鬼滅版トワイライト   作:クッキーマロン

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興味津々

食事をした翌日、彼は約束通り蝶屋敷にやってきた。

 

「おはよう。あの子たちに何を話すつもり?」

 

視線を向けると、アオイ、なほ、すみ、きよの他に噂を聞きつけた同期の炭治郎、善逸、伊之助がいた。

 

「ちょっと、わたしの頭の中は読めないんじゃないの?」

「読めないよ。でもあの子たちが考えていることはわかるからね。君を質問攻めにしようと待ち構えてる。」

 

彼は面白いものが見られそうだと言わんばかりにニヤニヤしている。

 

「嘘でしょ・・・」

「まあそんなに構えなくても大丈夫だよ。行っておいで、みんな君を待ってるよ。」

 

 

 

 

実際そんな突っ込んだことは聞かれなかった。

昨日どこに行っていたのかとか、何を話したとか。

 

夕食を一緒に食べて、奢ってもらい、そのあと蝶屋敷まで送ってもらったことを簡潔に話した。

 

「わぁ・・・!」

「素敵ですね!」

「羨ましい!」

 

なほ、すみ、きよは純粋に興味津々、羨ましいと思っているようだ。

 

「許せねぇェよォォォォオ!澪ちゃんが男とご飯食べたとか…俺は許さないぞ!」

「善逸、お父さんみたいなセリフ言ってるぞ。」

「・・・?」

 

善逸に炭治郎がツッコみ、伊之助はいまいちなんの話をしているのかわかっていないようだった。

 

「澪、いつの間に司さんとご飯を食べる仲になったの?ついこの間までは、お互いに敬遠してる感じだったよね?」

「まあね。」

 

それは認める。

炭治郎が不思議がるのも無理はない。わたしだって、まだ急展開についていけていないから。

 

「でも、色々と誤解があっただけなの。今は普通の友達って感じ。」

「つまりボーイフレンドってことか?!認めない、俺は認めないぞぉぉぉお!!」

 

善逸は呆れる炭治郎を横目に喚き続ける。

 

「そんな特別なこと…?」

「だって、お相手はあの東城さんなんだぞ、澪ちゃん、わかってる?!」

 

善逸が、こいつ何言ってんだという顔で見てくる。

そうよね、わたしだって信じられないもの。夢だったって思うくらい。

 

「でも、素敵なのは容姿だけじゃないわよ」

「「「「えっ」」」」

 

みんなが一斉にわたしに注目した。こういうことは慣れてないから、なんか恥ずかしい。

 

「中身っていうか、素顔も、その…信じられないくらい素敵なの。」

「あの容姿より性格がいいなんてこと、あり得るの…?」

 

アオイが若干引いている。

 

「司さんのこと、好きなんですか?」

「え?」

 

なほが直球で聞いてきた。

 

「う、うん、そう。」

 

わかりきってることを聞かれて、少し素っ気なくなってしまう。

 

「わぁ…」

「どれくらい?」

 

すみが突っ込んで聞いてくる。

 

「好きすぎるって感じ。」

 

多分、今わたしの顔は真っ赤だろう。

 

「彼がわたしを好きでいてくれるより、わたしの方が彼を好きってこと。でもそれは仕方ないでしょ。」

「そんなことないですよ。」

 

そこに現れたのは胡蝶しのぶだった。相変わらず気配を消しながら、ふわっと突然現れるから、いちいちびっくりしてしまう。

 

「ここ数百年、彼が誰か特定の人間に興味を持ったことは今まで一度もなかったみたいですから。何度もあなたに会いに来てますし、あなたのことを好いているのは間違いないですよ。」

 

そうなんだ…

なんだか恥ずかしくて、俯いた。

 

「もう少し具体的な話を聞きたいです!話してください!」

 

きよが目を輝かせている。

 

「えっと、じゃあ一つね。料理の注文を聞きに来た女性が彼に色目を使ってて…あれは一見の価値があったかな。でも彼は全く気にしてなかったの。」

「その女性、美人でしたか?」

「うん。すごく大人っぽくて、綺麗な人だった。18か19歳くらいだったと思う。」

「やっぱり。司様は澪さんに夢中なんですよ!」

 

なほ、すみ、きよは目を輝かせて言う。

彼がわたしに夢中?一瞬淡い期待をしたけど、そんなわけないと思い直した。

 

 

 

わたしがとりまきから解放されたと見ると、彼が近づいて来た。

 

「あの注文聞きに来た女の人って、美人だったんだ。」

「本当に気付いてなかったの?」

「あぁ、気にしてなかった。頭の中が別のことでいっぱいだったからね。」

「かわいそうな彼女…」

 

今なら同情する。感じる必要などない彼女への嫉妬心も消えた。

 

「ねぇ、ちょっと一つ引っかかるんだけど」

 

おっと、これはわたしに文句を言いたがっている時の口調かな。

わたしも段々と彼の口調で機嫌が察せるようになってきた。

 

「気に入らないことが耳に入っても仕方ないでしょ。盗み聞きなんてするからよ。」

「君が言ってたこと。ぼくが君を好きでいるより、君がぼくのことを好きな気持ちが強いなんて、本気で思ってるのか?」

「そうよ。事実だもの。」

「君は間違ってる。」

 

彼がすかさず否定する。

 

「そんなこと、わかんないでしょ」

 

わたしもムキになって答える。

 

「なんでそんなふうに思うのかな。」

 

射るような、灰色の瞳が、わたしを見つめてくる。

 

彼の顔を前にしてもはっきり物事を考えて、なんとか説明をつける方法ってないの?

 

言葉を探しているうちに、彼がジリジリしてきている。沈黙にイライラして、顔が険しくなる。

 

「とりあえずわかりきってることはさておき、時々…はっきりじゃないけど、ほら、わたしは読心術なんてできないし、でもあなたが何か他の話をしながら、本当はさよならを言おうとしてる気がする。」

「…中々鋭いな。ところで、わかりきってることって?」

「見ればわからない?」

 

言われた通り、彼はわたしを凝視する。

そのまま何も言わない彼に痺れを切らして、ため息をつき、白状した。

 

「どう見たってパッとしないじゃない。何もかも平凡。容姿も実力も。ドジでしょっちゅう怪我することくらいよ、みんなと違うのは。それなのにあなたは…」

「君は自分のことが見えてないんだな。まぁみんなと違う点はまさに君の言う通りだけど。パッとしないなんて…君はその正反対だよ。」

「じゃああなたは、さよならを言おうとしてるわけじゃないってこと?」

「わかってないんだな。それだけぼくの方が、君のことを想ってるってことだよ。もしできるなら、君から離れる方がいいなら、ぼくはそうする。君を傷つけないためなら、安全を守るためなら、自分はどうなってもいい。」

「わたしだって同じ気持ちよ。」

「ぼくのために犠牲を払わせるようなことは絶対にさせないよ。」

 

彼は恐ろしいくらい魅力的で茶目っ気たっぷりの笑顔が浮かぶ。

 

「とはいえ、君は災難を呼び寄せる磁石だからね。安全を守るには、24時間体制の監視が必要になりそうだ。最近はそれが自分の仕事だって気がしてきたよ。」

「今のところは誰にも殺されそうになってないわよ。」

 

彼と一緒にいるためなら、危ない目に遭ってもいいと思ってしまうから不思議だ。

 

「今はそのようだね。次の非番はいつ?」

「多分次の土曜日」

「よし。じゃあまたぼくと出かけよう。」

「土曜日がもし晴れだったらどうするの?その時は延期?」

 

鬼は太陽の光で消滅する。日輪刀で頸を斬る以外で唯一の、鬼を殺す方法だ。

 

「それを見せるんだよ。ぼくの家族は、太陽では焼け死なない。」

「えっ?は?!焼け死なない?!太陽を克服してるの?!」

「そうだ。ぼくの一族の屋敷がお館様と同じくらい厳重に隠されているのは、それが大きな理由の一つなんだよ。でも、晴れの日に死なないとはいえ、人前には出られないんだ。それを見せる。」

「何時に会える?」

「どうだろう。土曜日だから、君は寝坊したいんじゃない?」

「いいの。」

 

答えるの、早すぎた?

彼は笑いを堪えてる。

 

「それじゃあ、10時に来るよ。先に言っておくけど、それまでは会えない。」

「どうして?」

「君と2人きりになるなら、できる限りの予防策を講じておかないといけないから。」

「狩りをするのね。」

 

やっぱり後悔し始めたのか、訴えるような表情になる。

 

「断ってもいいんだよ。」

 

説得力抜群の彼の眼力に負けたくなくて、俯いた。彼がどんなに危険だとしても、怖がったりしない。そんなこと、どうでもいい。

 

「いや。そんなことできない。」

「そうだな、そうかもしれない。」

 

お互いわかっている。

離れることなどできないのだ。

 

「何の動物を狩るの?」

「杏が一緒だから、彼女の好物があるところに行くんだ。鹿がたくさんいる森がある。」

「杏って、あなたの義理のお姉さん?」

 

司と同じで、杏のことも存在だけ知っている。噂で変わり者だということは聞たことがあるけど、それ以外は何も知らなかった。

 

「どうして杏と一緒に行くの?」

「彼女が一番…協力的だから。」

 

あぁ、なるほど。

鈍いわたしでも、司が言った言葉の意味はわかる。

 

「わたし、ご家族に嫌われてるんだ。」

「そうじゃないよ。」

 

やけに口調が明るい。

しかも「けど、」が続きそうな口調だ。

 

「どうして君のことを放っておかないのか理解できないだけなんだ。」

「その点はわたしも同感」

「言っただろ、君は自分のことが全然見えていない。君はこれまで会った誰とも違う。ぼくは夢中なんだよ。」

 

わたしに夢中?からかってるに決まってると自分に思い込ませて、彼を睨みつけた。彼はわたしが納得していないと気付いて、続きを話す。

 

「ぼくみたいな能力があるとね、普通より人間の本質をうまく掴み取ることができる。人がやることは、大抵予測がつくんだ。でも君は絶対に予想通りに行動しない。いつも驚かされてばかりだ。」

 

恥ずかしかったし、なんかあまり褒められてない気がして顔を逸らした。

 

「もう行かなきゃいけないんじゃないの」

「そうだな。」

「楽しんでって言えばいいの?それともそれは相応しくない?」

「いや、どんなことでも、楽しんでっていうのは通用するさ。」

 

彼はニヤリと笑う。またわたしの顔は真っ赤になる。

 

「じゃあ、楽しんで。」

「頼むから、土曜日まで無事でいてくれよ。これは文字通りの意味だ。君の場合は冗談じゃ済まないからね。」

「はいはい、約束します。今晩は任務がないから、アオイの洗濯のお手伝いをする予定なの。これなら傷一つ負わなそうでしょ。」

「そうか、それなら安心だ。じゃあ土曜日に。」

 

そう言うと、背を向けて去っていった。それを、わたしは姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。

 

 

彼のいない人生を送る?そんなの耐えられない。今のわたしの人生は、彼を中心にまわっているようなものなのだから。

 

だけど、心の中の小さな声は不安げだ。ものすごく痛くて辛いのかな、もしこの関係が、ひどい終わり方をしたら…

 

今は考えないようにしよう。

 

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