澪が元十二鬼月、骸に襲われた後、緊急の柱合会議が招集された。
議題は、東城武流および司の対応についてだ。
東城家は鬼殺隊公認の鬼の一族とはいえ、決まりがある。
それは1人でも人間を襲った場合、全員斬首するというものだ。
今回、司は澪の血を飲んだ。しかしそれは骸に噛まれて鬼になりそうだったのを止めるためであり、欲望に負けたわけでも、襲ったわけでも断じてない。それはお付きの鎹鴉がしっかりと見ていた。
「よく来たね、わたしのかわいいこどもたち」
お館様の一声で、柱達は一瞬で整列し、静まった。
「さて、今回は元十二鬼月、骸を討伐したという報告が、東城武流と司から報告があった。これは実に素晴らしい功績だ。しかしその代償として、階級庚、奏多澪隊士が負傷した。骸に噛まれ、鬼になりそうだったところを司が止めた。傷口から混入した鬼の血、つまり毒素を取り除くためにね。これに関して、何かみんなの意見はあるかな。」
少し沈黙が流れたが、それを破ったのは胡蝶しのぶだった。
「よろしいでしょうか。」
「いいよしのぶ。君はこの中で澪のことを一番良く知っているからね。君の意見を聞かせてくれ」
柱の視線が、一気に彼女に集まる。
「私自身は今回のことに関して、特に問題はなかったと思っております。司さんがそうしなければ、澪は死ぬか鬼になっていたと思いますし、鬼になった彼女を粛正するなどごめんです。武流さんも含め、特に処罰等は必要ないと思います。」
それを聞いて、お館様は少し微笑んだ。
「ありがとう、しのぶ。他のみんなはどうかな。」
「僭越ながら一言よろしいですか」
「いいよ、実弥。」
次に声を上げたのは風柱、不死川実弥だった。
「わたしはそもそも、人間と鬼が親しくすること自体反対です。たとえその鬼が人を喰わずに生きていてもです。今回奏多澪が負傷したのも、東城家の人間と関わったことが原因。今後も付き合いを続けるなら今回と同様、もしくはそれ以上に危険な目に遭う可能性は高いでしょう。それを容認するというのですか。任務で負傷するのは鬼殺隊員としては日常茶飯事ですが、同じ負傷でも事情が違います。」
それを聞き、お館様は静かに頷く。
「そうだね、実弥。君の意見は正しい。もっともだ。でも、当事者の澪がそれを了承している以上、こちらとしては何も言えないんだ。そうだね、しのぶ?」
「はい。奏多澪はその、何と言いますか…かなり頑固でして。一度決めたら誰が何と言おうと考えを変えません。それはわたしや蝶屋敷の人間は嫌というほど思い知っております。柱はもちろん、お館様ですら、司さんと付き合うのをやめろと言っても耳を貸さないでしょう。」
しのぶがため息をつきながら言った。
説得できるなら、とっくにしている。
「意志が強いのはいいことだ!だが、鬼と深く付き合うのは考えものだな!」
「武流さんのことは尊敬に値するが、義理の息子の方は…まだ完全には信用できん。」
「自ら危険に身を投じるとは…」
煉獄が相変わらずの声量でハキハキと答え、伊黒と悲鳴嶼がつぶやく。
「まぁ、本人がいいならいいんじゃねェの?鬼と人間のカップルなんて派手なもんだ!」
「わたしも…澪ちゃんがそうしたいなら、何も言うことはありません。」
宇髄と甘露寺が言う。
「ぼくはどちらでも…関係ないので」
「特に異論はない。」
時透と冨岡はあまり興味がなさそうだ。
「みんなの意見はわかった。今日はとりあえず報告をしようと思って集まってもらったんだ。忙しいところありがとう。」
とりあえずそれで柱合会議は終わり、解散となった。
「あの、しのぶちゃん」
「あら、甘露寺さん。お疲れ様です。」
胡蝶しのぶは帰ろうとしたところを、甘露寺蜜摛に呼び止められた。
「あのね、澪ちゃんのことなんだけど…」
「澪ですか?」
「うん、あの、伝えてほしいの。わたしこれから任務ですぐ行かなきゃいけないから。相手が誰であろうと、人を好きになるのって、すごく素敵なことだわ。甘露寺蜜璃は、司さんと澪ちゃんのことを応援してるよ!って、伝えてもらえるかな…?」
それを聞いて、しのぶは思わず表情を和らげた。
「わかりました、伝えます。甘露寺さんは本当に優しいですね。あの子も喜ぶと思います。味方がいるって、心強いことですから」
「きゃあ、嬉しい!ありがとう!じゃあ!」
「お気をつけて。」
しのぶは帰り道でも、ずっと落ち着かなかった。
とりあえずは問題ないということになったが、今後もあの2人が付き合いを続けていくなら、このまま何事もなく「2人は幸せに暮しました、めでたしめでたし」という結末が来るとは思えない。
不死川実弥が言う通り、澪が今後、今回以上に危険な目に遭う可能性は高い。しかも自分は任務に加えて柱の見回りで忙しく、いつも彼女のそばにいて見守ることはできない。
そしてしのぶのこの不安は、近いうちに現実になってしまうことになる。