元魔王ククルさん大復活!   作:香りひろがるお茶

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第六話     なんかしらんけど、わし策士

 

 「待てやこらぁああああああああああああ!!!」

 

 「おっ、おっ、おっ、落ち着かんか! あんなものまた買い直せばっうひゃい!?」

 

 ダンジョン内をひたすら上へ上へと追いかけっこをする二人の少女がいた。しかし追いかけっこと侮る事なかれ、片や鬼は一般人が当たれば即死する恐ろしい練度の黒魔法を無尽蔵に打ちまくっているのだ。追いかけられる側の少女ククルは元魔王ではあるが、現在たったのLv10。確かにLv10もあれば幾つか技も習得出来るし、技量で高レベル相手を上回ることは不可能ではない。実際ユラン戦では相手がLv20に対して持ち前のスピードでうまく撹乱していた。しかしながら魔法国家ゼス有数の天才が満身込めて発動する黒魔法は流石にマズい。そのレベルなんと30超。一撃でも当たれば溶けてしまうかもしれない。近づいて物理で伸そうにも、ヌーは呼吸をしているのか危ぶまれるほど魔法を連発している。これでは近づけない。なんでこうなってしまったのじゃと自問自答する余裕すら無く、ククルは必死に逃げまわっていた。

 

 「事故じゃ事故っ!! 悲しいすれ違いの結果じゃったんじゃあ!!!」

 

 「事故で済むと思ってんのかこのスカタンがああああああああああああ!!!」

 

 奇声とともにダンジョンを埋め尽くさんとする広範囲魔法が放たれる。上級黒魔法のデビルビームだ。これまでの様に右に左に避けることは出来ない。つまり、ひたすら出口に目指して駆けるしかない。

 

 

 

 

 「ふっ、元魔王を舐めるでないわい。でかい魔法打てばいいもんじゃないのじゃ!! 」

 

 ククルは逃げの一手から打って出る。くるりと振り返り、どどんと仁王立ち。唱えるは得意の火属性魔法。

 

 「ファイアレーザーっ!!」

 

 眩い程の火炎の束が、デビルビームを照らしだす。

 

 「えっ…そんなっ!? きゃあああああああぁぁぁぁぁ………。」

 

 ファイアレーザーはデビルビームを霧散させると、そのままヌーまで巻き込み大爆発を巻き起こしたのだ。

 

 「全く、一時の感情でわしに歯向かうからじゃ。やれやれ。」

 

 すごいぞククル!強いぞククル!かっこいいぞククル!!!_______

 

 

 

 

 「みたいな予定じゃったんだがなぁ。」

 

 両手を付きだしたポーズのままククルは固まっていた。ファイアレーザーは発動されてもいないし、デビルビームに至ってはもうすぐ目の前まで迫ってきていた。

 

 

 

 

 

 「そうさな。レベル下がってたから、わし下級魔法以外打てないんじゃった。………テヘ。」

 

 

 

 

 

 ククルは吹き飛んだ。華奢な体が左右上下の感覚が無くなるほどダンジョン内を跳ね返り、終いには仰向けにピクリとも動かなくなった。

 

 「ハッ…ハッ…。やった……殺してやった…殺してやったッ!!」

 

 歓喜にも悲鳴にも似た嗚咽を漏らすヌー。ククルは激しい衝撃の影響か、四肢があらぬ方向へ折れ曲がり、首も常人であれば間違いなく絶命している程いかれてしまっていた。

 

 「…ふふふふふ。あーっはっはっはっはっはっは!!」

 

 パソコンが壊れたことか、それかプライドを傷つけられたことか、それとも初めて殺人を犯したことか、ヌーは何か堪え切れず高笑いを上げた。心中お察しする。

 

 しかしながら、ククルは骨がない軟体生物であった。人間ではない。蛸のように筋肉で体を支えるやわらか筋肉ダルマである。魔法による激しいダメージは残っていたものの、まだ辛うじて動ける範疇であった。ヌーが目を離した一瞬をついて、ガバっ起き上がった。

 

 「隙ありじゃあああああ!」

 

 えっ? と疑問の表情を上げたのも束の間。今度はヌーが殴り飛ばされ、水平に吹っ飛んだ。背中から壁に激突し、もたれるように崩れる。

 

 「し、死ぬかと思ったのじゃ! わしが人間じゃったら確実に死んでたのじゃ!」

 

 のじゃのじゃ喚くククル。どうやら彼女としてもヌーの攻撃は危険を孕んでいたようだ。体力のない彼女には十分過ぎる攻撃だったか。なんで…とか細く漏らし、ヌーは意識を失った。一難去った。また一難は御免被りたい。

 

 

 

 

「ややっ? これは…。」

 

 先ほどの戦闘から息もつかぬ内に、ククルは戦闘の余波で崩れたダンジョンの岩肌から、何か人工的な影が覗かせているのを見つけた。どっこいしょと幾つか岩を取り除いてみれば、そこには夢にまで見た宝箱があった。ヌーからは何も得るものが無かっただけに、期待に胸が膨らむ。脈絡のない話だがククルは貧乳ではない。宝箱には罠が仕掛けられているの可能性もあるのだが、ククルは躊躇なく開けた。

 

 「私、起動します。

  7回目の目覚め。

  私、起こしたの、ダレ?」

 

 「うぉ、なんかでたのじゃ。」

 

 宝箱にはなんと頭にボンボンを二つ付けた奇抜な少女が入っていた。彼女はレア女の子モンスター復讐ちゃん。依頼を受けた対象を暗殺するまで追い続ける殺戮モンスターである。

 

 「復讐したい人、いますか?」

 

 「殺したい人、いますか?」

 

 「憎い人、いますか?」

 

 「消したい人、いますか?」

 

 怒涛の質問ラッシュ。これには流石のククルも反応に困った。

 

 「おっ、えっ、っと。ル…ドラサウム………かの。」

 

 思わずルドラサウムの名前を出してしまった。事実ククルが殺したい相手ではあるから間違ってはいないのだが。

 

 「顔写真(六ヶ月以内のもの)、又は所持品(匂いが付いているもの)、ありますか?」

 

 「あー、そうじゃな。」

 

 ククルは適当に落ちている岩を拾うと、描き描き描き描き。ダンジョンの壁面に巨大なクジラが描かれた。

 

 「うむ。流石わしじゃ。完璧じゃな。瓜二つじゃわい。そんでもってこいつは全長2kmくらいじゃ。」

 

 「対象、ルドラサウム、認証しました。暗殺に移ります。」

 

 復讐ちゃん的には絵でも良かったのだろうか。確かにこのような外観とサイズの存在はルドラサウムしかいないのだから、判断材料としては十分かもしれないが。

 

 復讐ちゃんは暗殺対象を聞くと、少し満足したような表情を見せ、立ち去ろうとする。

 

 「あ、おい待つのじゃ。宝箱に入ってたんじゃ。なんぞ金銭価値のありそうなもの持っとらんか。」

 

 危ない危ない。本来の目的を忘れるところだであった。

 

 「そうですか………はい。」

 

 「ひょっ………!?」

 

 ぽんとククルの手のひらに置かれたのはぷちハニーの死骸。衝撃を加えれば爆発する天然ダイナマイトである。勿論爆薬としての金銭価値は高い。が、只でさえ扱いの難しい爆薬に加え、ハニーである。彼女の弱点ベスト大賞セイブツ部門ランキング堂々一位!であるハニーだ。

 

 「ってか重っ………。」

 

 ぷちハニーの大きさは30cmないくらいなのだが、重さはなんと150kgである。………グニャリ。

 

 Out of the frying pan and into the fire. 元魔王受難の日々は続く。

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