Fleet Admiral   作:Eitoku Inobe

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第二次アーカニアン革命/前編

 

 

「なんだって!?連中は真っ直ぐコルサントに向かう!?」

 

アヴェック大尉はハイパースペースを航行するスフィルナ級の中で大声を上げた。

 

ゼファントは静かに頷きコピーを取ったコルベット艦の船長の日記を映し出した。

 

「『われわれは遂に旅立つ、共和国に殴り込みコロニーズを我が物とするのだ』…連中本気です…」

 

「どうせ奴らの事だ、妙なハイパースペースのルートを通るに違いない…やられた!ミッド・リムにいる敵はもう全部囮か!」

 

アヴェック大尉は毒付く。

 

鹵獲した敵艦もミッド・リム内で暴れ回る犯罪組織も全てアーガニルが目的を果たす為の捨て駒なのだ。

 

それを聞くと若干敵側に同情しなくもないが今はそんな感傷めいた事を考えている場合ではない。

 

現在犯罪組織討伐の為ミッド・リムのジュディシアル・フォースは勿論の事主要な惑星の主力艦隊までこの地に派遣されている。

 

当然コルサントの危機だからとミッド・リムでの戦闘を中止して我先にとコルサントに向かいこの地を離れる訳にはいかない。

 

それでもコルサントには本国防衛艦隊は存在しているが相手がアーガニルなら自ずと退ける可能性がある。

 

しかも連中はコルサント全土を攻撃する必要はないのだ。

 

ただ元老院一点に集中攻撃すれば彼らは価値を得る事が出来る。

 

敵ながら良く出来た作戦だ。

 

極限まで敵戦力を減らしある一点だけに集中攻撃を加える。

 

共和国全体から見たらアーガニルの艦隊は少数だが薄くなった重要な一点に攻撃を加えられれば耐え切れないだろう。

 

そして当世最高の頭脳と言っても過言ではない指揮官がそれを率いるのだ。

 

共和国は今見えない所で最大の危機に直面している。

 

このままではまずい、もうまずいとしか言いようがない。

 

「ジュディシアル全艦隊には連絡を入れておきましたが…」

 

スフィルナ級艦長のパイス中尉が二人に報告する。

 

「間に合わないでしょうね…先に話しておいた准将の艦隊を除いて」

 

二人はゼファントの顔を見る。

 

アヴェック大尉は一瞬だけ若き大尉に戦慄した。

 

相手の行動を予測していたというのか。

 

しかもほぼ正確に。

 

大尉には彼が未来でも見えているのではないかと言う疑問に襲われた。

 

「急いで我々も向かいましょう。セルネアン准将が防戦してくれているのならきっと敵艦隊は今ポイントで足を止めているはずです」

 

ゼファントは軽くポイントを刺した。

 

「この危機を乗り切るには全員の力が必要だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイパースペースから数十隻以上の艦が出現する。

 

全てアーガニルがこの時の為に拵えたものだ。

 

見込みのありそうな海賊や犯罪組織のメンバーを引き抜きさらにブラック・サンから増援も頼んである。

 

彼も旗艦を大型クルーザーから専用の重クルーザーに乗り換えている。

 

「さて、もうコア・ワールドは目前だ…最後の休憩を取ろうじゃないか」

 

間も無く補給を頼んでおいた海賊団が来るはずだ。

 

最もこの場合補給と言えば言葉的には間違っているだろう。

 

なにせこれから“()()()()”を彼らに通達するのだから。

 

ジュディシアル艦隊の司令部への攻撃。

 

連中が勝とうが負けてしまおうがどうでもいい。

 

ただジュディシアル艦隊を足止めてくれればそれでいいのだ。

 

大いなる野望の為には多少の犠牲は必要だ。

 

自分の命を捧げたサイボーグの兄弟達のためにも。

 

それにあの様なゴミ溜めの者いくら死のうが大した影響はない。

 

むしろ輝かしい革命の為の犠牲となれるのだ、随分と過ぎる名誉な事だろう。

 

ゴミどもにはある意味不相応だ。

 

そんな意地の悪い事を考えていると乗組員がアーガニルに報告した。

 

「提督、ファース海賊団の船を確認しました」

 

「通信を繋げ…いや」

 

アーガニルはサイボーグである為視力も当然通常の生命体の倍は良い。

 

その為見えるのだ。

 

遠方に見える船の爆発が。

 

「贈り物ならもっとしっかり届けて欲しいなぁ…セルネアン!」

 

敵将の名前を述べた瞬間11時の方向から青いレーザーが飛んできた。

 

「後方に敵艦多数!識別コードは例のセルネアン艦隊です!」

 

レーダー士官がそう述べる。

 

「敵艦から通信が届いています、旗艦です」

 

「繋いでくれ」

 

通信士官がパネルをタッチしモニターに敵将の顔を映す。

 

アーガニルは気味の悪い笑みを漏らす。

 

『こちらジュディシアル・フォースセルネアン准将である』

 

あの武将顔の男が彼らに呼び掛ける。

 

『直ちに降伏されたし、さすれば正当な裁判がお前達を適切に対処する』

 

アーガニルは愛れてさらに笑みを深くする。

 

全く軍人とは面白いものだ。

 

そんなこと言っても意味などないと知っているだろうに。

 

それともこれも時間稼ぎの足止めなのだろうか。

 

だとしたら早くしなければ。

 

時間は待ってはくれない。

 

「正規軍特有のくだらない定期文ありがとう、だが意外に早かったな」

 

彼は率直な感想を述べる。

 

『悪いが優秀な参謀が事前にお前の企みを看破していた、これ以上血は流させはせん!』

 

アーガニルは珍しく驚いていた。

 

まさかあの時気づいたのではなく既に予想していたとは。

 

それにセルネアン艦隊の展開力の素早さ。

 

少なからずルートを絞っていたと言う事だ。

 

なんと優秀な奴か。

 

きっとあの薄紫の小僧だろう。

 

予想以上の優秀さだ。

 

「まあいいさ、ここでお前を蹴散らしてあの日阻まれた革命を続行する」

 

『仇討ちとは言わん…ただ、もうこれ以上誰も死なせない為に!』

 

「『お前を倒す』」

 

その時二人の指揮官の声が重なった。

 

と同時に両者の宣戦布告の合図でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやらセルネアン艦隊がアーガニルとか言うあいつと戦闘が始まったらしいぞ」

 

特殊回線で連絡を取っていたアヴェック大尉が2人に伝える。

 

ゼファントは少々不安そうな表情を取っていた。

 

「准将は勝てるのか…?」

 

「五分五分…いや実際勝率は4割でしょうね…戦力的にも今の准将でも」

 

その判断はあまりに的を得ていた。

 

報告によればアーガニル艦隊は以前より艦艇数が増え旗艦も大型の重クルーザーに変化したそうだ。

 

セルネアン艦隊もアクラメイター級が一隻追加され准将の船も多少改修されたがそれでも怪しい。

 

「尤も両者の勝利条件は簡単です。アーガニルはセルネアン准将の艦隊を振り切ればいい、セルネアン准将は友軍艦隊到着まで耐え抜けばいい。それにセルネアン准将の艦隊は最悪、敵艦隊になるべく損害を与えれば良いのです。あとはコルサントの防衛艦隊に任せる事も出来ますし」

 

「だがアーガニルはともかく准将の艦隊が長い間耐え抜けるのか…?」

 

アヴェック大尉が不安を口にする。

 

「わかりません…とにかく我々も向かわないと」

 

「ああ…」

 

決意を新たにした瞬間技術班の班長がブリッジに入ってきた。

 

素早く敬礼しゼファントの元へ駆け寄る。

 

「大尉、例のトラップがハイパースペースに突入しました。今の所順調そのものです」

 

班長はゼファントに耳打ちする。

 

「そうか…最悪あれが切り札になるかもしれん…頼んだぞ」

 

「了解」

 

班長は静かに頷きブリッジを後にした。

 

アヴェック大尉は会話の断片は聞こえたが全体は理解できなかった。

 

ゼファントはブリッジの外を見つめる。

 

永遠と続く青い空間を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦隊同士の激しい砲撃戦は一見すると暗闇の宇宙に光が瞬き美しくも見える。

 

しかしそれは遠くから客観的に見た場合の話でありより近くで主観的に見れば美しいと言い表す余裕すらない。

 

現を抜かしていれば味方がやられ敗北という奈落の底へ叩き落とされる事となる。

 

逆に相手を打ち負かせば勝利という名の美酒に酔いしれ栄光に縋る事が出来る。

 

もっともセルネアン准将もアーガニルもそんな物には1ミリの興味もないが。

 

彼らにとって必要なのは名誉や勝利ではない。

 

ただ目的を達成する事だけなのだ。

 

「“クローティスⅡ”、“アムリスⅣ”が被弾!!」

 

「ヴィルフィーズから緊急通信です!」

 

『准将!やはりもう我々の戦力では持たない!ここは一時撤退を!』

 

「何を言うか!!我々が退けば奴らはコルサントへ直行するぞ!!」

 

セルネアン准将がアクラメイター級の“ヴィルフィーズ”の艦長に叱りつける。

 

「もう少し耐えるのだ!時期に友軍艦隊が到着する!!コルベット艦で機動戦を仕掛けろ!!」

 

既に殆どの艦が損傷を受けているがセルネアン准将はそれを分かった上で命令を飛ばす。

 

敵艦隊を引き付け一隻でも多く仕留める。

 

コルサントが堕ちてしまえばもう未来はないのだ。

 

なんとしてもそれは避けなければならない。

 

「アクラメイター級はできる限り大型艦を潰して指揮系統を鈍らせるんだ!」

 

准将の命令の下アクラメイター級の主砲が火を吹く。

 

流石正規軍の主砲だけあって威力は抜群だ。

 

正確な砲撃が敵の大型クルーザーやフリゲート艦にダメージを与える。

 

コルベット艦が守りに入ろうとするがそのコルベット艦も砲撃の的となった。

 

「このまま相手の足を止めろ!今のうちに小型艦は敵艦に取り付け!!」

 

艦に振動が走るがセルネアン准将はブリッジに仁王立ちのまま命令を出す。

 

CR90コルベットやカンセラー級が大型艦に取りつく。

 

「砲撃は全てこちらで引き付けろ!できる限り敵艦に近距離砲撃を浴びせかけるんだ!」

 

重レーザー砲の弾幕の厚みは時とともに増加した。

 

しかし敵も黙ってやられる訳が無い。

 

アーガニルはある一手を繰り出そうとしていた。

 

「…敵艦隊に変化あり!旗艦クラスと思われる艦に高熱源反応!!」

 

レーダー士官は微弱ながら示される反応を報告した。

 

セルネアン准将は士官の方を見つつ敵の一手を読み取ろうとした。

 

考えられる策は一つであり、その一手はセルネアン准将の力ではどうしようもなかった。

 

「全艦回避行動!!」

 

コルベットやクルーザーが旋回したがすでに遅かった。

 

アーガニルが乗艦とするバトル・シップから放たれた高エネルギーレーザーは放たれたと同時に広範囲に広がり周囲の艦に被害を及ぼした。

 

衝撃は少なからず旗艦パイオニアーにも広がった。

 

「…っ“ファスラッシュⅧ”、“ゲルガーⅠ”に被弾!“ヴィクシーⅦ”、“アスクルⅡ”中破!!」

 

一瞬のうちに艦隊の1/3が被弾し損害を被ってしまった。

 

なんと恐ろしい船なのだろうか。

 

しかし挫けている暇はない。

 

ここで踏ん張らなくては銀河全体に影響をもたらしてしまう。

 

「戦術を変更する!我が艦で敵の拡散砲を封じ込める!敵艦と一騎討ちをするのだ!!」

 

セルネアン准将の命令は少なからず乗組員達に覚悟を迫った。

 

しかしほとんどの乗組員はアーカニアン革命からの仲間達だ。

 

もう覚悟などとうの昔に出来ている。

 

皆笑みを浮かべ命令を待った。

 

「すまない…本艦はこれより前方の旗艦クラス撃破を敢行する!!艦隊の指揮権は“アレイスター”に!」

 

乗組員達が再び持ち場に着く。

 

「進め!」

 

パイオニアーのエンジンがより強く光りどの艦よりも早く進み始める。

 

当然敵艦隊は進撃を阻もうとレーザー砲を連射し始める。

 

だが鋼鉄と化したこの艦の足を止められる者はもう誰もいない。

 

放たれる重レーザー砲が敵艦を貫きパイオニアーの進路を切り開く。

 

この艦のあの時(アーカニアン革命)から性能はアップしている。

 

「全ミサイル、魚雷を装填!前方旗艦に向け一斉射の用意!!」

 

ミサイル、魚雷が装填されいつでも発射出来る体制になる。

 

目の前に敵が迫っているのにも関わらず前方のバトル・シップは一歩も動かない。

 

「撃て!!」

 

命令と共に放たれたミサイルと魚雷が宇宙を彩る。

 

数十年の時を経て運命の対決が再び始まりを見せていた。

 

両者の想いをぶつけて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ…うみが綺麗だ。

 

手で触る砂浜の感触がこの上なく気持ちいい。

 

とても幻想的な場所だ。

 

うみを見つめれば水面に二隻の船が浮かんでいた。

 

うみに映る星と共に船は水面上を浮かんでいる。

 

一つは“()()()()()()”。

 

もう一つは“()()()”。

 

一人の青年が私の前に立っていた。

 

やはり青年も彼も私に姿はよく似ている。

 

繋がりというべきなのだろうか。

 

もう行くのか。

 

「時々また来るよ」

 

わかった。

 

「私が駆けるべき場所は宇宙(うみ)じゃない、宇宙(そら)だから」

 

ああ、その通りだとも。

 

彼がうみを征く者なら君はそらを駆ける者だ。

 

超えてみせろ、二人で。

 

この私を。

 

超えた時も私はここで待っている。

 

ずっとな。

 

つづく




ちょい休憩させてもろて…()
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