鬼滅版トワイライト   作:クッキーマロン

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何になっても

 

お館様のはからいで、3日後にわたしは司と娘と3人で、蝶屋敷を訪ねた。

 

アオイやカナヲ、なほ、すみ、きよは、わたしが鬼になったことを既にしのぶ様から聞いて知っている。でも、みんなは第二の家族同然の存在だ。きちんと話をしたかった。

 

 

ここ、蝶屋敷に来るのはものすごく久しぶりだ。とても懐かしく感じる。

 

コンコン、と扉を叩くとアオイが出迎えてくれた。アオイはわたしを一目見ると目を見開いた。動揺が見て取れる。わかっているとはいえ、鬼のわたしのことが怖いのだろう。

 

「待ってたわ、どうぞ入って。」

 

アオイはそれを抑え込み、わたしたちを招き入れてくれた。

アオイは鬼に対して並々ならぬ恐怖心を抱いていることを知っていたから、とても申し訳なくなった。

 

食堂にみんな集まっているというので、そこに向かう廊下を歩いている間、気になって思わず聞いてみた。

 

「アオイ、あの…みんなは、元気?」

 

社交辞令なんて交わしてる場合じゃないし、そんな余裕もないかもしれないけど、どうしても気になっていた。

 

「変わらず元気よ。最初、なほたちは澪がいなくなって、すごく寂しがってた。しのぶ様は……」

 

アオイの沈黙の理由はわかる。原因はわたしだ。

 

「そうよね、わかってる。」

 

しのぶ様には、本当に申し訳ないと思っている。

 

衰弱していくわたしをずっと見ていたし、血まみれの出産現場にも居合わせたし、必死にわたしの心肺蘇生をしてくれて、一時はわたしが死んだと本気で思っていた。まぁ、それは誤解だったわけだけど…最悪の形で、わたしは死の淵から蘇った。憎まれていて当然だ。

 

みんなはどう思ってるのかな…

わたしが鬼になって、失望してる?二度と会いたくないって言われるかもしれない。それも、代償だと思って受け入れるしかない。

 

この食堂に繋がる扉の向こうに、みんながいる。そう思うと、とても緊張した。正直、飢餓感は1ミリも感じない。緊張ですべてかき消された。でもそんなわたしの気持ちにはお構いなしに、アオイが扉を開けた。

 

ガチャという音に反応して、みんながこっちを見たけど、しのぶ様はいなかった。

 

5秒ほど、沈黙がその場を支配したが、すぐになほ、すみ、きよが駆け寄って来る。

 

「澪さん!」

「身体は?!」

「大丈夫なんですか?!」

 

3人の顔には分析するまでもなく、わたしのことを心配している。

 

「あ、えっと…この通り、ぴんぴんしてる。みんな、その…心配かけて、ごめんなさい。」

「いいえ!」

「ご無事でよかったです!」

「また会えて嬉しいです!」

 

わたしはかなり拍子抜けしていた。絶対に怖がられると思っていたからだ。

 

「3人とも、わたしのこと、その…怖くないの?」

 

それを聞いて、なほたちはきょとんとした。

 

「怖いわけないじゃないですか!」

「澪さんはわたしたちを襲ったりしないって、わかってますから!」

「そんなこと心配してたんですか?」

 

そうだ、わたしは何を心配してたんだろう。

みんな、わたしを見て逃げ出すとか?二度と顔を見たくないって叫ばれるとか?

 

違う。この子達は、そんなことを言ったりしたりする子じゃない。

 

そこで、司の腕に抱かれていた杏花が、ひょっこりと顔を出した。

 

「わぁ!」

「かわいい…!」

「その子ですか?」

「えぇ、抱っこしてみる?」

 

なほたち3人は杏花にメロメロのようで、わたしにはわからないけど、司は杏花のことが読める。司の表情はとても穏やかだ。問題ないのだろう。

 

「あの子は大丈夫だ。ぼくがちゃんと見てるから、君はアオイたちと話してきたら」

「そうね、ありがとう。」

 

 

 

わたしは少し離れたところで、アオイとカナヲと話しをした。

 

「話聞いたわ、本当に大変だったのね。」

「大変だったのはわたしじゃなくて、まわりの人たちよ。みんなにも心配かけたし、特にしのぶ様には…申し訳ないことをしたわ。それでね、アオイ、カナヲ。」

 

わたしは改めて、2人に向き直る。

 

「心配かけて、本当にごめんなさい。2人は鬼殺隊だし、鬼になったわたしと関わりたくないと思っても、それは当然のことよ。だから…」

「澪」

 

先に言葉を発したのは、意外にもカナヲだった。

 

「わたしはそんなこと思ってない。話を聞いた時、最初に思ったことは…澪が死ななくてよかったってことだった。鬼になったことは、手放しで喜べないけど…でも、澪はわたしの大切な友達なの。それは人間じゃなくなっても変わらない。」

「カナヲ…」

 

素直に、とても嬉しかった。

 

 

「アオイ、無理しないでね。本当に、無理はさせたくないから。怖いと思うのは当然よ。」

「そうじゃ、ないの。正直、怖くないって言ったら、嘘になる。でも……澪は澪だわ。こうして喋ってても、人間だった時と全然変わらないし…こうならないと、あなたは死んでたんだし、こうしてまた話すこともできなかったんだもの。あなたはわたしたちを、人間を襲わないって、信じてるし。受け入れるわ。」

「ありがとう。」

 

少し視線を外してなほたちを見ると、4人で楽しく遊んでいた。きよが渡した人形が気に入ったらしい杏花は、振って遊んでいる。

 

「澪、わたしもその…杏花ちゃんに触ってもいい?」

「もちろんよアオイ、抱っこしてあげて。あの子人見知りしないから、喜ぶと思う。」

 

なほたちにアオイも加わり、5人で杏花と遊ぶ様子を、司は微笑ましく見守っている。

 

「カナヲは行かないの?」

「うん…師範のこと、話したくて。」

「……わたしも気になってた。一度手紙を出したんだけど、返事をもらえなくて。やっぱりわたしのこと、怒ってる…?」

 

カナヲは少し間を置いて、静かに切り出す。

 

「怒ってないと言えば嘘になるかもしれない。師範は何も言わないけど…なんかすごい威圧感を感じるというか…暗い感じなの。気持ちの整理がついてないんだと思う。」

「そう…しのぶ様の前で死にかけた挙句、鬼を滅する組織の人間が鬼になったんだもの。それも当然だわ。」

「で、でも…澪に会いたいとも思ってると思うよ。」

 

カナヲがわたしに気を遣っている。前は自分から話さなかったことを考えれば、かなりの進歩だ。これは多分、炭治郎のおかげだな。多分じゃない、絶対そうだ。

 

「ありがとうカナヲ。会って話してみるわ。」

「わかった。それから澪、わたしも、その…杏花ちゃん、抱っこしてもいい?」

「もちろんよ。」

 

わたしは微笑んで応じた。

 

 

しのぶ様の部屋に行く前に、司に声をかけた。

 

「司、しのぶ様と話してくるわ。」

「わかった。一緒に行こうか?」

「ううん、あなたはみんなとここにいて。……杏花、大人気ね。」

 

杏花はみんなに囲まれていて、楽しそうにしている。今は両手をあげて、カナヲに抱っこをせがんでいる。

 

「あぁ、嬉しそうだ。みんなにすごく懐いてる。」

「そうね。」

「君は大丈夫?」

「えぇ。まぁ、相当量の毒を打ち込まれるくらいは覚悟の上よ。」

 

それを聞いて、司が身体をこわばらせた。

 

「しのぶの場合、冗談と思えないのが怖いんだが。」

「それだけ、わたしはしのぶ様のことを傷つけたんだから…毒をくらうくらいじゃ済まされないくらいよ。とりあえず、2人で話してみる。」

「気をつけて。これは言葉通りの意味だ。」

「了解。」

 

 

 

診察室の前に立つと、色々な思い出が込み上げてきた。

 

ここには何度も来たな。任務だけじゃなくて、わたしはドジだったから、日常生活でもしょっちゅう怪我をして、ここで治療を受けていた。

 

この扉の先に、しのぶ様がいる。そしておそらく、わたしに対して、今までとは異なる感情を持っている。

 

二度と来るな、顔を見せるなと言われても、わたしに拒否権はない。何と言われようと、受け入れなければならない。

 

意を決して、わたしは扉をノックした。

 

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