鬼滅版トワイライト   作:クッキーマロン

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報告

わたしは今、蝶屋敷のしのぶ様の部屋の前に立っている。

 

あれから柱合会議が開かれ、そこで柱に司とわたしが結婚することが通達された。

そして、これは柱にのみ通達され、ほかの隊士には知らされないこととなったらしい。

 

まぁ当然だ。鬼殺隊は文字通り、鬼を滅する組織だ。鬼と結婚するなど、納得しない隊士が出てきても無理はない。たとえその鬼が鬼殺隊公認の鬼で、人間を喰わないとしても。

 

柱合会議で知らせを聞いたしのぶ様はわたしの任務先にまで鴉をよこして、話ががあるから終わったらすぐに帰ってくるように言われた。

 

怒られるんだろうか。でもしのぶ様が認めてくださらなくたって、わたしは彼と結婚する。もう決めたことだ。それにわたしには、お館様が認めてくださったという、最大の武器があるもの。

 

「大丈夫?」

 

とろけてしまいそうな甘い声で、わたしは我に返った。見上げると、いつの間にか司が隣に立っている。

 

「任務明けで疲れてるとは思うけど、しのぶの頼みは断れそうにないね。」

「えぇ。できればお説教よりおめでとうって言われたいわ…」

「ぼくもだ。さぁ、行くよ。」

 

そう言うと彼は、ひんやりした手でわたしの手を握った。

 

 

 

 

コンコン、と司が遠慮がちにしのぶ様の部屋の扉をノックする。彼も緊張してるのかも。そう思ったら、わたしの緊張は少しだけ緩和された。

 

「どうぞ。」

「失礼します。」

「あぁ、澪。任務明けで疲れているとは思いますが、話がありましてね。座ってください。司さんも。」

 

司とわたしは並んで座り、しのぶ様と向き合う形になった。

 

「さっさと本題に入りますね。今日柱合会議に行ってきました。そこで聞いたんです、あなたたちが婚約して、結婚する、とね。」

 

結婚。わかっていても、その言葉を聞くとなんだか恥ずかしくなる。もじもじするわたしの代わりに、司が答える。

 

「そうだ。澪のご両親は亡くなってるから、お館様に事前に許可は取ってあった。順序は間違ってない。」

「えぇ、わかっています。」

「しのぶ」

 

しのぶ様の口調に敵意は感じられなかったけど、なんだか少し棘がある。そんなしのぶ様に、司は思い切って切り出した。

 

「澪はぼくの申し出を承諾してくれたし、ぼくは彼女の選択を尊重したい。君は親を亡くした澪の家族とも言える存在だ。この蝶屋敷のみんなも。だから、できれば祝福してもらえないだろうか。ぼくはこの世の何よりも、彼女を愛してる。自分の命より大事で、奇跡的にも彼女も同じようにぼくを愛してくれてる。ぼくたちを祝福してくれるかい?」

 

司はとても堂々としていて、落ち着いていた。

 

「まぁ、聞いた時はびっくりはしましたが、一応、想定内のことでしたからね。」

 

しのぶ様も落ち着いていた。わたしたちを責めようと身構えている感じはない。

 

「しかし澪、そうなると鬼殺隊はどうするんです、やめるのですか?」

「いいえ、とんでもない。わたしの居場所は鬼殺隊です。この身がもつ限り、今まで通り鍛錬と任務に邁進します。彼と結婚する以外、何も変わりません。」

「そう、ですか。」

 

しのぶ様の考えを読んだのか、司が捕捉する。

 

「ぼくも澪はやめていいと思ってたんだけどね。危険な仕事だから。でも澪は続けたいって言うから。」

「辞めるなんて、絶対ありえない。心を燃やすの、死ぬまでね。もっともっと、強くなりたいから。」

 

しのぶ様は少しため息をついた。

 

「でも少し早くありませんか、澪。あなたまだ17歳ですよ。もう少し待っても…」

「それも考えたよ。でも…」

 

また、司が代わりに答える。

 

「鬼殺隊は、いつ死ぬかわからない危険な仕事だ。だからこそ、澪には感じていてもらいたいんだ。ぼくがいかに彼女を大切に思っているか、愛しているかをね。ぼくは戸籍上では死んだことになってるから、入籍はできないが…この指輪をして式を挙げて形にすることで、ぼくは澪のものだと感じていてもらいたいんだ。」

 

全く…こんなに直球な想いってある?クラクラしてきた。

 

「まぁ、わたしがどうこう言うことでもないですし、澪、あなたは一度決めたら誰がなんと言おうと考えを曲げないことはよくわかっています。自分の決断に確信があるのですね。」

「はい。」

「……ならいいです。あなたが幸せになれるなら、わたしが口を出せることではありません。」

 

わたしはほっと息をついた。司も横で安堵してるみたい。でも、もう一つお願いしなければならないことがある。それを司が切り出した。

 

「ありがとう、しのぶ。実はもう一つお願いがあるんだ。」

「あら、なんでしょう。」

「できれば、澪の家族同然の君に、蝶屋敷のみんなも、結婚式に来て欲しい。どうかな。」

 

しのぶ様は一瞬目を見開くと、少しだけど、微笑んだように見えた。

 

「式はいつですか?みんなに確認しておきましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、蝶屋敷のみんなは大喜びだった。特になほ、すみ、きよは飛び上がって喜んでいた。

 

アオイとカナヲも出席すると言ってくれたし、同期の炭治郎、善逸、伊之助も誘ったところ、すぐに是非出席すると返事が返ってきて嬉しかった。

柱以外の隊士には秘密とはいえ、同期のみんなは例外でいいと決まり、知ってほしかったから、すごく嬉しい。

 

柱の皆さんも招待したけど、大部分は欠席だった。まぁなんとなく予想はしていたけど。

 

出席すると言った柱の方は、しのぶ様以外で3人いた。

 

一番に出席の返事をくださったのは、恋柱の甘露寺様だ。

 

それから、音柱の宇髄様。「派手なカップルだ、見ものだぜ!」とかなんとか言っていたらしい。

 

意外だったのは、水柱の冨岡様だ。全然関わりないけど、炭治郎の恩人らしいし、わたしの予想ではしのぶ様が来るから来るんじゃないかなと思う。

 

会場はお館様のお屋敷になった。

厳重に隠されていて安心だし、出席するとおっしゃってくださったお館様は、最近お体の調子があまり良くないため、自宅なら余計な移動をしなくていいからだ。

 

そして式の準備を取り仕切るのはもちろん…

 

「澪、わたしのこと、どれくらい好き?」

「ちょっと、いきなりどうしたの杏?」

「お願いだから、わたしのこと想ってくれてるなら、わたしに結婚式を任せて」

「杏、ダメだって言ったってやるんでしょ。」

「もちろんよ!だってわたしの義妹の結婚式よ?」

 

わたしは結婚式の形式とかに全くこだわりはないし、司の好みとか気にいるかとかも杏ならよくわかっているだろう。

 

「ねえお願い、絶対素敵な式にするから!」

「この先10年は恩に着ることになりそう。」

「10年じゃ足りないわ、1世紀よ!」

 

杏の目が一気に輝いた。

 

「つまりイエスってことね?!」

「ええ。断れそうにないし。」

 

杏は飛び上がって喜び、妖精のようにひらひらとした足取りで行ってしまった。

 

杏はわたしと会った時から、否、初めて会うよりもずっと前からか、いずれこうなるってわかっていたんだろうか。

 

「杏の好きにさせることはないんだよ。」

 

わたしが本当は嫌だと思ってると思ったのか、司が言った。

まあ不安が全くないかと言えば嘘になるけど、杏は何か欲しいものがある時は手段を選ばないし、止められない。

 

「いいの。どうせ止められないしね。」

「まあ、好きにさせるにしてもささやかにやればいいさ。」

「目立つのは苦手だから、精一杯ささやかにしてくれることを祈るわ。」

 

日程は迫っている。鬼殺隊は多忙だ。鬼は倒しても倒しても、湧き出るように出てくる。司はわたしの身が無事であるうちに、早く式を挙げたいらしく、次の非番の日にあっという間に決まってしまった。

 

杏は急にもかかわらず、ますますやる気を出し、まあ鬼は眠る必要もないから、夜もぶっ通しで準備に奔走していた。

 

しかし、わたしには結婚式とは別に、まだ不安なことがあった。百合と純のことだ。

 

2人は他の家族に比べて、わたしとの距離は縮まっていない。百合に至ってはわたしのことを明らかに嫌っているみたいだし…

 

でも、これからは家族になる。自分がギスギスした空気になる原因になるのは嫌だった。

 

話しやすいのは純の方だ。

とりあえず司に純と話がしたいと相談したら、自分が一緒ならいいと言われた。

 

純はわたしの誕生日事件のことがあるから、司は警戒してるんだろう。

でもすぐに時間を作ってくれて、指定された時間に東城家のお屋敷に行った。

 

「時間をありがとう、純。」

「構わないよ。杏は君の結婚式の準備でいなくて暇だったしね。で、なんだい?ぼくに聞きたいことって。」

 

緊張していたけど、純の隣に座った瞬間、どんどんリラックスしていくのがわかった。

 

「わたしたち、これから家族になるでしょ。だから…知っておきたいの、あなたのこと。」

 

純が軽く頷いて、少し考え込む。

 

「ぼくのこと、どれくらい知ってる?」

「あんまり」

 

正直に認める。他のメンバーに比べて血への欲求を抑えるのに苦労してること、感情を操る能力があることくらいしか知らない。

 

純がじっと見つめると司は顔をあげて、その視線を捉えた。

 

「いや、その話はしていない。」

 

司は純が声にしなかった問いに答える。純は慎重に頷き、着物をめくった。すると、わたしにはすごく見慣れた傷が多数あった。

 

三日月型に隆起した傷痕。なぜ見慣れているのか、その理由に気がつくまで、少し時間がかかった。

 

「ぼくには、君のに似た傷がたくさんあるんだ、澪。」

 

純はさらに着物をめくる。その顔からはなんの感情も読み取れない。

 

たった一つだけの小さな自分の傷を見て、どうやってその傷を受けたのか思い出した。元十二鬼月がわたしの肌に永遠に刻んだ歯痕。はっと息をのみ、純を見た。

 

「一体…あなたの身に何があったの?」

 

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