Fleet Admiral   作:Eitoku Inobe

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初対戦

銀河の裏

「それで君が現在の指揮官かね?」

 

セルネアン准将はモニターに映る若き士官に尋ねた。

 

『はい…前指揮官のタス中佐が戦死した為代わりに私が指揮を…“シェイツ・キーリング”中尉であります…』

 

苛烈な戦闘を示すかのようにキーリング中尉自身も負傷していた。

 

片目を追い隠すほどの包帯が巻かれ敬礼するだけで顔を顰めていた。

 

セルネアン准将とゼファントも同様に敬礼する。

 

「他の将校は…どうしたのだ?」

 

キーリング中尉は目線を落とした。

 

予想は半ばついてはいる。

 

すでに第12機動部隊の戦力は半分以下まで低下しており艦内も負傷者だらけだった。

 

ほとんど壊滅状態と言っても過言ではないだろう。

 

それでも聞かなければならなかった。

 

『ほとんどの将校は重傷で動けない状態です。その為に動ける中で最高階級の私が指揮を取っております』

 

死んではいないようではあるが重傷者が大勢いるのは間違いないようだ。

 

早めに手当てしなければ死んでしまう者もいるかも知れない。

 

「重傷者は今のうちにこちらの艦へ、多少はバクタ・タンクなどもありますから」

 

『助かります…全艦の指揮権をセルネアン准将に譲渡いたします。若輩の私より閣下が指揮を取るのが一番でしょう』

 

「わかった…貴官もゆっくり休みたまえ。よくやってくれた」

 

『ご好意に感謝します』

 

ホログラムが途切れた。

 

2人は現在の状況を整理する為戦術用のホログラムを起動した。

 

デフォルメされたセルネアン艦隊と新たに加わった第12機動部隊の艦が移されている。

 

「あの艦隊はゴザンティ級クルーザーとCR90コルベットで構成されていました」

 

三隻のCR90と六隻のゴザンティ級が映し出される。

 

しかしそのうちの何個が消えてしまった。

 

消してしまったと言うより状況を整理する為にゼファントが意図的に消したのだ。

 

本来は敵の攻撃を受けてやられてしまったのだが。

 

「すでに半数以上が撃沈しゴザンティ級一隻と中破したCR90が一隻、同様に小破したCR90が一隻のみです。もはや機動艦隊と呼べる代物ではありません」

 

生き残った三隻もほとんどが損傷しておりこれ以上の戦闘は不可能に近い。

 

艦内には重傷者がほとんどで残った乗組員とドロイド達が辛うじて自動操縦システムと一緒に動かしている状態だった。

 

「…旗艦クラスのCR90はどうだったのかね?」

 

セルネアン准将はホログラムを見つめながら少し重たい面持ちで彼に尋ねた。

 

この艦隊の中にいないと言うことが全てを物語っているが。

 

「部隊長のタス中佐が部下を脱出させた後たった一人で盾となり後退の時間を稼いだとか」

 

セルネアン准将が悲しみを堪える。

 

ゼファントも少し心苦しい気持ちになる。

 

中佐は指揮官として務めを果たし戦死された。

 

敵は何必ずと2人はどこか固く誓い合っていた。

 

「我が艦隊の損耗率はほぼないですが今後敵の攻撃がないとは言い切れません」

 

ブリッジの外には無傷のアクラメイター級が宇宙を進んでいる。

 

それでも主力艦隊クラスの攻撃を受ければどうなるか分からない。

 

幸い周辺には海賊しかいないとのことだが。

 

「早めに基地に立ち寄ったほうがいいな」

 

ゼファントが頷く。

 

「ですが一戦ほど交える事は考慮しておいたほうがいいでしょう」

 

「うむ…艦隊を防御陣に!第二種戦闘配置のまま攻撃を警戒せよ」

 

セルネアン准将の命令で艦隊が再編される。

 

各艦の乗組員達にも少しずつだが緊張が戻り始めた。

 

いつ敵が来てもおかしくないと。

 

だがこの様子を嘲笑うかのように密かに見つめている者がいた。

 

アーガニルとワルフォイだ。

 

連中はセルネアン准将との戦いを望んでいる。

 

2人が率いる艦隊はそう遠くない所まで来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

惑星ハンバリンの駐留艦隊は現在ある任務の為一部の艦隊が同じくミッド・リムに来ていた。

 

アクラメイター級やドレッドノート級といった強力な艦をいくつも従え宇宙空間を悠々と航行している。

 

他にもジュディシアル・フォースの艦隊や周辺のミッド・リムの惑星防衛軍の艦船も垣間見えた。

 

今ミッド・リムの急速な治安悪化は元老院でも問題になっている。

 

まあ元老院では問題になるだけで大した議論は交わされていないが。

 

しかしジュディシアル・フォースや惑星防衛軍のような組織は黙っている訳にはいかない。

 

人々を守り治安を維持する義務がある。

 

治安を乱す者達を征伐する必要があった。

 

その為各地の艦隊がミッド・リムに集結しているのだ。

 

「全く…たまには家でゆっくり執務に励みたい所だな」

 

ハンバリン、ジュディシアル・フォース連合艦隊指揮官であるゼントはそう愚痴をこぼした。

 

副官のウォルス中佐は持ってきた飲み物を彼のデスクに置き微笑を浮かべる。

 

するとウォルス中佐はふと疑問を投げかけた。

 

「ですがなぜミッド・リムなんでしょうか?確かにアウター・リムに近い領域ですが…」

 

「さあな、大方アウター・リムから流れて来たんだろう。まあここが潰れても他の海賊退治にいかないいけないがな」

 

「ええ…女海賊カナも倒されたとはいえまだ海賊は多いですからね…ほんと厄介な連中ですよ」

 

愚痴を溢すウォルス中佐にゼントも賛同した。

 

彼らがいなければジュディシアル・フォースと防衛軍での勤務ももう少し楽だろうに。

 

ゼントがコップに手を付け少し考えた。

 

「ああ…だがかと言って放置しておけば辺境の保安軍や惑星防衛軍がかなり痛手を被るだろう。そうなる前に潰さなければならない」

 

「しかし海賊の襲撃は相当厄介ですよ?それでも仰る通りなのですが」

 

今まで何度も海賊と戦ってきたウォルス中佐だからこその発言だ。

 

狡賢く時に強力な彼らを討伐するのは中々に難しい。

 

後一歩のところで逃げられたりしたら溜まったものではない。

 

「連中の対処方法はもう地道な方法しかない、それでもあともう一押しだ」

 

ゼントが窓から艦隊を見つめる。

 

今のこの艦隊ではダメだと彼は思った。

 

まだまだ銀河系を守っていくには力不足だ。

 

アウター・リムに多少手を出せるか出せないか程度のこの戦力ではまだ足りない。

 

もっと力がなければ銀河の全てを守れない。

 

「ひとまず今はこの戦いに集中せねばな」

 

「ええ」

 

ゼントが話題を逸らした。

しかし彼の頭にはある一つの確信があった。

 

必ず共和国は我が一族の力で守り切ってみせると。

 

それが開祖クイエムから与えられた使命だとゼントは感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

惑星コルサント。

 

この煌びやかな首都惑星にも当然闇はある。

 

何層も何層も重ねて造られたこの首都は下層に行けば行くほど犯罪者やお尋ね者の巣窟となっている。

 

これが闇だ。

 

光が大きければ大きいほど闇もまた深くなる。

 

そして銀河は闇だらけだ。

 

光が届かない影のところはどこにでもある。

 

この“アンダーワールド”のように。

 

「ミッド・リムは…遅かれ早かれ一掃されるだろう、その間に戦力を集めなければな」

 

ほぼギャングに近しいボスがブランデーを煽り邪悪な笑みを浮かべる。

 

「だがその間に艦隊が来る。そうすれば我々の戦いが始まる」

 

ボスは戦いの到来を喜んでいる気がした。

 

「その為には連中を、ジュディシアルを撹乱しなくては」

 

「共和国はしばらくの間弱ってもらわなければなりませんな」

 

他の幹部達も賛同する。

 

「その通り、さらに弱く怯えてもらわなければ我々もやり辛い」

 

ブランデーのコップを回す。

 

薄暗い部屋の中でもブランデーの煌めく黄金色だけは輝いている。

 

それがたまらなく不気味だ。

 

そしてボスが手招きする。

 

「撹乱は頼んだぞ“()()()()”」

 

彼女“フィーナ・リースレイ”は静かに頷く。

 

笑みひとつなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙空間を長い間旅するというのは精神的にも肉体的にも疲れるものだ。

 

永遠に続く同じ風景。

 

外を見ても船の中も全く代わり映えしない。

 

船が壊れぬよう整備を怠ってはならない為常に肉体労働も必要だ。

 

こんな状況では船よりも心が壊れてしまいそうだが。

 

宇宙旅行というのは一見楽しそうで実際は辛く苦しい。

 

しかも彼らの場合は旅行では味わえないいつ敵の襲撃が来るか分からないという不安感にも襲われることとなる。

 

本当に死と隣り合わせの職業だ。

 

しかし彼らはどんな状況で諦めず職務を全うする。

 

それが彼らの魂なのだ。

 

ジュディシアル・フォースという準軍事組織においてもその魂は健在であった。

 

「ゼファント大尉、ゴザンティ級の取り付け完了しました」

 

「ご苦労様、今のうちに休んでおくよう言ってくれ」

 

「はい、しかし…本当にいいのですか?」

 

技術班を率いる少尉が首を傾げながら言った。

 

「ひとまず被弾させなければ大丈夫、それに敵襲が来ない限りあれは使わないつもりなので」

 

「なるほど、わかりました」

 

技術少尉が敬礼しその場を後にした。

 

ゼファントはタブレットを操作し再び戦術を確認する。

 

すると技術少尉の代わりにルファン少尉が近づいてきた。

 

どこか心配そうな顔をしていた。

 

「大尉本当に赦しはもらってるんですか…?下手するとセルネアン准将はともかく他の将校に怒られますよ?」

 

ゼファントはルファン少尉の肩を優しく叩く。

 

「心配しないで、ちゃんと許可は取ってありますしその時はその時で適当な言い訳見繕いますよ」

 

「ほんと心配になりますよ…」

 

ルファン少尉はため息を吐く。

 

2人はブリッジに戻ったセルネアン准将に報告した。

 

「艦隊の再編成完了いたしました」

 

「うむ、戦闘に備え諸君らも休みたまえ」

 

セルネアン准将が部下の敬礼を解かせる。

 

すると艦内に警報が鳴り響いた。

 

敵か味方かは不明だが状況はゼファント達を休ませてはくれないようだ。

 

「ハイパースペースより艦影多数接近!」

 

独特な警報音が彼らの緊張を膨れ上がらせる。

 

赤いランプが点滅し艦内中の士官や兵士達が慌ただしく持ち場に向かった。

 

ブリッジの士官達も慌ただしく調査や作業を始める。

 

「全艦戦闘配置!密集隊形!!」

 

セルネアン准将が全部隊に命令を出出した。

 

それから数十秒も立たず静かな宇宙から数十隻の船が出現する。

 

現れた敵艦隊は一斉に砲撃をしレーザーが宇宙を舞う。

 

だが事前に展開されていた偏向シールドにより全弾が防がれ爆発の光は起こらなかった。

 

「反撃しつつ全速後退!ひとまず敵を撒きましょう」

 

「うむ、防御の装甲強化艦を前へ!コルベットやクルーザーで対空防御の穴を埋めろ!」

 

陣形が現在の防衛体制を主軸に編成され敵艦隊に反撃の砲火を浴びせ始めた。

 

すると敵艦から通信が繋がりモニターに顔が浮かび上がる。

 

士官の1人が「何者かにモニターをハッキングされました!」と報告していたがセルネアン准将の耳には届いていなかった。

 

『久しぶりだな、セルネアン』

 

セルネアン准将がハッとする。

 

まるで見てはいけないものを、見たくはないものを見てしまったように。

 

「お前が…お前が生きていたのか……?いやそんな筈は…」

 

モニターの男がニヤリと笑う。

 

だが男だとは声でしか判別出来ず見た目では到底性別や種族などは判別が付かなかった。

 

様々な生き物やドロイドのパーツが継ぎ接ぎに繋ぎ止められており一言で言えば醜い姿だった。

 

だがこの人物の姿を見て明らかにセルネアン准将は動揺している。

 

そんな彼にモニターの男は続ける。

 

『同胞達の為お前を討ち取りに来た…』

 

男の笑みは止まらない。

 

まるでこの時を待ち望んでいたかのようだ。

 

『そこのお前、名前はなんという?』

 

男がゼファントを指さす。

 

彼は臆さず答える。

 

「ゼファント・ヴァント大尉だ、代わりに名前くらいは教えてもらいたいものだな」

 

『いいだろうヴァントの子倅よ、私はアーガニル、アーカニアン革命で生まれし戦士だ』

 

「ほう、どうやら見つけたみたいだな」

 

ゼファント同じようにニヤリと笑う。

 

奴こそがガコン少佐の言っていた敵でミッド・リムの治安悪化の要因だ。

 

セルネアン准将はまだ硬直したようだがゼファントは代わりにアーガニルに吐き捨てる。

 

これはこちらからの遅い宣戦布告だ。

 

「逆にお前を共和国の刑務所に引き渡しといてやる。裁判を受けるのは楽しみに待っていろ」

 

『面白い、では始めようか』

 

それは戦いの合図でもありこの一連の事件の始まりでもあった。

 

 

 

撤退

 

ある一人の政治家が誕生しようとしていた。

 

いやすでに“()()()()()()”と言う方が相応しいだろう。

 

惑星ナブー。

 

この緑に溢れた美しい星に今銀河の歴史に名を残すある男が演説をしていた。

 

まだ我々の知る姿よりも若く聡明な彼の活力は凄まじい。

 

かの世界。

 

こことは違うもう一つの本当の世界では彼は“暗黒卿(シス)”であり皇帝であった。

 

だがこの世界にはそんな面影が一切ない。

 

彼はナブーを愛しこの銀河系を愛し変えたいと願った。

 

議員を目指したのもそのためだ。

 

この広く未だ悲しみが残る銀河系に少しでも手を伸ばしたいから。

 

彼はただの善人だった。

 

誰が彼をただの善人にせよと願ったのだろうか。

 

本当に誰かが願って生まれたものなのだろうか。

 

そんなことは誰も知らない。

 

ただカリスマのある善良な心を持った有能な政治家がナブーにいるだけであった。

 

「私が再びナブーの代表議員になれた事誇りに思います!必ずやナブーの為、全銀河の為に全力を尽くすつもりでいます!」

 

男が演説を終えると拍手が鳴り響く。

 

大切な市民一人一人が自分を応援してくれている。

 

彼はそれに応えたいと思った。

 

自分のこの議員という肩書きはここにいる一人一人の市民が己の意思で選んだものだ。

 

彼らの期待には応えなければならない。

 

「今この瞬間にも我々の故郷は、ミッド・リムは危険に晒され保安軍が命をかけて戦いに赴こうとしている!ならば私も戦う事を誓います!」

 

だが彼の主戦場は場所が違った。

 

すぐ命が危険になる場所ではないが実際の戦場よりも単純ではなかった。

 

「政界で!この民主主義の国で私は与えられた想いに応え願いを果たしていこうと思います!!」

 

彼-シーヴ・パルパティーン-は人々のために立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵は完全に逃げ腰でどこかへ後退しようとしています」

 

「追えるだけ追え、ひとまずは小手調というところだ」

 

アーガニルは報告を受けそう命令を出した。

 

旗艦クラスの重クルーザーを一隻、フリゲート六隻、コルベット十二隻の艦隊は着々と逃げるジュディシアル艦隊の距離を詰めていた。

 

他の小規模な海賊やギャングとは違いブラック・サン直属の艦隊である為火力も桁違いだ。

 

とはいえ軍艦のスペックで言えば向こうのほうが上だ。

 

数や奇襲で若干優位に立っていても犠牲を覚悟で戦況を切り崩そうと思えばすぐに出来る。

 

しかしどうしてなかなか。

 

見事に距離を取り与えられるダメージも少ない。

 

セルネアンにあのゼファントと名乗った青年の指揮は見事だ。

 

セルネアンのやり方ではない。

 

何度か戦った事のあるアーガニルにはよく分かっていた。

 

「コルベット艦を左右に展開させ敵を包囲せよ」

 

「承知しましたコルベットを両翼に展開しフリゲートで防御を固めよ」

 

ワルフォイが彼の命令に少し付け加えた。

 

「わかっているではないか、ここで逃すにしても敵の手の内を一つくらいは見ておきたいからな」

 

アーガニルが軽く微笑む。

 

それは敵を追い詰めているときの強者の余裕であった。

 

すると友軍艦から通信が繋がる。

 

『アーガニル殿何をされているか!このまま突撃し敵を殲滅するのが先決ではないか!』

 

「オッフス船団長、ここで手を誤れば打撃を負い今後の戦いが不利になってしまう」

 

アーガニルは落ち着いた口調で彼を宥める。

 

だがこの手のタイプには逆効果だ。

 

無論それを分かった上で言っているのだが。

 

『俺はどうも貴様が姿含めて気に入らん!!悪いが手柄は全て俺が頂く!』

 

「ならば頼んだぞ」

 

『ふん!!』

 

通信が途切れオッフスの船団が敵艦隊に向け突撃する。

 

あの様子では呼び戻しても戻ってきそうにない。

 

「いいのですか?アレは必ず打撃を負って帰ってきますよ?」

 

「いいんだよ、むしろアレは捨て駒だ。敵がどう対処するか拝見しようじゃないか」

 

ワルフォイも悟り苦笑を浮かべる。

 

無能者も無能者なりに使いようがある。

 

これがサイボーク指揮官の言った言葉だ。

 

彼は今まさにその言葉を実行しようとしている。

 

多少の冷酷さを持って。

 

 

 

 

 

「准将、損傷艦の収容完了しました!」

 

「うむ、ハイパースペースへの座標計算急げ、今は防御と逃げる事だけに集中せよ!」

 

士官達や艦のコンピューターが安全なハイパースペースルートを計算し始める。

 

計算がなければ超新星のど真ん中を突っ切って全滅してしまう可能性すらある。

 

時間をかけても計算の正確さを求める理由はここにあった。

 

「このまま逃してくれるとありがたいんですがね」

 

「だが相手はあのアーガニルだ、油断はできん」

 

セルネアン准将の言う通り次に入ってきた報告は一瞬のうちにブリッジを緊張に追い込んだ。

 

「敵艦一部突撃してきます!!」

 

「まさかこの機を狙って…」

 

ルファン少尉が一気に絶望に満ちた表情に変わる。

 

士官達も不安に襲われていた。

 

たまたまタイミングが重なっただけだが命のかかるこの戦場ではそのたまたまでさえ危機を思わせるスパイスが含まれていた。

 

「大丈夫」

 

ゼファントがその一言で士官達の顔を上げる。

 

セルネアン准将も静かに頷く。

 

半ば事情を知っているようだった。

 

「あの特務のゴザンティ級を使えば多少は時間が稼げます」

 

ゼファントはブリッジの窪みに降りて技術士官達に命令を出した。

 

「ゴザンティに例のプログラムを起動させろ。ドロイド操縦と悟られない工夫をしてあるから大丈夫だ」

 

「了解…!」

 

士官がコンソールを操作しゴザンティ級のプログラムを起動した。

 

その間にも敵艦は徐々にジュディシアル艦隊との距離を縮めている。

 

当然ブラスター砲も放たれており数発が“特務艦”として改修されたゴザンティ級に被弾する。

 

エンジンが爆散し徐々にゴザンティ級の速度が落ちていった。

 

「ゴザンティ級、加速度減少中!」

 

エンジンの青い光が徐々に失われ艦隊から離れていく。

 

センサーが何かを捉えた。

 

「敵艦のトラクター・ビームに捕まりました!!」

 

「もっと距離を詰めてから起爆しろ、できる限り近い方がダメージも与えられる」

 

士官を落ち着かせる。

 

敵のフリゲートとゴザンティ級はもう目と鼻の先だ。

 

周囲のコルベット艦も近付いてくる。

 

もう少し要人深くしていればこんな事に巻き込まれずに済んだだろうに。

 

「よし起爆しろ」

 

士官から渡されたスイッチをゼファントが押す。

 

システムが起動しゴザンティ級に信号が送られた。

 

彼らの最期の狼煙となる。

 

艦内に積められた大量のプロトン魚雷や震盪ミサイルが起爆され大爆発が起こった。

 

これほど大規模な爆発ならいくらシールドを展開しようとも無意味だ。

 

仮に軍用艦であったとしても容易にシールドを破り艦には深刻なダメージが与えられるだろう。

 

さらに可燃材の代わりに入れられたライドニウム燃料に引火し爆発がさらに広がった。

 

コルベット艦やフリゲートが巻き込まれ次々と轟沈していく。

 

「ハイパースペースルートの座標計算完了!いつでも行けます!」

 

なんというタイミングの良さ。

 

詰まる事なくセルネアン准将は命令を出した。

 

「全艦はハイパースペースへ!」

 

爆発するゴザンティ級やコルベットを背にジュディシアル・フォースの全艦が宙域から脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オッフス船団長のフリゲートとコルベットを含めた三隻が撃沈、フリゲート一隻小破、コルベット一隻中破です」

 

ワルフォイが損害を単調に説明する。

 

損失で言えばかなりのもので受け入れ難いものであった。

 

オッフス戦団長はともかく三隻の船と破損した船の損失が受け入れ難いものだ。

 

にも関わらずアーガニルはその見事な撃退に思わず拍手を送った。

 

「いやぁ見事お見事、まさかあのクルーザーが爆弾だとは思わなかった」

 

「ええ、まるで特攻艦の影も有りませんでしたな」

 

見事な運用に2人は恐れ歓喜の笑みを浮かべる。

 

これほど優秀な敵がまだこの銀河にいたとは。

 

革命の道には常に強敵が立ち塞がる。

 

それでこそ無意味に死んでいった同胞達に顔向けできるということ。

 

“彼”もきっとそう思っているはずだ。

 

「さてと損傷艦を改修し連合艦隊(ゴミどもの寄せ集め)に合流するぞ」

 

ワルフォイが軽く頭を下げ艦隊が反転する。

 

相手はこの宙域のジュディシアル艦隊ほぼ全軍だ。

 

さてどんな戦いに…いや。

 

どんな“()()”になることやら。

 

彼の“命令(プロトコル)”が何度も呼びかける。

 

-自由を我らに-

 

そうだ。

 

自由の為に戦うのが私の使命だ。

 

血塗れの自由を掲げてやろうじゃないか。

 

聖戦で散った聖なる流血と愚かな反逆者の生き血で塗られたその自由の印を。

 

アーガニルの笑みには何処か哀れな何かが散りばめられていた。

 

 

 

 

 

 

艦隊は無事にハイパースペースに突入し順調にステーション基地へと退却の帰路についていた。

 

艦内では緊張が解け安堵した士官達がぐったりしている。

 

とは言えそうゆったりともしていられず殆どは通常通りの勤務に励んでいた。

 

一方のセルネアン准将もどこかへ行ってしまった。

 

ゼファントは報告とある事を今度こそ尋ねる為に彼を探した。

 

珍しく普段はいないパイオニアーの外壁近くで外を眺めていた。

 

「准将、報告です」

 

セルネアン准将が顔を上げる。

 

「我が艦隊は特務艦を除いて損害はなし、全艦無事です」

 

「それはよかった」

 

セルネアン准将は微笑みその場を離れようとした。

 

ゼファントが勇気を引き絞り声を上げる。

 

これを尋ねなければ何も始まらないと。

 

「あの敵と…いやあの“革命”で何があったんですか?」

 

准将の足が止まる。

 

「教えて頂かねば私は貴方を信頼できない。申し訳ないが貴方に命を預けられません」

 

ゼファントの鋭いその一言がセルネアン准将を突き刺す。

 

彼の覚悟が決まった。

 

遅かれ早かれ話ていたかもしれない物語だ。

 

話すには悲しすぎる小さな戦場の物語だが。

 

「そうか…なら話すとしようか…」

 

セルネアン准将が覚悟を決めしっかりとゼファントの目を見る。

 

彼と同じ目だ。

 

だがどこか疲れている表情だ。

 

だからこそセルネアン准将は彼に全てを任せられる。

 

話が始まった。

 

悲しきある一人の軍人の話が。

 

つづく

 




久しぶりのpixivからの移行っすね

とは言っても飽きててやってないだけなんですが()
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