鬼滅版トワイライト   作:クッキーマロン

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仕切り直し

 

東城家は、お館様や刀鍛冶の里同様、厳重に隠されており、簡単には行くことができない。故に、彼にこちらから会いに行くことはまず不可能だ。

 

でも、わたしはどうしても直接聞きたかった。何が問題なのかって。何か直して欲しいところがあるなら、面と向かって言ってほしい。何もあんなに露骨に嫌そうにして、逃げなくたって…

 

それに直接聞けないと、自分のせいかもという疑念がしつこく湧き上がってくる。自分が他人にそこまで強い影響を与えられると思うなんてばかみたいだし、自信過剰もいいところだ。ありえない。でも、それが真相じゃないかと不安になってしまう。

 

わたしの挨拶に返事をせず、その理由も教えてくれないなんて、いくらなんでも酷いと思う。普段からあんな感じとか?

いや、鬼殺隊内で礼儀正しいことで有名なら、それはないだろう。

 

 

 

しかし、あれから1週間後のことだった。会う機会は訪れた。彼の方から、蝶屋敷に来たのだ。

 

鍛錬をしていると、縁側に問い詰めたいと思っている相手が視界に入ってきて、心底驚いた。

 

「澪、なに見てるの?」

 

話しかけてきたのは、蝶屋敷の看護他雑務担当の神崎アオイだ。

 

アオイも、一緒にいて楽だと思う相手の1人だ。

話していても深入りしてあれこれ聞いてきたりしないし、自分のやることをテキパキこなすのも尊敬している。

 

「司様があなたのことじっと見てるわよ。」

「怒ってるみたい?」

 

怖くて、直視することができない。

 

「いいえ。」

 

わたしの質問に戸惑ったような口調でアオイは答える。

 

「何か怒らせるようなことでもしたの?」

「初対面の時から、嫌われてるみたいなの。」

 

わたしは白状した。初対面の時を思い出すだけで、あの射抜くような瞳が蘇ってくる。

 

「ただ挨拶しただけなのに、我慢ならないって感じの顔をした後、どこかに行っちゃった。」

「そうなの?東城様は、誰のことも好いたり、嫌ったりしないのよ。鬼だから、人間と深く付き合ったらだめだと思っていらっしゃるのね。でも、まだあなたのことじっと見てる。」

「あっち見るのやめて。」

 

と言いつつ、見てしまう自分が嫌になる。

縁側に座っているだけで、あんなに絵になる存在ってある?まるで彫刻みたいだ。

 

無造作な赤銅色の髪、情熱的な鋭い灰色(時々金色や漆黒)の瞳。顔のパーツ1つ1つが恐ろしいくらいに整っている。

 

あんなに美形だったら、人生バラ色なんだろうな。

わたしみたいな、凡人の気持ちなんてわからないだろう。わかりっこない。

 

 

 

しばらくして鍛錬が終わったとわかると、彼が近づいてきた。

 

「やあ。」

 

穏やかで、心地よい声。視線を上げてぎょっとした。わたしに話しかけている。

 

目が眩むほど美しい顔は屈託がなく、非の打ち所がない唇に、かすかな微笑みが浮かんでいる。でも、その瞳にはまだ警戒の色が滲んでいた。

 

「ぼくは東城司だ。先週は無礼な真似をして申し訳ない。奏多澪さんですね。」

「あ、はい。お気になさらないでください。よろしくお願いします、東城様。」

「そんな堅苦しい呼び方しなくていいですよ。下の名前で呼んでください。」

「あ、ありがとう、ございます…」

 

何もかも、わたしの思い込みだったの?

今日の彼は文句なく礼儀正しい。わたしの今さっきまでの悩みはなんだったのだろう。

 

「入隊の経緯をお聞きしました。ご両親のこと、お気の毒に。」

「どうも。でも、もっと酷い目に遭った人もたくさんいますから。いつまでも落ち込んではいられません。」

 

話を聞いた限り、同期のみんなの方がもっと重い過去を持っている。

 

炭治郎は自分と妹1人以外の家族を殺され、生き残った禰 豆子ちゃんも鬼になった。善逸と伊之助は捨て子で、両親の愛情を知らない。カナヲは父親に虐待された挙句、捨てられた。玄弥はちゃんと話したことはないけど、しのぶ様曰く、風柱のお兄さんと軋轢があるみたいだし…

 

みんなに比べたらわたしなんて、と自分に言い聞かせてきた。でも、本当はそんなことはない。家族を思い出すと泣きたくなる。

 

そんな気持ちが顔に出ていたのか、彼は少し突っ込んで聞いてきた。

 

「あなたは、他人に見せないところでもっと辛い思いをしているのでは?」

 

図星をつかれた。5歳の子供みたいにあっかんべをしてやりたい衝動を抑え込んで、顔を顰める。

 

「まちがってはないでしょう?」

 

彼は満足げにつぶやいた。

そんな彼とは正反対に、わたしは顔を顰める。

 

「それがあなたになんの関係があるんですか。」

 

むしゃくしゃして、思わず言ってしまった。

彼は言い返されるのに慣れていないようで、びっくりしているようだった。

 

「なかなかいい質問だ。」

 

あんまり小声で呟いたから、独り言かと思った。そのまま黙っているので、それしか答えるつもりはないみたい。

 

「イラつかせてしまった?」

 

面白がっているみたいな口調で彼が言った。

 

「いえ、そういうわけでは。自分にイラつきます。わたしの考えていることって、すごくわかりやすいでしょう?みんなに"顔に書いてある"って言われるんです。」

 

昔からそうだ。表情にすぐ出てしまうから、みんなに「嘘つくのが下手すぎる」だの、「賭け事は絶対にしない方がいい」と言われる始末だ。

 

「そうですか?ぼくにはすごくわかりにくい。」

 

本気でそう思っているみたい。

 

「人の心を読むのがお得意なのですね。」

「いつもは。」

 

"いつもは"?じゃあ今は違うわけ?

 

そのあとは互いに何も言わず、沈黙に耐えられなくなったわたしは逃げることにした。

 

「すみません、これから任務がありまして。これで失礼致します。お話できてよかったです、司様。」

「こちらこそ。」

 

わたしは会釈をして、急いでその場を後にしようと背を向けた。

 

「澪さん。」

「はい。」

 

呼び止められてびっくりして振り向く。

 

「お気をつけて。御武運を。」

 

そう言うと、完璧な顔が微笑みを浮かべる。

 

「どうも、ありがとうございます…」

 

反則だ、あんな顔をするなんて。不覚だけど、見惚れてぼうっとしてしまう。きっと誰にでもあんな感じなんだ。そう自分に言い聞かせて、おそらく真っ赤になっているであろう自分の顔を元に戻すことに尽力する羽目になった。

 

 

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