大きなダメージを与えるっていう技。本来は9人で行うものだけど、5人でも可能よ。当然、9人と比べて威力は落ちてしまうと思うけど……」

 

「5人?とーがは入らないの?」

 

 振り向いた藍に答える冬賀。

 

『はい。騎士団の装備は高濃度の負のマギ…本来、悪性の強いエネルギーで稼働していますので、マギスフィアに混入されれば深刻に威力が減少します。そもそも、負のマギを込めることそのものが確率的に難しく、失敗すればスフィアが爆発して騎士諸共に……砕け散ります』

 

「その通りです」

 

 2人の説明を、一葉が全面的に肯定する。恋花も頷いた。

 

「習得した方がいいということにはあたしも同意するよ。でも、練度が高いものとなると一朝一夕じゃ難しい」

 

「はい。ですが強力な攻撃手段です。習得しない理由はありません」

 

「いや、だから気軽に言ってくれるけどさ……」

 

 恋花はあまり乗り気ではない。

 

「高度な連携、個々のマギに関する技術、身体能力、おまけに使い所を誤らない判断力と騎士の適切なサポート……。それらがあって、初めてテーブルに上がる戦術じゃんか」

 

「個々の技術に関しては水準をクリアしていますし、冬賀も含めた高度な連携については、これまでの訓練で重点的に行ってきました。下地はできていると考えます」

 

 説明する一葉に、瑤が問いかける。

 

「前に『とっておき』のレベルアップがあるって言ってたの……これのこと?」

 

「はい」

 

「……じゃあ、最初からノインヴェルト戦術の習得を目指してトレーニングしてたの?!」

 

 驚きと共に投げかけられる千香瑠からの質問にも、一葉は頷いた。

 

「はい!もちろん、その過程全てが私たちのレベルアップに繋がるようにと考えてはいましたが」

 

「マジか…。それは想像もしてなかったわ……」  

 

「一葉、すごーい」

 

 恋花は今まで意味不明と考えていた一葉の狙いを知って、藍共々心底驚いていた。

 

「うん…わかった。やろう、ノインヴェルト」

 

「私も……頑張るわ」

 

 瑤と千香瑠も乗り気。冬賀は難しい顔をしていた。

 

『報告会でも必ず上がる戦術ですが……騎士団には各々の専用の連携プランが必要です。実際に練習を始める前の準備から、時間をかけて行うことを提案いたします』

 

 その発言に、一葉は笑顔で頷いた。

 

「では皆様。まずは敵を知り己を知りましょう。動画や関連資料なんかを用意しましたので!」

 

 床に置いていた箱の中から紙束を取り出す一葉。その分量に、恋花は戦慄する。

 

「山のような資料ね!」

 

「わーー…。またおべんきょうだー。やったーー……」

 

 藍は笑顔ではあるが、目は座っている。冬賀の顔からは血の気が引いていた。

 

「藍のやる気が、わかりやすく下がってる……」

 

『……自分の義眼の記憶容量も無制限ではないですが……最後の1ビットまで詰め込みましょう……』

 

「冬賀もわかりやすく青くなった……」

 

 瑤が2人を観察している間に、一葉は資料をテーブルに積み上げる。

 

「千里の道も一歩から。血反吐を吐くまで頑張りましょう、皆様!」

 

「……血反吐は吐かなくてもよくない?」

 

 恋花がツッコミを入れるが、反応したのは冬賀だけだった。

 

『はい。資料が汚れてしまいます』

 

「そういう問題じゃなくてさ……」

 

 

 

 しばらくして。

 ノインヴェルト戦術の概要を掴んだ一葉たちは、資料映像の視聴に移っていた。控室の灯を落とし、スクリーンに投影して観察する。

 

 

亜羅椰(あらや)ちゃん!』

 

『お任せあれ!フィニッシュショット、決めます!』

 

 白のロングヘアのリリィからパスされた桃色髪のリリィが、チャームの銃口にスフィアを合わせて射出。

 

 放たれた閃光が大きなヒュージの装甲を穿ち、断末魔すら残さず爆発と共に消し飛ばす。

 

「わっ!すごい!!」

 

 映像に反響する轟音に驚き、藍が声を上げる。

 

「えっぐいね、これは……」

 

 恋花の感想と同時に映像は終了。控室が明るくなる。

 

「これが百合ヶ丘女学院のレギオン、アールヴヘイムのノインヴェルト戦術です。騎士団の情報網を借りて記録映像を入手しました。ありがとうございます、冬賀」

 

『光栄でございます。アクセスなさる前に一声かけていただければなおよかったのですが……』

 

 自ら知らぬ間に情報網を使われていたことを知り、冬賀の顔が引き攣る。彼も学園のサーバーに勝手に侵入して情報を集めているため強くは言えないのだが。

 

 それはさておいて、他のヘルヴォルメンバーが感想を口にする。

 

「……映像で見ても、すごい迫力…。美しささえ感じられた」

 

「うん、パス回しや位置取りも申し分ない」

 

 千香瑠と瑤の言葉に頷き、冬賀も口を開く。

 

『あちらの騎士の方もお見事でした。画面から見切れてはいましたが、的確な砲撃でヒュージを追い込むことに成功していました。自分とは違うクリバノフォロス……おそらくCen(ケンタウルス)A(アーチェリー)の使い手かと』

 

「さすがの練度って言ったところね。おみそれするわ」

 

 恋花はソファの背もたれに体重を預ける。

 

「でもやっぱ隙がでっかいなー」

 

「撃った後、ほとんどマギが残らないのも問題……」

 

 瑤も弱点を指摘する。一葉の顔も難しくなっていた。

 

「世界最高レベルのレギオンでも、使い所を考えなくてはいけないでしょうね」

 

「ノインヴェルト戦術を行う間も、ヒュージに妨害されないようにいろんな工夫をしてた。弱点の埋め合わせは、騎士団に頼り切りじゃない」

 

「パス回し一つにも、高度な技術と状況判断がいるのね……」

 

「だからこそ、まずは基本の動作を身体に叩き込んでしまいましょう。さっそく、この模擬弾を使って練習しましょうか」

 

 一葉が懐から取り出したのは、チャームに込める1発の弾丸。マギを込めることはできないが、設定した回数チャームに触れた後、チャーム意外の物体に触れると蛍光インクが飛び散る術式が組み込まれている。

 

「うん、おもしろそう」

 

 藍は相変わらずわくわくしている様子だ。

 

「確かに…今のあたしたちがアレをモノにできれば、戦いの幅は劇的に広がるか……」

 

 恋花も一応の納得はしたところで、冬賀が進言する。

 

『では、自分がヒュージの役を』

 

「そうですね。全員での連携の訓練と冬賀のクリバノフォロスを的にする訓練…両方を繰り返して、とにかく数をこなしましょう」

 

 一葉の言葉に、恋花は笑顔になる。

 

「お、あたしが前に言ってた冬賀をヒュージに見立ててやる訓練、やっとできるのね。いよいよ本格的になってきたじゃん!」

 

『自分も、何か皆様の訓練に使える試作装備でもないか、本部に問い合わせておきます』

 

 一葉が場を仕切り直す。

 

「それでは改めて…皆様、血反吐を吐くまで特訓です!!」

 

 

 

 

 

 日々の訓練にノインヴェルト戦術も取り入れてすぐのこと。

 冬賀は本部から彼の支援を行なっている盤渉(ばんしき)時雨(しぐれ)と電話で話し合っていた。

 

『ふーん、ノインヴェルトをねぇ……』

 

『はい。それに役立つ試作装備などございましたら、実験としてこちらに配備していただきたいのですが……』

 

『う〜ん…そもそも瀑銀隊には試作品が優先的に回っていくから、今更何か融通させることはできないかな…。それにクリバノフォロスだけとなると、配備できる種類も限られてくるし……』

 

『そうですか…』

 

『ノインヴェルトに役立つかはわからないけど、新しい試作装備は近々そっちに届くから使ってね』

 

『感謝します。具体的にはどのようなものでしょうか』

 

『そうね…。今、クリバノフォロスのSgr(サジタリウス)モデルの新型が開発中なのは知ってると思うけど、現行型のアップデートパーツも増えてるから、まずそれが行くかな』

 

『アップデートパーツですか』

 

『そう。パイプ状の増加装甲なんだけど、ウェポンラックも兼ねててね。クリバノフォロスに乗っかって移動するリリィからの需要に応えて、肩とかに乗る場合の手すりにもなるんだよ』

 

『なるほど…。こちらといたしましても大変助かります』

 

『後は……“フンコロガシ”かな』

 

 それが意味する装備を思い出し、冬賀は息を飲む。

 

『……試作品が完成したのですか?』

 

『そう。最近になってやっと“コンデンサー”ができたからね。そっちには2匹届くはずだから、大事に使ってあげて』

 

『……はい。ありがとうございます』

 

 電話を切った彼は、プレハブの居住区画の窓から空を見上げて考えに耽った。

 

(負のマギのコンデンサー……。今までの技術では、リアクターから放出されるマギの量は制御できても、それを蓄えた物体から放たれる量はコントロールできなかった。でも、その制御が可能になったということは……)

 

 

 

 やがて数日が経過。

 今日も冬賀はノインヴェルト戦術の訓練に向かう。

 

 屋外訓練場にてヒュージ役として参加していた当初は、模擬弾が躱さずとも当たらなかったり、容易に回避できたり、そもそもパス回しに失敗してヘルヴォルの誰かがインク塗れになったりという日々が続いていたのだが……。

 

 

「千香瑠様、今です!」

 

「うん!……フィニッシュ!!」

 

  ドパァンッ!!

 

「ッ!」

 

 冬賀が咄嗟に構えた左腕の盾に模擬弾が炸裂。鋼の巨人の左半身にインクがぶちまけられ、夕日を反射する鈍い銀色の装甲がカラフルな蛍光グリーンに染まる。

 

『……お見事です』

 

「ついに捉えたわね!」

 

「やっぱりいい腕してる、千香瑠」

 

「千香瑠、おめでとー!」

 

 数日のうちにメキメキと力を付け、回避が難しくなってついに命中した。

 

 恋花たちに褒められた千香瑠は、嬉しさ半分、不安半分という表情であった。

 

「ありがとう…。実戦でもこのくらいできたらいいのだけど……」

 

「まずは最初の一歩です。慢心せず、もっともっと磨いていきましょう!」

 

 一葉が皆を鼓舞しながら、冬賀に近づく。

 

「冬賀も、お疲れ」

 

『ありがとうございます、瑤様』

 

「結構似合ってんじゃん、緑。次、このまま出撃してよ。絶対笑えるって!」

 

『いえ、恋花様…そういうわけには……』

 

 頭部の装甲を開いて答えていると、藍が見上げてきた。

 

「とーが、きれいにする?藍もてつだうよ」

 

『お気持ちは嬉しいのですが、これくらいは自分で……』

 

 やんわり断っていると、一葉が何か思いついた。

 

「そう言えば、瀑銀隊の格納庫の中をしっかりと見たことはないですね…。インク落としを手伝いながら、この機会に見学しておきましょうか」

 

「いいと思うわ」

 

『千香瑠様もですか?自分は構いませんが……』

 

 

 結局断りきれず、ヘルヴォルの全員も格納庫に来ることになった。向かいながら、一葉がまたもや提案する。

 

「このままいけば、冬賀からの妨害や攻撃もある訓練の日は近そうですね」

 

「いや、そんなんもうどうしようもなくない?妨害なしで1発当てるだけでもキツいのに……」

 

「でも、そのうちやらないとダメ」

 

「マジかぁ……」

 

 

 夕焼け空の下、雑談しながら学園内を歩く6人。冬賀がふと敷地の外に目を遣ると、ガーデンではない普通の学校から帰宅する高校生たちが見えた。

 

(…部活から帰るのって、こんな感じなのかな……)

 

 柄にもなく爽やかな青春の気分を味わいながら、冬賀も自分の住む場所へと歩みを進める。

 

 




 黄色い目のヒュージが出てきやしないかとゲーム内イベントの度にヒヤヒヤしているワタクシです。

 百合ヶ丘だけでなく、エレンスゲや神庭にもプレイアブルキャラ増えませんかね…。
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