鬼滅版トワイライト   作:クッキーマロン

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無力感

 

凄まじい戦いが繰り広げられている、ということだけわかる。でも詳しくはわからない。両者の技のぶつかり合いが速すぎて、目で追うことができないから。

 

「今まで殺してきた柱たちに炎はいなかったな。そして俺の誘いに頷く者もなかった。なぜだろうな?同じく武の道を極める者として理解しかねる。選ばれた者しか鬼にはなれないというのに!」

 

そこまで言って、猗窩座は少し考え、前言を撤回すると言い出した。

 

「いや、あいつらだけは例外だな、東城家の連中。選ばれた者でもなんでもない奴らだ。鬼なのに人間を喰わず、強さも求めずに鬼狩りにくみするとは。なんのために存在しているのかわかったものじゃない。」

「なんっ…!」

 

なんですって?

 

そんなことない、ふざけるな。何も知らないくせに、みんながどれだけ血への欲求を抑え込むのに苦労して、人間の役に立てるように頑張っているのかも知らないで!と叫びたい。無意識に身体が動いていた。

 

「澪!傷が開くから動いちゃダメだ。気持ちはわかるけど、落ち着」

「落ち着いてなんかいられないわ!」

 

炭治郎はわたしのことを心配して言ってくれているというのはわかってる。でもそれを最後まで聞けないくらい、わたしは怒っていた。

 

「素晴らしき才能を持つ物が醜く衰えてゆく…俺は辛い、耐えられない。死んでくれ杏寿郎、若く強いまま!」

 

『破壊殺・空式』

『肆ノ型 盛炎のうねり』

 

わたしと炭治郎がほんの少し目を離した瞬間にも、戦況は動き続けていた。

 

このまま距離を取っての戦いは長期戦になるだけだと判断したらしい煉獄さんは、一気に猗窩座との距離を詰める。

 

「この素晴らしい反応速度!この素晴らしい剣技も失われていくのだ杏寿郎、悲しくはないのか!」

「誰もがそうだ!人間なら当然のことだ!」

 

このままじゃダメだ。

何もしないで転がっているだけなど情けなさすぎる。

 

でも、いざ立ち上がろうとすると身体に力が入らないし、刺すような鋭い痛みが身体を突き抜ける。

 

「ぅっ…!」

「澪!」

「2人とも動くな!傷が開いたら致命傷になるぞ!待機命令!!」

「「!!」」

 

煉獄さんの切羽詰まった声に、わたしと炭治郎はビクっと震えた。わたしの先程までの怒りは一瞬にして消え去った。

 

「弱者に構うな杏寿郎、全力を出せ!俺に集中しろ!」

 

そこに伊之助が乗客の避難を終えてやって来た。わたしや炭治郎同様、目の前の戦いに圧倒されている。

 

『隙がねェ、入れねェ…動きの速さについていけねェ…あの2人の周囲は異次元だ。間合いに入れば、死しかないのを肌で感じる…!』

 

焦りしかない。足手纏いなりに、何かできることはないの?

 

あぁ、わたしが稀血とかだったらよかったのに…!

そしたら、鬼を酔わせて隙を作れるのに。

 

でも、ないものねだりなどしても意味はない。時間の無駄だ。

 

どうする?どうする?!

 

 

『破壊殺・乱式!』

『伍ノ型 炎虎!』

 

両者の技がぶつかり合い、あたりは再び砂埃に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

徐々に砂埃が晴れていく。

何があったのか、詳しくはわからないけど、ただ一つわかったことは、煉獄さんが押されているということだ。

 

呼吸が荒く、額から出血していて、左目は潰れている。

 

うそ…

 

ダメだ。この状態ですら、すぐに治療して助かるか微妙だというのに。これ以上戦えばどうなるか、一目瞭然だ。

 

「生身を削る思いで戦ったとしても、全て無駄なんだよ杏寿郎。お前が俺に喰らわせた素晴らしい斬撃も、すでに完治してしまった。だがお前はどうだ?潰れた左目、砕けた肋骨、傷ついた内臓…もう取り返しがつかない。鬼であれば瞬きする間に治る。そんなもの、鬼ならかすり傷だ。どう足掻いても、人間は鬼に勝てない。」

 

本当に悔しいけど、猗窩座の言うことにも一理ある。部分的には正しいところもある。でも、こんな奴に負けるなんて嫌だ。

 

「炭治郎、わたしは、いいから…煉獄さんに加勢して…!」

「で、でも…」

 

わたしを頼むと煉獄さんに言われたから、炭治郎は迷ってる?

そんなの嫌だ、足枷になんかなりたくない。

 

 

……違う。炭治郎はそんなことで動かないんじゃない。

 

炭治郎も伊之助も動かない、いや、動けない理由は、加勢したところで足手まといでしかないとわかっているからだ。

 

戦闘で足手纏いになるなら、できることはただ一つ。盾になることしかない。

 

せめて何か一つでも役に立てないと、気が狂いそうだ。

 

「わたしは行くわ、このまま何もしないで見てるなんて、耐えられないもの…!」

「ちょ、ちょっと待って澪!ぼくはともかく、君はだめだ!止血しているとはいえ刺されてるんだから、安静にしてないと」

「上弦がいるのよ、そんなこと言っていられないわ!」

 

その時、あたりの空気が一変した。

あまりにも凄まじい闘気に、わたしも炭治郎も思わず押し黙る。

 

「俺は俺の責務を全うする!ここにいる者は誰も死なせない!!」

 

『炎の呼吸 奥義』

 

「素晴らしい闘気だ…!それほどの傷を負いながらその気迫、精神力…!一部の隙もない構え…!やはりお前は鬼になれ、杏寿郎!!俺と永遠に戦い続けよう!!」

 

『玖ノ型 煉獄』

『破壊殺 滅式』

 

わたしたちが介入する隙もないまま、最後の技が放たれた。

 

 

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