-始まりの一歩-
惑星コルサント。
共和国の首都であり銀河系の中心地。
惑星全体が都市であり政府機関や様々な重要施設がこの惑星に敷き詰められている。
また文化の中心地でもあり1兆人以上の人口が日々生活していた。
惑星全体が都市と言われる通り高層ビルが並び惑星本来の地表はほとんど見えなかった。
「ゼファント様もうちょっと右に寄って下さいませ」
オルホールがホロカムを用いて写真を撮ろうとする。
まだ着慣れない士官候補生服を着たゼファントがニヤケを押さえながら言われた通り右に寄った。
ゼントもフローネも息子の晴れ舞台にニヤニヤしている。
「では撮りますよ!はい!」
こうして一枚の写真が撮られた。
恐らく親子で撮る写真はこれが最後ではないかと後にゼファントは考えていた。
この日はジュディシアル・アカデミーの入学式があった。
当然アカデミーの試験もあったが
「おーいゼファント!」
向こうから聞き馴染みのある声が聞こえる。
紫の髪にオレンジの瞳を持つアザフェルが彼に声を掛けた。
「その制服似合ってるぜ」
「どうも、ゼント提督、フローネ少佐ご無沙汰しております!」
「そんな堅苦しくなくていいよアザフェル君。合格おめでとう」
「ええ彼のいう通り。私からも合格おめでとう」
2人は素直にアザフェルを褒めた。
アザフェルは照れ頭を掻く。
「そろそろ時間じゃないか?ほら君たちも送れないよう行きなされ」
「はい父さん」
「それでは提督、またいつか」
ゼファントは手を振りアザフェルは頭を下げて別れた。
2人はアカデミー内に向かってまっすぐ進む。
「それにしても随分広いな」
アザフェルがアカデミー内を見渡しながら率直な感想を述べる。
「まあ私達が名目上共和国の守り手になるんだ。これくらいなくちゃな」
「確かに、で大ホールはこっちだっけ?」
「ああ」
2人はいつも通りたわいもない話をしながら大ホールに向かった。
入学式の校長の演説は長く仰々しかった。
「諸君らは共和国を守る為に自らを賭してこの道を選んだ真の愛国者である!!口先だけで憂国を唱える愚かな理想主義者とは違う!!諸君らは祖国の為に自ら立った勇者達だ!!」
ジュディシアル・アカデミーの校長の熱弁は一部の愛国信者達の心を奮い立たせた。
しかし一部の者達には不快と冷笑の対象となっていた。
たかがジュディシアルに何が出来ようかと。
「校長閣下は相当の“愛国者”様のようだ」
「バカ言えただ思想が偏ってるだけだろ。そうまで言うならとっとと正規軍を作ってくれ」
「いっつも思うんだがどうしてそう突拍子もないこと言うんだ」
言葉だけの愛国心と平和主義はなんの役にも立たない。
この男はこれまで一体どれだけの事を成してきたのだろうか。
校長の言う祖国の為前線で戦ったり、そうでなくとも後方勤務に従事し何かを成し得たのか。
階級だけ見るに決して低くはないので何もせずと言う事はないだろうがそう考えると少し妙な気持ちになった。
「そんな諸君らはこの学び舎でさらなる高みを手にし真の救国主となるであろう!!」
ようやく偏見と傲慢の詰まったご高説が幕を閉じそうだ。
「では諸君らには惑星ハンバリンの英雄、“ゼント・ヴァント”提督から励ましの言葉を受けてもらう!!」
その瞬間ゼファントの表情が変わった。
危うく席から立ち上がりそうになった。
すると校長は壇上から立ち去り何やら当然のように彼らのよく知る人物が代わりに立った。
ゼファントの父親だ。
そういえばいつも付けていない勲章を無駄に付けているなと思ったがその為か。
マイクを調節しゼントは目を瞑る。
目を開けた瞬間が演説の始まりだ。
「私は特に話すことはないし先程の校長の言葉を否定する必要もないが…一つだけ言わせてもらおう」
ゼントの表情は鋭いものとなっていた。
あんな目つき今まで見たことがない。
息を溜め心を落ち着かせる。
「我々に思想は関係ない。ただ命令に従い、命に変えてでも市民の平穏と安全を守るのみだ。命を捨て市民の為に死ぬ覚悟をここで身につけろ!…以上だ」
ゼントの演説は簡潔を極めた。
あたりは静けさに襲われた。
歓喜の叫びも卑下の言葉も出ない。
ただ覚悟を突きつけられたのだ。
軍隊に入ることの意味と結果を。
だがあの彼はすでに覚悟が決まっていた。
ゼファント。
彼らの覚悟はとうの昔に決まっていた。
生まれた時からきっと。
その後彼らは幾つかのグループに分けられた。
なんの運命かは知らないがゼファントとアザフェルは同じグループでさらに同じ宿舎になった。
ここまで2人が共にいると逆に疑いがかけられる。
父さんがなんかしたんじゃないかと。
ある一角に候補生達が集められた。
「私がお前たちの教官の[シャック・ギーリス]中佐だ。先程ゼント提督の仰られた通り貴様らはこれから市民の盾となり剣となる為ここで鍛えられる!覚悟はいいか!」
「はい教官殿!!」
候補生達は背筋をたて声を上げた。
ギーリス教官は1人ずつ姿を見る。
「どうやら心構えだけは立派なようだな!それでは解散し自室に戻るように」
「サーイエッサー!!」
ギーリス教官が立ち去ると候補生達は一斉に胸を撫で下ろしほっと一息ついていた。
正しく物語から出て来たかのような丸刈りで強面の教官だった。
候補生達は数年学びを共にする仲間達に軽い自己紹介付きの挨拶を交わした。
「おーい!そこのお二人名前は?」
「ゼリム・アザフェル」
「ゼファント・ヴァントだ」
ゼファントが自分の名前を喋った瞬間候補生達に衝撃が走った。
ヴァントという名前はやはり衝撃的なのだろう。
すぐにゼファントに話を振り食いついた。
「君あのゼント・ヴァントの息子か!?」
「えぇ…まあ…僕の…いや私の父だが」
身じろぎしながら質問に答える。
基本屋敷のお坊ちゃんだった為あまり他の人と話した事がない。
しかし一つ質問に答えたことによって芋づる式に質問が飛び出してきた。
「マジかよ!ヤベェ!」
「君じゃあお父さんから何か教わったりしてんの!?」
「いや特には…でもよく先祖クイエムの戦術とかは読んだよ」
「やべぇ…」
「じゃあじゃあアカデミーの試験は…」
「えっと普通…だったかなぁ…でもハイパードライブの燃料から割り出せるジャンプアウトの地点のやつは難しかった」
わっと歓声が湧く。
ゼファントはこうして一躍人気者となった。
だが当の本人は困惑した表情だ。
アザフェルに助けを求めようとするがこの状況が面白いのか“お手上げ”と腑抜けた顔をしていた。
するとアザフェルにも話を聞きにくる者がいた。
「ねぇ君名前は?」
「えっ!?えっとゼリム・アザフェル…」
とてつもない美少女だ。
あのアザフェルが動揺している。
明るく聡明で何より美人だ。
よほどアザフェルの好みだったんだろう。
「き…君は…?」
恐る恐る彼女に聞く。
そんなアザフェルをゼファントは遠目からニヤニヤしながら眺めていた。
「私はリエス・ゼルナース、よろしくね!」
彼女は優しく微笑む。
その微笑みがますますアザフェルの心を掴む。
「よ…よろしく」
2人は握手をした。
ゼファントは絶え間なく質問してくる候補生達を押し出しながらアザフェル達に近づいた。
彼を軽く肘で突いた。
ゼファントは今までにないほどニヤニヤしている。
「なっなんだよ…」
彼のニヤケはまだ止まらない。
「君は?」
リエスがゼファントに名前を尋ねる。
「ゼファント・ヴァント」
「へぇそんな家に生まれて大変だったでしょうに」
「いやそうでもないよ。全然普通の家だったよまあ大変だったのなんて一回家がテロリストだかの襲撃にあった事くらいだな」
懐かしそうに数年前の出来事を口に出す。
このことを知っているのはアザフェルくらいだ。
「あん時心配して行ってみたら全然大丈夫だったよなお前」
仕返しとばかりにアザフェルもゼファントの脇腹を突く。
してやられたなとゼファントは思うが話を続ける。
「たかだかテロリストにやられるような家が艦隊司令官なんて務まらんさ」
「面白い人達ねあなたとアザフェル」
リエスが微笑を立て2人の関係を微笑む。
なぜだかわからないがアザフェルの方は照れていた。
「いやそんな…」
「お前が照れることじゃないだろ」
「それじゃあまたね」
リエスは知り合った候補生達と共に部屋を出た。
最後の最後まで照れっぱなしだったアザフェルをゼファントは叩いて現実世界に引き戻した。
「さっさと私達の宿舎に行こうぜ」
「あっああ…」
まだ質問したりない候補生達をなんとか撒き2人は宿舎についた。
扉のスイッチを押すとすでに同室の男が何かを見ていた。
「君は?私はゼファント、こいつはアザフェル」
2人の紹介を軽く済ませるとその男も立ち上がって自己紹介を始めた。
「僕は“フォンス・ゼネークト”、今日から同室だ」
ゼネークトは右手を差し出し握手を求めた。
ゼファントも快く了承し彼の手を握った。
そのままアザフェルもゼネークトの手を握り晴れて3人は同室の仲間となった。
「これからよろしく」
「こちらこそ」
彼らはまだ知らない。
3人の未来を。
あの栄光の歴史にその名を刻むことを。
-アカデミーでの日々-
彼らの勤勉と訓練の日々は続いた。
このジュディシアル・アカデミーのクラスは4年制で今のゼファント達は17歳。
後数ヶ月もすればゼファントは18歳になる。
アカデミーでの生活は厳しいものだがその分学ぶことの方が多い。
「このように比較的重要度の低い惑星や衛星に敵を引き付け包囲殲滅する事をコバーン=ヴィアーズ戦術といい大部隊を相手にする時重宝される」
眼鏡をかけた戦術講師のヴァス・ガコン少佐は未来ある候補生達にありとあらゆる戦術を叩き込む。
タブレットには壇上に映し出されている資料と同じ内容が転送され候補生達はそれを読みわかりやすいよう印をつける。
そこには戦術の考案者と実際の記録や戦術の展開方法が描かれている。
「罠に嵌めるまでは至難の技だが一度嵌ってしまった罠からは敵は簡単に逃げ出せない。また逆転も難しい」
壇上のモニターに敵を引き付け包囲するイメージ図が映し出される。
「その為確実に敵を殲滅する為には自然の周到な準備が必要だ。この戦術が確立されたデノン戦役においても地上代理指揮官と艦隊代理指揮官による巧な連携と準備による勝利が主な要因とされている」
代理指揮官の画像が転送される。
ゼファントは頷きながらフリースペースにこの戦術を流用した戦術プランを記載した。
講義の合間にもこうやって実際の戦闘を意識している。
ただ講義を聞くだけなら誰でも出来るはずだ。
しかし広義により得られた知識をどのように活かすかが重要だ。
ゼファントはそれを知覚し自分ができる範囲で得た知識を活かしている。
「大軍での激突は戦線の膠着と国家の疲弊の要因となる、いかに素早く敵に打撃を与え敵の主力を撃つ破るかが国家の安寧と市民の安全に繋がる、次に1,000年前の最終戦争で活躍したクエイム・ヴァントの艦隊戦術だ」
ゼファントは一瞬だけハッとした。
そして数秒だけ数人の視線がゼファントの方を向いた。
自分と同じ名前が上がれば多少は反応するだろう。
いくらそういう家系だと知られていても。
「対空防御と波状攻撃を主点に置いた戦術だ。戦艦と護衛艦を均等に配置し何枚かの層のように展開し、それによって波状攻撃を繰り出す」
大きなモニターに戦術をイメージしたシュミレーションが映し出される。
打撃力と敵への精神的な圧力は十分効果的に見えた。
しかしかなりの物量が必要であるし何より敵の一点突破には弱そうだ。
それを示すように少佐は付け加えた。
「しかしこの戦術も状況によって変化し弱点となりうる可能性がある。戦術の使い分けがやはり何より重要だろう」
彼らは優秀なジュディシアル士官になる為に訓練を積んでいる。
ただ戦術を学ぶだけでは優秀な士官にはなれないだろう。
その為ある程度の護身術やブラスターの撃ち方、サバイバル訓練などを受ける義務があった。
「射撃には正確な狙いと反射神経が重要になる、味方への誤射などもっての外だ!」
教官が動く的に狙いを付ける候補生達に基礎を再び吹き込む。
候補生達ブラスター・ライフルをしっかり構え自動で動く的にブラスター弾を撃ち込む。
最初に比べればマシになってきたが命中率はそこそこだ。
だが彼らは違う。
ゼファントとアザフェル、ゼネークト。
その正確な狙いは教官も感嘆の声を上げるほどだった。
「やるなゼネークト!」
「手柄は譲ってやるさ!」
2人は正確な狙いで次々と的を撃ち抜く。
30秒もすれば全員がほとんどの的を撃ち倒していた。
「よし交代!」
教官が交代の合図を出す。
今度はアザフェル達の出番だ。
ゼファントがそっと肩を叩きアザフェルにエールを送る。
アザフェルが1につくと隣には嫌味なコルプ・ヴァンガロ候補生がいた。
ヴァンガロ候補生はアザフェルに対して悪い笑みを浮かべた。
「今日は負けねぇぞ」
「勝負じゃないんだから」
アザフェルはそう宥める。
「撃ち方よーい」
教官が合図を出し全員がブラスター・ライフルを構える。
2人もしっかりと狙いを定める。
「撃て!」
ブラスターの銃声が一斉に鳴り響く。
アザフェルは次々と的を撃ち抜いて行った。
ヴァンガロ候補生もなかなかの腕前だがアザフェルには到底及ばない。
徐々に苛立ちを感じ始めた。
ヴァンガロ候補生は周囲を確認しついに卑怯に手を染める。
なんとアザフェルの射線上にブラスター弾を撃ち出したのだ。
これでは狙いが定まらない。
アザフェルは冷静に考えある行動に出た。
逆に手薄になったヴァンガロ候補生の的を狙い撃つ。
ドロイドが計測している為自動的にアザフェルの点数となるのだ。
意地の悪い性格が逆に仇となった。
「よし止め!」
銃声が止む。
ブラスター・ライフルを構え直しそれぞれその場で雑談を始める。
だが怒りを隠しきれないヴァンガロ候補生はアザフェルに近づき彼の胸ぐらを掴む。
「おいアザフェルてめぇ俺の獲物を!」
「しっかり狙わない奴が悪いんだろ?それに人の方へ向けてけてくるなんて危ないじゃないか」
正論を食らったヴァンガロ候補生はさらに怒りを爆発させる。
「この野郎!」
「止めなさいよ!」
どこからともなく止めに入る声が聞こえた。
思わずヴァンガロ候補生も掴む左腕を下ろした。
「リエス…」
彼女はこの数年間ですっかり同期のアイドルと化した。
「アザフェル、さっきの射撃すごかったわ!」
「そっそう?」
「ええ、いつか私にも教えて欲しいくらいだわ」
「いっいやぁそれほどでも…」
相変わらずアザフェルは変わらない。
すると暇そうにしていたゼファントがアザフェルの後ろにもたれ付く。
「教えてやれよアザフェル」
「ちょっお前…!」
「そうそう、お近づきになれるかもしれないだろ?」
ゼネークトも参加して彼をおちょくる。
最初の頃はこんな事をしない奴だったが徐々に信頼や友人関係がしっかりしてきたせいかしょっちゅう彼をからかうようになった。
2人とも悪い笑みを浮かべている。
だがリエスだけは頭にはてなマークを浮かべ首を傾げている。
「じゃあ考えて…おくよ」
「楽しみにしてるわね」
ゼファントとゼネークトは彼の方を軽く叩きリエスの取り巻きの女子達は応援するという意味も込めてくすくす笑われていた。
アザフェルはすっかり脱力しきっていた。
扉を叩く音が聞こえた。
「入りたまえ」
また候補生が資料でも届けにきてくれたのだろうとギーリス教官は考えた。
しかし扉を開けた人物は候補生ではなかった。
「ガコン少佐…どうしたのだね?」
席を立ち同じ教官であるガコン少佐を迎える。
何やら彼はギーリス教官に相談したいことがあるようだ。
「中佐もご存知でしょう?あの特筆した才能の持ち主…ゼファント候補生を」
ギーリス教官も表情が強張った。
ついに彼も同じ事を思うようになったか。
「彼がどうしたのだね?」
平常心を保ちガコン少佐に尋ねる。
「中佐、率直に伺います。彼は一体何者なのですか?」
「うむ率直すぎるな。彼はただ“一族が軍人の家”というだけで特に怪しい点は見られないぞ」
ギーリス教官は一蹴した。
だがガコン少佐は引き下がらない。
「そうではありません。彼があまりにも優秀すぎるのです…これを見てください」
ガコン少佐はタブレットを起動しゼファントの記録データを彼に見せる。
評価はぶっちぎりのトップで尚且つ追加項目にまで褒め称えられるようなことしか書いていなかった。
不気味なほどに。
ガコン少佐は画面をスライドし注目すべき点を挙げる。
「これは…」
ギーリス教官は思わず絶句する。
「はいこの戦術の数々…もしこの戦術が実行に移されればどれほどの戦果を挙げられるか…」
「予想はしていたがこれほどとは…」
ギーリス教官はまだ迷っていた。
話そうかどうか。
「疑いたくはありませんが父のゼント提督に身体を改造でもされたのでしょうか…?」
ガコン少佐の言葉は恐ろしいが拭いきれない面もあった。
サイボーグや戦闘用に改造された生命体というのはこの長い銀河史においていくつか存在していた。
流石にあり得ないだろうが。
「流石にゼント提督はそこまではしないであろう…むしろそんな機器を持っているとは思えん」
ギーリス教官はガコン少佐の考えを否定した。
それにこんな事をここで言うものではないと諭した。
「…ガコン少佐は“
ギーリス教官はふと漏らす。
ガコン少佐は少し首を傾げていたがすぐに問いに答えた。
「親から子へ受け継がれる癖や能力などでしたでしょうか…?」
「だいたいはそうだ…彼らヴァント家の開祖はあのクイエム・ヴァント元帥だったな?」
「ええ…ですが数千年近くその優秀な遺伝子が完璧に遺伝するなんてあり得まんせんよ…?」
ガコン少佐は疑問を口に述べる。
確かに完璧な形で能力が遺伝するなどほぼ不可能だ。
「それか“ジェダイ”のようなフォース感受者か」
「いえそれは…」
否定したいところだが親がゼント提督ならば頭ごなしに否定できない。
彼のジェダイ嫌いはジュディシアル・フォース内でもだいぶ知れ渡っている。
「ともかく私は一旦彼に声をかけてみる事にするよ」
ゼファントはギーリス教官に呼ばれジュディシアル・アカデミー内のカフェテラスへと連れられる。
まさか叱られるということはないはずだが一応のため警戒していた。
「私に何か用でしょうか教官殿」
「いや君とは少し話してみたくってな」
曖昧な表現が益々ゼファントの警戒心を強くする。
ただ声のトーンからして何か叱られるとかそう言ったことはないようだ。
ギーリス教官は話し始める。
「君は今の共和国をどう思う?」
珍しい政治的な話にゼファントはさらに警戒心のレベルを上げ答える。
叱られる事はなくともこう言った類の話は勝手な派閥に放り込まれたりとあまりよろしくない。
妙な偏見の目が自分に降りかかるのも嫌だった。
「ひとまず“統一国家”という枠組みの中だけなら現状はさほど悪くはないでしょう。ですが細かい点に目を向ければ決して良くはありません」
「ほうたとえば?」
ギーリス教官はさらに問い詰める。
ゼファントは少し考えてから話し始めた。
「各地にのさばる犯罪組織や海賊の討伐がまだ行き届いていない事でしょうか。アウター・リム内の共和国加盟率も少ないですし」
「ではそれらの対処法はどうしたらいいと思う?」
ギーリス教官は彼の真剣な眼差しを見つめる。
まるで何か試されているようだ。
「やはり各地へ武力介入できるだけの力を付けるしかないかと。今のジュディシアル・フォースでは全面戦争が勃発した時対処しきれません」
教官は頷く。
そこで彼はある一つの提案を彼に送る。
「ではいっその事共和国を解体してはどうだろうか?より強い国を…例えば“
「その国家がある程度民衆から支持を得て今の共和国より生活水準が向上するならそれも良いでしょう。しかしその国家の誕生に
「ほう、だが歴史は勝利者が作り出すとも言う。要は勝てば良いのではないか?どんな非道を犯そうとも100年は記憶の底だ」
ギーリス教官が口にしたその恐ろしくも一理ある考えはゼファント今後のゼファントに強く残った。
そう、勝てば勝利者の非人道的な行為は神隠しにあったかのように抹消され、逆に敗北者の非人道的行為は鬼の首を取ったかのように掲げられる。
歴史とはそういうものだ。
勝てば官軍負ければ賊軍。
それは揺るぎない事実だ。
しかしゼファントはそれを否定する。
「ですがその非道は受けた側は100年経とうとも1000年経とうとも忘れる事はありません。その非道が市民に向けられた者としたらいつかは返ってくるでしょう」
ゼファントはさらに続ける。
「だからこそ我々は民衆を守る軍隊にならなければならないのです」
その瞬間ギーリス教官にはゼファントの後ろ姿が光って見えた。
恐らく遺伝という発想はあながち間違いではないではなかった。
ただ能力や才能が受け継がれているのではない。
“
代々ヴァント家にはその意思が受け継がれている。
ゼント提督も彼もそうだ。
ギーリス教官は昔ゼント提督と共に戦った。
彼は常にそこに住む人々の事を考え最小限の被害になるよう留めていた。
それも代々継がれてきた強い意志がそこにあったからだ。
恐らく彼の跡を継ぐ者達も必ずそういった意志も同時に受け継ぐのであろう。
ヴァント家は生まれ持った軍人の家系だ。
それもただ武門や力に優れているだけではない。
人々を守る真の軍人の家系なのだ。
誰よりも優れた何よりも強く何よりも悲しいその一族の末裔がこうして先祖達と同じ道を歩んでいた。
つづく
実を言うとですね、これ書いたのかれこれ6~7ヶ月前なのでキャラの名前とかほぼ覚えてないんすよ()
ただヴァス・ガコンだけは覚えてるんですよ(謎贔屓)