鬼滅版トワイライト   作:クッキーマロン

73 / 77
昨日の無限列車編放送、やはり最高でした。
わたしは劇場に7回観に行きましたが、何度観ても泣いてしまいます。




再会

お館様から全隊士に「わたしを見ても殺すな」という通達がいってからすぐ、炭治郎から会いたいと手紙が届いた。

 

わたしも直接みんなに説明したかったから、任務から帰ったらすぐ会おうと返事をした。

 

そしてわたしは今、蝶屋敷の庭で炭治郎、善逸、伊之助と対面している。3人はわたしを前にして、口をあんぐりさせて固まっている。

 

「わかってる、混乱するわよね。何も連絡できなくてごめんなさい。」

「ちょ、ちょっと整理させてもらえる?」

 

かろうじて声を出せたのは、炭治郎だけだった。

 

「君はあの結婚式の後、新婚旅行に行って…妊娠、したんだね?」

「えぇ。」

「それで、その子が生まれた…」

「そう。」

 

杏花は3人の方を見て、にこにこ笑っている。

 

「この子を産んだ時にその…色々あって死にかけて、司がわたしをやむなく鬼にしたの。かなりの賭けだったけど…成功した。で、ご覧の通りってわけ。」

「でも、結婚式から1ヶ月ちょっとしか経ってないよね?」

「えぇ。本当に、怒涛の1ヶ月だったわ。」

 

善逸はわたしの頭から爪先までまじまじと見て、たった一言、

 

「すっげー美人…」

とだけ言った。

 

「おい、善逸…」

 

炭治郎は善逸をたしなめるが、そう言う炭治郎や伊之助の視線もわたしに集中している。

 

鬼になると、人間を惹きつけるために、整った容姿になる。人間だった頃の面影が全くないわけではないけど、わたしの容姿は凡人中の凡人だった顔が、会わなかった1ヶ月の間にいつの間にか花魁並みになっているのだから、驚いて当然だ。

 

伊之助に至ってはわたしに気がつかずに斬りかかろうとして、炭治郎と善逸が必死に止めるはめになり、説明しても「こいつ誰だ?子分その4を連れてこい!」と言う始末だった。

 

 

「澪ちゃん、変なこと聞いて悪いんだけどさ…」

「いいのよ、何でも聞いて。」

 

切り出したのは善逸だった。

 

「澪ちゃんはさ、その…ぼくらを目の前にしても、平気なの?」

 

善逸は言いづらそうに質問してきた。

あぁそうか。鬼のわたしが、平然としてるから、不思議に思ってるんだ。

 

炭治郎は別だ。人を襲わない禰 豆子ちゃんと常に一緒にいるから、違和感をあまり感じないのだろう。

 

「平気よ。東城家のみんなと同じように、動物だけ狩ってるの。クマとか、鹿とか。わたしはなりたてだから、今は毎日狩らないとダメだけど、慣れれば3〜5日に一度狩りをすればいいくらいになるらしいわ。ここに来る前にも、念のために鹿の血を飲んできたし、飢餓感はないから、安心して。」

「そうなんだ…」

「ごめんなさい、不快にさせた…?」

 

顔を顰める善逸や炭治郎の顔を見たら、少し怖くなって、恐る恐る聞いてみた。

 

しかしそれを聞いた2人は、ぶんぶんと首を横に振った。

 

「違うよ、単純にすごいなぁって思ってさ。」

「そうだよ、簡単にできることじゃないだろう?禰 豆子でさえ、最初俺を襲おうとしてたしさ。」

 

それを聞いて、わたしは最初の狩りでのことを思い出した。

 

「でもわたしも最初の狩の時に、たまたま近くにいた人間がいて、あれはものすごい欲望に駆られたわ。思わず司を威嚇しちゃったくらいよ。それから、やっぱり不死川さんの血は凄まじかったわね。禰 豆子ちゃんも苦労したって、事前に聞けてたから、何とか抑え込んだけど…」

「なっ…!」

 

それを聞いた炭治郎は青ざめた。なんだかそれを見てるこちらまでそうなりそうなくらい、蒼白だ。

 

「まさか澪"も"刺されたの?!」

「いいえ。不死川さん、最初杏花のことを試そうとして、自分の腕を斬ったのよ。あの血の匂いは、並のものじゃなかったわね…」

 

だめだ、思い出すだけでも空腹を覚えそうだ。振り払おうと、首を横に振った。

 

炭治郎はわたしとこの子に何もなかったとわかって、少し安心したみたいだった。

 

「しなずがわさん、びっくりしてたよね。」

「うわっ、しゃべったぁ!!」

 

いきなり杏花がしゃべったから、善逸はびっくりして飛び上がった。

 

そりゃびっくりするわよね。3歳ほどの見た目なのに、片言とかじゃなくてすらすら話してるんだし。

 

「喋った!喋ってるよその子!!でもめちゃくちゃ可愛い声!っていうか、どう見ても生後1ヶ月の見た目じゃないよね?!」

「静かにしろ善逸!びっくりしちゃってるだろう!」

 

喚き散らす善逸を、炭治郎が宥める。

杏花は善逸の大きな声に驚いて、わたしにしがみついて胸に顔を埋めてしまった。

 

そんな杏花を少し引き離して、手を握った。

 

「杏花、この3人はね、わたしの大切なお友達なの。ご挨拶して?」

「はい、ははうえ。」

 

杏花はわたしから離れておずおずと3人に近づくと、少し恥ずかしそうに話し始めた。

 

「はじめまして、とうじょうきょうかです。よろしくおねがいします。」

「はじめまして、杏花ちゃん。ぼくは竈門炭治郎だ。よろしくね!」

 

炭治郎は花のような笑みを浮かべて返してくれる。

 

「かわいいーーーー!なんてかわいい子なんだ!!ぼくは我妻善逸だよ、よろしくぅ!!」

 

善逸はさっき喚いていたのが嘘のようにメロメロになり、目をハートにしている。

思わず「あなたには禰 豆子ちゃんがいるでしょ」、と言いそうになった。

 

「俺は嘴平伊之助様だ!親分と呼べ、子分その5!!」

「はい、おやぶん!」

「おい、この可愛い子を子分だなんて、何考えてるんだこの猪頭!」

「んだと?!」

 

善逸と伊之助はやっぱり喧嘩になり、庭で乱闘を繰り広げている。

 

「相変わらずなのね、あの2人。」

「まぁね。でも…本当に色々大変だったんだろうけど、とにかく君が死ななくてよかったよ。またこうして会っておしゃべりできるんだし。」

「そう、よね…ありがとう…」

 

炭治郎の言う通りだ。でも、素直に喜べない気持ちもあった。

あのまま死んでいたら、杏花の成長を見届けられなかったし、こうしてみんなと会えなかったわけだし…そう自分に言い聞かせてるけど……

 

でも、ずっと心に引っかかっていることがあった。

 

「澪?どうしたの?」

 

そんなわたしを見かねて、炭治郎が心配そうに顔を覗き込んでくる。

 

「……今のわたしを見たら、煉獄さんは…失望するだろうなと、思って…」

 

それを聞いて炭治郎は顔を歪めて、複雑そうな顔をしていた。

 

煉獄さん。

命をかけて、わたしたちを守ってくれた恩人。優しくて強かった、誰よりも。

 

彼はどんなに誘惑されても、鬼になることを拒んだ。最後まで人間のまま、命を全うした。

 

『俺は如何なる理由があろうとも、鬼にならない。』

 

もちろん、わたしもそのつもりだった。人間のまま、杏花を守って死にたかった。

でも…

 

「せっかく命に替えて守った者が鬼になったのよ。お墓にも行けない。行く資格なんて、ない…」

 

自分が人間だった時は、客観的に見ていたから、東城家のみんなのことをただ「鬼なのに''菜食主義生活"なんて大変そう、すごいなぁ」などと思っていた。今なら、前に司が言っていた言葉の意味がよくわかる。

 

『ぼくらはいくらお館様をはじめ、鬼殺隊に認められてたって、人間を食べないからって、所詮鬼なんだよ。』

 

その通りだ。その言葉の意味が、今なら痛いほどわかるし、わたしの身にのしかかっていた。

 

「澪、ぼくを見て。」

 

炭治郎は俯いたままのわたしの手を取る。

 

「忘れてるかもしれないけど、煉獄さんは禰 豆子のことも認めてくれたよ。」

 

それはそうだろう。当たり前だ。それに値する子なのだから。

 

「煉獄さん、言ってたよね。命をかけて鬼と戦い、人を守る者は、誰が何と言おうと鬼殺隊の一員だって。君もそうだ。鬼になったけど人を食わずに、今まで通り任務に出て、鬼を狩ってるじゃないか。」

 

わたしはやっと顔を上げた。そこには少し悲しそうだけど笑っている、炭治郎の顔があった。

 

「だからぼくは、煉獄さんが失望しているとは決して思わない。もしこの場にいたら、禰 豆子と同じように『君を信じる、鬼殺隊の一員として認める』って言ってくれると思う。それにさ、杏花ちゃんだけど…もしかして、煉獄さんの名前から取ったんじゃない?」

「そうよ。恩人の名前をいただきたかったから。」

「司さんと杏花ちゃんと3人で、お墓参りに行ったら、煉獄さんきっと喜ぶよ。行くべきだ。」

 

炭治郎の言葉が、わたしの心にすっと入り込んできて、鬼になってからのしかかっていた心の重りが、少し軽くなった気がした。

 

「ありがとう、炭治郎。気が楽になったわ。」

「どういたしまして。ぼくだけじゃない、善逸も伊之助も、君の味方だから。それを忘れないでね。」

「ははうえ、かなしいの…?」

 

そこに、わたしが泣いていることに気がついた杏花が、わたしの頬に手を当てる。わたしは慌てて涙を乱暴に拭った。

 

「ううん、大丈夫よ。ねぇ杏花、明日父上と一緒に3人でお墓参りに行こうか。」

「おはかまいり…?誰の?」

「わたしを救ってくださった、大切な人のよ。杏花にも、一緒に来て欲しいの。」

「わかった、いく。だから、もうなかないでははうえ。」

 

そうよね。

泣いて蹲るのは時間の無駄よね。

 

この子にも知っていてほしい。

あの時、煉獄さんがいなかったら、わたしも杏花も今ここにいない。

 

あの時、命をかけて煉獄さんが守ってくれたから、今こうして生きていられるのだ。

 

心を燃やします。

この先、どんな困難が待ち受けていようとも。

 




あれから禰 豆子と杏花は一緒に遊び、とても仲良しになりました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。