乗車
鎹鴉について行くと、ある駅に着いた。
ここから無限列車なる列車に乗るのか。
わたしは炭治郎や伊之助と同じ山育ちなので、どうすれば乗れるのか、いまいちよくわからない。
駅員さんに聞いて、切符を買ってホームに行くと、ものすごく聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「なんじゃこの生き物はーーー?!この土地の主…!この土地を統べる者…!今は眠ってるようだが、油断するなお前ら!」
「いや汽車だよ、知らねえのか?」
「いやいや、この土地の守り神かもしれないだろう。攻撃するのはよくない。」
この感じ。気が楽になる。
思わず笑みがこぼれた。
伊之助と炭治郎がボケて、善逸がツッコむ。
善逸は女の子のこと以外では、意外と常識人なのをわたしは知ってる。
柱との合同任務は初めてで、とても緊張していたけど、3人のおかげで少し気が楽になった。
ん?待って、ここにいるってことは、まさか3人もこの列車に…?
「炭治郎、善逸、伊之助ー!」
とりあえず声をかけてみる。
3人は一斉にわたしの方を見たので、少し恥ずかしくなった。
「あ、澪!」
「澪ちゃん!」
「よお子分!」
3人とはバイクに乗った時以来だ。わたしが暴走させて、途中で中止になったけど。
「奇遇だねこんなところで。もしかして、君もこれに乗るの?」
「えぇ、そうなの。中で炎柱と合流しろって鴉に言われて」
それを聞いて、炭治郎の顔が輝いた。
「君もだったのか。実はぼくたちもそうなんだ。任務で一緒になるのは初めてだね。」
「そうね。みんなよろしく。」
「ガハハハハ!親分の俺様がついてるから、何も心配いらないぜ!」
「お前のその自信はどこから来るんだよ!」
すると、ホームで善逸と伊之助はまた喧嘩をし始めた。
ギャーギャー騒ぐ2人を見ながら、炭治郎と澪は少し離れたところで話をしていた。
「澪、なんか…顔つき変わった?」
「え?」
「なんか前回会った時よりも…生き生きしてるように見えるから。」
たしかにそうかもしれない。
前回会った時はまだ司と再会していなかったし、わざと危険なことをするほど自暴自棄だった。
「まぁ…事情が変わったのは確かね。」
「よかったよ、君が元気になって。ずっと心配してたから。ぼくだけじゃない、善逸と伊之助もだ。」
あまり当時のことを思い出したくなくて、話を逸らした。
「心配かけてごめんなさい。でももう大丈夫だから。それより早く乗った方がいいかも、もう出発しそうよ」
「わっ、本当だ!善逸、伊之助!乗るぞ!」
こうして、わたしたちは無限列車に乗り込んだ。この先に、恐ろしい事態が待ち受けているとも知らずに。
「柱だっけ?その煉獄さん」
「うん。派手な髪の人だったし、匂いも覚えてるから多分すぐわかると思う。」
「炭治郎は会ったことがあるのね。」
「うん、柱合裁判でね。まぁ、開口一番で禰 豆子もろとも斬首だ!って言われちゃったけど…」
ガラッと連結部分の扉を開けると、ものすごい勢いでお弁当を食べる煉獄さんがいた。
「えっと…あの人が炎柱なの…?」
「ただの食いしん坊じゃなくて?」
善逸も唖然としている。
そして炭治郎がヒノカミ神楽について聞いても「知らん!」の一言で終わってしまい、さらには継子にしてやると言い出し、炭治郎は困惑していた。
しのぶ様が前に「話が噛み合わないことがある」って言ってたけど、なんとなくわかった気がした。
でも、不思議と不快な感じは全くない。
言動から責任感の強さや高潔さがすごく伝わってくるし、とても面倒見のいい人という印象を受けた。
「あ、煉獄さん。こっちは同期の我妻善逸と、嘴平伊之助、あと奏多澪です。」
「!」
炭治郎はわたしたちを煉獄さんに紹介する。
そして煉獄さんはわたしの名前を聞くなり、わたしの方を見た。
「君か、胡蝶のところにいる少女というのは!まだ東城司とは仲が良いのか?!」
「えっ…あ、その…はい…」
思わぬことを聞かれ、咄嗟に顔が真っ赤になる。
「そうか!」
煉獄さんは意外にもというか、それ以上は突っ込んで聞いてこなかった。
「すげえ、早ええー!俺外に出て走るから、どっちが早いか競争する!」
「バカにも程があるだろう!」
相変わらず善逸と伊之助は言い争いをしている。宥めようとしたが、煉獄さんが先に遮った。
「危険だぞ、いつ鬼が出てくるかわからないんだ。短期間のうちに、この汽車で40人以上が行方不明となっている。数名の剣士を送り込んだが、全員消息を絶った。だから、柱である俺が来た!」
40人….いくらなんでも数が多すぎる。
この列車は普通の電車ではない。何かある…
その後、車掌さんが切符を確認しに来たが、直後、ただならぬ空気がその場を支配する。
「「「!」」」
炭治郎も気が付いたらしく反応したが、それより先に動く影があった。煉獄さんだ。
「車掌さん、危ないから下がってくれ!火急のこと故、帯刀は不問にしていただきたい!」
その直後、鬼が姿を現した。ほんの今まで、そこには何もいなかったのに…!
「その巨躯を隠していたのは血鬼術か!気配も探りづらかった!しかし、罪なき人に牙を剥こうとするならば、この煉獄の赫き炎刀が、お前を骨まで焼き尽くす!」
『炎の呼吸、壱の型、不知火!』
煉獄さんは一撃で、鬼の頸を斬り落とした。
一瞬のことで、瞬きする暇もなかった。
すごい…
素直に、それしか感想が出てこない。
わたしやしのぶ様が使う花と蟲の呼吸は、水の呼吸からの派生だ。
勢いがあるというよりも、滑らかな感じの剣技のため、それとは正反対の呼吸、しかも柱という最高峰の実力を持つ人の剣技を目の当たりにして、わたしは言葉もなかった。
炭治郎や善逸、伊之助も圧倒されたらしく、弟子にしてくれと騒いでいる。
やっぱりみんな男の子なんだなあと一歩引いて、わたしはその様子を見ていた。
しかし、そこでわたしの意識は遠のいていった。