アサルトファング Bestia Oratorium   作:羽桜千夜丸

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 この章を軽く3ヶ月更新してないばかりか、投稿自体1ヶ月してなかっただと?!

 アイエエエエ……時間…時間ナンデ……。




第7話 定まる変化

 

 少女が一人、夕焼けの戦場に立っていた。

 

 見渡すのは崩壊した街並み。かつて人々の喧騒が響いていた道路を、今は奇怪生命体の群れが我が物顔で進撃する。

 

 もはや、ここを戦場とは呼べないだろう。人影は少女以外になく、完全にヒュージに制圧されてしまっている。少女の存在に気づかれたなら、彼らの手で速やかに押し潰されることは想像に難くない。

 

 

 それでも、彼女にとってここは立派な戦場であった。

 

鈴月(すずつき)!!』

 

 よく知っている声が、通信機から聞こえる。

 

「教導官。皆は逃げ切りましたか?」

 

『ああ!怪我人の収容も済んでいる!後はお前だけだ!本当によくやった…!お前もすぐに離脱しろ!!』

 

「それが無理なんです…。でも!ただじゃやられませんよ!1体だけでもヒュージを減らして、この地域の奪還を楽にして差し上げますから!」

 

『何を言っている!高等部の教官たちは、お前の実力と活躍を期待しているんだ!あちらのリリィたちもだ!感情的にも打算的にも、ここでお前を喪うわけには…!』

 

「教導官」

 

 慌てながら説得する彼女に対して、少女は静かに言葉を発する。

 

「お世話になりました。初等部の訓練生時代から今日まで、ずっと見てくださって……。本当に感謝しています。貴女が教導官で…私は幸せでした」

 

『待て…!』

 

「今日まで戦ってきた仲間たちにも、ありがとうと言っていたと…伝えてください。東京のガーデンの兄には……ただ、起こったことを…」

 

『鈴月……!』

 

「通信を終了します。……ありがとうございました」

 

『す……』パキャ

 

 少女は耳から通信機を外し、地面に落として踏み砕いた。

 

「さぁ…ってと」

 

 彼女は身を潜めていた瓦礫の山の上に立つ。

 

『……□?』

 

『□□……!』

 

 案の定、数体のヒュージが彼女に気づいた。

 彼女は首に提げていた卵型のロケットペンダントを手にする。

 

「どうせなら、お兄ぃとも一緒に戦いたかったなぁ…。ううん、違うよね…」

 

 空いた手が握る、ロングソードの刃を掴む形のチャームを持ち上げた。

 

「お兄ぃ。私、ずっとずぅっと戦い続けるよ。自分がやられても、私はきっと……それがわからないから。だから……」

 

 ペンダントに口付け。ヒュージはすぐそこまで迫っていた。

 

「いつか…きっとまた会おう、ね。お兄ぃ…!」

 

 濡れた目を拭うと、彼女はチャームを両手で構えた。

 

「行くよ『モルトシュラーク』!最後のアンコールにお応えしなきゃ!」

 

 残ったマギの全てを込める。

 手元に埋め込まれたクリスタルコア…その表面に、ルーン文字が重なった紋様が輝いた。同時に……。

 

『□□□□□□!!!』

 

 眼前に達したヒュージが巨大な口を開く。

 

 

「『ルナティック……トランサアァァァァ』!!!」

 

 

 叫びと共に、自らのマギを全て解放。ヒュージへと斬りかかる。

 

 

 

 

 

 それきり、彼女の思考は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん…」

 

 秋展が目を覚ましたのは、灼銅城(しゃくどうじょう)の格納庫。バラバラになったチャームを最初に目にする。

 

「ああ……俺、夜中までチャームの分解整備を……」

 

 突っ伏していた作業机から身を起こすと、首にぶら下がるペンダントが目に入る。夢の中で少女が持っていたものと同じ形だ。

 

「さっきの夢……秋奈の記憶…か?」

 

 そこまで呟くと、彼は自分の手がチャームの刃に触れていることに気づいた。動力源であるリアクターは外され、近くに置かれている。

 

「……。チャームってのは、持ち主のマギを覚えるんだっけ…。なら、お前にまだ残ってたんだな、秋奈のマギが。それを使って…俺に記憶を見せてくれたのか。モルトシュラーク」

 

 彼は一つ納得し、そして乾いた笑みを浮かべた。

 

「はは…。そりゃあそうだよな。まだ秋奈の……リリィのマギが残ってたんだ。そんなコラプサーチャームで、ヒュージに変身する俺のスキルが満足に発動するわけがねぇ…」

 

 彼は刃を持ち上げ、そこに自分の顔を写す。

 

「けど、それも今ので完全に消えたな…。ありがとう、秋奈。お前の願い…俺がきっちり叶えてやるよ…!」

 

 (しろがね)に映り込む秋展の顔は、泣いても笑ってもいない。ただ、ひたすらに優しく、真剣であった。

 

 

 

 

 しばらくして。

 

「えーと、次はどの店に行くんだっけ?」

 

「はい、次は文房具屋さんですね。飾りを作るための道具を買い揃えましょう」

 

「あー。そうだったわね。それじゃ、文房具屋さんに向かうわよ」

 

「ちょ…ちょっと待ってくれ…。休憩しないか…?」

 

 姫歌、紅巴、秋展、灯莉の4人は、商店街を巡って演劇のための買出しを行っていた。

 早くも疲れが見て取れる秋展の方に、姫歌が向き直る。

 

「もうへばったの?情け無いわね」

 

「あんた、俺の手にあるものが何かわかってんだろ…。塗料の缶だけで1ダースも運ぶとか聞いてねぇよ…!」

 

 張ち切れんばかりの買い物袋を提げる彼の両腕は限界に近い力を出し続けているのだ。

 

「あたしたちとお出かけできるんだから、むしろ感謝しなさいよ、荷物持ち」

 

「冗談じゃない!画材屋の人は無料でガーデンまで配達してくれるって言ってたのに、あんたはよぉ…!男手があるから大丈夫とか言いやがって……!」

 

「お、落ち着いてください、秋展さん。先も長いですから……」

 

「サラッと鬼みたいなこと言ってくれるな紅巴さん…」

 

 ぼやく秋展を宥めながら、気まぐれで先に向かった灯莉を追う。

 3人が彼女と合流すると……。

 

「定盛〜これ買おうよ〜!」

 

 

 そこにいた灯莉は、あからさまにニンジャなのだ。

 

「アイエエエエエエエ?!」

 

 ショックを発症する秋展を放っておき、姫歌は灯莉が試着している衣装に付けられた札を見る。

 

「なになに……なりきり忍者変身セット?なるほど、これは幼稚園の劇を成功させる必須アイテム……」

 

「だな。何せ演劇の舞台は、サイバネ技術が普遍化した未来……」

 

「なわけあるかー!さっさと戻して来なさい!」

 

「おお、見よ。ヒメカ=サンのフドウノリツッコミ・ジツである!」

 

 古事記にも書かれている。

 

「さっきからうるさいわ秋展!」

 

 灯莉は笑いながら制服の上に着ていた忍者装束を脱ぐ。

 

「なははー!やっぱり定盛は面白いなー♪」

 

「ああ。返しのキレが心地いいぜ」

 

 姫歌は悔しさを顔に滲ませた。

 

「くっ…アイドルリリィを目指してるっていうのに、2人といると変なスキルばっかり磨かれてしまうわ……!」

 

「「ヒメヒメカワイイヤッタ--!」」

 

「言うと思ったわよ!」

 

 3人のやり取りを他所に、紅巴は商店街を見まわしていた。

 

「あら、あのお店って……」

 

「何っ?!紅巴まで姫歌にツッコませたいのっ?」

 

「いえ、そうではなくて……」

 

 彼女もボケに回ったかと身構える姫歌だが、実際は違った。

 

「あのお店、何でしょうか?煌びやかな衣装がたくさん並んでいますが……」

 

 紅巴はただ、少し離れた場所にある服飾店のショーウィンドウを見ていただけである。

 すると、灯莉が解説を始めた。

 

「あれはコスプレ衣装のお店だよ。この忍者セットもあそこのやつ〜」

 

「数ある中から目ざとく見つけてきたってわけか、よりにもよってそいつを……」

 

 皆でその店に近づいていると、姫歌がそのショーウィンドウに並べられた品の中に何かを見つけた。

 

「ま、待って……!あの衣装……姫歌、見たことあるんだけど!」

 

「何かのアニメの衣装でしょうか?すごくかわいいですね」

 

「ああ、そういや紅巴さん、『チャーミーリリィ』見始めたんだっけ?」

 

「はい、後学のために……」

 

 秋展たちの会話を姫歌が遮った。

 

「そんなもんじゃないわ!あれ、ミニョン=シフォンの衣装じゃないっ?!」

 

「ミニョン=シフォン…?」

 

「何だっけそれ……」

 

 紅巴と秋展はパッとしない顔だが、灯莉も気づいていた。

 

「あー!ぼく知ってる!こないだ、ぼくに無理矢理PV見せたアイドルグループだよね!」

 

「人聞きの悪い言い方しないで!あれはいずれ灯莉に衣装をデザインしてもらうときに、参考になるかと思って特別に上映会をしただけよ!」

 

「灯莉さん、乗り気じゃなかったやつだな?」

 

 2人の雰囲気から当時を想像した秋展が問いかけると、心あたりがあるのか姫歌は少し俯いた。

 

「……まあ、朝までぶっ続けで8時間拘束したのは悪かったわ」

 

「ひ…っ!」

 

 朝まで8時間拘束……その言葉に紅巴は妄想を膨らませて悲鳴に似た声を上げる。その横では秋展が呆れていた。

 

「運がよかったな、姫歌さん。ハラスメントとして訴えられてたら今頃あんたは……聞いちゃいないか……」

 

 背後でのやり取りを気にすることもなく、姫歌はショーウィンドウ越しに衣装の観察を続ける。

 

「あら、この衣装…レプリカなのね。それにしてもよくできてるわね」

 

「………」

 

 と、じっと衣装を見つめる灯莉に紅巴が声をかける。

 

「ど、どうかしましたか?灯莉ちゃん……」

 

「……なるほど、袖の内側はこういうふうになってるのかー。見えないところが見えるのは……うん。うんうん……ほう、ほほーう……」

 

 細かいところまで観察する灯莉だが、後ろから秋展に肩を軽くつつかれた。

 

「あー…お楽しみのところ水を差すようで悪いけど……」

 

「そろそろ残りの買い物にも行かないと。叶星様たちと幼稚園で落ち合う約束だったわよね」

 

「そうですね。早く戻ってお歌のお稽古を………」

 

 紅巴が言いかけた次の瞬間。

 

 

  ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ………!

 

 

 街中に響き渡る、このサイレンは……

 

「っ……ヒュージ警報?!」

 

「えっ、ヒュージが出たの?」

 

「らしいな…。やはり塗料は配達を頼んどくべきだった…!」

 

 両手が塞がっている秋展が文句を言う間に、紅巴が端末を取り出して起動する。

 

「少々お待ちください。今、ガーデンからの情報を照会いたします……っ、これは…!?」

 

「ん?」

 

「どうしたの、紅巴っ?」

 

「出現したのは大型で、機動力が極めて高い個体とのことです」

 

「何か覚えがある…」

 

「そ、それってもしかして…!」

 

 秋展と姫歌の予想通りの答えが、紅巴の端末に映し出された。

 

「データ照合によりますと……以前、私たちが接敵したヒュージである可能性が高いです!」

 

「やっぱそうか…。あの隕石野郎…!」

 

「灯莉や高嶺様に怪我をさせたあいつね!」

 

「おそらくは……」

 

 姫歌は昂然と顔を上げる。

 

「ここで会ったが百年目よ!今度こそ、成長した姫歌たちが倒してあげる!」

 

「ああ、そう何度も逃げられちゃあたまんねぇからな」

 

 秋展の言葉に頷くと、姫歌が紅巴に問いかけた。

 

「で、どこに現れたの?そのヒュージは!」

 

「ここからは結構、距離がありますが……あ、この進行方向は?!」

 

「え?どうしたの?」

 

 紅巴が口にするのは、決して聞き流せない情報である。

 

 

「神庭の住宅街……あの幼稚園です!」

 

 

「「ええっ?!」」

 

 灯莉と姫歌の驚きの声が重なる。が、秋展は不敵な笑みを浮かべた。

 

「ほーう…俺らを本気にさせる理由をわざわざ増やしてくれるとはなぁ……これに応えない理由はねぇ…!」

 

 

 

 4人は塗料を画材屋に預け、急いでガーデンに帰還。校舎内にあてがわれた、5つの箱があるブリーフィングルームにて叶星、高嶺と合流する。

 

「集まったわね、皆」

 

「叶星先輩!ヒュージの進行方向に幼稚園が!」

 

「わかっているから、落ち着きなさい」

 

 灯莉と話す叶星。彼女の横では高嶺と秋展が通信を確認していた。

 

「今、他の学園(ガーデン)のレギオンが交戦中との連絡が入ったわ。苦戦しているらしい……」

 

「灼銅城も一部は増援に向かうことが決定したそうだ。もちろん、俺はあんたらとやるけどな」

 

「その敵は、以前逃したあの素早いヒュージなんですよね?」

 

 やる気に満ちた顔の姫歌が確認すると、叶星は頷いた。

 

「間違いないでしょうね。更に報告によれば、目撃された数は…2体」

 

「へぇ…そりゃあいい……」

 

 ニタリと笑う秋展。一方で紅巴は困惑していた。

 

「あのヒュージが…2体?!1体でも厄介でしたのに……」

 

「当然その2体以外にも、別の個体のヒュージも複数目撃されている」

 

「おそらく、これまで以上に厳しい戦いになるわ」

 

 叶星は不安そうに言う。

 

「今回ばかりは、私と高嶺ちゃんじゃ、貴女たちを護れないかもしれない。秋展くんも……」

 

「………」

 

 紅巴がきゅっと唇を結ぶと、叶星が続ける。

 

「『リリィの戦いは今日が最期かもしれず、命を賭すに値するかどうかはリリィ自身が決めるべき』。よく考えて……」

 

 と、意味深な笑顔で様子を見ていた秋展が口を開く。

 

「そこのとこだが、考えるまでもなさそうだ。なぁ?」

 

 彼が目を向ける1年生3人。

 誰の顔にも迷いはなかった。

 

「ええ。そんなの決まってます!」

 

「姫歌ちゃん…?」

 

「わたしたちはリリィです!相手がどんなヒュージだろうと、臆すわけにはいきません!それに……」

 

 灯莉が笑顔で加える。

 

「うん!ぼくたちが、あの子たちの笑顔を守らないと!」

 

「はい!ヒュージによって悲しむ人たちがいるのなら、戦わないわけにはいきません!」

 

「命を賭けるには、十分に値する戦いです!!」

 

 姫歌はキッパリと言いきった。

 

「だそうで。俺もその賭け、一口乗らせてもらう。なんたってアガリがデカそうだからな」

 

 皆、心は定まっている。叶星はその事実をしっかりと受け止めた。

 

「………わかったわ。もう聞いたりしない。一緒に戦いましょう」

 

「はい!」

 

 姫歌が返答したところで、彼女は部屋に積まれた荷物の方を向く。

 

「では、紅巴ちゃん。そこにある箱を開けてくれる?」

 

「箱…ですか?」

 

 梱包を解き蓋を開け……中身を目にした紅巴は息を飲む。

 

「これは!?」

 

「服だ!」

 

「これって、もしかして…?!」

 

 灯莉と姫歌も中身を覗き込んだ。

 

「グラン・エプレのレギオン服よ」

 

「皆からの意見を踏まえて、製作依頼をしておいたの」

 

 得意げな顔の高嶺と叶星。秋展は校長室がある方角に頭を向けていた。

 

「今朝届いたばっかりだそうだ。正真正銘の新品にして、一点物の品ときてる。にしてもグラン・エプレの任命式といい、レギオン制服といい…サプライズ好きだよな、校長先生……」

 

 秋展による説明を聞き流しながら、灯莉たち3人は自分の名前が書かれた箱から服を取り出して嬉しそうに眺め、体に当てたりしていた。

 

「おお!いい感じのデザインだねー!」

 

「すごい、かわいい!」

 

「はい、素敵です!」

 

 皆、形は様々だが、白や薄いピンクを基調にアクセントとしてワインレッド…学校の制服とはまた違う、紫に近い色合いの赤が加わる点が共通している。

 個性は保ちながら、全員が同じ集団にいることは一目でわかる設計だ。

 

 一通り眺めていた灯莉が秋展を見る。

 

「あっきーのはないの?」

 

「ああ、灼銅城(こっち)には防衛軍の式典用制服があるからな、必要ならそいつで間に合わせる。というか服云々より、俺にはとびっきりの“変身”があるだろ?」

 

「あ、EXスキル……」

 

「でもあんた…使えないんでしょ?」

 

 姫歌からの質問を、彼は適当にあしらった。

 

「さあてどうかな。話してる間にも、出撃準備した方がいいぜ」

 

「そうね」

 

 叶星の答えを聞くと同時に、秋展はブリーフィングルームから出て準備に向かった。

 彼が去った部屋で、叶星が号令をかける。

 

「それじゃ、皆!着替えたら秋展くんと合流して……グラン・エプレ、出動よ!」

 

「「「はい!!」」」

 

 1年生たちの声が部屋に響く。

 

 

 

 灼銅城の格納庫。

 秋展は自分の装備……モルトシュラーク-コラプサーにリアクターを嵌め込む。

 

「……よし」

 

 手早く動作確認も済ませた。すると、座って作業していた彼の横にもう一人騎士が現れる。

 紅いカタフラクトを纏い、ヘルメットに笠のようなセンサーユニットを備え、二振の刀を佩いた彼は……。

 

「…今日は、調子がよさそうだな」

 

「……(なつめ)…」

 

 秋展はどうしても彼、待宵(まちよい)(なつめ)に言っておきたいことがあった。立ち上がって向き合う。

 

「お前…気づいてたよな。ずっと前から、俺のチャームの刃に秋奈のマギが残ってたってことによ…」

 

「………」

 

 棗は静かに頷いて、鬼面頬型のフェイスガードを開ける。

 その仮面の下で、彼の瞳は燻んだ赤に輝いていた。彼のスキル、マギの存在と流れを観る…ホルスの眼。

 

「もっと早く言ってくれてもよかったんじゃねぇの?」

 

 

「……知ったら、お前は戦えていたのか?その武器を振るえていたのか?去年までのお前を引き摺るお前が、彼女(リリィ)たちと」

 

 

「…っ」

 

 痛いところを突かれ、彼は少し押し黙る。

 

「……いや。正直無理だったろうぜ…。スキルを使ってまでグラン・エプレの世話人やろうとは…考えもしなかったと思う」

 

「だから、俺は黙っていた。お前が自分で乗り越えるべきことだったからだ。……不満か?」

 

 秋展はクスリと笑う。

 

「まさか。俺は感謝してんだよ、黙っててくれたことをな。ありがとよ、棗」

 

「……そうか」

 

 2人は並び、光が差し込む格納庫の出口へ。これから戦地に赴くにしては軽く、されどしっかり歩みを進める。

 

「なんでお前、リリィにモテねぇんだろうな?不思議でしょうがねぇよ」

 

「…お前は性格を変えなければ、だな」

 

「ははっ、言うねェ……」

 

 格納庫の外では、太陽が燦々と降り注ぐ。棗の通信機が鳴った。

 

「……“ドゥルーエ”から通信。作戦が決まったか」

 

「ああ、お前のとこのレギオン…。今日も頑張れよ、“葡萄”の世話人」

 

「……そちらもな、“林檎”の世話人」

 

 

 軽く挨拶を交わすと、2人はそれぞれのレギオンに合流すべく別れた。

 

 

 

 

 都内の住宅地。

 ヒュージの迎撃予定地点に到着した叶星たちが索敵していると、彼女と高嶺はあっさり敵を見つけ出した。

 上空にて歪な八芒星が、またもや悠然と飛行している。が、その体表には板を継ぎ接ぎしたような模様が見られる。

 

「っ!やっぱりあのときのヒュージね……」

 

「レストアード……(ネスト)に戻って傷を癒したヒュージね。私たちのことは覚えているかしら?」

 

 川辺の路地に身を潜めつつ様子を見る2人。秋展もそれに倣って、ヒュージを観察している。

 

「あれだけ触手をぶった斬りにしてやったんだ。覚えてなきゃどうかしてる」

 

「どの道、強敵であることは間違いないわ。なんとか私たちで仕留めないと……」

 

 すると、3人の近くに…。

 

「叶星せんぱーい!」

 

「こっちは完了しました!」

 

「きょーちんたちと一緒に幼稚園の皆、無事に避難させたよ!」

 

「はい。皆さんとてもいい子でした!」

 

 灯莉たちが合流。3人は幼稚園児たちを退避させる手伝いに出ていた。

 

「皆、ありがとう。お疲れ様」

 

「他の人の避難も灼銅城が進めてる。これで、こっちの戦闘に集中できそうだ」

 

「うんっ!」

 

 灯莉が元気よく頷く。すると上空から……

 

 

『□□□□!!』

 

 

 ヒュージの声が降ってきた。身体の後ろから胴体を引き出し、ほとんど同時に触手を展開する。

 既に身に覚えのあるマギの気配に感づいているのだ。

 

「あのヒュージ……」

 

「やはり、あのときの…!」

 

 姫歌と紅巴も、流星型ヒュージの姿を認めた。

 

「チビたちのお遊戯会の邪魔はダメだよ〜」

 

 灯莉は禍々しい形のヒュージの視覚器を睨みつける。

 

「そうね。早く片付けて劇の準備をしましょう。あの子たちが待っているわ」

 

 叶星の言葉に合わせて全員がチャームを構えた。一方、ヒュージもまた気配の出どころを捉える。

 

『□□□!』

 

 

  ビュウゥッ!!

 

 

「っ…伏せて!」

 

 高嶺が叫ぶと同時に、ヒュージは鋭く方向転換しながら地面に触手を繰り出した。

 

「え…っ?」

 

  ギィン!

 

 姫歌に向けられたそれを、間一髪高嶺が打ち払う。その直後……。

 

 

「あっきー後ろ後ろ!!」

 

「っ?!」

 

 灯莉の声に振り向く秋展。その眼前に、姫歌たちがいる場所とは全く違う方向から触手が迫る。

 

「『アポフィスの……』…っ!」

 

  バチィ!

 

 全身に血色の稲妻を瞬かせながらチャームで触手を受けた。

 

「ぐおお?!」

 

 が、彼はあれよと言う間に路地から押し出され、道路に転がりつつ躱す。

 

  ズガンッ!!!

 

「……っ!」

 

 全身に浮き上がった光の紋様の残像を描きながら踏み留まった彼のすぐ横で、乗り捨てられたトラックが触手に斬り裂かれた。派手に吹き飛んで川に落ちていく。

 

 黄色い光を放つ瞳で空を見上げると、2個の流星が重力に争って飛び回っている。

 

「もう1体、ヒュージが……」

 

「報告にあった2体目ね…」

 

「纏めて来たか…。いよいよ都合がよくなってきたぜ!」

 

 叶星と高嶺も、流星型ヒュージをキッと見上げる。

 

「……高嶺ちゃん」

 

「ええ、わかってるわ」

 

 紅巴は不安な顔で2人を伺っていた。

 

「も、もしや…またお2人で……?」

 

「今、あのヒュージの速度に対応できるのは叶星…あるいは秋展くんだけよ。そして、あの速度に呼応して動けるのは私だけ」

 

「っ……」

 

「気をつけてね、3人とも……」

 

 姫歌と灯莉が一瞬、悲しそうな表情を浮かべる。あの2体以外にも、やや小ぶりなヒュージが周りにやって来ているのだ。

 

「安心しろ。俺がついてる以上、この前と同じ戦い方はさせねぇからな」

 

「秋展……そうよね…!」

 

 姫歌は一呼吸置き、気持ちを切り替える。

 

「…他のヒュージたちはあたしたちに任せてください!叶星様たちの邪魔はさせません!あんたも頼むわよ、マネージャー!」

 

「おう!」

 

「ええ……任せたわ。行こう、高嶺ちゃん、秋展くん。今度こそ、確実に仕留めるわ…!」

 

「了解!」

 

 

 二手に分かれ、ヒュージ迎撃に走るグラン・エプレ。

 

 流星型を追う叶星の射撃を、レストアはことごとく回避する。

 その間に……。

 

「叶星、後ろ……!」

 

 彼女の背後に接近する、新造の2体目。叶星はその気配をしっかりと捉えていた。

 

「わかってる…!たあぁあっ!!」

 

「そぉらよお!!」

 

 射撃を取りやめ、素早く近接戦モードにチャームを切り替えて斬りつける彼女。タイミングを合わせて秋展も灼熱の刃を振りかぶる。

 

 が、新造もレストアに比肩する機動性で続け様に2人の斬撃を回避した。

 

「く……っ!」

 

「ちょこまかと…!」

 

 悪態を吐きつつ、秋展は内心に生じた焦りを整理する。

 

(こりゃああんまりよろしくねぇかな…。さっき発動した俺のスキル…咄嗟だったこともあってまだ温まってねぇから……それまでどうすりゃいいんだ…?!)

 

 

 少し離れた場所では、小ぶりなヒュージの群れと戦いながら姫歌たちが3人の様子を見ている。

 

「ああっ、やっぱり躱された……!」

 

「あの機動力は厄介です…。それが今回は同時に2体なんて…」

 

 姫歌と紅巴が会話していると、灯莉が声を上げる。

 

「あっ、叶星先輩!あっきー!!」

 

 

 

  ズダダダダダダダダダダッ

 

「っ…!」

 

「もう弾が…!ちったぁ当たりやがれ…!」

 

  ドギャギャギャギャギャギャギャギャギャッ

 

 叶星と秋展はチャームのマシンキャノンを連射して新造を狙うが、ヒュージは高速で回避するとお返しとばかりに彼女たちに攻撃を叩き込む。

 

  ギュンッ!

 

「な…ぐっ!?」

 

「きゃあああっ?!」

 

 吹き飛ばされる2人。秋展はアスファルトにチャームを突き立ててブレーキにしたものの、空中に投げ出された叶星は姿勢を立て直そうとし……着地の瞬間には建物の裏に入り、高嶺から見えなくなる。

 

「叶星…!!」

 

 心配する高嶺の声。なんとか無事に着地していた叶星が答える。

 

「私は大丈夫!もう1体から目を離さないで!秋展くんも!」

 

「っ…わかったわ」

 

「任せとけ!」

 

 高嶺の近くに戻っていく秋展をやや離れて追いながら、彼女は独白する。

 

(思った以上にきついわね…。片方を追いかけていたら死角から狙われる…。なんとかして足を止めないと。あの日、高嶺ちゃんがしたように……)

 

 瞬間、秋展による警告が頭を過ぎる。

 

 

  『…どん底まで後悔したんだ。……もう二度とするんじゃねぇぞ……』

 

 

(わかってる……だけど今は…!)

 

 マギを込めた脚で大地を蹴り、建物の屋根に着くやヒュージとの距離を一気に縮めるべく飛びかかる。

 

「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『□!』

 

 感づいていたヒュージはやはり回避。その光景は高嶺のみならず秋展の目にも映る。先に行っていた彼の頭上を超えたのだから当然だ。

 

「あっ、叶星さんまた……!」

 

 更に……

 

「…っ!待って、叶星!それは私が…!」

 

 高嶺も前に出ようとする。走りながら彼女を制止する叶星。

 

「駄目よ!!もう高嶺ちゃんをあんな目には……遭わせない!!」

 

 

『□□□□!!?』

 

 

 触手の合間を縫って連続して繰り出される叶星の斬撃。かなり執念深い相手にたじろぎながらも、ヒュージはそれらことごとくを受け流す。

 

「抑えろ叶星さん!!二兎を追うんじゃない!!」

 

 地上から必死に呼びかける秋展の声。だが、今の叶星には響かない。

 

(誰も傷つけさせない…!この身に替えても、私が守るって……!)

 

 新造は身を捩って斬撃を躱すと更に高度を上げ、叶星の刃が届かない場所に逃れる。

 

 その刹那。

 

 

  ズダァン!

 

 

『□□?!』

 

 

 ヒュージの死角から放たれた弾丸が、その顔面に確かに当たる。

 

 チャームを放ったのは……。

 

「叶星様ぁぁ〜〜!!」

 

 

「えっ…?」

 

「…ナイスショット、ってやつだな」

 

 姫歌だった。別の建物の屋上からの狙撃。予想外の出来事に叶星の足が止まる。

 

 彼女と秋展の視線の先で、紅巴も声を上げていた。

 

「こ、こちらのヒュージは私たちにお任せを!私たちではあの機動力には対応できません…。ですが、待ち伏せをして足止めするくらいでしたら……!」

 

「姫歌のレアスキルでヒュージの軌道を読むわ!合図をしたら一斉にいくわよ……!」

 

「おっけー!」

 

 灯莉がチャームを構える。新造が3人に迫る中、カバーすべく秋展が駆け出した。

 

「っ…来ます!」

 

「……『この世の理』!」

 

 姫歌のレアスキルが作動した。それはいわば不確定のない運動予測。一瞬一瞬、次にヒュージがどこを飛ぶのか読めるのだ。

 

「……見えた!今よっ!」

 

「た、たあぁぁあ!!」

 

 合図に従って飛び出す紅巴たち。彼女の鎌状のチャームがヒュージの顔に引っ掛かり、地上…彼女たちが立つ建物の屋上に引き摺り下ろす。

 

『□□□!!』

 

 次いで姫歌の剣と灯莉の場状槍もヒュージに食い込んだ。3人は押されながらもマギで屋上に張り付き、ヒュージを押し留める。

 

「ふ、吹っ飛んじゃいそう…!」

 

「踏ん張りなさい!姫歌たちはリリィなんだから!」

 

 

 

「なら俺もカッコいいとこ見せねぇとな!!」

 

 

「秋展?!」

 

 押さえられる新造のヒュージ。その背後から彼が跳躍する。

 

「教えてやる!ヒュージの動きを止めるってのは……騎士団(俺ら)十八番(おはこ)だぁぁぁ!!」

 

 血の色の稲妻を纏った灼熱の刃が、ヒュージの頭上から振り下ろされる。

 

  バキバキィ!

 

『□□□□□□!!?』

 

 その刃は八芒星にめり込み、溶融させ、奥へ奥へと食い込んでいく。

 

「俺らの武器、動力源は負のマギだ!タチの悪いエネルギーなんだよ!それがどうだい、頭ん中に直接、送り込まれる気分ってのは!?」

 

『…□…!□□…!!……□…』

 

  パリ…パリパリ……

 

 星形の頭部全体で、血色の稲妻が弾け飛ぶ。うめき声を上げるヒュージの触手から力が抜けて、機動性を生んでいた推進力も格段に弱まった。

 

「負のマギのパルスでヒュージを麻痺させる!とはいえこいつもすぐに慣れて、効かなくなってはくるんだが……」

 

「これなら私たちのチャームも届きます!」

 

『□□□……!!』

 

  ブン!

 

 新造は渾身の力で触手を振るい、3人を剥がすとすぐさま飛び上がった。

 秋展を頭上に乗せたまま、今までとは比べられないほど遅く。

 

「はぁあああっ!!」

 

 叫びながら斬りかかる姫歌。

 

「ヒュージなんかに!負けてたまるかああああっ!!」

 

『□□□!!』

 

 致命傷とはいかないまでも、ヒュージの装甲に確かに切り傷が入る。

 

 

 図らずも見守る形になってしまった叶星の胸中は不安で一杯になっていた。

 

「姫歌ちゃん…秋展くん…皆…!駄目、危険よ!!」

 

 と、隣にやって来た高嶺が彼女の肩に手を置く。

 

「叶星、貴女はまだわからないの?」

 

「高嶺ちゃん……」

 

「自分が皆を守る。そのためには自分は犠牲になってもいい。そんな考えでは、いつまで経っても昔のまま…前へ進むことなんてできないわ。彼からも学んだはずでしょう?」

 

「………」

 

「念を押されたの。もうあんな戦い方はしない。……私たちは変わるの。変わらなければならないのよ!この新しいグラン・エプレで、あの子たちや灼銅城と戦い抜くって決めたのでしょう?」

 

「………っ」

 

 俯いていく叶星に、高嶺は微笑んだ。

 

「……叶星、もう一度あの子たち…その周りもよく見てあげて」

 

「……え?」

 

 

 姫歌たちの周りには、小型ヒュージの骸がいくつも転がっていた。だが、それらを築いたのはグラン・エプレではない。

 

「全部倒して!動いてるのは全部よ!そういう作戦だから!」

 

「はい、お姉様!」

 

「何、棗くん?……ああ、グラン・エプレなら大丈夫よ。私たちは残りを狩り尽くすわ」

 

「……了解」

 

 

 去っていくのは、寡黙な騎士を従えた一つのレギオンである。

 もちろん、叶星も知っているリリィたちだ。

 

「あれは……ドゥルーエ…?!前に姫歌ちゃんたちだけで出撃したとき、一緒に戦ってたって……」

 

「あの後、仲よくなっていたのよ。あの子たちが、あの子たちの意思で」

 

「………」

 

 叶星が視線を移すと、その先では…。

 

 

 秋展を乗せた新造を追う姫歌たち。路地に入ったところで、紅巴がチャームをヒュージに打ち込んだ。建物の上を移動する紅巴、ヒュージの上の秋展に、地上から姫歌が声をかける。

 

「秋展、紅巴!そのままそいつの動きを止めておける?」

 

「任せろ!もう一回パルス浴びせりゃ……おら!!」

 

『□□□□□□!!?』

 

 移動していたものの、再び推力が弱まったヒュージ。その身体に鎌を突き刺し、屋根に踏み留まる紅巴が返答する。もう一度捕まえた。

 

「少しの間であれば大丈夫です!」

 

「お願いね!」

 

「こんなふうにあんたと連携できる日がくるとはな。嬉しいぜ紅巴さん!」

 

「はぅ……そ、そう…ですね……」

 

 嬉しそうにはにかむ紅巴。その両側から姫歌と灯莉が動く。

 

「それじゃ、灯莉!この隙に姫歌たちで左右から一気に攻撃を仕掛けるわよ!秋展ごとやっちゃうつもりでね!」

 

「まっかせて!」

 

 紅巴がいる建物を回り込み、銃撃で挟みながら2人が攻撃する。

 

  ズダァンズダァンズダァンズダァン!!!

 

『□□□□!!』

 

「鉄砲上手くなったな!味方にはもう当たらねぇ!」

 

 怯むヒュージにしがみつきながら、秋展の嬉しそうな声が響いた。

 

「よし、行くわよ!」

 

「おおー!!」

 

「私たちなら、きっとできます!」

 

 

 斬撃、銃撃の三重奏。3人が奏でる連携の調べによりマギが弾け、爆炎がヒュージを包む。

 

『□□□□□!!!』

 

 麻痺を脱したヒュージは紅巴の鎌から離れるや、戦線から離脱すべく逃走を開始した。

 秋展は振り落とされながらも叫ぶ。

 

「このまま逃すわけねぇだろ!!ほんとお前ら、往生際が悪いよなぁ!」

 

 姫歌たちの攻撃の余波で、ところどころ破れた彼の服。その下にある皮膚にできた傷の周りで、赤い稲妻が弾けると出血が止まる。

 

(EXスキル共通の再生能力…。俺のは高い部類だそうだが、こんなに速いとはな…。この出力と安定感……いよいよ本領発揮できるか…!)

 

 傷を癒しながら着地。足元にいた姫歌たちと合流する。

 

 

 1年生3人の姿に、叶星は息を飲んだ。

 

「皆、いつの間に……」

 

「今のあの子たちが、守らないといけない対象に見える?」

 

「……ううん。皆、すごく強くなってる。少し前までは、全然纏まりがなかったのに……」

 

 彼女の感想に、高嶺は頷く。

 

「ええ。あの子たちも必死に成長しようとしているのよ。秋展くんも、そのためなら何でもやる覚悟があるわ。私たちの声に応えようと」

 

 一緒に様子を見ていた彼女は、叶星に向き直った。

 

「よく考えて、叶星。貴女がすべきことを」

 

「……そう、だね。私たちが…ううん、私が変わらないといけない……」

 

 叶星は今までの自分の考えや、秋展に言われたことの意味を思い出す。

 

「……私、自分だけで戦ってる気になってた。高嶺ちゃんや…姫歌ちゃんたち…。秋展くん…灼銅城の人たちがいるのに。あの子たちも彼も、私が守るべき者、代わりに戦うべき者じゃなくて。一緒に肩を並べて戦う、仲間なんだよね」

 

「そう。だから、共に戦いましょう。リリィとして」

 

 叶星の表情が変わる。彼女の目には迷いや不安はもうない。ただ、純粋なる闘志が宿る。

 

「ええ!私たち、皆で!」

 

 チャームに流れるマギの音。叶星の耳には心地よく聞こえる。

 

「『リリィの戦いは今日が最期かもしれず、命を賭すに値するかどうかはリリィ自身が決めるべき』。『真の敗北は一人死すること。真の勝利は皆で命を繋ぐこと』……」

 

 神庭女子藝術高等学校、そしてそのガーデンの騎士団、灼銅城の思想を唱える。

 

「私たちの背中には街の人たちが……幼稚園の子どもたちがいる。あの子たちを守るための戦い…。これは命を賭すに値する戦いよ!」

 

「でも、この戦いは最期などではないわ。これからもずっと、皆と戦っていくのだから」

 

 

 

「あ、先輩たちだ〜」

 

「よお、遅かったじゃねぇの」

 

「待たせたわね、皆」

 

 最初に出迎えたのは灯莉と秋展。紅巴に姫歌も、皆笑顔である。

 一度は分かれていたグラン・エプレが再度集結した。6人が見上げる先には、変わらない様子で飛び続ける2体の流星型ヒュージ。

 

「皆、行くわよ!敵、高機動ヒュージをこの地で駆逐する……!」

 

  パチィ

 

 秋展のチャームの上で稲妻が弾け飛ぶ。

 

「この戦いで……私は変わるわ!」

 

「……おう!」

 

 決意が刻まれた笑顔で武器を取る叶星。彼女に続き、皆が流星を追って駆け出した。

 

(“変わる”…か。俺も“変わら”ねぇとな……。手伝ってくれよ……秋奈!)

 

 秋展の胸で、ロケットペンダントがカチャリと音を立てた。

 

 

 




 ヒメカ=サンは実際カワイイ。

 主人公が主人公してないのは私のケジメ案件なのでは?


 次がこの章の最終回になるかと思います。
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