もしキーストンがウマ娘に転生したら 作:H&K YAMATO
そして新たな決意。
追記:一度投稿しましたが少し修正しました。
6月20日
私のジュニア級メイクデビューの日です。
私は今レース場で発バ機の中にいます。
ついにこの日が来てしまったかという気持ちもありますが、私は今早くゲートが開かないかなと思っています。
本来ならこういう風に思うことはなかったでしょう。
緊張して、また最初のレースみたいにオーバーペースになっていたでしょう。
でも今日は違います、そんなことを絶対にできない理由があります。
私は駄目な娘です。
あれからシンザン先輩やメイズイ先輩と何度かトレーニングをしてもらいましたが、一度も勝てませんでした。
それだけなら年度が違うと納得できるのですが、私は同期のダイちゃんやシローちゃんにもレースでほとんど勝っていません。
こんな自分でいいのかなっていつも思います。
せっかくトレーナーさんに選んでもらったのに、何も返せていない自分が嫌です。
こんな私にトレーナーさんはそんな私にいろんなものをくれました。
最初はできなかったスタートダッシュをできるように、いや得意にしてくれました。
たずなさんの協力を得るために仕事を肩代わりしてくれてたんですよね。
あなたは何も言っていませんでしたけど、知っています。
トレーニング中に遠くで、たずなさんと仲良く仕事の話をしているのが聞こえました。
ウマ娘は耳がいいんです。
強い相手との併走トレーニングを組んでくれました。
知っています、実はシンザン先輩やメイズイ先輩の併走トレーニングってすごい競争率だってこと。
1日平均で50人以上のウマ娘が申し込むみたいですよね。
トレーナーさんは何も言いませんが、あなたがいつも併走トレーニングのために努力をしているのを知っています。
シンザン先輩やメイズイ先輩の対戦相手の情報を調べて渡していますよね?
そうやって対戦相手の研究時間を肩代わりする代わりに、併走トレーニングをお願いしていますね?
知っていますよ、あなたが電話でトレーナー仲間と話しているのを聞いたことがありますから。
そのために夜遅くまで仕事と言って残っていますね。
知っていますよ、あなたが仕事をしているのを見たことがありますから。
私が学校に忘れ物をした時、確か19時半ぐらいだったと思いますが、トレーナー室の電気はまだついていました。
トレーナさん何してるのかなーって、扉を小さく開けて中を見ました。
あなたは扉に背を向けて、印刷している対戦相手の資料を整理しているところでした。
あわよくばトレーナーさんと話せたらな、なんて浮かれてた気持ちが一気に冷めましたよ。
私に自信をくれました。
いつも私が負けて、自信をなくすと必ず褒めてくれますよね。
「一生懸命走れて偉い!」とか、「前よりもタイムが伸びている」とか、何度も何度も褒めてくれます。
でもただ褒めるだけじゃなくて、「コーナーでよろけちゃったね」とか、「相手のペースに合わせて掛かっちゃったね」とかその時の反省点もいつもしっかり言ってくれます。
あなたはちゃんと私を見てくれていて、「次また頑張ろう!」って背中を押してくれるから「まだやれる!」って思えるんです。
私に才能があるって言ってくれました。
「根性は誰にも負けてない」って。
でも、聞いてしまったんです。
私が山本さん以外のトレーナーたちの間で、なんて言われているかを。
あれは2週間ぐらい前、メイズイさんと初めての併走トレーニングをしてすぐの頃のことです。
他の娘のトレーナーたちが会話しているのを聞いちゃったんです。
私は特に特徴がなくて、レースの着順も低くて、いいところがないウマ娘らしいです。
シンザン先輩から技術を吸収して、今が伸び盛りのダイちゃん。
成績にむらがあるけど、いつの間にか差し切ってるシローちゃん。
トレーナーさん達がいう「当たり」は彼女達みたいです。
山本さんは仕事はできるけど、「選ぶウマ娘を間違えた。」って言われているんですよね。
「もしウマ娘がこのままの成績で行くなら、3年後の新人期間が終わった後にチームを作れないだろう。」、とも言われているみたいですね。
人間はウマ娘と違って耳が良くないから、聞こえると思わないみたいです。
平気でそんなことをグラウンドで言っています。
あの時は強く足を踏み込みすぎちゃって、地面に後が残っちゃいました。
でもそんなことどうでもいいんです。
私はのことは事実、でも山本さんをバカにされるのだけは我慢できません。
私のために、あんなに努力してくれる山本さんが間違っている?
そんなわけがない! そんなことを言われていいはずがない!
こんなに悔しいと思ったのは、誰かを見返したいと思ったのは、生まれて初めてです。
だから山本さん、
あなたは間違ってなんかいないって、私が証明します。
あなたの努力を、絶対に無駄だなんて絶対に言わせない。
私はじっとゲートが開くのを待っています。
次回、キース覚醒