鬼滅版トワイライト   作:クッキーマロン

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そんなある日、久々に蝶屋敷に戻った時のことだった。

 

「澪、あのさ…一緒にご飯でも食べに行かない?」

 

びっくりして、思わず大袈裟に振り向いてしまった。声の主がカナヲだったからだ。

 

彼女は今でも自主的に何かをすることは苦手だ。そんな彼女が、わたしをご飯に誘ってる。

 

「い、いいけど…わたしでいいの?どうせなら炭治郎達と行った方が楽しいと思うよ」

 

そう言ったが、カナヲは首を横に振る。

 

「澪と行きたいの。今夜どうかな」

「久々に非番だし、大丈夫」

「師範がいいお店知ってるって教えてくれたの。そこでいい?」

「楽しみにしてるわ、ありがとう」

 

そう言って、去っていくカナヲの後ろ姿を見送った。カナヲは口数が少なくて、華やいだ女の子同士の会話が苦手なわたしにとっては数少ない、気を遣わずに一緒にいられる友達だった。同期でもあるし。

 

炭治郎と出会ったことで、少しずつ自分の意見を言えるようになっていることには気がついていた。それだけ大きな存在なのかな…

 

だめだ。恋愛のことを考えると死にたくなる。

 

 

 

 

 

いいお店だった。料理も美味しかった。

 

たわいもない話をした。任務のこと、蝶屋敷のみんなのこと、呼吸のこと。カナヲとわたしは同じ呼吸を使っている。実力はカナヲの方が数段上だ。しのぶ様の継子なのだから。とてもためになる話ばかりだった。

 

「あの、カナヲ。今日はありがとう。元気になったわ。」

「ならよかった。」

 

少しぎこちないながらも、カナヲは微笑んだ。

 

お礼も兼ねて奢らせてと言ったが、カナヲは首を振る。結局、全額奢られてしまった。

 

お店を出て少し歩くと、ちょっと治安が悪い場所がある。でもそこを通らないと蝶屋敷には帰れない。私たちは早足でその場を早く離れようとしたが、ふと足を止めた。

 

そこには4人組のチンピラみたいな人がいた。見覚えがある。そう思った。

 

同じようなことがあった気がする。場所も日付も違うけど、状況はそっくりだ。あの時は司が来て助けてくれた。忘れもしない。

 

見られていることに気が付いたのか、1人が顔を上げた。

 

「澪、何してるの?」

 

自分でもわからずに、首を横に振る。

「知ってる、気がするの…」

とつぶやく。

 

何をしてるの?あの夜の記憶からできるだけ早く逃げ出すのよ!頭ではわかっていても、体が縫い付けられたように動かない。

 

なんで、近づいていこうとするの?

動けるようになったかと思いきやこれだ。自分に対する疑問でいっぱいだ。

 

目の前にいる4人組はあの晩とは無関係だ。わかってるのに。

 

「澪、早く帰ろう」

 

カナヲの声が聞こえるけど、わたしの脚は勝手に奴らの方に近づいていく。何か珍しいものが血管を走り抜ける。アドレナリンだ。

 

「澪!」

「ちょっと確認したいことがあるの」

「危険だよ、わかってるでしょう?!」

 

あのカナヲが、珍しく感情をあらわにしている。こんな大きな声を出す彼女は初めて見た。

 

『澪、いい加減にするんだ!!』

 

全身の筋肉が、その場で動きを止めた。凍りついたように動けない。

怒りに駆られた声、懐かしく美しいその声の主は、激昂していても滑らかだった。

 

彼の声だ…

 

意外だったのは、声を聞いてもわたしは崩れ落ちてひざまずくことも、喪失の悲しみにうずくまることもなかった。

 

声が聞こえた瞬間、視界がすごく鮮明になった。周りを見回す。

 

『カナヲのところへ戻るんだ』

 

あの魅惑的な声が命じる。

 

『約束しただろ。馬鹿なことはしないと。』

 

近くには誰もいない。カナヲは数メートル離れたところで、怯えた目でわたしを見ている。4人組はわたしを戸惑いがちにこちらを観察している。

 

わたし、やっぱりどうにかなっちゃったんだろうか。幻聴が聞こえるなんて。でも近くに感じる。

 

『約束を守るんだ。』

 

この数ヶ月間、彼のことを考えないようにするので必死だった。その代わりにわたしに訪れたのは、無の境地だった。苦悩か虚無かの選択を迫れて、わたしは虚しさを選んだ。

 

でも今この瞬間、無の境地は消え去ってしまった。数ヶ月間鈍くなってきた感覚は戻ってきてしまった。

 

この幻聴を煽るような真似をするなど、バカもいいところだ。試すように、もう一歩前に出る。

 

『澪、そっちじゃないだろ。』

 

思わずホッとしてしまった。でも4人組は自分たちに声をかけようか迷ってオロオロしているように見えたはずだ。ただ突っ立ったまま、狂気の瞬間を楽しんでいるなどとは思うはずがない。

 

「やあ。道に迷ったみたいだけど、大丈夫?」

 

1人が声をかけてきた。

 

「平気よ。道には迷ってない。知り合いに似ているような気がしたの。人違いだったみたい、ごめんなさい。」

「まあいいさ、一緒に遊ぼうぜ」

「だめなの。」

「いいじゃないか、少しくらい」

 

男たちは食い下がってくる。でも無理矢理振り払って、カナヲの元へ戻った。

 

「澪、何考えてるの?知らない相手に近づいたりして…怪しい人だったかもしれないんだよ?!」

「ごめん、知ってる人がいた気がしたから」

「澪、なんか変だよ。あまり会わないうちに、まるで別人になっちゃったみたい…」

「ごめん」

 

それ以外に言うことが見つからなくて、力なく言った。

 

今日のことで一つの仮説ができた。

わたしが何か危険なことをすれば、たとえ幻だろうが、声だけだろうが、彼に会えるということ。

 

 

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