因果の晒しもの   作:バラム

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因果晒し

 

 

 筆記試験をこれまでで最高の出来で終わらせた俺は、ホールにて山田教諭による試験内容の説明を聞いている。

 大スベリでお馴染みのアレだ。

 お、今何か言ってるのが飯田君かな?

 遠すぎて鮮明には聞こえないが、ホールの空気は何ともいえない感じになっている。

 空気感がおかしいのは、俺が居ることも影響してるだろうけど。

 

 俺は18歳を迎えた時点で、原作のウルージさんと同じような容貌、体躯へと完成されていた。

 どう見たってオッサンである。

 そんでもって、外国人顔で袈裟を着ている。

 一部の受験者は、俺を試験官だと思って真面目そうな態度でアピールしているが、大抵の奴らはチラチラとこちらを窺うだけである。

 それも、4メートル近い俺を見上げるようにだ。

 必然、そいつらはカメラの向こうにいる本物の試験官にはあまり良い顔をされていない。

 減点はないだろうが、評価の一部にはなっているのだろう。

 

 

 さて、試験会場に移動して、もうすぐスタートと言ったところだが、あたりを見回しても受験者の中に主人公たちの姿はない。

 多少残念に思いながらも、試験に向け集中力を高める。

 実際、実技を受けるのはこれが初めてなのだ。

 いくら知っているとはいえ、やるとなったら話は別である。

 

 精神を研ぎ澄まし、見聞色の覇気の感知範囲を広げていく。

 

 「ハイ、スタートーー!」

 

 これも、わかっていた。

 合図と同時に、月歩によって空中へ躍り出る。

 そして、射程範囲内の仮想敵に嵐脚を放つ。

 

 「脆いな…」

 

 やはり、無個性の受験者でも工夫次第で破壊できる程度の強度なのだろう。

 視界内の仮想敵を全て両断している。

 関節部を狙ったとはいえ、金属をここまで容易く切り裂くことはできない。

 

 他の受験者が未だに試験の開始を飲み込めていない中、月歩によって移動を開始する。

 思ったよりも楽に終えられそうである。

 

 

 

 

 試験開始から数十分、俺は月歩で周囲を見渡しながら、目についた仮想敵を嵐脚や飛ぶ指銃"撥"で潰し、仮想敵に追い詰められている受験者を助けてまわっている。

 ヴィランポイントもレスキューポイントも十分稼いだはずである。

 ヴィランポイントに至っては100を超えたあたりから数えていない。

 

 そろそろ開始地点に戻るかと考えているときだ。

 轟音、そして、これまでビルだと思っていた物が形を変えていくのを見聞色の覇気によって察知した。

 

 「なるほど、擬装、か」

 

 あのデカブツが見つからないと思ってはいたが、市街地の建造物に紛れ込ませていたわけだ。

 履帯を唸らせ動き出した巨大敵に、受験者たちが次々と背を向け、必死に逃げている。

  

 ここらで教師陣に一発アピールしとくのもいいだろう、とアスファルトの地面に降り立ち、巨大敵に向き直る。

 すると、巨大敵が撒き散らしている砂煙の中、何かがいるのを見聞色の覇気で感じ取った。

 数瞬思考し、ふと、ある登場人物が頭に浮かんだ。

 葉隠透、個性、透明化。

 おそらく、彼女が巨大敵の進路上に横たわっている。

 足を挫いたのか、気を失っているのかまでは分からないが、何故だか動く気配がない。

 

 ここで、彼女が巨大敵に潰されると考えるほど俺は馬鹿じゃない。

 願書を出す際に、自身の個性は記載しているはずであるし、雄英側もそれに合わせて赤外線センサーだの、ソナーパルスだの用意しているはずである。

 だが妙だ。

 俺の見聞色の覇気が、このままいくと巨大敵が彼女を轢き潰すことを強く訴えてくる。

 もう、巨大敵と彼女との距離は数メートルと言ったところである。

 

 今からでは、全力の剃でないと、彼女を抱えて退避することは難しい。

 しかし、俺の全力の剃では加速時、制動時のGに彼女の体が持たないだろう。

 

 「…仕方あるまいッ!」

 

 剃で彼女の元に移動し、すぐさま覆い被さる。

 と、同時に鉄塊を発動し、衝撃に備える。

 

 その僅か数コンマ秒後、俺の背中を強烈な痛みが走る。

 いくら脆く作ってあるとはいえ、金属は金属。

 それも、ビルを思わせる程の巨体だ。

 戦車の重量を考えれば、十数トン、あるいは数十トンはあるであろう。

 武装色によって、体が潰されてしまわぬように硬化を施す。

 

 「コレはッ…!中々ッ!」

 

 俺を踏みつけたことで異常を検知したのか、巨大敵が走行を停止している。

 中々堪えるが、今俺の下にいる彼女に弱いウルージさんを見せるわけにも、彼女ごと潰されるわけにもいかない。

 そうして数秒。

 ようやく巨大敵が俺の背から離れたところで、彼女を抱え、まだこちらの様子を窺っている、尾を生やした男子の受験者に彼女を預け、退避させる。

 

 ああ、よくもやってくれたな。

 

 笑みを崩さず、眼のみを鋭く引き絞り、怨敵を睨め付け、周囲に受験者が残っていないことを覇気によって確認する。

 そして、袈裟をはだけさせ、ウルージさんを"ウルージさん"足らしめる、"能力"を発動させる。

 

 「ずいぶん痛めつけてくれなさったな… さっきまでの私とは思いなさんな!!」

 

 再起動した巨大敵がこちらに向かってくるが、俺はそれを見上げることなく、"同じ目線"で半身に構える。

 

 膨れ上がった筋肉。

 特に背筋と上腕・前腕の膨張率が圧倒的である。

 正しく、殴打に特化した肉体だ。

 

 徐々に速度を上げる巨大敵に対して、俺は右腕を大きく振りかぶり拳に力を込める。

 未だに膨張を続ける俺の体は、遂に巨大敵を見下ろすほどとなった。

 彼我の間はおよそ10メートル。

 次の瞬間、間合いに入った奴に対して、留め続けていた力を一挙に解放する。

 

 「"因果晒し"!!!」

 

 上から押しつぶすように放たれた俺の拳は、巨大敵のボディを木っ端微塵に粉砕し、アスファルトの地面に大きなクレーターを作る。

 さらに衝撃が突き抜ける。

 地には深い穴が形成され、周囲の民家や電柱は悉く倒壊していく。

 

 「終了ーー!!」

 

 ここで試験終了の合図。

 こうして、俺の最後の雄英入試が終わりを迎えた。

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