鬼滅版トワイライト   作:クッキーマロン

13 / 77
雷鳴

 

目指していた場所に着くと、そこには広大な野原が広がっている。

 

杏はわたしの方に踊るように駆け寄ってきた。猛スピードで近づいてきてすぐそばで緩やかに止まると、「時間よ!」と宣言する。

 

その瞬間、上空で雷が鳴り響いて森を揺るがし、街の方へ落ちた。

 

「準備はいい?」

「頑張って!」

 

司が瞳を輝かせて聞いてきたので、それなりに熱っぽい口調で声をかけた。彼はニヤリと笑うと、わたしの髪を無造作に撫でて、野原の中心に走っていった。

 

「あっちに行きましょうか。」

 

武流さんの奥さん、恵美さんが歌うような優しい口調で誘った。

 

「恵美さんは、試合には出ないんですか?」

「そうなの、審判の方がいいのよ。みんながズルしないうに見張ってないと。」

「みんなよくズルをするってことですか?」

「それはもう、あの子たちの喧嘩ときたら!一度聞かせてあげたいくらい。」

「みんなのこと、愛してるんですね。」

 

それは側から見ていてよくわかった。

本当のお母さんみたいだったから。

 

「そうね、実の子供のように思ってるわ。母性本能が強いからかしら。わたしが子どもを亡くしたことは、司から聞いていて?」

「いえ…」

 

びっくりして、思わず小声になってしまった。人間だった時?それとも鬼になってから?

 

「初めての、たった一人の赤ちゃんを亡くしたのよ。生まれて数日で死んでしまった。かわいそうな息子。胸が潰れそうになった…それで断崖から身を投げたの。」

 

身を投げた…?でも…

 

「司からは転落したって、聞いてました…」

「あの子は優しいからそう言ったのね。司はわたしの新しい息子たちの中では長男にあたるの。でもある意味、あの子の方がわたしより‘’年上‘’なのよ。だから、あの子があなたと出会って本当に嬉しい。あまりに長いこと、あの子だけひとりぼっちだったから。孤独な姿を見ているのは辛かった…」

「いいんですか、その…わたしが全然、彼に相応しくなくても」

「そんなこと。あの子はあなたを求めてる。きっとうまくいきますよ。」

 

また雷が鳴り始めた。徹と純は金属バットで素振りをしている。

ボールを投げるのは杏で、最初に打つのは徹らしい。

 

杏は直立不動の姿勢をとった。忍者みたいな投球フォームだ。

徹が思いっきりバットを振り切ると、凄まじい衝撃音が雷鳴のように響き渡る。その瞬間、気がついた。これだから、雷が鳴らないと野球ができないんだ。

 

「ホームランですね。」

「まだわからないわよ。」

 

恵美さんは得意げに呟いた。

そういえば司の姿が見えない。

 

「アウト!」

 

恵美さんが澄んだ声で叫んだ。うそみたい。あの球を取った?

信じられない気持ちでいると、司が木立ての片隅から飛び出してきた。突き上げられた手にはボールが握られていた。

 

「徹は一番の強打者だけど、司は一番俊足なのよ。」

 

恵美さんが解説してくれた。

 

司は嬉しいのか、徹の方を向いてニヤニヤしている。それを見た徹は司にアッパーカットをかまそうとして、あっさりかわされる。

まるで本当の兄弟が戯れあってるみたい。

 

 

 

目の前では想像を絶するプレーが繰り広げられていった。ボールの速さにも、野原を駆け回るみんなの速さにもついていけない。

 

一試合終わると、司は興奮で生き生きしながらわたしの方に駆け寄ってきた。

 

「ご感想は?」

「これからわたしが普通の野球を見る気にならないことは確かね。」

 

それからも変わるがわるリードを奪いながら、みんな普通の草野球みたいに相手にヤジを飛ばして、時折恵美さんが静かにしなさいと注意する。雷はゴロゴロと鳴り続けていたけど、雨は降らなかった。杏の予言通りだ。

 

しかし次の瞬間、杏が大きく息をのんだ。司がパッと杏の方を見る。視線を交わした一種のうちに二人の間に何かやりとりがあった。どうしたんだとみんなが声をかける間もなく、司はもうわたしの隣に立っていた。

 

「どうしたの杏」

 

そう聞く恵美さんの口調は強張っている。

 

「わからなかった、こんなことになるなんて…」

「杏、どうしたんだ」

 

武流さんの威厳のある落ち着いた声で聞いた。

 

「試合をしている音を聞いたんだわ」

「時間の猶予はどれくらいある?」

「今連れ出したところでもう遅い。手遅れだ…」

 

7組の瞳がわたしを見ている。とてもまずい状況というのは嫌でもわかるけど、それ以上は何もわからない。

 

「髪を下ろして」

 

司が静かに、でもちょっとイライラしているような口調で言った。

わたしは大人しく結んでいた髪を解いた。

 

「無駄よ。それくらいじゃ匂いは誤魔化せないわ。」

 

そう言った声の主は百合だった。綺麗な鈴のような声だけど、口調に棘を感じる。

司はわかっていると言わんばかりに百合を睨みつける。

 

「澪、本当にすまない。馬鹿だった、無責任だったよ。君をこんな目に遭わせてしまうなんて…」

「あの、何がどうなって…」

 

わたしの疑問は解決されることはなく、‘’訪問者‘’が森の中から出てきた。

 

 





トワイライト読んだ時も思いましたが、なんで野球をやるのに雷が必要なのかは未だによくわかりません笑

吸血鬼は力が強いから、バットを振った時にものすごい音がするため、それをかき消すために必要、ということなんでしょうか。

まぁいいや笑
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。