Fleet Admiral   作:Eitoku Inobe

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裏切りの影

-惑星コルサント ジュディシアル・フォース本部 医務室-

ゼファントはジュディシアル基地の医務室にいた。

 

先程の戦闘で掠った腕の傷跡をちゃんと治しておくためだ。

 

これから調査の調査にこれといった支障が出ないようにするために。

 

しかし問題は一つあった。

 

「いてっ!痛いって!」

 

「それは痛覚が通っている良い証拠です」

 

目の前でゼファントの手当てを行なっているこのヤケに嫌な外科医ドロイドだ。

 

“2-1A”と名乗るこの“2-1B外科医ドロイド”は必要以上に傷口にバクタに付けた綿を押し当てる。

 

当然染みて痛い、すごく痛い。

 

かなり力も強い気がした。

 

とにかく痛い。

 

「一応検査はしましたがただの擦り傷で身体に有害な物質などは投入されていません」

 

「そりゃ本当に“()()()”だけですからね、はぁ少し神経質になりすぎじゃないですか?」

 

タブレットに情報を打ち込む2-1Aが振り返った。

 

「当たり前です。貴方は共和国の英雄、下手な場所で死なれては困ります」

 

「逆に殺されそうだ…」

 

皮肉を言いつつシャツの袖を下ろしボタンを止めて、上着の制服を着直した。

 

いつか昇進してもし何かの艦長になった時にはこのドロイドを絶対連れて行ってやる。

 

前線でこき使ってやるとゼファントは柄にもないことを考えていた。

 

すると外から何やら大きな足音が聞こえる。

 

「少佐!」

 

ドアが開きタブレットを持ったフィーナ少尉が駆け込んできた。

 

その時ゼファントは気づいていなかったが彼の心情が思いっきり表情に出ていた。

 

ちょっと心配しすぎじゃないのか…?と。

 

たかがブラスターが掠ったくらいで死ぬようならそもそもジュディシアル・フォースになんぞ入っていない。

 

そりゃ治療は痛かったがある程度は覚悟の上だ。

 

これでも子供の頃ブラスターをぶっ放した事あるんだぞと心の中で思っていた。

 

思いっきり表情に出ていたが。

 

「あぁ…少尉、大丈夫ですから…それで襲撃現場は?」

 

彼女にそう述べると早速フィーナ少尉はタブレットを彼に見せた。

 

「銃弾や弾痕から推定して襲撃者が使用していたブラスターは“RG-4D”の改造品と思われます」

 

「あれは警察とかが持ってるブラスターのはずでは?何故あの連中が」

 

「ええ、でもその警察達が殺されて戦利品として持っていたとしたら」

 

ゼファントは納得した。

 

確かに相手はギャングでそういう趣味の悪い奴もいるだろう。

 

情報部と言えどやはり捜査の能力は一般であっても高い。

 

だがもしかしたら襲撃の痕すら残さない為にあえて警察のブラスターを渡したのかも知れない。

 

多くの推察を持っておくのは重要だ。

 

戦術や戦闘でも、恐らく捜査の面でも。

 

「我々が撃破したドロイドは?種別や機種とか」

 

タブレットをスライドしその情報を彼に提示する。

 

「それが…様々なドロイドを組み合わせた物で特定は難しそうです」

 

「そうですか…」

 

少し落胆した面持ちでゼファントは椅子にかけておいた軍用コートを着た。

 

コートも銃弾が掠った部分には穴が空いている。

 

2-1Aは最後「お大事に」と言ってくれたがそこまでの怪我じゃないだろという思いを募らせるばかりだった。

 

必要以上の心配をされると返って苛立たしいものなのか。

 

ドロイドや少尉の気持ちも汲み取れる分余計にそう思った。

 

「その…少佐」

 

フィーナ少尉がゼファントを引き止めた。

 

また今度はなんだろうか。

 

「私を庇ってお怪我をなされてしまったのですね…すいません」

 

彼女は静かに頭を下げた。

 

ゼファントはいつも通りの微笑で彼女に返した。

 

「部下を守るのは上官の役目ですし軽傷ですからそんなに心配しなくていいですよ」

 

「はぁ…それと」

 

彼女は一つ付け加えた。

 

「部下に対して敬語は控えて頂きたいのですが」

 

まさかの一言にゼファントは少し唖然としていた。

 

「その…他に示しがつきませんし妙な気分になるので」

 

「えっあっはい」

 

言われてみればセルネアン艦隊にいた頃から階級が下の相手でも不思議と敬語を使っていた。

 

早い段階から高職についていたせいだろうか。

 

不思議と階級は下でも年上という者が多かった為敬語が多くなっていたのだろう。

 

確かにそれは気を付けないとな…。

 

ゼファントがそう思うとまたドアが開き1人の士官が入ってきた。

 

彼にとっては見慣れた士官だ。

 

「大尉、あっいえ少佐、あの件でガコン少佐がお呼びです」

 

「分かりまし…わかった、少尉君は引き続き調査を頼む」

 

若干少尉に睨まれた気がする為ゼファントはあえて言葉を訂正した。

 

「少佐、私も同行を」

 

「いや少尉は調査の方を頼み…頼む。後でわかった事を報告して」

 

フィーナ少尉はまだ納得していない様子だったがゼファントは彼女に頼んだと念を押した。

 

ゼファントは少尉に全てを託してガコン少佐の下へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

戦術研究課は相変わらずいつも通りであった。

 

戦史資料を漁り勝利の要因を解き明かしたりそれを基に新たな戦術を編み出す。

 

前線の兵士達からすれば簡単な仕事だ。

 

しかし彼だけは違った。

 

ヴァス・ガコン少佐は疲れ切った表情で青白いモニターを操作していた。

 

数十時間ほど前ようやく新たな戦術資料が完成し終わったと思ったら元部下のゼファントから

 

「アーカニアン革命の革命軍戦力や確認されている人員を全てまとめて置いて欲しい」

 

と来たのだ。

 

しかも至急、大急ぎで。

 

結果彼はほぼ丸一日飲まず食わずで休む事なく仕事に費やしたのだ。

 

「たく…ゼファントめ…あの革命戦の資料が多いのは知ってるだろうに…全部俺に丸投げしやがって…自分でやれっての。デスク仕事もあいつの方が上だろうに…」

 

「“()()()()()”なんですか?」

 

ガコン少佐がキーボードを打ちながら愚痴を言っているとドアが開き愚痴るべき相手が姿を表した。

 

今見ると少しばかり腹の立つ男だ。

 

自分でも若干不機嫌な顔になっていると自覚していた。

 

「はぁ…同じ階級になった途端無茶を送ってくるとはいい度胸だな、“()()()()()()()”」

 

ガコン少佐はため息と冗談を交えてこの状況を作り出した元凶をいじった。

 

「でも少佐なら出来ると思っていましたよ。ありがとうございます」

 

「まるで嬉しくない…全部の資料は出来てはいないが必要そうなのはもうある」

 

流石の仕事の早さだ。

 

若干のふらつきを抱えたまま彼はデータテープを近くのホロテーブルに差し込んだ。

 

ホログラムが映し出されいくつか項目別に分けられていた。

 

「取り敢えず欲しそうな情報から行くぞ」

 

テーブルを操作しオーラベッシュで書かれている“()()()()()()()()”の項目をタップした。

 

大量のファイルが一体一体の顔と共に添付された。

 

「取り敢えず知ってそうなアーガニルから行くぞ」

 

ゼファントは頷きガコン少佐はアーガニルの項目をタップした。

 

「正式な製造番号はTC-01、革命軍の宇宙艦隊を指揮し正規軍艦隊に勝利…その後ジュディシアル艦隊により討伐」

 

それでガコン少佐の報告は終わった。

 

「これで終わりですか?」

 

「ああ、“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”しそれに俺のアクセス出来る情報には限りがあるからな」

 

なら仕方ないか。

 

そう割り切るしかなかった。

 

この研究課に属していた時も度々こういうことがあったものだ。

 

情報面でも共和国の限界を知らしめられる。

 

「じゃあアーガニルの艦隊の乗組員や彼が防衛していた地上のサイボーグのデータを」

 

「わかった」

 

ホログラムとテーブルを操作しまずは彼の艦隊メンバーとされているサイボーグ達を映し出した。

 

姿形は分かっていてもそこに記載されている情報はとても少なかった。

 

「FC-223…FC-224…船長クラスから乗組員クラスまで含めてみんな死んでますね」

 

「一応はな、だが肝心のアーガニルだって昔はこの中の資料に埋もれていた。まさに甦ったって感じだな」

 

「でも奴が生き残れたのは奇跡に等しいです。アーガニル艦隊はこの時点で全滅していますし」

 

この広いコルサントの最上階から最下層に至るまでを生きてるかすら分からないサイボーグを探り出すのは無理だ。

 

そこでゼファントは少し思考を巡らせ今度は別の方向から探る事にした。

 

「……艦隊がダメなら地上部隊はどうでしょうか?同時刻にハリス“()()”が奇襲に打って出ています」

 

「なるほどな…出すぞ」

 

ガコン少佐は納得し地上部隊のファイルを開いた。

 

地上部隊も同じように多くのリストと少ない情報が載っていた。

 

むしろ姿形は実際に直接戦闘した為地上部隊の方が多く感じた。

 

ゼファントはその中で一番最初に現れたサイボーグに目が留まった。

 

「少佐、この人物をお願いします」

 

不思議に思いながらもガコン少佐は言われた人物の記録書を映し出した。

 

他のサイボーグと同様に顔と押収された資料が提示される。

 

「GC-09…仲間内では“フェルシル”と言われていたそうだ」

 

「フェルシル……」

 

それは忘却の彼方からコルサントの暗闇まで這いずり上がった者の名前。

 

それはもう一人の亡霊の名前であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…これじゃあ判る事は少なさそうですね…」

 

あたりの写真や状況を記録資料に残している上等保安士が溜息混じりに吐き捨てた。

 

破壊されたドロイドやブラスターの弾痕も全てわかる事が少ない。

 

用意が周到と言ったところだろうか。

 

「これは少佐も落胆するだろうな…」

 

モスト中尉がガッカリした表情でそう言った。

 

「保安長!」

 

モスト中尉は周辺を警備する警備隊長のミリッツ一等保安長を呼んだ。

 

「この件は情報部直轄だ。一般警察にはこれ以上関わらせるな」

 

ミリッツ一等保安長は静かに頷いた。

 

本当はこんな横暴な真似したくはないのだが任務が任務故仕方無い。

 

アカデミーにいた頃からそんな事腹を括っていた。

 

情報部なんて組織の中でも真っ黒に近しいものだ。

 

「少尉、私は情報部の方に戻るので少尉はゼファント少佐に」

 

「わかりました」

 

「頼む」

 

そういうとモスト中尉は数名の兵を引き連れてスピーダーの方へ戻った。

 

フィーナ少尉もそろそろ少佐の元へ戻ろうかと思った矢先彼女が持つ“()()()()()()()()()()”が鳴り始めた。

 

何かと思いつつ彼女はポケットからコムリンクを取り出した。

 

「少尉、どちらへ?」

 

近くにいた二等保安長が彼女にどこへ行くかを尋ねた。

 

「情報部から通信が、ここは任せた」

 

「はい少尉。お気をつけて」

 

二等保安長の敬礼に見送られフィーナ少尉は“裏の顔に変わった(元に戻った)”。

 

彼女は少し離れた所でコムリンクの回線を開いた。

 

少し低めの男の声が聞こえる。

 

「どうした?」

 

『いや…渡したい情報と物がある、この下の階層に来れるか?』

 

「ええ…今すぐに」

 

彼女はコムリンクのスイッチを切るとそのまま別のポータルを経由してもう一つ地下の階層に移った。

 

路地をそのまま少し歩いているとどこからか手招きされた。

 

(仲間)”と確信したフィーナはあたりを確認すると手招きをした相手の下へ近づいた。

 

「早かったじゃないか」

 

「ええ、だから早く戻らないと」

 

その“アベドネド”の男は小刻みに頷くと早速彼女にデータテープと何かのケースを渡した。

 

「これは何?」

 

「あのお方からだ、流す偽の情報と“暗殺器具”だ」

 

アベドネドの男は説明し彼女に注意した。

 

「こいつに含まれている毒は少し吸っただけで一瞬で死に至る。だからお前も気を付けろよ、間違って少しでも吸ったらお前が即死だ」

 

「忠告どうも、で誰を殺せばいいの?ドレイヴン大佐?セルネアン少将?それとも…」

 

「“ゼファント・ヴァント”…奴だ、お前の上官であり今あのお方が最も危険に思われている方だ」

 

分かり切っていた事だがフィーナは何故かこの時躊躇いを覚えた。

 

それがどうしてなのかは後でわかるが今は分からなかった。

 

今まで生きる為どんな相手だろうと殺して来たがなぜか今回だけは少し躊躇いを覚えた。

 

「奴に不意での襲撃は効かん、お前だって奴を殺せる隙がなかったんだろう?」

 

「えっ…ええ…そうよ…」

 

彼女は戸惑いながらも応えた。

 

男は一瞬不思議に思ったが優秀な彼女の言葉を信用した。

 

「とにかくあのお方は早急にゼファント・ヴァントがこの世から消えることを望んでおられる。頼んだぞ」

 

「ええ……私達には他に生きる道が無いのだから」

 

「そうだな…じゃあ任せたぞ」

 

そう言い残すとスタスタとアベドネドの男は去って行った。

 

長居する必要もないしむしろ長居していると危険だ。

 

フィーナは自らが言った言葉をもう一度噛み締めた。

 

彼女達の真実を。

 

恵まれない地下街に生まれた弱き子供達はずっと強い者に従うしか生きる道はなかった。

 

もう絶対に許されないと分かりきっていても他に生きる方法を知らなかった。

 

そして死ぬことも同時に出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-コルサント 元老院地区/別名連邦管区 元老院オフィス・ビル-

「議員、お待ちください」

 

元老院オフィス・ビルを複数人の秘書と共に歩くパルパティーン議員を誰かが呼び止めた。

 

濃い青色のマントとヘルメットを見に纏い右手には警備用のスパイクを持った集団は議員に尋ねた。

 

「市街地へ出向かれるおつもりですか?」

 

「無論だ、ヴァローラム氏と今日は重要な会議があるからな」

 

パルパティーン議員は真面目な表情で青き元老院の守り手“セネト・ガード”達に答えた。

 

コルサントの地下階層を軽視するヴァローラム氏に対して現在の危機敵状況の提示と対策を話し合う為だ。

 

それを聞いたセネト・ガードの隊長は提案した。

 

「それでしたら我々の護衛を、最近市街地は危険ですので…」

 

「だがなせっかく1対1で腹を割って話すのにこちらが護衛で威圧してはまずいのではないかね?」

 

「ですが共和国全保安部隊の決定です。それにヴァローラム行政官もセネトの護衛を付けております」

 

ガードの隊長はいっっこうに下がろうとしない。

 

このままでは平行線だ。

 

ならば妥協するしかあるまいとパルパティーン議員は渋々思った。

 

「…わかった2名だけ同行を願おう」

 

「ありがとうございます、インティール、ザックス、パルパティーン議員を護衛しろ」

 

「ハッ!!」

 

2人のセネト・ガードはパルパティーン議員のすぐ後ろについた。

 

議員は気にせずそのまま2人を引き連れて歩き出した。

 

すると先ほどインティールと呼ばれたセネト・ガードがこっそりパルパティーン議員に耳打ちした。

 

「なれないとは思いますが我慢してくだされ」

 

「そうするよ、それか“()()()()()()”どっちかだね」

 

冗談まじりにパルパティーン議員は返すとインティールは苦笑を浮かべた。

 

「そうなったら是非お世話になりたい所です。セネト・ガードじゃ扱いが悪いもんで」

 

「キツいことを言ってくれる。なかなか面白いな君」

 

「ええ、でも面白いだけじゃありませんからね。ちゃんと腕も立ちますよ」

 

パルパティーン議員は微笑を浮かべた。

 

思ったよりフランクなガードがついてくれた。

 

そして同じようにセネト・ガードの“インティール・エルゼドー”もヘルメットの奥で微笑を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハリス・セルネアン大佐の大隊が奇襲を仕掛けた際基地の指揮を取っていた指揮官タイプであり戦闘終了後行方不明…」

 

「普通は死んだでしょうね、普通は」

 

完全に疑いの目となった今のゼファントには行方不明という単語だけで十分怪しかった。

 

そんなゼファントはまだガコン少佐に尋ねる。

 

「他のサイボーグの生死はどうなんですか?行方不明は他にもあるんでしょうか」

 

ずれ落ちるメガネを抑えながらガコン少佐は答えた。

 

「いや他はみんな“()()”や“()()”が見つかって死亡が確認された…まさかお前発見された遺体まで漁るつもりじゃないだろうな?」

 

「そこまではしませんよ、どうせ共和国の事だろうから残ってないだろうし…なら今の所一番怪しいのはこのフェルシルですね」

 

ゼファントは突っ立ってるガコン少佐を少し退けホロテーブルを操作した。

 

より詳しいフェルシルのデータを見る為だ。

 

テーブルを操作しながらゼファントは話し出す。

 

「巧妙なハッキングやアーガニルと連携、高度な部隊の編成に指揮能力の高さ…これらを鑑みてもアーガニルと何か関わりを持った地上指揮官のサイボーグだと思います」

 

「それでこいつと」

 

「ええ、知っとく分には問題ないですし」

 

ゼファントはそう言って資料のデータをコピーし始めた。

 

これだけ膨大な資料のコピーには時間が掛かる為ゼファントはアーガニルとフェルシルのファイルのみコピーした。

 

するとふと何かを思い出したガコン少佐がゼファントに揶揄うように言った。

 

「そういえばお前情報部のドレイヴン大佐から美人の部下をもらったそうじゃないか。どうして今日は連れてないんだ?」

 

「彼女には今捜査の方をして貰ってますよ」

 

ホログラムを眺めながらゼファントは冷たく返した。

 

「まさかあまりに綺麗どころだから俺に見せたくないのかぁ?なぁにもう妻も子供もいるし寝取ったりしないから安心しろ。私はそこまでオオカミじゃない」

 

悪い笑みを浮かべ冗談を交えるガコン少佐にゼファントは苦笑を浮かべていた。

 

冗談を言っているように見えるがその目は何処かこちらの理由を悟っているような気がした。

 

考えすぎかもしれないがこの人に本心は隠せないかと思いゼファントは全てを白状した。

 

「………実の所言えばまだ彼女を完全には信用していないんですよね…情報部員としてはとても優秀ですが」

 

「美人を信用しないとは罰当たりな奴だな。世の男どもが聞いたら泣いて殺しにくるぞ。で、何か理由があるのか?」

 

「ええ…実は…」

 

この時もゼファントは一瞬躊躇ったがやはり長い事世話になっているガコン少佐には隠せないと悟り喋った。

 

「なんというか…時々彼女から殺気を感じるんですよね…若干不審な動きも見られますし…」

 

ゼファントは優秀な彼女を疑ってしまう自分を責めつつも冷静に分析した。

 

数十時間前襲撃を受けた時もフィーナ少尉を狙う敵は少なく彼女もあまり熱心に応戦していなかった。

 

ただモスト中尉が熱心すぎて相対的に熱心に見えなかっただけかも知れないし実際に彼女を庇ってゼファントが負傷している事から単なる勘違いかも知れない。

 

しかし殺気の方は説明が付かなかった。

 

「じゃあ彼女が敵のスパイだとでも?」

 

「いえ、そこまでは…ただ妙に身構えてしまうんですよね。まあ単純に今までない女性のタイプだからかも知れませんが」

 

「そうか…まっ深くは気にしない事だ。それに上官が部下を信頼してやらねば部下は応えんぞ?」

 

珍しく少佐の意見に賛同した。

 

確かに自分が信用しないのではなく信頼してやらねば何も始まらない。

 

この時ゼファントは自分の“上官”としての未熟さに反省した。

 

「ですね、取り敢えずこの2人はもっと調べてみますよ」

 

「ああ、こっちも残りの資料を纏めたら送っとくよ」

 

ガコン少佐に軽く敬礼するとゼファントは部屋を退出した。

 

ゼファントは資料をじっと見つめながら戦術研究課の通路を歩いた。

 

当然考え事も含めて。

 

(フェルシル…アーガニルもそうだったようにより特化したサイボーグを相手にするのは相当手こずるだろうな…)

 

だが諦める訳にはいかない。

 

すでにこの時彼らをアンダー・ワールドから引き摺り出す策をいくつか編み出していた。

 

だが流石に考え事ばかりでは疲れてしまうのでぼーっと窓の外を眺めた。

 

下には候補生の制服を身に纏いブラスター・ライフルの射撃訓練をしている少年少女の姿があった。

 

戦術研究課とジュディシアル・アカデミーは複合施設であり通路を歩けば候補生達がいるなど珍しい事ではなかった。

 

何せ数年前まではゼファントもあの中にいたのだ。

 

そう考えるとついこないだあの時の仲間達とは会ったはずなのに感慨深くなってくる。

 

それに眼前の若者…と言っても数歳の違いしかないがそんな彼ら彼女らと共に戦う日が来ると思うと口角が上がる。

 

心の中でゼファントは若き戦士達に激励を送った。

 

いつしか肩を並べられる日を楽しみにして。

 

「さてと…早く合流しないとな」

 

「ゼファント少佐」

 

どこからか彼を呼ぶ声が聞こえた。

 

振り返るとゼファントと同じ青い制服を身につけ中佐の階級章を付けた青年が立っていた。

 

茶に近い黒髪でオールバック、何処か紳士的に見えて油断ならない雰囲気を醸し出している。

 

その声や姿は相手を自然と威圧し恐怖で支配するかのような効力があるかのように思えた。

 

「失礼ですが…貴方は?」

 

「“ウィルハフ・ターキン”中佐だ、君の活躍は聞いているよ少佐」

 

その男“ウィルハフ・ターキン”中佐は冷笑に似た笑みを浮かべゼファントに近づいた。

 

まるで何かの指導者となるべく生まれたかのような男だ。

 

ターキン中佐は全身から指導者たるオーラを放っていた。

 

ゼファントはそんなターキン中佐から握手を求められた為快く手を握った。

 

「えっと…ありがとうございます中佐…」

 

「君には世間話をしに来たわけではないのだよ。すまないが少し来てくれ」

 

「はぁ…」

 

そう言ってゼファントはターキン中佐に通路の角へ連れられた。

 

するとターキン中佐はこっそり彼に何かのデータテープを渡した。

 

「君がアーガニルを打ち破った数時間前、私の故郷である大セスウェナの領域でも不可解な船の移動が見られた」

 

ゼファントのセンサーはアーガニルという言葉に素早く反応した。

 

そこからゼファントの表情は一気に真剣になった。

 

「辺境の保安軍は調査はしたが結局見つかりはしなかったそうだ…だがこんな情報は掴んだ」

 

ターキン中佐の話に耳を傾けずにはいられなかった。

 

「様々な領域や宙域から集まった艦船は今もなおコルサントを目指していると」

 

「ではいずれ革命艦隊が奇襲に…」

 

中佐は静かに頷いた。

 

彼はゼファントにアドバイスをした。

 

「我が一族が手に入れた情報は君に預けるよ。敵の通信を傍受したものも入っている」

 

「そんなものどうやって…」

 

この国(共和国)が平和に溺れている間に私達は己の牙を研いできたのだよ。君の一族と同じようにね」

 

その一言は彼らの戦士としての血族を簡潔に表していた。

 

ターキン中佐はゼファントの肩を優しく叩くとまた一つアドバイスを付け加えた。

 

「その情報は是非“()()()”読んでくれ、まだ君は部下を信用するべきではないからな」

 

そういうとターキン中佐は軽く手を振り去って行った。

 

不思議で尚且つ全てのことにおいて的を得ている人だとゼファントは思った。

 

とにかくこの情報の真意確かめねば。

 

ゼファントはデータテープを握り締めその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少佐!」

 

フィーナ少尉は情報部のオフィス前で待つゼファントに声をかけた。

 

彼は相変わらずの微笑を浮かべて手を振った。

 

今のフィーナ少尉にとってはその微笑は毒でしかなかったが。

 

「お疲れ様、わかった事があったら明日頼む。私はひとまず官舎に戻らねば」

 

チャンスが失われると思ったフィーナ少尉は作り笑いを浮かべ彼に進言した。

 

「ではお送り致しますよ」

 

「それは嬉しいね。では早速行こうか」

 

ゼファントはコートをたなびかせながら彼女と共に歩き出した。

 

彼女はただゼファントの後を追うだけだった。

 

ゼファントは時々たわいもない会話を彼女に投げかけた。

 

「そしたらガコン少佐が『丸投げしやがって〜』とか愚痴っててさぁ」

 

愛らしい笑みを浮かべフィーナは彼の若干口に近い会話を聞いていた。

 

その中でじっとチャンスを待つ。

 

彼を“仕留める”ためのチャンスを。

 

情報部のオフィスからだいぶ離れ人混みも少ない場所に2人は出た。

 

チャンスは今しかない。

 

そう思って彼女はポケットから毒の入った武器を取り出す。

 

手の中に隠しいつでも使用できる状態にする。

 

そして覚悟を決め思いっきり武器を突き出したその時…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は突然しゃがみ込んだ。

 

突然だったため彼女は勢いに押され倒れ込みかけた。

 

そんな彼女をゼファントは優しく支える。

 

「大丈夫かい少尉?」

 

「えっ…ええ…すいません少佐…」

 

「いいんだよ、私も靴紐を直していたしね」

 

失敗の後悔とずるずると崩れゆく覚悟をフィーナ少尉は感じた。

 

しかしまだ次がある。

 

次成功すれば必ずあの方は勝つだろう。

 

そうすれば彼女はまた生き延びることが出来るだろう…。

 

何をしてでも生き延びねばならない。

 

「それじゃあ少尉、行こうか」

 

「ええ、少佐」

 

少尉の作り笑いには悲しき何かが混ざっていた。

 

ゼファントは再び会話を行うものの決して後ろを振り返ろうとはしなかった。

 

今振り返ってはきっとバレてしまうだろうから。

 

運命を、行うべき任務を悟ったその顔を。

 

そして2人はこれから様々な感情が入り混じった“最後の革命”へとその身を投じるのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ」

 

浜を去って行こうとする青年は男は引き止めた。

 

青年はちゃんと止まり男に尋ね返した。

 

「なんだい?私も私のいるべき場所に戻らないとけない」

 

「少し見ていかないか?ここでなら全てが分かる。生きているうちに真実に辿り着いた君…いや、君たちの特権だ」

 

青年は頭に疑問符を浮かべているようだった。

 

「何を見ていくんだ?」

 

「あれを見ろ」

 

男が指を刺した先、青年が乗ってきた“()()()”の姿が徐々に変わり始めた。

 

船がもう一隻増え美しい星空がシアターのスクリーンのように何かを映し始めた。

 

「これは?」

 

「伝説だよ、君の時代の。君も関わった伝説さ」

 

「あれは…っ!」

 

青年は早速釘付けになった。

 

「ここに来るといい」

 

男は手招きし青年を自分の隣に座らせた。

 

感じるはずのない砂の触感がこの時ばかりは何故か感じた。

 

「君達には感謝しても仕切れないよ。運命の歯車は」

 

彼によって開かれたのだから。

 

 

つづく




ジュディシアル・フォース万歳!ジュディシアル万歳!(こんにちわの意)
帝国万歳!帝国万歳!(お久しぶりですねの意)
惑星防衛軍最高!(また移行し終わりましたので見て行って下さいなの意)
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