安斎千代美の幼馴染がドゥーチェとしてのアンチョビを知らない概念(仮題)   作:ガーリック&バジル

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「うーん……うーーーん……考え過ぎたらお腹痛くなってきた……ちょっとトイレ」

「アンチョビ姐さーん……って、あれ? 居ないじゃないッスか……ん? 切手の貼られた封筒? 差出人は姐さんっスかね? 送り先は……ああ。しょーがないッスねー! 出来る後輩のペパロニさんが代わりにポストに入れておきますか!」



「あれ? 誰かここに置いておいた封筒を知らないか?」

「ああ、それなら姐さんの代わりに出しておいたっスよ!」

「ななななな、何してるんだアホーーーー!!」

「えー???」


俺の幼馴染がこんなにドゥーチェ!ドゥーチェ!な訳がない

『来週試合があります。是非見に来てください。

                 千代美  』

 

 

 技術が発達し、紙の手紙を送り合うという文化も廃れて久しい今日この頃。本当に大事な事を言いたい時は携帯のメールでも電話でもなく手紙をよこしてくる我が幼馴染は相変わらず文学少女なのだろう。

 

 千代美ちゃん。

 安斎千代美は俺が物心ついた時から傍に居た幼馴染だ。中学までは同じ学校で学び、遊び、時に喧嘩したりと男女の差がありながらも良い関係を築けたと思う。周りを見ていると、早い段階では小学校に上がった頃辺りで関係が切れてしまうような人達もよく見て来た。

 そう言ったことを鑑みれば、やはり俺と彼女の関係はイイものだったのだろう。

 

 そんな俺達も高校進学を機に別々の道を歩むことになった。俺は夢であった服飾デザイナーになるため陸にある専門学校へ、彼女は戦車道の腕を見込まれて校長直々のスカウトを受けて学園艦へ。

 こうなっては気軽に会うことも難しくなったが、現代社会と言うのは便利なもので、ケータイを使えば一瞬の内に文章として言葉を届けられるし、声だって聞くことが出来る。パケットを気にしなければいけないが、テレビ電話を使えばお互いの顔を見ながら会話をすることだって出来る。

 結局、高校生になっても俺と千代美ちゃんの関係は途切れることなくやって来れた。

 

 

 前回顔を合わせたのは春休み。つまり、4カ月程経った頃だろうか。

 突然彼女から一通の手紙が届いた。

 

 それが先の内容である。

 

 大会と言うのは戦車道全国高校生大会の事だろう。古臭いとされながらも淑女の嗜みとして盤石な地位を築いている戦車道を千代美ちゃんが履修している事は当然知っていた。中学の頃から地元では結構有名な選手として活躍していたし、試合の応援に行った事だってある。

 しかし、高校に進学してから千代美ちゃんは戦車道の試合を見に来ないでくれと俺に言うようになった。

 

「気でも変わったのか……?」

 

 彼女をスカウトしたアンツィオ高校の戦車道チームは控えめに言っても弱かった。そんな現状を打破するために千代美ちゃんはアンツィオへと招聘された訳なのだが、彼女は「恥ずかしい」という一点張りでアンツィオでどのような活動をしているのか詳しく話してはくれなかった。

 

 俺個人としては彼女が衰退したチームを立て直していくサクセスストーリーを期待して楽しみにしていたのだが、現実は厳しい。中々上手く進んでいないのだろうと思い、戦車道について無理に深く聞くようなことはしなかった。

 

 そんな彼女が高校3年の最後の大会にして俺を晴れ舞台に呼んだのだ。

 

「何にしても久しぶりの千代美ちゃんの試合だ。全力で応援するとしよう」

 

 それに、アンツィオ高校は千代美ちゃんの事を抜きにしても俺とかかわりのある学校だ。

 

 特別推しの高校が無い俺としては関係が深いアンツィオ高校には是非とも大会を勝ち抜いて欲しいと思っている。

 かれこれあそこの学校との付き合いももう2年目になろうとしている。千代美ちゃん以外にも知り合いだっている。今年は1年生が沢山入ったという話を聞いて千代美ちゃんとちょっとしたお祭り騒ぎになったりもした。

 

「それに()()()()()()()にも挨拶しないといけないしな」

 

 俺はアンツィオ高校で初めて知り合った友人の名を口にする。

 

 アンチョビさんは俺や千代美ちゃんと同学年であり、アンツィオ高校の戦車道履修者でもある。彼女のトレードマークでもあるツインドリルを初めて見た時の衝撃と言ったら今でも明確に思い出すことが出来る。アンツィオと言う高校を人の形にしたような彼女は竹を割ったような性格をしており、非常に好ましい人物だ。

 千代美ちゃんがアンツィオの気質に馴染むことが出来るのか非常に心配だったが、彼女のような人が居る学校ならと安心することが出来た。

 

 アンチョビさんはアンツィオ高校で()()()をやっているという話だったし、千代美ちゃんと二人三脚でこれまでやって来たのだろう。後輩たちの話を聞く感じ、とてもやんちゃな娘達ばかりなようだが、なんだかんだで隊長としてチームを率いている事が出来ているらしい。

 

「ふむ、二人が先頭に立ってチームを指揮する光景は絵になるな」

 

 片や千代美ちゃんは今時珍しい瓶底眼鏡の文学少女。

 一方でアンチョビさんはキリリとした目元で特徴的なツインドリルなアンツィオ少女。

 まるで正反対の二人でありながら、偶然にも髪の色や瞳の色等不思議と共通点も多い。実は生き別れた姉妹だったと告白されても俺は驚きはしないだろう。

 そんな対照的な二人だ。

 

「むむむ、なんだかインスピレーションが湧いてきた」

 

 そう呟くや否や、俺は部屋に落ちているスケッチブックとペンを手に取り、サラサラと脳内イメージを絵として出力していく。

 

 40名以上も加入した1年生達。

 千代美ちゃんやアンチョビさんを支え、来年の支柱となる2年生の二人。

 アンツィオの主力戦車CV33とセモベンテ。

 秘密兵器のP40。

 そして、その上に立つ二人の少女。

 

「ん? 優勝旗とトロフィーはどっちをどっちに持たせるべきだろうか?」

 

 そんな下らない、いや、大事な妄想……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 を、楽しんでいたのが1週間前だっただろうか。

 

 千代美ちゃんの誘いにより見学に行った戦車道大会で、俺は盛大に混乱していた。

 

「ん? うん……ん?」

 

 広大なフィールドで開催される試合状況をリアルタイムで観客たちに知らせてくれる大型モニター。そこには現在の状況と共に対戦校の保有戦車のスペックや参加者の簡単な紹介文が映し出されている。

 

『安斎千代美』

 

 うん、俺がよく知る幼馴染の名だ。

 

『釣り目ツインドリル』

 

 うん、俺がよく知る友人のバストアップ写真だ。

 

『千代美ちゃん=アンチョビさん』

 

 うん??? 

 

 現在映し出されているライブ映像はキューポラから顔を出したアンチョビさん……千代美ちゃんが無線で果敢に指示を出しつつ自車を移動させている場面だった。

 

 そこで見たのは俺の知らない幼馴染の姿だった。

 

 

 ふぅ……。

 

 

 よし、ここらで一つ気持ちを整理するために俺とアンツィオ高校との思い出を1から思い出してみようか。

 

 

 

 




色々設定を弄っていますので、ご容赦ください。
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