暗い部屋に一人の男が入ってきた。
「おい」
「ああ、来てくれたのか」
その男はすでに中にいたもう一人の男に話しかける。話しかけられた男はまるで今気づいたとでもいうふうに振り返った。
「用事があるんだろ?さっさと言え」
部屋に入ってきた方の男がイライラするように言った。
「ふふ、君も随分と感情を持ち始めたね」
部屋にいた方の男はまるで我が子に接するかのように言葉を紡ぐ。
「それで?用件は?」
「ああ、仕事の依頼だ」
「仕事?」
不思議そうに問い返す部屋に入ってきた方の男。
「そう。君は感情の殆どを手に入れ、その戦闘能力は本気の僕を超えた。つまり卒業だ」
「この家から一人立ちするついでに仕事を片していけってか?」
「うん。実は僕の妹は人間界にいるんだ」
重大な事実を述べる男。
「いや、知ってるから。毎日聞かされてたから。このシスコン野郎。てか仕事の内容分かったぞ。お前の妹を守れとかそんな感じだろ?」
「……あれ?知ってたの?はっ!僕の妹に手を出したらただじゃおかないよ!!」
そう言って声を荒げるシスコン。
「もう行っていいか?」
「ああ、ごめんごめん。まあ仕事の内容はおおむねそんな感じだ。でも妹が本当に危機に陥った時以外は助けなくてもいいし、助けてもいい」
「?…どういうことだ?」
不思議そうに聞く男。
「つまりこれは仕事という名目で人間界をエンジョイしてきなっていういきな計らいだ」
「ああ、そういうことね。じゃあせっかくだし楽しんでくるよ」
「君は高校二年生になることになる。君が行く学校には悪魔がいっぱいいるし楽しめるだろう」
「そうか。ありがとな」
感謝の言葉を伝える黒い髪の男。
「今まで世話になったな」
そう言って部屋を出て行く男。
「またな、サーゼクス」
「何かあったら帰ってきていいんだよ?朧」
「分かってる」
その言葉を最後に、彼――――黒陽 朧(こくようおぼろ)は人間界に旅立った。
「でかくね?」
やあみなさん始めまして。朧です。ただいま懐かしき人間界に来ている。
サーゼクスのアホが用意しておいてくれた家の前にいるんだが。すごく大きい。
卑猥な意味じゃないよ?
「二階に地下三階建てかよ。これに俺一人で住めってか」
今俺は手ぶらだ。なんか荷物は先に全部送っておいてやる、とかほざいていたので手ぶらで来た。
「とにかく荷解きして明日の準備だな。学校に通うのも久し振りだ」
そう言って部屋に入る。一階はリビングや台所、トイレ、書庫などがあった。
二階は部屋がたくさん。
地下一階は俺の作った人工神器の保管部屋や、研究室。
地下二階は俺の眷属達の住む場所。俺の作った神器で空間を拡張してるんだ。めっちゃ広いんだよ。
地下三階はトレーニングルーム。特殊な結界を張って耐久や防音などを高めてるんだ。ドラゴンボールみたいに重力を何倍かにして修業もできるんだよ。すごいよね。
「こりゃあすげえや。確認も終わったしご飯作るか?」
え?荷解き?何か終わってるんだよ。怖いよね。明日から学校だしがんばるよ。