元魔王ククルさん大復活!   作:香りひろがるお茶

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 遂に舞台はリーザス城に移ります。


第二十三話   リーザス奪還編 第十四幕

 「さて、遂にここまで来たわけなのじゃが。」

 

 ラジールでリーザス軍の洗脳を解き、戦力を急増させたリーザス解放軍は今、ノースの街に駐留していた。リーザス城は既に目と鼻の先だ。だが、リーザス城こそが最後にして最大の問題なのだ。

 

 「問題はリーザス城をどうやって手に入れるかだな…。」

 

 新たに軍師としての位置に就いたバレス指導の下、皆それぞれどのような方法を使ってリーザス城を攻略するか思案していた。早朝から始めた会議だったが、既に何も目新しい案も無く正午を回ってしまったところだ。毎日のように見回りを行いリーザスに明るいコルドバも必死に考えるが、どうにもこういう事は向いてないようだ。今ならデコで玉子焼きが出来るだろう。

 

 「あの城は硬いわ食料はあるわでどうしようもないからな。」

 

 ランスとしてもこのリーザス城の堅牢さは歯がゆい。さっさとシィルを救い出して散々エッチしたいというに。まだ新しく手に入れたシィルの服の謎機能も殆ど使えていないのだ。

 

 「なんか意外…。ランスのことだから何も考えずに突撃だなんて言うと思ったのに。」

 

 「あの阿呆でも真面目になることがあるのね…。」

 

 なんだろう…ちょっとシィルちゃんが羨ましい。私が攫われても、ランスはこんな風に助けに来てくれるのかな…。はっ、いけないいけない。今は大事なときなのよ! 感傷的になったらダメよ! 志津香がこっち見て溜息ついてるじゃない!

 

 それにしても、ラジールでのランスの活躍見たかったなぁ。

 

 どんな時でも乙女なマリア・カスタードであった。ありえたかもしれない平行世界で、彼女が囮として使われたという残酷な事実は知らないほうが良さそうである。

 

 「バレスのおっちゃん、いい作戦か何か思いつかないのか?」

 

 ここはやはり年の功。バレス将軍本人に何か案はないのだろうか。

 

 「う~む。正直わしとしてもリーザス城を攻めることになるとは…。」

 

 これにはコルドバも同意と大きく頷く。なにせリーザス城は正に鉄壁。軍人であれば、これは絶対落ちないだろうと考えてしまうほどなのだから。

 

 「ガハハ!素晴らしい案を考えたぞ。」

 

 「何っ!? 本当かっ!?」

 

 と、ここで声を上げたのはまたしてもランスである。リーザス軍の洗脳が解かれた時、彼らの目に一番最初に飛び込んだのは人類最強の男トーマ・リプトンに手に持つ剣を突きつけたランスの姿だった。神話の一節のようなその光景にリーザス軍が歓喜したのは言うまでもない。建国の歴史の再来だの人類統一の英雄だの有る事無い事歯止め無く広がり、今やランスはリーザス解放軍に無くてはならない存在である。

 

 「その名もゴールンデンランス作戦! どうしても入れない場所があるなら相手入れてもらう。降伏を偽ってゴールデンハニーを奴らに献上するのだ。そしてその中に俺様と優秀な女の子が入り、中に侵入次第暴れて中から門を開ける。どうだ! グットな作戦だろう!?」

 

 つまりはトロイの木馬だ。ゴールデンハニーはその身体が金で出来ているため、献上品としては文句の言い様がない。さらにゴールデンハニーはかなり大きいのだ。十人程であれば、外見からは全くわからずに仕込むことが可能である。

 

 「それは…、無理じゃろうな。」

 

 だがこれにバレスは難色を示した。

 

 「んだと~? 俺様の考えた作戦だぞ。絶対成功する。」

 

 何がそこまで自身を持たせているのかはわからないが、頭ごなしに否定されては腹が立つというもの。理由がわからなければ納得なぞ出来ない。

 

 「我らはトーマ将軍を殺してしまったのだ。相手側のトップであり、英雄であった男をな。それに最悪時間をかけてチューリップ3号で押し切ることが出来ればリーザス城を落とすことは可能だ。この状況での降伏宣言に意味は無いじゃろう。」

 

 確実に負ける要素のない敵に対しての降伏。そこにある意味は罠意外の何者でもない。いくら相手が浮かれた皇子だからといって流石にそれがまかり通る程世の中甘くはないというものだ。

 

 「むむむ…。しかしそれだと時間がかかってしまうではないか…。」

 

 「だからいい案が無いか模索してるんでしょ。もうしっかりしてよランス。前にリーザス城に侵入したことあるじゃない…。」

 

 そう、ランスはとある事件を解決するために過去リーザス城へ親友した経験がある。ああ、あの時侵入してきたのがこいつじゃなければ…と悲しまずにはいられないかなみであった。嫌な事件だった。

 

 「あれ? 俺様確かにリーザス城に前潜入したな。どうやって入ったんだっけか。確かあの時侵入は手形かなんか使ったんだな。それで地下から脱出して…。」

 

 「「…ん?」」

 

 何かその時使ったような…。そうそう、リーザス軍に対して正面から脱出するわけにもいかずどうにかしてバレずに出れないかと手段を探して…

 

 バッとランスとかなみは同時に顔を合わせる。何故忘れていたのか。あるじゃないか! 簡単にリーザスに侵入できて極僅かしかその情報を知らない経路が!

 

 「「排水路っ!!!」」

 

 

 

 

 

 「というわけでやって来たぞリーザス公園。」

 

 リーザス城下街の平凡な公園。なんとこんなところがリーザス城に続いているとはよもやリーザス国民も誰一人知るまい。

 

 「ほんとにここからリーザス城に繋がっているの?」

 

 リーザス城に詳しく無い志津香としは半信半疑である。今回リーザス潜入に選ばれたメンバーはランス、志津香、かなみ、ミリ、レイラ*。マリアはチューリップ三号の運用のため今回も待機だ。

※ レイラ・グレクニー リーザス軍親衛隊長の武人 女だてらに幼少から剣を握り、その腕前はリーザス軍No.2と言われる程 原作ではアイゼルに捕らわれていたが、今作ではラジールにいた

 

 「ええ、それは間違いないわ。リーザスでも限られた人しか知らない極秘事項よ。」

 

 さらに言えば、恐らくヘルマン軍人は知らないであろう絶好のポイントである。しかもこの排水路、直接地下牢に続いている。囚われの身のリア含む王族達を助けるという意味でも最高の方法だ。

 

 「よし、さっさと行くぞ。とりゃ。」

 

 がしゃんと排水口の鍵をうまい具合に壊す。緊急時であるからして仕方ない。珍しく率先して面倒事を引き受けるランス。きっと全員俺様が頼りになると惚れなおしているに違いないと下心満載なのは言うまでもない。

 

 「いい、私達の仕事はリーザス正門の解錠と人質の救出よ。女の子がいても直ぐに手を出したりしないでね。」

 

 「ふん。わかってるわ。ただし、リーザス城を取り返したら、その礼として全ての女の子は…ぐふ、ぐふふ…。」

 

 「はぁ、なんでこんなのに…。マリアは惚れちゃったのかしら…。」

 

 ランスは確かに強いし決断力はあるしそういう面だけ見ればいい男かもしれない。しかしこの性格が全てを駄目にしている。マリアには幸せになってもらいたいし、どうにかして目を覚まさせないと…そう心に誓う志津香であった。残念ながら、この問題に今後長い間悩まされ続けるとは流石におもってみなかっただろう。

 

 

 

 

 

 「しっかしなんで英雄の俺様が又こんな湿っぽい所を通らにゃアカンのだ…。」

 

 排水口の中はネズミがウロウロと徘徊し、カビ臭い匂いが充満している。道は決して広くない。縦一人ずつ道なりに進むのがやっとだ。

 

 「わっ、ネズミっ!」

 

 「なんだかなみ~。お前忍者の癖にネズミが恐いのか。」

 

 「こういうところにいるネズミと天上とかにいるのは違うの! 大きさが全然違うの!」

 

 かなみを庇うようだがネズミは意外にも恐ろしい相手である。特に病原体を保有していることが最大の理由である。集団になれば下手な傭兵よりも恐ろしい相手なのだ。

 

 「ちょっとランス! あんた道わかってるの!? さっきから適当に進んじゃいないでしょうね。」

 

 「俺様が信じられないというのか!?」

 

 「かなみさん。これで本当にリーザス城に向かっているの?」

 

 「え、え~っとぉ。えへへ。」

 

 ああ、これは駄目ね…。メンバーのかなみに対するイメージがガラガラと崩れていく音がする。やめてっ! やめてっ!!

 

 「かなみなんかに頼っても意味ないぞ。俺様に全て任せろっ。シィルもリーザス城もついでにリアも全部まとめて俺様が救ってやる。」

 

 どんと胸を張るランス。こうなってはランスに任せるしか無い。もうどうにでもなれと言ったところか。

 

 「へぇ、そいつは楽しみだね。」

 

 「あん? 誰かなんか言ったか?」

 

 排水路に入って未だ数分。先頭を歩くランスの先方、一寸先の暗闇の中から、すっと筋骨隆々の女が現れた。誰だ此奴、なんでこんな所に…?

 

 「あたしの名前はミネバ・マーガレット。人類最強の女だよ、ぼーや。」

 

 ミネバはこの状況に驚くこともなく、静かに言葉を紡ぐ。ミネバの正体を理解したかなみとレイラはその事実に震え上がった。ミネバ・マーダレット! ヘルマン第三軍隊長、暴虐ミネバ!

 

 「ランス! 危ない!!」

 

 「? こんなババアの何が危ないんだ。大体人類最強はこのランス様だぞ阿呆。」

 

 何を騒いでいやがると後ろの二人を一瞥する。暗闇でよく見えないが、どちらも尋常じゃないぐらい焦っているのはわかった。このババアが一体何だと言うんだ。

 

 「さぁ、それは今から味わってみるんだね。ぼーや。」

 

 いつの間にかその手にスイッチが握られている。ランスがそう認識した瞬間、排水路内に爆風が轟いた。

 




 ランス3といえば、この方ミネバさん。鬼畜王ではなかなかにかっこいんですよね。まだランス9クリアしてないのでミネバがどうなるか気になるところ…でも急遽明日仕事が入ってしまいました。

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