前線へ
覇気なき戦士
卒業から1年経った。
ゼファントは取り敢えずガコン少佐の戦術研究課へと回された。
当人はどこに配属されても良かったのだがあまりにも優秀でしかも家柄もある為簡単には前線や地方に回せない。
その為アカデミー時代の伝でガコン少佐の配下に送られたのだ。
要は厄介払いという奴だ。
「少佐、頼まれていた資料お持ちしました」
ゼファントがタブレットを手渡す。
戦術研究課と呼ばれるだけあって彼らの仕事は戦術を研究し新たな戦闘に活かすことである。
また前線で戦っている部隊に的確な戦術アドバイスを行うのも彼らの仕事の一環であった。
基本はコルサントや地方の本部にいる事が多いのだが時折戦術アドバイスのため前線へ赴く事もある。
尤も彼らの持ち合わせるデータが役に立つかどうかは戦場次第だが。
暇なようにも見えて案外忙しいものなのだ、戦術研究課も。
「助かる…どうしてもコレリアン・ランの防衛戦の時の情報が足りなくてね」
ゼファントは彼にタブレットを手渡した。
ガコン少佐はメガネを上げタブレットを読み出す。
一瞬のうちに熱中してしまった為自分のデスクの周りをウロウロしていた。
「立ち読みせず席にお座りください」
「あぁすまん…なるほどルートさえ守っておけば状況が不利でも補給が行き届き物量で押し進められるか…」
椅子に座り再び資料を読み始める。
ガコン少佐は若くして少佐になったエリートだ。
彼の戦術分析とそれからなる的確な戦術はすでに幾度とない勝利を共和国に齎した。
彼は今年で29になる。
参謀や幕僚としての未来が既に決定されていた。
そして彼には同い年の妻が1人とまだ幼い息子が1人いた。
正しく模範的なジュディシアル士官だ。
「全くこんな所で資料ばっか見てるといつか奥さんに見放されちまいますよ?」
ゼファントが冗談まじりでガコン少佐を揶揄う。
ガコン少佐もあながち否定出来ないことから苦笑いを浮かべていた。
「やめてくれよ…そうだ君に一つ頼みたいことがあるんだ」
ゼファントは首を傾げる。
「君、結構前にコロニーズで革命…いや言葉を変えておこう。コロニーズで起きた反乱のこと知ってるよね?」
なるべく怒られたり失言がないようガコン少佐はあえて言葉を選んだ。
「アーカニアン革命のことですね?確か父も当時ジュディシアル艦隊とハンバリン艦隊を率いて制圧に向かってたとか」
「うん、それ」
ガコン少佐が頷く。
-アーカニアン革命-
それは50BBY頃勃発した革命戦闘である。
急進的なアーカニアン自治領主に反発した革命家達がサイボーグの軍隊を設立し革命が始まったのだ。
結局は自治領主がジェダイ・オーダーとジュディシアル・フォースや各惑星の防衛軍に援軍を要請し鎮圧した。
そういえばその時もジェダイが居なければこの戦いはもっと早くに収束してたって父さん言ってたっけな。
懐かしい過去の記憶を一瞬のうちに掘り起こしゼファントは再びガコン少佐に尋ねる。
「その革命がどうかしたんですか?」
「あの時作られたサイボーグの軍隊…まだ生き残りがいたんだよ」
「まさか…ジェダイとジュディシアル・コマンドーが皆殺しにしたって聞きましたけど?」
「そう思うよねぇ…でも僅かに取り逃した者がいるらしい」
その御伽噺に似た話がどうやら今回ゼファントに託される任務と関係があるらしい。
「でそのサイボーグがなんですか?」
「逃げ出したサイボーグが今問題でね…どうやらその一体が現在ミッド・リムの犯罪グループの指揮を取っているらしい」
「それを討伐しに行けと」
ガコン少佐が静かに頷く。
ゼファントが軽くため息を吐いた。
「当然誰かの参謀として行くんですよね?」
「そう、現在戦闘中のセルネアン准将の機動艦隊に行ってもらう」
「ではゼファント・ヴァント大尉、命令を承りました」
ゼファントがわざとらしく敬礼する。
「ああ…頼んだよ」
ガコン少佐は一言残して彼に任務を託した。
数日後彼は初めての前線に向かうことになる。
ようやく彼の軍歴がここからスタートするのだ。
ゼファントが件のグリッツ・セルネアン准将の麾下艦隊に向かってから数週間が過ぎた。
数週間も彼の下で働いたせいかゼファントはは段々セルネアン准将の人柄や能力についてわかってきたような気がした。
「敵の船団の7割を撃破、如何なさりますか?」
ゼファントはセルネアン准将に尋ねる。
あくまで攻撃の決定権は指揮官にありゼファントの役目はアドバイスだ。
「捕縛だ、まあ無理をせぬ程度にな」
「…了解いたしました」
ゼファントが頷く。
見ての通りセルネアン准将の指揮能力や用兵はゼファントでも認めるほど優秀だ。
今もこちらの損耗率はほとんどなしに敵の船団を壊滅させた。
中にはかなり重武装の船もあった。
それに部下達からの信頼も高い。
多くのクルーがセルネアン准将の下で戦う事を光栄に思っている。
流石はジュディシアル内でも数少ない戦闘経験豊富な指揮官だ。
だがそんな准将にも一つ問題があった。
「突入部隊はアヴァック大尉のコマンドー隊を突入させますがよろしいですか?」
「ああ一向に構わん。すべて君に任せているからね」
どうでも良さそうな声でゼファントに一任した。
戦闘中もこんな声でよくホロテーブルに寄りかかったりしていた。
こんな返答をされてはゼファントも多少返に困った。
「はい…」
ゼファントは若干不満顔を浮かべた。
彼には戦う意志が少なく感じる。
ほとんどの事は部下に託し自分は部下から出されたものをそのまま行動に移していた。
セルネアン准将は自ら命令を出しても自ら戦術を考えたりはしないのだ。
しかも指揮に至っても細部は完全にゼファントに任せきりだ。
一応失敗時の責任などは全て准将が取ってくれているそうなのだがそれでも困る。
聞いていた話と全然違うとゼファントは思い始めた。
もっと戦意に溢れた豪傑の指揮官かと思っていた。
彼はどこか“
まるで疲れ切った老人のようだ。
目も何処か空でキリッとした顔立ちに勇猛さを表す顎髭とはまるで縁がなさそうだった。
「では私は乗船部隊を指揮してまいります」
「あっ?ああ…」
ゼファントは旗艦パイオニアーのブリッジから離れようとした。
すると一人の男が声を掛ける。
「ゼファント大尉、私も行きます!」
「ルファン少尉…」
ルファン少尉は彼を連れ出した。
「アヴェック大尉!」
「おおルファン、それとゼファント大尉、どした?お前達もこれを着るか?」
ジュディシアル・コマンドーのアヴェック中尉は2人に声を掛ける。
ジュディシアル・コマンドーとはかの有名なセネト・コマンドーとはまた別の特殊部隊員であった。
セネト・コマンドーは通常のセネト・ガード同様議員や要人の護衛が任務だ。
一方ジュディシアル・コマンドーは名前の通りジュディシアル所属である。
主に海賊や犯罪組織を相手にするジュディシアル・フォースは敵が人質を取ったり重要な物資を運んでいたりする場合がある。
その場合分厚いアーマーを身に纏ったコマンドー隊員が敵船に乗船し人質や積荷を無事取り返す為白兵戦を仕掛けるのだ。
また敵を捕らえる時も同様彼らが駆り出される。
船内ではブラスターの弾丸が暴発したり人質を盾にされる可能性がある為主にバイブロソードやバイブロブレードを使用する事が多い。
さらにジュディシアル・コマンドーはある程度兵装の自由が認められている為改造されたブラスター・ライフルやバイブロアックスを使う兵士も存在した。
このアヴェック大尉のように。
「状況はどうです?」
「ああ第一分隊と第二分隊が船内の8割方制圧した、こりゃ俺の出番ねぇな」
アヴェック大尉はヘルメットをクルクル回していた。
「それで一応セルネアン准将の事をゼファント大尉にも話しておいた方が良いのではないかと…」
ルファン少尉はアヴェック大尉に目を向けた。
あの大尉も珍しく視線を落とし落ち込んだ声で答えた。
セルネアン准将の話と聞くと何か不安になることがあった。
「そうだな…」
ゼファントは更に疑問に思った。
何か昔あったのだろうか。
それが一体今のセルネアン准将となんの繋がりがあるのだろうか。
だが2人はそのことを話すのを辞めた。
「まっまあ色々あったんだよ、とにかく捕虜どもを運ぼうぜ!」
「あぁ…はいはい」
3人は捕らえた船に向かって歩き出した。
アウター・リムのある惑星。
ほとんどの惑星に共和国の息が掛かっておらず彼らの指導者は犯罪者の王であった。
そのうちの一つがブラック・サンと呼ばれる超巨大な犯罪組織だ。
各地に前哨部隊を持つブラック・サンは影響力が及ばぬ場所は無いとまで言われていた。
恐らくその規模はジェダイを有に超しているだろう。
当然今のジュディシアル・フォースも。
単純な戦力では共和国以上かもしれないというのが多くの者の見解であった。
「“アーガニル”殿これをご覧ください」
サイボーグ指揮官のアーガニルはブラック・サンに客将として招き入れられた。
アーガニルはアーカニアン革命において製造されたサイボーグの一体だ。
今ゼファントが追っているサイボーグの“
彼は革命において多くの同胞と共に自治領主達に立ち向かった。
しかしジュディシアル・フォースやジェダイの連合軍により革命は失敗した。
多くの同胞を失った。
生き残った同胞達共に彼はかの地域を離れた。
そのほとんどは傭兵など様々な仕事をこなしアーガニルは現在ブラック・サンの客将として一役を買っている。
「これは…なるほどセルネアンは既に息絶えたも同然と思っていたが…」
アーガニルがニヤリと笑う。
戦いへの喜びの笑みだ。
「今すぐ私の艦隊を出してくれ行き先は」
「ミッド・リム、セルネアン艦隊ですね?わかりました」
優秀な監視兼副官のワルフォイはすぐに艦隊を手配した。
かつての宿敵を打ち倒すために。
見物戦闘
「失礼します」
ガコン少佐が入室する。
綺麗なデスクの上には軍帽といくつかの勲章、そしてコンソールが置かれていた。
椅子に座ったジュディシアルの将校が振り向く。
「エヴァックス参謀、お呼びでしょうか?」
彼こそ戦術研究課を含めた様々なジュディシアルの指揮官であるカール・エヴァックス中将だ。
ガコン少佐の上官である彼は単刀直入に話を聞いた。
「でゼファント大尉は上手いことやっているかね?」
「はい、何分今のセルネアン准将とは相性バッチリですよ…色んな意味で」
ガコン少佐が苦笑を浮かべる。
だがすぐに苦笑はなくなり重いため息に変わった。
「だろうな…まあ今のセルネアンには例のサイボーグは討伐出来なくともゼファント大尉なら見込みはある」
「しかし本当に彼で大丈夫なのでしょうか?万が一白兵戦になった時…」
「あの艦隊にはコマンドー隊もいる、何とかなるだろう」
エヴァックス中将は指を組み答える。
数十年後現れる彼の子孫と同じくエヴァックス参謀は冷静そのものだ。
「問題は奴のバックには明らかにブラック・サンがいる事だ…」
「ええ…気をつけなければ」
「大戦争に繋がりかねん…」
「そうなった場合今のジュディシアル・フォースや他の保安軍には対処できるほどの力は…」
エヴァックス参謀は頷いた。
ブラック・サン単独ならともかくそれに乗じて共和国に敵対する惑星が現れてもおかしくない。
それが鼠算のように増え続ければ共和国が対抗するのはほぼ不可能だ。
正規の保安組織が犯罪者グループに怯えるなどおかしな話ではるがこれが現実だ。
この数千年間軍隊を持たず己を堕落させた共和国の姿なのだ。
そんな共和国を守る彼らが一番共和国の腐敗を痛感している。
誰も、自分達でさえも代わろうとしなかった罰なのだろうか。
腐敗の現状と己の無力さは彼らに大きくのしかかった。
自分たちでは変える事の出来ないこの国の弱さを彼らは感じ取っていた。
ハイパースペース。
それはこの銀河系を旅する上で最も必要なシステムや技術のうちの一つだ。
これがなければ星系から星系の移動すら難しいだろう。
数隻のフリゲート艦とコルベット艦がこの青白い空間を進む。
艦隊を指揮するアーガニルはワルフォイと共にサバックで時間を潰していた。
「ワルフォイ、例のやつちゃんと渡しといたか?」
「海賊の連中涙浮かべて『これで俺たちもアイツらに復讐できる』とか抜かしていましたよ」
ワルフォイが鼻で笑う。
確かにそんな光景他者から見たらお笑いだろう。
アーガニルも嘲笑いカードを切る。
「まあいい“余興”にはなるだろう、この退屈な時間も少しは紛れる」
サイボーグである彼はまだ身体の“繋ぎ目”の調子が悪いらしく時折腕を動かしたり掻きむしったりする。
アーガニル曰く「無性に神経回路を掻きたくなる」との事だった。
ワルフォイも最初は気味悪がって見ていたが今ではもう見慣れた光景だ。
彼はテーブルのスイッチを押しホログラムを出現させた。
「どうせなら生で見ましょう」
事前にハックした海賊船の一隻のカメラがこの艦と繋がる。
「そうだな、セルネアンのお手並み拝見と行こうか」
「友軍艦との通信、繋がりました!」
ブリッジの通信士官が大声で報告する。
ゼファントとセルネアン准将は振り返り士官に近づいた。
数時間ほど前この宙域で友軍が交戦中という報告のみ残して通信が途絶えたのだ。
ゼファントは何かの罠ではないかと危惧したがセルネアン准将は友軍を救出する為すぐさま出撃した。
そして今現在友軍艦隊と通信がつながったのだが…
『こちら第12機動部隊…我が艦隊は現在敵海賊船団と戦闘中…状況は極めて不利…救援を求む…』
機動部隊の生き残りから救援を求める声が聞こえた。
敵部隊と交戦し相当不利だというのだ。
途切れ途切れの通信は機動部隊の危機的状況を表していた。
「そちらの状況を詳しく教えろ」
『現在…旗艦が撃沈し残った艦にもかなりの被害が…』
「今すぐ救援に駆けつけるからな!もう少しの辛抱だ!」
セルネアン准将が機動部隊を元気付ける。
「第12機動部隊を確認!映像出します!!」
大モニターに戦闘中の第12機動部隊の映像が映し出される。
報告通り部隊は相当損耗しており壊滅寸前だ。
「全艦防御陣のまま敵船団に攻撃を!!」
「お待ちください」
冷静なゼファントが制止する。
彼はこの状況を見極めある一つのことを進言した。
あまり口に出したくはないがこれも仕事だ。
「これは罠かもしれません、友軍救助に駆けつけた我々を一挙に殲滅するという罠かも」
「だが目の前の味方をほっとくわけにはいかん!!もう誰も…私の目の前では…」
セルネアン准将が声を荒げ込み上げる何かを必死に抑え込む。
まるで何か思い出したくないものを思い出している感じだ。
部下達も目線を落とし心情を察している。
そこにある理由はわからないが仲間を助けたい気持ちはゼファントも一緒だ。
その願いを叶えるまでだ。
それが今ゼファントに与えられ仕事なのだから。
「ならばこちらのアクラメイター級を一隻送り機動部隊を救助しつつ敵船団を撃破しましょう」
「ゼファント大尉…!」
「私だって味方は見捨てたくはありませんよ」
心ならの本心が伝わったのかセルネアン准将は力強く頷いた。
海賊の団長はブリッジから新たな獲物を確認する。
抜け抜けとこちらの目論み通り動きよって。
眼前の憎き宿敵と同じくズタボロにしてやろう。
そんな性格の悪いセリフを心の中で吐きながらニヤリとベタついた笑みを浮かべた。
敵は目の前の味方に気を取られまだこちらには気づいていない。
ならば下さった戦術通りにするまで。
予見通り他の敵も一挙に殲滅できると聞いてはいたがまさか本当に来るとは。
彼らがくれた戦い方は本物だ。
「よし全艦攻撃開始!!」
フリゲートやコルベット、武装貨物船がエンジンを点火し小惑星帯から抜け出す。
ジリジリと距離を詰め遂に射程圏内まで辿り着いた。
敵はまだこちらに何もしてこない。
「撃って撃って撃ちまくれ!!」
海賊船団が艦砲射撃を開始した。
赤いレーザーが星が瞬く宇宙を横断する。
それなりに正確な海賊の射撃はアクラメイター級に何発かレーザーを当てた。
しかし分厚い偏向シールドを突破する事は出来なかった。
何発も何発も重ねて攻撃を加えるが大したダメージにはならない。
だが不思議な事にジュディシアル艦隊の反撃は海賊船団でも耐えられる程の攻撃しかしなかった。
「一体どういうことだ…?まあいい、このまま敵艦隊に突っ込むぞ!!」
団長の出した命令通り比較的防御力と火力の高いフリゲートが前方に出てコルベット艦がそれを支援する。
完全に突撃隊形となった海賊船団は攻撃の手を緩めず前進する。
「ここまでやっても連中はこれだけしか反撃してこないのか?」
「そのようですな…」
操舵手が不思議そうな表情でジュディシアル艦隊を見つめた。
団長も同じ顔だ。
「…ともかく…このまま敵艦隊を分断する!!」
気を取り直し団長が命令を出す。
海賊船団はそのまま真っ直ぐジュディシアル艦隊に突撃した。
まだ一隻も撃破出来ていないがジュディシアル艦隊は二方向に分かれ始めた。
かなり不自然な形だが団長たちは何も気づいてはいない。
順調にジュディシアル艦隊は分断され見事に真っ二つになった。
「よっし!!各個撃破を!」
僚艦が突如爆発しコルベット艦が轟沈した。
大爆発に巻き込まれコルベット艦が破片ひとつ残らず破壊された。
撃沈する艦は左舷のコルベット艦だけではない。
右舷のフリゲートやコルベットも同様に爆発を起こし鉄屑に変わる。
「そんな…罠にはまっていたのか…」
団長が狼狽える頃には彼の乗艦であるフリゲートも被弾していた。
大きな振動が団長の乗艦を襲った。
もう抜け出せない。
「我が船団の損耗率が!!」
「防御し応戦を…ガウガァ!!」
ブリッジはアクラメイター級のレーザー砲により焼け落ちてしまった。
どこか人の形をしたブリッジの破片が宇宙空間に投げ出された。
「貴官の機能停止を確認しました」
士官が冷静に戦況を報告する。
四隻いたフリゲート艦はすでに大半が沈み行動不能になっていた。
「なるほど救援すると見せかけて敵艦隊を引き付け挟み撃ちにする戦法か」
セルネアン准将は鋭い観察眼で戦術を読み取った。
ゼファントは頷き戦術を説明する。
「敵がさほど優秀ではないので偽装や小細工を必要としないので楽でしたよ。アクラメイターを救援に出しておいたので妙な戦力の偏りもありませんでしたし」
「よくやってくれたゼファント大尉」
「准将こそ、私が指揮官であればあの機動部隊は見捨てていたかも知れません」
准将が微笑を溢す。
しかしそこに哀愁が含まれているように感じるのはゼファントの感受性が豊かなだけなのだろうか。
彼には見当もつかなかった。
アーガニルは全滅する海賊船団を見て高らかに笑った。
ドロイドに命じてグラスにワインを注がせ紅く色めくワインを回した。
彼は完全に人体の部分が多かったりする為飲み物や食べ物も食べられた。
「いやぁ見事だなぁ、まさか殲滅してしまうとは…」
「想定以上ですな…それに損害も低い…」
ワルフォイは少々困惑している。
額には冷や汗が垂れ下がっていた。
コルベットかクルーザーの一隻は道連れにするかと思ったがまさか敵に傷一つ与えられないとは。
アーガニルはワインで喉を潤すと彼を諭す。
「それはそうだ、セルネアンだってあの程度なら損耗率0で突破できる…そして」
アーガニルがニヤリと笑いホログラムを睨みつける。
「あの戦術は“
アーガニルは正確に戦術の立案者を予測し喜びで体がゾワゾワと湧き上がった。
ワイングラスを回し次なる戦いを想像し再び笑みを浮かべる。
「同胞よ私はつくづく思う…生きていて良かった…できればお前達も共にいて欲しかった」
アーガニルは亡き友や兄弟に語りかける。
彼は心底思った。
今は亡きサイボーグの彼らと共にあの艦隊と戦えたらどんなに幸せだっただろうか。
きっと凄まじい戦いになり最高の勝利を手にしていただろう。
「さあ始めよう、同胞の仇討ちと復讐戦を、そして“
アーガニルは目を輝かせていた。
ワルフォイも己の肩書きを忘れ共に笑声を立てる。
始まるのだ。
敗残兵の。
亡霊の。
生き残りの。
たった一人の。
忘れ形見の。
新たな革命が。
それはもう一つの世界の歴史に埋れた新たな革命であった。
つづく
やっと戦いだよ(ニンマリ)