遠い昔のさらに昔、遥彼方の銀河系で。
ある1人の者が生まれた。
彼…と評して良いのかそもそも人間なのかすら私にはなんとも言えない。
ただ生まれた影響で世界が少し変化してしまった。
本来在るべき未来とは違う結末を辿った世界がいつくか生まれてしまったのだ。
ある何人かの一族が、世界に分岐点をもたらしてしまった。
それが良いことなのか、将又最悪なのかは誰にも分からない。
ただ生まれてきた世界を誰かが見届け創り出すしかないのだ。
私が今までそうしてきたように。
-誕生-
ゼファント・ヴァントと呼ばれるその少年が産声を上げたのは惑星ハンバリンであった。
母はフローネ・ヴァント、父はゼント・ヴァントである。
ヴァント家はこの地に代々住み着いた軍族で旧共和国で名を挙げた伝説の元帥“クイエム・ヴァント”が開祖となっている。
生前彼は遺言をのちの世代に託した。
一族は皆兵役に就くようにと。
その後ヴァントの一族は皆その遺言を守り続けてきた。
それこそ亡霊にでも取り憑かれたかのように。
この影響もあってかヴァント家からは御伽噺から現れたような将兵が幾人もいた。
尤も当人達がそれを由としていたかはともかく。
「フローネ元気な男の子だ!」
軍服姿のままゼントは喜んだ。
「ええ貴方に似てきっと賢くて勇敢な子に育ちますわ」
妻フローネは夫に笑みを向ける。
「私は恵まれているよ…いい妻にいい息子を持つなんて…だが」
ゼントは途端に哀愁を醸し出す表情となる。
きっとこの子にも先祖の遺言を守らせる事になる。
「家訓を守らせなくてはな…でもまずは生まれて来てくれた事に感謝だ!」
「ええ、貴方」
看護師や助産師ドロイドも2人の宝の子を祝福しているかのようだった。
「ありがとうフローネ」
「そんなことより貴方、早くこの子に名前を付けてあげないと」
「ああそうだな…」
ゼントは考え始める。
普段は戦略戦術を考えることで頭がいっぱいの彼だった為人の名前を考える事からはしばらく遠ざかっていた。
「ゼファント…なんてのはどうかな?」
「確かにいいわね!」
ゼントが子供を抱き抱え喜びを口にする。
「ああ!!おめでとうゼファント」
まだ彼らは知らない。
この赤子の未来を。
ハンバリンという惑星は面白い場所だ。
工業的な面も持ちつつ一部ではまだ自然が豊かである。
ヴァント家の邸宅はハンバリンの首都からだいぶ離れた場所に建てられており首都の工業都市とは無縁の豪邸だ。
ヴァント家は軍人である為時には任務の都合上家を離れることが多い。
まあ軍人という表記が正しいのかは疑問だが。
銀河共和国は遥か昔に大規模な軍備縮小改革を行い今や共和国には軍隊すら存在していない。
ただジュディシアル部門と呼ばれる司法部隊がいくつかの艦隊と地上師団を持っているに過ぎなかった。
だが軍隊が亡くなっても争いは絶えない。
ジュディシアルのジュディシアル・フォースが紛争解決に出向くなどしょっちゅうだ。
ゼントもフローネもそうしてよく家から離れていた。
その為家には執事やお雇いのメイドなどが家を管理していてくれた。
「お待ち下さいませゼファント様!」
執事の1人であるオルホール・スレイブが幼いヴァント家の跡取りを追う。
スレイブ家は代々ヴァント家に使える一族だった。
なんでも開祖クイエムの時代からスレイブの人間が彼を補佐していたらしい。
その為スレイブの名の者がヴァントの家の者の世話をしたり補佐をしたりするのはごく普通の光景だ。
「爺に見せたいものがあるから!早く早く!」
ゼファント少年は走りながらオルホールを手招きする。
オルホールはなんとか追いつき顔をあげる。
昔は彼も腕の立つ兵士であった為体力には自信があった。
「それで私めに見せたいものとはなんですかな?」
オルホールは男前の老け顔でゼファントに尋ねた。
「見てこの大きな木!綺麗な花が咲いているよ!」
「おやまぁこれは見事な…これをわざわざ私に?」
ゼファント少年は澄んだ瞳で彼を見つめた。
少年らしい瞳に幼いながらも純粋で優しい言葉がオルホールを包み込む。
「うん!!お父さんやお母さんやみんなとここでピクニックに行けたらなって!」
オルホールは優しく微笑む。
「それは楽しみですな、その時は爺が腕に寄りをかけてご馳走を作りましょうぞ」
「ほんと!?」
「ええ楽しみにしておいて下さい」
ゼファント少年の目の輝きはさらに強くなる。
オルホールもそんな純粋な少年の瞳の力で不思議と笑みが浮かび上がる。
するとオルホールがポケットに忍ばせておいたコムリンクが鳴り響く。
『オルホール、突然で悪いがゼファントを連れて戻って来てくれ』
「まさか…わかりました急いで戻ります」
『あぁ…それほど急がなくてもだな…』
ゼントは急かさぬよう言うが元々軍人であったオルホールにはわかるのだ。
なぜ2人を呼び出すのかを。
コムリンクを切り木の下で花々を眺めるゼファントにオルホールは近づいた。
「ゼファント様お屋敷に戻りましょう」
「なんで?」
「あなたのお父様から戻るよう言われました、お話ししたい事があるそうで」
2人が邸宅に戻るとすでに父ゼントが軍服に着替えていた。
紺色に近い青色の軍服に幾つかの勲章がぶら下がっている。
「ただいまお父さん」
元気いっぱいな息子の声を聞きゼントは途端に喜びを感じる。
「おかえりゼファント、丁度よかった父さんと母さんお前に話さなきゃ行けない事があるんだ」
「僕も!」
「そうかい、じゃあ部屋へおいで」
ゼントはゼファントを優しく撫でると彼を部屋に連れる。
オルホールもゆっくりと彼らに着いていく。
「ゼファント、よく聞くんだ」
部屋に入ったゼントは前触れもなく本題に移る。
オルホールが予見した通り彼らにはあまり時間が残されていない。
ゼファントも真剣な表情で父親を見つめる。
「父さんと母さんはまた仕事に行かなくちゃいけない。しかも今回の仕事はだいぶ長くなる」
「当分お家を留守にするけど大丈夫?」
2人とも彼を心配そうな表情で見つめる。
メイドや執事がいるからと言ってまだ幼い息子を家に独り残していくなは心苦しい。
オルホールも心中を察していてか何も言わない。
フローネとゼントの職業は軍人だ。
先ほども言った通り共和国に軍隊はないがジュディシアル・フォースという軍事部隊は存在する。
各地に艦隊も有しておりこのハンバリンもジュディシアル・フォースの防衛艦隊が駐留していた。
現在ゼントはハンバリン防衛艦隊の副司令官を務めており今回はインナー・リム内での内戦が激化した為ハンバリン艦隊も応援に駆けつける必要があった。
その為当分家を留守にしなくてはならないのだ。
「大丈夫だよ。僕がちゃんとこのお家もみんなも守るよ!」
3人の表情が一気に明るくなる。
ゼファント少年の逞しい一言に大の大人3人も勇気つけられた。
「お父さんとお母さんこそちゃんと帰ってくるよね?死んじゃったりしないよね?」
逆にゼファントの方が心配そうに2人を見つめる。
軍人ほど死が近い職業はない。
死ぬつもりはなくとも死は訪れる。
彼らはそう思っている。
だからこそゼファントにもなんとなくわかるのだろう。
ゼントとフローネは曖昧な表情をした。
「大丈夫さ、ちゃんと帰ってくるよ」
曖昧な笑みのままゼントはゼファントの頭を撫でた。
フローネも微笑みかける。
「すぐに帰ってくるからそれまで元気でいてね」
「うん」
2人は抱きしめ合う。
「それじゃあオルホール、この子を頼んだぞ」
執事のオルホールに彼を託す。
老執事は一瞬だけ温かい笑みをこぼすとすぐ表情を戻し主人に頷いた。
「お任せ下さい、それとウォルスを頼みましたよ」
「彼は優秀だ、私が気にかける必要もないさ」
ゼントは笑みをこぼす。
2人は握手し部屋を離れた。
邸宅の玄関で迎えのスピーダーに乗り込む2人を見送る。
スピーダーには護衛のジュディシアル・フォースの兵士が数十名並んでいた。
「じゃあ行ってくる」
ゼントとフローネはスピーダーに乗り込む。
オルホールは頭を下げ見送りゼファントは静かに手を振っていた。
ゼントとフローネも手を振り2人が見えなくなるまで手を振り続けた。
「本当に良いのだろうか…」
ゼントはスピーダーの中でふと漏らす。
彼の悩みは妻にすぐ分かった。
「だからと言って戦場にあの子を連れていくなんてもっての外だし…オルホールさんもいる事だし大丈夫よ」
フローネはそう諭す。
だがゼントはまだ納得していなかった。
腕を組み考え始める。
「ゼファントを見ると不思議と思い出す…彼を…私の弟を…」
ゼントの表情はどんどん深刻なものになる。
彼が弟の名前を出す時は常に悲しい過去が掘り起こされる。
ゼント自身が口にするのもなんだがヴァント家は全体的に戦術、戦略、武力といった軍事での才能に飛び抜けて優れている。
だが出来るのとやりたいのは違う。
何世代も続くヴァント家にはそう言った習慣や戦いに疲れて、絶えきれなくなった者達が何人かいた。
「時々思うのだ、家訓をこのままゼファントにも押し付けて良いものかと…」
フローネは彼を見つめる。
「あの子にはもっと自由な生活をさせた方がいいのではないか?」
「でもあの子はもう覚悟が決まっていると思うわ」
フローネはまっすぐ前を見る。
母だからこそわかるのかもしれない。
息子の覚悟や想いを。
「それにあの子はきっと貴方に似て責任感がある。きっと自分から軍隊に入ると言い出すはずだわ。私たちが止めてもね…」
ゼントはそれを聞くとどこか悲しくなる。
責任を背負うのは自分だけにしたかった。
でも自分にはそれほどの能力がない。
己の非力さはよく知っている。
ハンバリンの駐留艦隊が次々とハイパースペースに突入する。
また一隻、また一隻と銀河の彼方へと向かう。
ゼファントはじっとその光景を見つめていた。
別れは寂しいがまた戻ってくることを信じて彼はグッと感情を押し殺した。
涙は見せない。
まるでその光景を祝福するかのようにハンバリンの空は美しい星空へと変わった。
陽が落ち暗闇が訪れた。
小さく美しい星々はゼファントを魅了する。
いつか僕もこの星々を旅するのか。
「星を見ておいでですか」
オルホールが静かに後ろに立つ。
ゼファントは頷いた。
両親のいない彼を慰めるようにオルホールは微笑む。
「私はまだ若い頃あの星々を少しばかり旅して見て回りました。ここと同じように多くの人々が生きている」
オルホールは懐かしむように昔のことを語った。
まだ若く聡明だったあの時を。
「そこで学びました。私達…いやあなたのお父様とお母様の仕事の素晴らしさを。あの方達はいえゼファント様の一族は皆自らを犠牲に出来る精神を持っていることを」
「自分を…犠牲に?」
「はい、誰かの為に何かを成し得る力を貴方達は持っているのです。だからきっと大丈夫きっと御2人はゼファント様の元へ帰って来るでしょう」
ゼファントはまた星空を見た。
オルホールの言った事はよく分からなかったが彼は一つだけ学んだ。
信じることを。
信じ抜くことを。
「おーいゼリム!こっちこっち!」
「待ってよー!!」
少年達が1人の名前を呼ぶ。
紫色の髪色をした少年が必死に丘を登る。
「はぁ…はぁ…早いよ…」
その少年“ゼリム・アザフェル”は膝に手を当てながら息を荒げていた。
顔を上げると木の下に同い年だろうか男の子が1人本を読んでいる。
この辺では見ない子だ。
アザフェルはその子を見つめる。
生真面目な表情で本を読み大きな木を見つめている。
「やめとけよゼリム、あいつあの屋敷の子だぜ?」
「そうなの?」
サキヤンの少年が彼に忠告する。
他の少年達も皆頷いていた。
「あの屋敷は兵隊の家だ、下手にかかわる必要もないよ」
「行こうぜ」
少年達は新しい遊び場を求めて移動する。
しかしアザフェルだけはその場に留まった。
どうしてもあの少年と会話を交わしてみたくなった。
どんな子なのか。
どんなものが好きで本当はどう思っているのか。
子供ながらの好奇心が彼を突き動かした。
丘を下り彼に近づく。
木の下の少年は本に夢中でこちらの存在に気づいていなかったようだ。
「やあ」
「うわっ!!」
少年は思いっきり声を上げ驚いた。
初対面のため当然その少年は不思議そうな表情で彼を見回した。
「僕はゼリム、ゼリム・アザフェル。君は?」
少年は戸惑いながら名前を覚え自己紹介を返す。
「僕は…ゼファント…ゼファント・ヴァント…」
「よろしく!」
アザフェル少年は気軽に手を差し出す。
一方今まで軍の関係者や家族や家に仕える者達とだけしか話してこなかったゼファントは初めて会う他人に戸惑っていた。
彼は恐る恐る手を差し出す。
アザフェルがさらに手を差し伸べ2人の手が結ばれる。
「ゼファントは何をみているの?」
いきなりの呼び捨てにまたもや戸惑いつつも彼は説明する。
「うちにある戦史の本だよ…僕だっていつか軍人になるんだ…これくらい覚えないと」
「へ〜、そっちの本は?」
アザフェルが指を刺す。
そこにはまだ2冊ほど本が置かれていた。
「ボードゲームとかの本だよ…よく爺達とやるんだ…」
身じろぎしながら興味津々のアザフェルの問いに答える。
「じゃあ僕とやろうよ!」
「えぇ…いいけど…」
ゼファントは本を机代わりにしホログラムを起動する。
そこにはボードゲーム用のマス目と駒が置かれていた。
「じゃあ先行は君から」
ゼファントはアザフェルに先行を譲る。
これが2人の初めての出会いだった。
オルホールはそろそろお昼の支度が出来たことを外に出いているゼファントに伝えに来た。
年老いてもなお真っ直ぐな背筋と見事な姿勢は時折すれ違う女性達を魅了する。
とは言っても彼はヴァント家に全てを捧げている為いくらこの歳で女性が寄って集ろうとも微塵も興味なかった。
ただ彼にも職務があり義務があるだけだ。
足早に丘を登りいつも彼が本を読んでいるであろうあの木に向かった。
相変わらず美しいところだ。
「ゼファント様、お昼の支度が…ってん?」
オルホールは一旦立ち止まって様子を伺う。
そこには見慣れない男の子が1人ゼファントと共にボードゲームに熱中していた。
執事であるおるホールが不意に独り言を漏らす。
「まさかあのゼファント様に…」
遠目から見るだけでも2人の仲はいいも。
小さいが2人の会話も聞こえる。
「あぁいっつも惜しいところで負けるなぁ…」
アザフェルが足をぶらぶらさせながら勝敗に足して感想を述べる。
今の所3勝2敗くらいでゼファントに負けていた。
しかも全ての戦いはどちらかが一方的に相手を嬲るような戦いではなかった。
お互いに全力を尽くした死闘と言っていいものだ。
「アザフェルは勝ち方にこだわりすぎだよ。この手をこうすればまだ戦えるじゃないか」
ゼファントが駒を移動させる。
そんな彼にアザフェルは微笑を浮かべる。
「でもせっかくだから綺麗に勝ちたいだろ?それに君の戦い方はずるいんだよぉ、わざと隙を作って罠に陥れるなんて」
「そりゃあ君の駒の配置がうまいからこっちも迂闊な手を打てば負けてしまうからだろ」
ゼファントが遠回しに彼を褒める。
素直に受け取ったのかアザフェルは再び笑みを浮かばせる。
「ありがと」
2人は笑い出す。
もうすっかり親友の域だ。
「ゼファント様ー!」
遠くからオルホールが呼ぶ声が聞こえる。
ゼファントは素早く振り返り手を振った。
「おーい爺!」
オルホールは軽々と丘を登りゼファントの元へ向かう。
「お食事の時間です、この子は…」
「あっ紹介するよ、ゼリム・アザフェル、僕の…僕の友達さ!」
オルホールがにっこり笑う。
今度はその目線をアザフェルに向けた。
「私めはゼファント様のお守り役であるオルホール・スレイブでございます」
「こんにちわオルホールさん」
アザフェルがペコリと頭を下げる。
「実はゼファント様はこれからお食事でございます、次に会うのは明日ということで」
「わかりました!じゃあゼファントまた明日ここで」
ゼファントも強く頷き2人は手を振りながら別れた。
オルホールも最後まで優しい笑顔を忘れにずに彼を見送った。
この大樹の下。
ここが艦隊指揮官ゼリム・アザフェル提督の出立点となった。
-帰還-
それから数日の時が過ぎた。
ゼファントとアザフェルは毎日のように木の下でボードゲームに勤しみ互いに腕を磨いていた。
そんなある日ヴァント家に吉報が届く。
インナー・リムでの任務を終えハンバリンの駐留艦隊が帰還するらしいのだ。
それはつまり父と母の帰還を指していた。
その日が近づくにつれゼファントは落ち着きがなく家中の者にいつ帰ってくるかをしつこく聞いて回っていた。
ついにこの日が訪れた。
玄関の前でゼファントとオルホールは2人の帰りを待つ。
予定の時間より20分も前から玄関で待っている。
ついにその時が来た。
数台のスピーダーに守られて一台のスピーダーが邸宅に留まった。
ドアが開き2人が出てくる。
「父さん!母さん!」
ゼファントが勢い良く飛び出す。
2人は驚きながらも彼を抱き抱えた。
「ただいま、ゼファント」
「いい子にしてたか?」
「うん!!」
久しぶりの再会にオルホールもいつもより涙脆くなっていた。
ヴァント家の邸宅内は主人の帰還によりたちまち忙しさを増した。
従者達は皆いつも以上の仕事をこなし戦場から無事帰ってきた2人に精一杯の安らぎを提供した。
「いやぁ相変わらずオルホールが作る料理は美味いな。ほんと生きて帰ってきてよかったよ」
冗談を交えてオルホールの腕を褒める。
この家の執事であるオルホールは家事全般に関しては完璧の域を超えておりメイドや専門の料理人でも足元に及ばない。
そして彼には…
「お褒めの言葉恐縮ですゼント様、よかったですねゼファント様、お父様から美味しいと言われましたよ」
彼はゼファントの元に近づき彼を褒めた。
2人はにーっと笑いあった。
「まさかこの料理ゼファントが…?」
フローネは一旦手を止め彼を見つめた。
「ええ下拵えなどを手伝って頂きました。爺もとっても助かりましたぞ」
「どう美味しい?」
無垢でつぶらな瞳が両親を見つめる。
「うん、とっても美味しいよ」
「偉いわねちゃんとお手伝いできて」
ゼントもフローネも彼を褒める。
瞬間ゼファントは久しぶりに満面の笑みと照れ隠しのニヤケを見せた。
食事が終わりゼントとフローネはゼファントを連れ広い邸宅の中を散歩した。
久しぶりに親子で会話をした。
もちろん戦闘が落ち着いた時はホログラムで互いに無事を確認したがやはり会って話すのとでは訳が違う。
たわいもない会話だった。
どんな友達が出来ただとかオルホールに何を教わったのかだとか。
たが彼らにはとても貴重な時間だった。
特に明日死ぬかもしれない彼らにとっては。
だからこそ生きているうちに教えられる事は全て教えておきたかった。
「それでねぇ、そのアザフェルは」
「ハハハ、よほどあのゲームの好敵手を見つけたらしいな」
「あのゲーム大人でも相当難しいのにねぇ」
2人はゼファントとアザフェルの仲の良さを感じ取る。
それと同時に息子に友達が出来たという喜びも感じていた。
すると突然ゼファントが止まった。
彼はある一枚の肖像画をじっと見つめいていた。
父と同じ銀髪にヴァント家特有の青い瞳。
厳しい目つきとは裏腹に優しそうな微笑を浮かべた青年。
肖像画の彼は髪の毛を右に流しており左脇に帽子を抱え右手には旗のようなものを持っていた。
まさしく英雄といった感じがふさわしいがどこか哀愁を感じる絵だった。
「ねぇこの人だれ?」
ゼファントが指を刺す。
2人は見つめ合いゼントが話し出した。
「それはご先祖様の“クリエム・ヴァント”だ。とっても偉くて賢くて強い軍人さんだった」
旧共和国の軍服を着込みゼファントと同じ青く美しい瞳の色をしている。
ゼファントはその何かに惹かれるようにじっと見つめた。
そんな彼にゼントは再び付け足す。
「クリエムは私達にある家訓を残したんだ」
「どんな?」
ゼントは少し溜めてから彼に話した。
「私達が代々軍人になってみんなを守よう言い遺したんだ」
ゼファントはまだよく理解していなかったようだがゼントは続けた。
「ゼファント、お前もいつか軍人になるだろう…その時の為にしっかり覚悟を身につけておくんだぞ」
「うん父さん」
「いい子だ」
ゼファントの頭を撫でる。
だがこの時彼らは気づいていなかった。
屋敷を何者かに包囲されていたことを…
-プロローグ-
今日もミッド・リム中の共和国軍の統率と深海棲艦の残党の討伐に勤しんでいた。
特にその中核を担う駐留軍本部の慌ただしさはコルサントの共和国軍事作戦センターと比較しても差はなかった。
当然その責任者であるこの男も。
だが今日はこの男は外出しており代わりにその息子と乗艦の艦娘が彼の部屋に来ていた。
「お兄様?本当にこれでよろしいのですの?」
彼女は何故かその男のことを息子と呼んでいた。
別に悪い気はしないしなんて呼ばれようが構わないので放っておいたが。
「父さんはちゃっちゃと片付けといてくれってってたし早くやっちまおうよ」
タンスや戸棚のものを整理し始める。
部屋の主である男は趣味で茶器や茶などを集めており戸棚の中身は綺麗に整理されていた。
「全く父さん私物を気すぎじゃないのか?…確かにね」
彼は左肩に飛び乗ったシーカー・ドロイドとボソボソっと話をした。
彼の軍服は少し変わっている。
通常の軍服がコートのようになっている。
そしてズボンから上着まで白くところどころ黒いラインが引かれていた。
そして父親の私物を気にし過ぎているのも実の息子に言われるのだから真実なのだろう。
艦娘の方も苦笑いしていた。
「でここら辺が処理する…なにこれ?」
彼はいくつかの記録資料を手にする。
ペラペラと捲り中身を確認する。
「何かの記録資料でしょうか?」
彼女は近づき資料を覗き込む。
そこにはこう書いてあった。
“
つづく
あの普通にpixivにあるんでそっちを読んでいただければなと()
これは第二次銀河内戦の箸休め的に読んでくだせぇ