Fleet Admiral   作:Eitoku Inobe

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前夜

この日もう何十回も行われている対フェルシルとアンダーワールドの地下革命軍への会議が開かれていた。

 

今までは敵地の捜索や戦闘訓練、意見交換などだったが今回は少し違った。

 

より確信に迫っていた。

 

「少佐、君がどんな技術を駆使したかはもはや聞くまい。だが結果は聞かせてもらおう、敵はどこにいる?」

 

ドレイヴン大佐はゼファントに問い詰めた。

 

やはり大佐はそういう事か。

 

だがそれもまたもはや聞く事ではなかった。

 

ゼファントは普段通りの立ち振る舞いで全員に話し始めた。

 

「連中の本拠地はコルサントの2526階層の旧工業地帯と宿舎の一帯です。放棄された工場もあるのでそこで武器の生産なども行なっているのでしょう」

 

ホロテーブルが起動し偵察ドロイドなどが撮影した映像を映し出す。

 

確かに同じ服装の人物やならず者や軽犯罪者にしては重武装過ぎる者達が工場や宿舎から何度も出入りしている。

 

「他の駐留地も数十箇所以上が発見されました。規模は小さいですが」

 

「発見された宇宙艦隊も間も無くコア・ワールドに突入する。こちらも猶予はない」

 

ターキン中佐はそう付け加えた。

 

敵の攻勢はもうすぐなのだろう。

 

ならば悠長にしている暇はない、逆にこちらが攻勢を掛けるのだ。

 

「既に憲兵隊の活躍により共和国内のスパイは全て拘束が完了した。敵を騙し討ちにするのも今なら可能だろう」

 

ターキン中佐の報告はその事実を知っている一部の将校を除きその場の全員を驚かせた。

 

まさに電光石火の早技と言った感じでターキン中佐の手腕の高さを語る事なく示していた。

 

それを聞きゼファントは全員に意見を提案した。

 

「ならば素早く敵を殲滅しましょう。恐らくもう敵は準備を全て整えている。こちらが優位とはいえ時間はそうありません」

 

「その意見に関しては同感だ、宇宙艦隊は想定宙域への移動を始めている」

 

ドレイヴン大佐がゼファントの意見に賛同した。

 

ターキン中佐もその通りだと頷き他の将校も納得した表情だった。

 

続けてドレイヴン大佐が軽く説明した。

 

「指揮官は君の父上ゼント提督、補佐幕僚としてターキン中佐だ」

 

今回参加する艦隊は大小合わせて四個艦隊、主力艦の総数二十四隻。

 

敵は寄せ集めのジャンク艦隊であるしアーガニルのような優秀な指揮官の話も聞かない為不安は少ない。

 

それに味方の艦隊指揮官はゼファントの父とターキン中佐だ。

 

贔屓目なしに見ても優秀であるし全く問題はないだろう。

 

しかし問題は地上の方だ。

 

ゼファントが全員に危惧を進言した。

 

「現在コルサントに駐留しているジュディシアル・フォースの戦力ではギリギリ足りません」

 

「そうかね?敵地を攻撃するには全戦力を使っても余りあるほどだが」

 

地上部門の“ボイトス”中佐は疑問を投げかけた。

 

彼は突撃連隊の指揮官で各地の惑星防衛軍の指導も行っていた。

 

「ですがもし仮に逃亡され広いコルサントの地でテロ行為を起こされたらこの兵員では防ぎきれません」

 

「少佐の意見は尤もです。かと言ってこれ以上戦力を要求する事はできません」

 

同じく地上部門の上級大尉“ハースト・ロモディ”はゼファントに賛同しつつも実情を話した。

 

彼は元々ジュディシアルではなく惑星防衛軍の方に所属していた。

 

そして彼は地域の反乱軍討伐で名を挙げ親しかったターキンの誘いもあって彼はジュディシアルへ移籍したのだ。

 

ジュディシアルへ移籍した直後の惑星ナー・ジャッタの鎮圧戦でも武功を挙げ彼は地上部門上級大尉の地位を獲得していた。

 

「周辺域の惑星防衛軍を借りるとしても精々アルサカンかフォーロスト、アナクセスの艦船部隊が限度です。それ以上の場所から兵力を運搬すれば敵に悟られる」

 

ロモディ上級大尉の言う通り他の場所から戦力を搬入すれば恐らく敵に察知される。

 

拘束出来たのは共和国に潜む連中だけで一般の場所はまだ不明瞭だ。

 

それでもこの話はあくまで敵が自暴自棄になりテロ行為を起こした時に限る。

 

現状のコルサントに駐留するジュディシアル・フォース地上部門なら十分制圧と殲滅は可能だった。

 

しかしもしもの事がある。

 

「当てといえばコルサントの保安部隊とせいぜいセネトの護衛隊です」

 

特殊部隊のペリアス大尉は2つ名を挙げた。

 

保安部隊もセネト・ガードもそれぞれ最精鋭なら戦いについてこれるだろう。

 

最悪対テロの為の市街地封鎖にさえ協力して貰えばいい。

 

「後はジェダイですね」

 

「彼らはまだ信用に値しない、手を借りるのも出来る限り最小限だ」

 

ジェダイをあまり信用しないターキン中佐は忠告した。

 

コア・ワールドやコロニーズ、インナー・リムのような領域とは違いアウター・リムで戦い抜いたターキン中佐としては当然の考えだった。

 

ただゼファントには1人頼みの綱があった。

 

「なら1人だけ、以前共に戦ったジェダイ・ナイトのサヴァントを呼びましょう」

 

「保安部隊の特殊部隊のものならば役には立つだろう、後はセネトだな…」

 

ドレイヴン大佐は唸るようにセネト・ガードの事を考えた。

 

「警備隊ですがセネト・コマンドーのユニットはとても役に立つでしょう、いればの話ですが」

 

ロモディ上級大尉は頭を触りながらため息をついた。

 

元老院の護衛専門のセネトが前線に出てくることなど基本あり得ない。

 

「元老院議員の誰か1人でも説得出来ればいいんですがね…」

 

「なら説得するしかあるまいな、ゼファント少佐」

 

ドレイヴン大佐は悪い笑みを浮かべゼファントの方を見つめた。

 

まさか家族ぐるみであの議員と絡んでいることを知っていたとは。

 

さすがは情報部の将校だ。

 

「わかりました…パルパティーン議員に頼んでみましょう」

 

「不可能だったらまた考えよう、何はともあれ我々はついに攻勢の機会を手に入れたのだ」

 

将校達がその言葉を噛み締める。

 

わずか数週間、数ヶ月程度だったがそこまでの道のりは長かった。

 

だがこれで全てが終わる。

 

「では各自準備もあるだろう、今日はこれで解散だ」

 

ドレイヴン大佐はそう言って会議を締め括った。

 

各々雑談などを交わし始めたがゼファントは挨拶をするとフィーナ少尉と共にすぐ立ち去った。

 

「シーヴ・パルパティーン議員ですか…どんな方なんです?」

 

「元老院議員にしても人としても素晴らしいお方だ、会えばわかる。きっといい返答を下さるさ」

 

安心したのかフィーナは微笑を浮かべた。

 

やはりあの事があってからフィーナは変わった。

 

表面上は変わってなくとも明らかに信頼を寄せてくれた。

 

ならばその信頼に応える時は今だ。

 

今までにないほど自信に満ちた笑みがゼファントを包んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セネト・コマンドーの部隊を使用したいか…」

 

彼の後ろに佇む2人のセネト・ガードが顔を見合わせた。

 

ゼファントは頭を下げ頼み込んだ。

 

「確実に敵を倒す為にも後少しばかり兵力が必要なのです。お恥ずかしい事にコルサントに駐留しているジュディシアルの兵力は最悪の事態を想定した場合少し足らず…」

 

「いやいいんだ、掛け合ってみよう」

 

パルパティーン議員はあっさりと快く了承してくれた。

 

「本当ですか?」

 

「ああ勿論だ、むしろコルサントの危険なら元老院も今回ばかりは無視は出来んだろう」

 

「ええ、全くです」

 

2人は苦笑を浮かべた。

 

フィーナは少し困惑し愛想笑いを浮かべていた。

 

すると何故だかパルパティーン議員のセネト・ガードが彼に耳打ちをした。

 

「ほうほうなるほど、確かに志願兵ならより元老院の承認を得やすいだろう」

 

「自分らはこれでもセネト・コマンドーの一員です。是非志願の許可を」

 

2人のセネト・ガードはそう進言した。

 

ゼファントは出されたカフ(本当は茶の方が良かった)を飲みながら熱心な人もいるもんだなと思った。

 

セネトの優秀さや忠誠心の高さはゼファントも知っている。

 

だからこそ余計に本職とは全く関係のない事で殉死してしまうのは返って不名誉なのではないかと一瞬思った。

 

あの場では期待されこうしてやって来たゼファントだが正直承諾されるとは思っても見なかった。

 

コルサントのジュディシアル・フォースの戦力では足りないというのは事実だ。

 

しかしそれはあくまで“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”という仮定の話で承諾され難いという懸念が強くあった。

 

可能性に振り回されていては何も出来ないではないか。

 

そう言われたら元も子もない。

 

「是非頼むぞ、より多くの市民を守る為にな」

 

「ありがとうございます議員」

 

「本当にいいんですか議員?それにえっと…」

 

「インティール・エルゼドー、セネト・ガードの上級衛兵です」

 

1人のセネト・ガードが挨拶をした。

 

「本当に宜しいんですか?最悪戦死の可能性も」

 

「死ぬのが怖くてセネトが務まるもんですか。それに私だって元は防衛軍の出、それなりの働きはさせてもらいますよ」

 

ヘルメット越しからも分かる勇猛さがゼファントの申し訳なさを消し飛ばした。

 

パルパティーン議員も静かに頷く。

 

「君なら必ず成功させるだろう、もっと自信を持ちたまえ」

 

「ええ、少佐(Major)の采配期待してますよ」

 

若干階級が間違ってるような気がするが問題ない。

 

今までの彼と同じようにゼファントには必ず仲間がいてくれた。

 

1人だったら絶対にここまで辿り着けなかっただろう。

 

心の中で感謝を述べると彼は宣言した。

 

「ならセネト・コマンドー達は必ず全員生かして議員方の下へお返ししますよ」

 

「随分と大きく出ましたね、なら私達の命、全て預けましたよ」

 

「頼んだぞ、ゼファント、インティール」

 

戦う2人の勇気に溢れた眼を見ながらパルパティーン議員は静かにエールを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方本拠地で最後の準備を推し進めるフェルシルの革命軍は静かだった。

 

訓練も装備も万全で跡は数日で来る艦隊を待つばかり。

 

士気も高くむしろ浮き足立って的に悟られる方を危惧した結果だ。

 

元々廃棄された工場という事もあってか彼らの本拠地は亡霊の屋敷のような君の悪い静けさが醸し出されていた。

 

実際革命軍の亡霊である為間違いではないのだが。

 

ともかく彼らは静かにただ時を待った。

 

そして遂にその時が来た。

 

残された艦隊はここまで接近し共和国内のスパイ達からも次々と情報が届いた。

 

共和国とジュディシアル・フォースは現在再び治安が悪化したミッド・リムの再平定の為再び艦隊を派遣するそうだ。

 

別の場所にいる少数の同志達もジュディシアル・フォースの動きを伝えてくれている。

 

コルサントの艦隊も既に出立した。

 

今この首都の戦力は空だ。

 

聖戦を実行するのは今しかない。

 

彼の事も合わせて。

 

「いよいよですね、辛抱強く待った甲斐がありました」

 

「ああ、なんとか間に合った…少なくとも“寿()()”までにはな」

 

「本当にもうダメなのでしょうか?」

 

「間違いない、日に日に感じるよ…ゆっくりと身体から何かが抜け出ていく感触が」

 

フォンフは肩を落としながらもどうしても必要な真実を尋ねた。

 

「ではあなたの肉体も」

 

「器はすでに用意してあるがこの身体は死ぬ。ついでに言えば半身の意識も消えるだろう」

 

不安な表情になるフォンフを宥めるようフェルシルは言った。

 

「心配するな、“()()”は必ず遺す、そうさ…」

 

言葉に詰まりフェルシルは天井を眺める。

 

でなければ我々が生まれ死んでいった意味がない。

 

アーガニルも他の仲間達も“()”も皆遺志を託し死んでいった。

 

生まれた目的と盟友達の為虚空の中フェルシルは再び誓った。

 

「必ず革命を成し遂げて見せる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

議員の承諾を受けた次の日ゼファントは懐かしい面々に遭遇した。

 

それはフィーナとジュディシアル・フォースの本部前を歩いている頃だった。

 

「随分悟られずに行ってますね」

 

「ああ、一応言っとくけどチクるなよ?」

 

フィーナはゼファントのそんな悪いジョークに少しムッとしてかなり強めに肘打ちをした。

 

「いてっ!ちょっとした冗談だって…」

 

「全く…私に見えてるのは…貴方だけなんですから…」

 

「えっ…?」

 

「なんでもないです。早く行きましょう」

 

なんかサラッと聞こえた気がしたがゼファントは気にせず歩いて行った。

 

すると遠くから愉快な2人の声が聞こえた。

 

「おっあれはゼファント少佐殿じゃないか!」

 

振り返るとそこにはまるで変わらない数ヶ月くらい前に再会した同室の2人がいた。

 

何故こんなところで出会うんだというくらいタイミングが良さすぎる。

 

フィーナも2人の声を何処か知っているようだった。

 

「ようおふたりさん…どうしてここに?」

 

アザフェルとゼネークトはニコニコして答えた。

 

「俺たちは一応コルベット艦の艦長として艦隊戦に参加するんだぜ?」

 

「一応上級中尉として卒業だからな。お前は地上の指揮担当だろ?」

 

ゼネークトがそう吹っ掛ける。

 

2人とも信任ながらコルベット艦の艦長としてよく警備任務で成果を上げているらしい。

 

扱いに困り戦術研究課に放り投げられたゼファントとは大違いだ。

 

まああそこで過ごした数年は本当に色々役に立ったが。

 

親友達にばったり出会ってしまった恥ずかしさと嬉しさを隠しながら頷いた。

 

「しかし艦長か…いいよな私なんて階級だけあってなんの長でもないんだし」

 

「そう嘆くなよ“()()殿()”、どうせすぐご立派な艦が送られてくるだろ」

 

「そうそう、それにお隣に美人を侍らせてるし」

 

アザフェルは冗談まじりにいじった。

 

それに同調するようにゼネークトも揶揄う。

 

しかも何を思ったのかフィーナはあえて腕を組み始めた。

 

なんか笑顔が怖い。

 

「あのなぁ…彼女は部下だ」

 

「あっそうなの?」

 

「フィーナ・リースレイ少尉です」

 

ポカンとする2人にフィーナは敬礼した。

 

上級中尉は一応上官に値する。

 

そう言った理由もかねてだった。

 

「あっえっとゼリム・アザフェルとこっちはフォンス・ゼネークト」

 

「よろしく…」

 

2人は照れ臭そうに自己紹介をした。

 

お返しと言わんばかりにゼファントは同郷の親友を揶揄い始めた。

 

「そんな事言うお前こそ。進展はあったのかな?」

 

「うっ…その…」

 

「実はさぁ、リエスがアナクセスの駐屯地に配属になっちゃってさあ」

 

「えっマジ?」

 

「しかもちょうど“()()()”がいる所なんだよ」

 

「アイツ?」

 

イマイチピンと来なかったゼファントは首を傾げた。

 

「ヴァンガロだよ、こないだアイツも昇進してさちょうど上級大尉なんだよね。しかもリエスと同じ部署」

 

あまりの不運さにゼファントはリエスに同情しつつ苦笑いを浮かべていた。

 

寝取られ…違う「僕が最初に好きだったのに〜」なんて展開にはならないだろうがちょっと不幸だ。

 

「まあそのなんとかなるだろ。ヴァンガロなんて女に興味ないだろうしさ」

 

「そうそう、あるのはこの首席様をぶっ倒してやろうって気概と嫉妬心と自尊心だけだ」

 

「いやまあそうなんだが…なんか嫌な予感がして…」

 

「たく…数日経てば戦場だってのにこの有様だぜ?ゼファントからもなんとか言ってやってくれ」

 

苦笑を浮かべるゼネークトの頼みを受けてゼファントは軽く慰めた。

 

「ならヴァンガロより昇進して見返してやろうや」

 

「それって職権濫用なんじゃ…」

 

「アザフェルつまんない事言うなよ。とにかく目の前の少佐殿にデカい口叩けるくらいにはなっとこうぜ」

 

相変わらずゼネークトはゼファントの揶揄い方がうまい。

 

アザフェルも顔を上げ苦笑を浮かべていた。

 

「そうなる日が来るといいな。なあアザフェル、ゼネークト」

 

2人は急に真面目なトーンになったゼファントの方を見た。

 

彼は笑みを浮かべてはいるがどこか悲しそうだった。

 

「分かってるとは思うが死ぬなよ」

 

「フッなんだそんな事か、どうしたんだ?急に改まって」

 

「急に辛気臭い事言うなよ。お前こそ流れ弾食らって死んだりするんじゃないぞ?」

 

やっぱりこの2人は大丈夫そうだ。

 

確かに人の事言ってる場合ではないな。

 

「分かってるさ、じゃあな…また会おう」

 

「ああ!」

 

「またな」

 

2人は別れの挨拶を交わすと本部の中へ入っていった。

 

ゼファントはそんな2人を最後まで目で見送っていた。

 

フィーナはそんなゼファントに一言かける。

 

「仲がよろしいんですね」

 

「まあ“()()”だからね」

 

 

照れ臭そうに笑みを浮かべていたが確かに2人の事を大切に想う気持ちがあった。

 

アザフェルは幼少期からずっと共に過ごし1人だった自分に初めて出来た友達だ。

 

ゼネークトもアカデミーで苦楽を共にし様々な事を分かち合った大親友だ。

 

2人とも大切でだからこそ信頼出来る。

 

自然とフィーナも微笑ましくなった。

 

様々な想いが交差するこの戦いも遂に終幕へと運ばれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では各員状況説明を」

 

たった1人会議室にいるドレレイヴン大佐はホログラムで参加する将校達の表情を見ながら言った。

 

数名はもう戦闘用の服やアーマーに着替えている。

 

まず最初に口を開いたのはゼファントの父のゼント・ヴァント提督だった。

 

『艦隊は間も無く出立する。コルサント防衛艦隊もトーリア准将の艦隊も万全だ』

 

『ハイパースペースから出現した敵艦隊を三方向から包囲し殲滅します。再びハイパースペースに入られるようコンピュータウイルスも完成しています』

 

作戦を立案した補佐幕僚のターキン中佐は説明した。

 

これほど用意周到の作戦なら大打撃どころか全滅させる事も可能だろう。

 

続いてコルサントの方だ。

 

ゼファントが説明を開始する。

 

『艦隊の戦闘開始前に敵地に配備した爆弾を一斉に起動し打撃を与えた後、全兵力を持って攻撃を開始します』

 

『私とロモディ大尉の中隊が先行し、第二陣としてボイトス中佐の突撃連隊とセネト・コマンドー隊が一気に拠点を攻撃する』

 

軽装ではあるが戦闘用の服に着替えたサヴァントがゼファントに続いて説明した。

 

『全体の指揮は私が取る。敵本拠点を包囲しつつ砲撃や機甲戦力を投入し確実に殲滅する』

 

そう言ったのは“ブランヴェイ”将軍。

 

ジュディシアル・フォースでも数少ない将軍の地位にある人物だ。

 

ベテランであり彼の指揮能力は高くあの“スターク・ハイパースペース紛争”にも参戦していたと噂される程だった。

 

『こちらも兵士達の指揮は万全です』

 

『セネト・コマンドー隊も同様、いつでも戦える』

 

ロモディ上級大尉とセネト・コマンドーの志願兵達の隊長であるキャプテン・“ザイン”が兵士達の状態を説明した。

 

どの部隊も士気は高く戦いたがっている。

 

本来隅に置かれてばかりのジュディシアル・フォースの活躍の場だからだろか。

 

皆必要以上に高揚している。

 

戦いを宣言するかのようにドレイヴン大佐は言葉を放った。

 

「では各員、頼んだぞ」

 

将校達は頷き次々とホログラムが切れた。

 

やがて会議室にはドレイヴン大佐以外残っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「閣下、全艦座標セット完了です」

 

副官ウォルスはゼントの後ろに着き報告した。

 

彼の隣にはターキン中佐もいる。

 

報告を最後まで聞くとゼントは振り向かず指示を出した。

 

「全艦ハイパースペースへ!」

 

首都惑星の軌道上から次々と軍艦が姿を消した。

 

これが最後に出撃する共和国艦隊だ。

 

後の艦隊は既に座標地点で敵部隊を待ち侘びている。

 

その中にはアザフェルとゼネークトのコルベット艦の姿もあった。

 

若き2人の艦長は軽く笑みを浮かべながらブリッジで外を眺めていた。

 

いよいよ始まるのだ。

 

革命戦最後の艦隊戦が。

 

 

 

 

 

 

ホログラム回線を切るとゼファントは足早に指揮用の簡易テントに向かった。

 

テントの中には数十名の兵士達が状況を耐えず報告していた。

 

「ナイト・ハウンド隊からの報告。フェーズ1終了、設置は完了です」

 

「ナイト・ハウンド隊を指定場所に待機、ロモディ大尉とサヴァント司令官の出番だ」

 

無駄のない指示を出すブランヴェイ将軍は厳しい眼差しでモニターの敵地を眺めた。

 

ゼファントはフィーナとモスト中尉と共にテントの中ヘ入った。

 

「少佐、艦隊の方は?」

 

「無事全艦出立しました。十分も掛からずに戦場予定地へ到達するでしょう」

 

「そうか、ではこちらも予定通り行動するとしよう」

 

「はい将軍」

 

老練な顔つきのブランヴェイ将軍は先程から表情一つ変えない。

 

「これで全てが…」

 

「ああ!この戦いもようやく終わる」

 

フィーナの意見に同調してモスト中尉が力強く言った。

 

長いようで短かったがこれで終わりだ。

 

通信士官の1人が興奮気味にブランヴェイ将軍へ報告する。

 

「ロモディ隊位置につきました、将軍ご命令を」

 

「ボイトスの突撃連隊の準備がまだだ、少し落ち着け」

 

部下の興奮を抑え冷静に確実に勝利する為の命令をブランヴェイ将軍は打ち出す。

 

地上部門と言えどブランヴェイ将軍の指揮にはゼファントも見習う所があった。

 

いずれ自分もこのような指揮官になるのだろうかとゼファントはふと思う。

 

だがそんな未来を妄想している場合ではない。

 

あと数分もすれば作戦は開始される。

 

「連中の通信網は既に封鎖済みです」

 

「閉じ込めたという訳だな。この地下に」

 

ゼファントは頷いた。

 

すると別の兵士から報告が入る。

 

「将軍、ボイトス中佐の突撃連隊からです」

 

通信機が作動しボイトス中佐の声が聞こえ始めた。

 

『少し遅れました将軍、我が第十八突撃連隊用意完了です』

 

「時間通りだ中佐、そのまま待機してくれ」

 

『了解です!』

 

更に別の士官達が次々と報告する。

 

「各地上部隊、敵地の包囲及び突撃準備完了」

 

「砲撃中隊も準備完了です」

 

ブランヴェイ将軍は頷き命令を出す。

 

戦いの堰を切る重要な一言だ。

 

「作戦開始、起爆しろ」

 

遂に始まった。

 

始まってしまった。

 

テント内も一気に忙しさを増し鋭い緊張が一瞬テント内を突き通った。

 

数十秒後目の前に映る工場や元宿舎の一部が爆発の光に包まれた。

 

作戦の、戦いの始まりだ。

 

影の歴史の一区切りであるこの戦いが遂に始まったのだ。

 

 

 

 

つづく

 

 

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