安斎千代美の幼馴染がドゥーチェとしてのアンチョビを知らない概念(仮題)   作:ガーリック&バジル

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「姐さん、体操服なんか着て、男の人と何やってるんッスかね?」

「隣りにいる方は……ああ、そう言えば今日服飾科の高校の方が来るんでしたね」

(あれ?確か採寸もするって言ってたけど男性の方一人?…………もう少しこのまま様子を見ていましょうか)




ストライク・ザ・アンチョビ

 デザインが決定した事で今日やるべき仕事は残り一つとなった。

 デザインを決めるだけなら態々俺がこの場に来る必要は無い。画像を添付したメールのやり取りだけで済むだろう。しかし、俺がここに居なければ行うことが出来ない作業がある。

 

 未だに参考絵をまじまじと眺めているアンチョビさんを置いておき、カバンの中からメジャーを取り出す。

 

「それじゃ、採寸をしましょうか」

「え!?」

「え?」

 

 何故か驚愕の声を上げるアンチョビさん。

 お、おかしいな? 別に変な事を行った覚えはないのだが……ああ、そうか。

 

「採寸の為に体操服か何かに着替えて下さいね」

 

 そうだった。制服のままじゃ正確な数値は測れないではないか。いやはや、うっかりしていた。きっとアンチョビさんは今の服装のまま採寸すると言う事に違和感を覚えたのだろう。

 本当は体の線がしっかりわかる水着の様な格好が理想だが、海やプールに入るのでも無いのに水着姿になると言うのは彼女にしたら抵抗があるだろう。一方で体操着ならなんの問題も無いだろうしな。

 

「え゛え゛!?」

「えぇ……?」

 

 あれ? まだ何かあるのかな? ……いや、伝え忘れたことは無いはずだ。うん。

 

「それじゃ、しばらく部屋から出てるんで、着替えが終わったら呼んでください」

「え……あ……その……あれ? 私がおかしいのか?」

 

 背後からアンチョビさんが何か言っているような気がしたが、俺に伝えなければならない事と言う訳でもなさそうなので取りあえず気にせず部屋から出ることにした。

 

 

 ☆

 

 

 しばらくしたら部屋の中からアンチョビさんが着替え終わった事を伝えてくれたので、再び部屋の中に入る。

 アンツィオ高校は女子高だからか、同年代の男が一人で立っている事が珍しかったのだろう。学生達から物凄い話し掛けられた。流石はアンツィオ高校。外部の人間にも物怖じせずガンガン来るんだな。

 

「き、着替え終わったぞ……うう……」

「ありがとうございます」

 

 中に居たのはアンツィオ高校指定の体操服に着替え終わったアンチョビさん。横にあるイスには彼女が先ほどまで来ていた制服とスカートが綺麗に畳まれて置かれている。どうやら意外と几帳面な性格らしい。

 別に彼女を貶める気はないが、てっきり大雑把……いや、豪快に服を置いているものかと思っていた。人は見かけによらないのだろう。

 

「あうぁ……なんでこんな事に……」

「それじゃあ、パパっと済ましちゃいますね」

 

 背丈、肩幅、袖丈、ゆき丈、バスト、ウエスト、ヒップ、それに加えて今回はズボンも制作するので股上、股下の測定も行っていく。

 まずは手を降ろした状態での肩幅から測る。

 

「ひぇっ!」

「あ、くすぐったかったですか? すいません」

 

 手がぶれてメジャーが肌に当たってしまっていたかもしれない。申し訳ない事をしてしまった。

 

「それじゃあ、手を肩の高さまで上げて下さい」

「……」

 

 俺の指示に従ってくれたアンチョビさんは手が地面と平行になる様に広げてもらう。所謂Tポーズと言うやつだ。

 

 その後も次々とメジャーを彼女の身体に当てていき、必要な部位の数値を記録していく。

 

「次は胸回りを測らせてもらいますね」

「!?」

 

 アンチョビさんの脇の下から両手を通し、メジャーを彼女の胸に当て、俺の側に回して持ってくる。

 バスト、ウエスト、ヒップの数値を取るときのポイントはやはり適切な力加減をもってメジャーを身体に押し当てる事だろう。人体と言うのは押せば凹むものなので、あまり強くメジャーを当てすぎると実際の数値よりも小さな値になってしまう。かといって緩めすぎると逆に大きすぎてしまう。そのような齟齬が発生しない様に身体にぴったりとメジャーが当たっており、かつ、過度に力を入れ過ぎない。

 

「~~~~~~~~ッッッ!!?!?!」

 

 アンチョビさんは何故か右斜め上方向に顔を向けながら目をぎゅっと瞑っている。

 

「あ、ちゃんと前向いててくださいね。あまり頭が動くと体の軸がずれるので」

「わ、わかったぞ!」

 

 何かを耐えているかのような表情で突然目の前の壁の染みの数を数え始めるアンチョビさん。

 うん、素直にちょっと怖いよ……。

 

 俺は気を取り直してウエストとヒップの測定に移る。同様の方法でメジャーを当てる。

 

「あ、んん……」

 

 今度はアンチョビさんも動かずにいてくれたのでスムーズにデータを取ることが出来た。

 

 ふむ、メジャーを当てる度にうめき声が漏れていたことを考えると、さてはアンチョビさん、採寸に慣れてないな? まあ、服のオーダーメイドなんて礼服や制服くらいでしか行わないし、それも仕方のない事だろう。

 

「お疲れさまでした。これで採寸は終わりです」

「はぁ……はぁ……すぅ~~~~はぁ~~~~」

 

 採寸が終わるとアンチョビさんはがっくりと膝を着いてしまった。何やら顔も滅茶苦茶赤いし、息切れも凄い。もしかしたらあまり体調が優れないのかもしれない。

 むむ……体調が悪い中で採寸のために同じ体勢を維持する事はさぞ大変だったろう。これで必要な作業は終わったし、今日はもうゆっくり休んでもらうことにしよう。

 

「な……」

「ん?」

「なんでこんな事に~!! お詫びとしてさっきのデザイン絵を要求する!!」

 

 ガバっと立ち上がったアンチョビさんはそんな要求をしながら俺に向かって手を差し出してきた。

 体調は大丈夫なのだろうか。元気に振り回されているツインドリルを見る感じ、特に不調と言う事ではなさそうだ。

 

「え!? ま、まあ、あのデザインはコピーだけとらせてもらえれば原画の方はお渡ししても問題ありませんが……ん? お詫び?」

 

 な、何に対してのお詫びだ? もしかして何か不手際があっただろうか!? 

 

 

 はっ! もしかして! 

 

「あの、身体データの数値に問題でもありましたか?」

 

 アンチョビさんも女の子だ。細かい採寸をする事はめったになくとも自分のBWHの凡その数値くらいは把握しているはず。

 もしかしたら彼女が記憶していた数値と今回俺が提示した数値にズレが、それも大きい方向でズレがあったのかもしれない。

 

「すみません! もう一度測らせていただけますか!」

 

 俺はカバンにしまいかけたメジャーを再び構えていつでも迅速に測定し直すことが出来るように態勢を整えた。

 

「ちちち、違う違う! またあんな……はぁ……もういいから……あの絵はくれよな」

「はあ。じゃあそこのコピー機使わせてもらいますね」

 

 とりあえず問題は無かったらしい。まあよくわからんが、とりあえずデザイン絵のコピーを取っておくことにしよう。

 

 普段は戦車道チームの会議室として使われているらしいこの部屋にあるコピー機の使用許可をもらい、絵のコピーを取っていると部屋のドアが空けられた音が聞こえて来た。

 

「ちゃーっす!」

「お疲れ様です」

「ああ……、ペパロニ、カルパッチョ……」

 

 入ってきたのは二人の少女。アンチョビさんが何も言わないところを見るに、戦車道の関係者だろう。

 あ、紙が詰まってぐちゃぐちゃに……うわぁ……蓋開けて紙を出してやり直しかぁ。

 

「二人がもうちょっと早く来てくれたらあんな恥ずかしい目に合わなかったのに……」

「なんスか? 姐さんあれくらいでへばちゃったんッスか?」

「身体の数値を知られるのは恥ずかしいかもですけど、仕方ないですよ。それがお仕事なんですから」

「それもそうなんだがなぁ……ん? 何でお前達、その事を知ってるんだ?」

「あ、ちょっと用事を思い出したので失礼しますね!」

「おっと、今日は資金集めのバイトの日じゃないっスか! それじゃあ姐さん! またッス!」

「って、おい! お前らずっと見てたな! 見てたんだろう!? 助けろよなぁ~~~!!」

 

 コピーを取り終わったところで見たものはさっき部屋に入って来たばかりの二人はそそくさと部屋を出ていくところだった。何しに来たんだろ? 

 

「はい、アンチョビさん。デザイン絵は渡しておきますね」

「あ、おう! ありがとうな!」

 

 スケッチブックから切り取った1ページを嬉しそうに受け取るアンチョビさん。そんなに喜んでもらえたならラフではなくしっかりと清書したものを渡してあげたら良かったな。

 

「それでは、今日の作業はこれで終わりです。完成は夏休み頃になりそうなんですけど、大丈夫ですか?」

「ああ、今すぐ必要になるものではないから、しっかりと完成させてくれ!」

「わかりました。完成したら郵送で学校の方に……あっ、そうだ!」

「ん? どうした?」

 

 俺は今の今まですっかり忘れていた幼馴染の存在を思い出した。

 

「実はアンツィオで戦車道をやってる友人が居るんですけど、彼女に届けてもらうのはどうでしょうか? 安斎って言うんですけど、ご存知ですよね?」

 

 

 

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