鬼滅版トワイライト   作:クッキーマロン

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心変わり

 

別の日、単独任務を終えて蝶屋敷に帰ると、なんと縁側に彼が座っていた。うそでしょ、なんでいつも忘れようと努力してる時に現れるの!

 

「司様があなたのこと見てるわよ。」

 

アオイの言葉で放心状態から戻った。どういうこと?

 

アオイの視線を追って姿を探すと、彼はいわくありげな微笑みを浮かべて、視線が合うと手招きしてこっちにおいでと合図する。

 

わたしが信じられない気持ちで見つめると、彼はウインクした。顔が真っ赤になる。

 

「あなたのこと呼んでるみたいよ。行って差し上げないと失礼だわ。」

 

アオイの視線と彼の視線が突き刺さる。縁側に近づくと、おずおずと向かいに立った。

 

「隣に座ってくれないかな。」

 

微笑みながら言う。すごく穏やかな口調だ。

 

相手を注意深く観察しながら、言われたままに腰を下ろした。彼はまだ微笑みを浮かべている。こんなに美しい人がいるなんて、信じられない。やっぱり、世の中は不公平だ。

 

彼は、わたしが何か言うのを待っているようだ。

 

「いつもと違う感じですね。」

「まぁね。どうせ地獄に落ちるなら、とことん落ちてやると決めたんだ。」

 

またよくわからないことを言ってる。相手が何か意味のわかることを言うまで待った。

 

「わたしには何のことだかさっぱりだって、お分かりでしょう?」

 

たまりかねて指摘した。

 

「あぁ。」

 

彼はまた微笑んで、話題を変えた。

 

「ぼくにきみを取られて、お友達が怒ってるみたいだ。」

 

視線の先にはアオイの他になほ、すみ、きよがいて、おまけにカナヲまでいる。

 

「あの子たちなら平気です。」

 

みんなの視線で、背中に穴が開きそう。

 

「でも、ぼくはもうきみを返さないかもしれないよ。」

 

彼はいたずらっぽく瞳を輝かせて言った。

息が詰まりそう。そんなわたしを見て、彼は声をあげて笑った。

 

「心配そうだね。」

「まさか。」

 

とは言ってみたけど、うまく続かない。

 

「びっくりしてるんです。だってこれ・・・一体どういうことですか?」

「言ったはずだよ。きみと距離を置くのに疲れてしまった。諦めたんだ。」

 

微笑んではいるけど、目は笑っていない。

 

「諦めた?」

「そう。いい子になろうとするのはもうやめだ。これからは自分のしたいようにする。結果がどうなろうと構わない。」

 

説明するうちに笑顔は消え、口調に厳しさが滲んでいく。

 

「まだ話しがよく見えて来ません。」

 

息が止まるようなあのひねくれた微笑みが、また現れる。

 

「きみと話していると、いつも余計なことまで口にしてしまう。これも問題の一つのようだ。」

「心配ないです。こっちはさっぱりわかってませんから。」

 

皮肉混じりに切り替えした。

 

「だろうね。」

「つまりわたしたち、今では友達ってことでしょうか。」

「友達ね・・・違うんだ。試してもいい。ただ、今ここで断っておくけど、ぼくはいい友達ではないよ。」

 

笑顔の裏にある警告は本物のようだ。

でももう正直、それは聞き飽きた。

 

「そればっかりおっしゃるんですね。」

「そうさ、君が耳を貸そうとしないから。今もそう信じてくれるのを待ってるんだけど。きみが賢明なら、ぼくを避けた方がいい。」

「どうせわたしは賢明じゃないです。つまり、わたしが賢明じゃないうちは、試しに友達になってみるってことでしょうか。」

 

訳の分からない会話をなんとかまとめてみた。

 

「そんなところだね。」

 

全く…合ってるのかちょっと違うのか、はっきりしてよ。でも、そのイライラに勝ってしまうほど、彼は魅力的だ。不覚だけど。

 

「何を考えてるの?」

 

彼が不思議そうに聞いてくる。

 

顔が赤くなる。はぁ…正直すぎる自分の感情が恨めしい。

 

「教えないつもり?」

「恥ずかしすぎるので。」

 

ムカつくのにあなたに夢中です、なんて言えるわけがない。

 

でも不思議だ。わたしの感情は誰が見たってわかりやすい。それに彼は心を読むのが得意みたいだから、余計簡単にわかりそうなのに。

 

「そういうのって、本当にイライラするよ、わかるだろう?」

 

文句を言っているみたい。

でも文句なら、わたしの方がはるかに言う権利があるはずだ。

 

「わかりません。全然、想像もつきません。相手が思っていることを教えてくれないってだけでしょう?暗号みたいな発言ばかりされて、そのおかげであれってどういう意味だったんだろうって考えながら、ずっと眠れないってだけです。そのどこがイラつくんでしょう。」

 

彼は渋い顔をしている。自分のことを言われているとわかっているんだろう。

 

「おまけに」

 

構わず、わたしは話を続けた。たまっていた不満がここにきて止めどなく流れ出してくる。

 

「その人はいろんな不思議なことをするんです。ある日にはわたしを救ってくれて、その後にはまるで汚らわしいものを相手にしてるみたいな態度をとるし。説明なんてこれっぽっちもしてくれない。それだって、全然イライラするようなことじゃないでしょう。」

「・・・もしかして怒ってる?」

「わたし、二重基準(ダブルスタンダード)は嫌いなんです。」

 

お互いに相手をじっと見つめた。笑顔は消えている。

 

「あの、せめて無視したり、冷たくする時は言ってくれませんか。わたしも心の準備ができますし。」

「それなら公平な気がするね。」

 

彼はわたしの後ろに視線を巡らせた。そして意外なことに、くすくす笑った。

 

「なんですか。」

「ぼくがきみに不快な思いをさせていると、あの子たちが思ってるみたいだよ。喧嘩の仲裁に入ったほうがいいかどうか思案してる。」

「だれのことか検討もつかないけど。どのみち間違いだわ。」

 

冷たく言った。でも確かになほ、すみ、きよはオロオロしていて、今にも駆け寄って来そうだ。

 

「間違ってないよ。大抵の人の考えていることは簡単にわかるからね。」

「他人の考えを読むのがお得意みたいですものね。」

「まぁね。」

 

またちょっと歯切れが悪い。

 

「ここだと、ぼくがあの子たちに悪者にされそうだな。そこでだ、澪。」

「はっ…はい。」

 

名前を呼ばれただけで、心臓の鼓動が跳ね上がる。思わず姿勢を正してしまった。

 

「今夜の予定は?任務は入ってる?」

「いいえ。特には…」

「よかった。じゃあちょっと付き合ってくれる?」

「付き合う?」

 

彼は純粋な微笑みを浮かべて言った。

 

「ぼくと、夕食を食べに行ってくれないかな。」

 

・・・は?

わたしを、食事に誘ってる?このわたしを?

 

たった一言の誘い文句を解読するのに1分かかった。

 

 

 

 

「アオイ、今日の夕飯だけど、わたしの分は作らなくていいわ。」

「任務が入ったの?」

「いいえ、その…外で、食べるから」

「外?そう…」

 

アオイは深くは聞かないでくれたがその後、蝶屋敷内であれこれ噂が飛び交ったというのは後から知ることになる。

 

 

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