鬼滅版トワイライト   作:クッキーマロン

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待機

 

わたしたちは一度司の屋敷に戻り、準備を整えていた。そこに、5匹の鴉がヘトヘトになって飛んできた。大きな風呂敷を持っている。

 

「何これ、わたしの服?」

「そうだ。服についた匂いで撹乱するんだ。蝶屋敷から持って来たかったけど、それは危険すぎる。だから鴉たちに頼んだんだ。」

 

司は早口で百合に指示を出した。

 

「澪を2階に連れて行って、服を交換してくれ」

 

すると百合は怒りと不信、そして不満を滲ませて、司を睨み返した。

 

「どうしてわたしなのよ?!その子はわたしにとってなんでもない、ただの厄介者よ!あなたが引っ張り込んできて、みんなに押し付けてる危険人物じゃないの」

 

悪意がこもった口調に、わたしはびくっと後ずさった。

 

「百合…」

 

徹はそう言って百合の肩に手を置いたけど、振り払われてしまった。

 

司がキレたら怖いのを知っているから、わたしは心配で注意深く様子を見守っていたけど、意外にも司は百合からすっと顔を逸らした。まるで百合が何も言わなかったか、その場にいないみたいに。

 

「恵美さん、いいかな」

「もちろんよ」

 

恵美さんはわたしを軽々と抱き抱えて、階段を駆け上がっていく。びっくりして、息を呑む暇もなかった。

 

「どうするんですか?」

「服についた匂いで相手を撹乱するの。長くは持たないけど、ここから出る時や、追跡するときに役立つかもしれないから。」

 

着替えている間に、みんなは準備を終えたらしい。1階に全員集合していた。不安げに百合に視線を走らせると、我慢がならないって顔で司を睨みつけている。

 

司はいつの間にかわたしの隣に現れると、力強い腕でわたしを抱きしめた。家族が見ているのも気づいていないみたいに、わたしの顔を引き寄せる。ほんの一瞬、彼のひんやりした唇がわたしのそれにしっかり押し付けられた。

 

両手でわたしの顔を包んだまま、燃えるような美しい瞳でじっとわたしの目をのぞきこんだ。無意識に涙が頬を流れ落ちる。これが会うの最後なんてことないよね、また会えるよね。そう声を出して言う前に、出発になってしまった。

 

最初は東城家のお屋敷に引きこもるんじゃないかと思ったけど、違った。

 

確かに東城家は刀鍛冶の里やお館様のお屋敷と同じレベルで厳重に隠されている。安全なことは間違いないのだが、万が一骸に見つかった場合、無惨の呪いのせいで、無惨にも東城家の場所がバレてしまう。

だから、人里に下りて、ありふれた宿に引き籠る方がいいということになった。

 

 

ふと視線を上げると、純と目が合った。わたしからは少し離れたところにいる。司の言いつけを守っているんだろう。

 

「そんなことないよ」

「…なんのこと?」

 

純はそっとわたしに言った。わたしはびっくりして声がうわずってしまった。

 

「君の今の気持ちが伝わってくるんだ。そんなことない。君にはこうするだけの価値がある。」

「そんなわけない…みんなの身に何かあったらどうするの。なんのためにもならないのに。」

「そんなことないよ」

 

純は優しく微笑んで繰り返した。不思議なことに、同意しそうになった。純は感情を操る能力がある。わたしにそう思わせているんだろう。

 

次の瞬間、杏はわたしに向かって両腕を上げた。

 

「抱き上げても構わない?」

「そうやって聞いてくれたの、あなたが初めてよ。」

 

わたしは思わず笑ってしまった。杏はほっそりした腕で、徹に負けないくらい軽々とわたしを抱き上げる。そして私たちは森へ、闇の中へ飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか寝てしまってたらしい。目を覚ますと、どこかの宿みたいだった。まだ頭はぼんやりしている。

 

着替えの服を探そうとした時、ドアをノックする音が聞こえた。

 

「入ってもいい?」

 

杏の声だ。

 

「もちろん、入って」

 

杏は部屋へ入ってくると、注意深くわたしを観察した。

 

「もう少し眠れそう?」

 

わたしは首を振る。それを見ると、杏は音も立てずに窓側へと歩み寄り、襖を閉めた。

 

「わたしたち、部屋にいなきゃいけないの。ずっと。」

「わかった。大丈夫?喉が渇いた?」

「わたしは大丈夫よ、純も。我慢できないほどじゃないから。食事を注文しておいた。居間に置いてあるから食べて。澪はわたしたちよりずっと頻繁に食事をしなきゃならないって、司に言われてるから。」

「彼から連絡があったの?」

「ううん。出発する前に聞いたの。」

 

杏は落胆するわたしの顔を見つめて、おずおずとわたしの手をとり、居間に連れていった。

 

わたしは何を口にしているかもわからないまま、もそもそと食べた。こんな状況で食欲なんてあるわけがない。

 

「杏、何があったの?」

 

2人が不自然なくらいじっとしているのが気になって聞いてみる。

 

「何もないわ。」

「でも、もう何かしら連絡があってもいい頃よね」

「報告することが何もないのよ。」

 

純が杏の隣に座る。いつもよりわたしとの距離を狭めている。

 

「心配事は何もない。ここにいる限り、絶対に安全だから。」

「それはわかってる。」

「ならどうしてそんなに怯えてるんだ?」

 

純は戸惑った様子で聞いてくる。

そうか・・・純はわたしの感情の大まかな流れは掴めても、その背後にある事情はわからないんだ。

 

「何かまずいことが起こったらどうするの、みんながバラバラになったり、誰かの身に何かあったら…わたしのせいでそんなことになったら、この先どうやって生きて行けばいいの。みんなわたしのために、危険を冒しちゃいけないのよ!」

「澪、もうよすんだ。」

 

純が割って入ってきた。言葉が猛スピードで飛び出してくるから、ついていくのが精一杯だ。

 

「君はまるっきり的外れなことで思い悩んでいるんだよ。現にぼくたちの誰一人、危険な目になんか遭っていないだろう?君はただでさえかなりの精神的ストレスを抱えてる。その上、全然必要のない心配なんてすることはないんだ。」

「そうよ。わたしたちがただ一つ恐れてるのは、あなたを死なせることだけだもの。」

 

杏も純に同意して言う。

わたしは納得できずに顔を顰めた。

 

「でも…なんで…?」

「司は長い間、ずっと一人ぼっちだった。そしてあなたを見つけた。司にとってそれがどれほど大きな意味があったのか、あなたにはわからないのね。わたしたちは長いこと一緒にいたからわかるの。司があなたを失うことになったら、この先100年、私たちの誰一人、彼とまともに顔を合わせられないわ。」

 

聞いているうちに、段々と罪悪感はやわらいでいったけど、周囲の感情を操れる純がそばにいると、それが自分の本当の気持ちだとは確信できなかった。

 

 

 

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